『昨夜のカレー、明日のパン』あらすじとネタバレ感想!日常に潜む苦悩と喜びに溢れた傑作
悲しいのに、幸せな気持ちにもなれるのだ―。七年前、二十五才という若さであっけなく亡くなってしまった一樹。結婚からたった二年で遺されてしまった嫁テツコと、一緒に暮らし続ける一樹の父・ギフは、まわりの人々とともにゆるゆると彼の死を受け入れていく。なにげない日々の中にちりばめられた、「コトバ」の力がじんわり心にしみてくる人気脚本家がはじめて綴った連作長編小説。
「BOOK」データベースより
脚本家・木皿泉さんの小説処女作となる本書。
タイトルは『ゆうべのかれー、あしたのぱん』と読みます。
ありふれた日常を描いた連作長編で、視点となる人物がそれぞれ異なる複数の短編から構成されています。
平凡な毎日の中に登場人物の悩みや葛藤が垣間見え、それを振り切るまでの姿を何てことのないように描いているので、重たい内容もサラリと読めてしまうので何だか新感覚でした。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
ムムム
寺山徹子(テツコ)は十九歳で寺山家に嫁入りするも、二年後に夫の一樹が病気で亡くなり、今は義父・連太郎(ギフ)と二人暮らししています。
タイトルにある『ムムム』とは隣の家に住む女性のことを指します。
以前は飛行機の客室乗務員をしていましたが、ある日から突然笑えなくなり、退職。
笑えないことからギフが『ムムム』と命名しました。
その彼女が笑ったということでテツコとギフが盛り上がる話。
それ以外にテツコが恋人の岩井からプロポーズされ、亡くなった一樹のことを思い出し、岩井に対して返事をします。
パワースポット
前話に登場したムムムこと小田宝が主人公の話。
彼女はある日から突然、笑えなくなってしまいました。
治療のために通ったクリニックの帰り、中学時代の同級生・サカイと再会。
彼は顔面神経痛で常にヘラヘラしてしまって仕事を辞めていました。
他にも深チンという寺の息子である同級生も、バイクの事故で正座ができなくなって住職を辞めてしまったことが判明。
サカイは色々あった三人でパワースポットに行こうと提案し、物語はそこから思わぬ方向に進みます。
思いがけず明るい話で、読んでいてだんだん嬉しくなってしまいました。
山ガール
ギフは趣味を作りたいと思い立ち、山登りに興味を持ちます。
テツコの同僚・小川里子(師匠)が山ガールということで、ギフは師匠と二人で山登りに行くことに。
性別や年齢の違いからそこまで会話が弾むわけではありませんが、思いがけずプライベートな話になり、ギフは亡き妻・夕子のことを思い出します。
虎尾
一樹の従弟・虎尾が主人公の話。
虎尾は一樹との思い出を残したいと彼の死後、一樹の愛車を譲ってもらいます。
プライベートでは大学時代のサークルで知り合った大崎朋子と交際を続けていて、結婚に向けて準備を進めていました。
ところが住居を決めるにあたって虎尾の車をめぐって険悪な雰囲気になり、お互いに譲りません。
虎尾はテツオやギフと一樹のことを話す中で、自分の気持ちに折り合いをつけていきます。
魔法のカード
岩井が主人公の話。
岩井とテツコが勤める会社では、岩井が結婚詐欺にあったと噂になっていました。
テツコが真相を問いただすと、もっと驚きの事態になっていました。
プロポーズの話であまり良いイメージを持てなかった岩井ですが、その良さが見えてくる話です。
夕子
ギフの妻・夕子が彼と結婚するまで、そして結婚後の生活が描かれた話。
『山ガール』でギフとの壮絶なエピソードが語られていましたが、その全貌が明らかになります。
かなり過酷な人生を歩んできた人で、ギフと結ばれたことで救われました。
男子会
突然、ギフが家出し、岩井の家に押しかける話。
家出の裏には女性の影があり、岩井とギフは似ているのかもと思った瞬間でした。
期せずして岩井は寺山家と深く関わることになり、これがきっかけでテツコに変化が生じます。
一樹
生前の一樹が描かれた話。
本書の『タイトル』にも関係する内容で、短くて本編とそこまで関係していないのにとても印象に残りました。
ひっつき虫
岩井との今後に悩むテツコの話。
現状を望むテツコとギフですが、生きていれば老いていくわけで、いつかこの日常は崩れ去ります。
変化を受け入れなければいけない時を前にして、テツコは一樹への思いを消化して答えを出します。
感想
親しみのある日常
派手な事件が起こるわけではありません。
描かれているのはどこにでもありそうな日常です。
しかし、その日常には血が通い、生きていることを実感させてくれるものでした。
ありふれた日常は、実は当たり前にあるものではなく長い年月をかけて作り上げたものであり、その大切さを教えてくれます。
悪い人はいない
色々な癖を持つ人物が登場し、誰かの視点から見た誰かは必ずしも良い人とは限りません。
しかし、視点が変わることでそれぞれの立場や心情が分かるので、悪い人はいないんだなと思うことが出来ました。
考え方や価値観の違いですれ違うことがあっても、話し合えば分かり合えることもある。
もちろん、分かり合えずに離れてしまうこともあるわけですが。
本書の意図したところではないと思いますが、人間関係について少しポジティブになれた気がします。
前に進む力をくれる
本書では平凡な日常の裏で繰り広げられる不安や葛藤も描かれています。
人はいつまでも今のままでは生きていけないわけで、誰でも否応なしにいつか変化を求められます。
そこで勇気を持って前に進むのか、現状維持を望んで周りに流されるのか。
本書では最後に、テツコが前に進むことを選択します。
彼女は輝かしい未来が待っているわけではないことを承知した上で、その先に広がる未来に希望を抱いたのです。
大人になればなるほどしがらみが増えて前に進むことを恐れてしまうわけですが、本書を読むことで少しでも前に進む力を分けてもらえたかなと思います。
変化は不安もあるけれど、喜びもあることを思い出しました。
おわりに
著者が脚本家ということで、小説自体は淡々としていて味気なく感じるかもしれません。
しかし、その何気ない描写や仕草の一つ一つにその人の歴史が染み込んでいてい、体の隅々までじんわりと物語が浸透していくのを感じました。
優しさと力強さを併せ持った名作です。
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