重松清『ステップ』あらすじとネタバレ感想!家族が再出発する物語
結婚三年目、三十歳という若さで、朋子は逝った。あまりにもあっけない別れ方だった―男手一つで娘・美紀を育てようと決めた「僕」。初登園から小学校卒業までの足取りを季節のうつろいとともに切り取る、「のこされた人たち」の成長の物語。
「BOOK」データベースより
本書は山田孝之さん主演で映画化されました。
映画の公式サイトはこちら。
結婚三年目で最愛の妻を亡くし、悲しみに暮れる間もなく残された娘を育てなければならない。
そんな父親の苦労と苦悩、そして喜びが本書には描かれています。
それだけでなく、親戚や周囲とどのように付き合い、どのような形で先に進むのか。
考えさせられるのはもちろんですが、それ以上に再出発できて良かった。
素直にそう思える素敵な物語でした。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
死別
健一は結婚三年目で最愛の妻・朋子を髄膜炎で亡くし、娘の美紀と二人で残されてしまいます。
義両親の協力もあり何とか生活していましたが、それではいけないと健一は思い、娘の美紀を保育園に預け、二人で再出発します。
会社では融通をきかせてもらい、営業部から時間に融通のききやすい総務部に異動。
もちろん義両親も協力してくれますが、そんなに簡単にいくはずがありません。
美紀の子育て一つで悩んでも一人で立ち向かわなければならず、途方に暮れてしまうこともあります。
しかし、ありがたいことに健一と美紀には素敵な出会いが何度もあり、その出会いに助けられながら成長していきます。
美紀も、健一も。
普通という暴力
普通なんてものは一つとしてない。
そんな風に思いながらも、それを実感するのは自分が何かを失った時です。
健一と美紀は朋子を失い、この『普通』という言葉に何度も苦しめられます。
普通の家庭には父親も母親も揃っていて、大多数のために少数派の片親には合わせられない。
子どもが大きくなるにつれて子育ては普通、楽になるはず。
子どものことを考えたら、母親がいた方がいいに決まっている。
その度に健一も美紀も悩みます。
誤魔化したり流されたりすれば、もしかしたらその方が楽かもしれません。
しかし、健一と美紀は自分の気持ちに正直になり、周囲のいう『普通』ではない家族であることを受け入れた上で、そのことを誇りに思いながら生きていくことを選びます。
とても尊いことであり、改めて周囲のありのままを受け入れる寛容さを持ちたいと思いました。
再出発するために
健一の親戚や周囲の人たちは彼と美紀のことを思い、再婚を勧めます。
健一は朋子一筋だと言い切るものの、もしかしたら、と何人も女性と結婚の可能性を感じ、その度に良心の呵責と戦うことになります。
最終的にナナという自分とよく似た境遇の素敵な女性と出会い、家族としての再出発を決めますが、問題は二人だけのものではありません。
美紀にとってママはいつまでも朋子であり、頭で分かっていても簡単に受け入れられるわけではありません。
それに健一の義両親からすれば、健一が再婚すれば美紀との交流も減り、寂しいに決まっています。
後半になるほど家族の範囲が広がり、みんなにとって幸せなこととは何か?ということが物語の中心になります。
とても難しい問題ですが、本書の家族は自分たちとしての正解に辿り着くことができました。
感想
人生そのものを描いた作品
自分が現在、子育てをしていることが大きく影響し、健一にはいちいち共感してしまいました。
ましてや最愛の朋子を失い、それを嘆く暇すら与えてもらえない。
もう想像するしかない苦労であり、実際は想像を遥かに越えるであろうことは容易に想像がつきます。
そして一番思い知られされたのは、立ち上がれないほどの悲しみに襲われても、人生はずっと続いていくということです。
朋子の死を乗り越え、父親と母親を兼任しながら美紀を育てなければならない。
そして、周囲とも折り合いをつけ、長い時間をかけて新しい家族の形を作っていく。
それは健一と美紀だけのことでなく、親戚も含めてもっと大きな家族です。
美紀が大きくなるごとに月日を感じ、人生そのものが描かれた作品だと強く感じました。
受け入れ、踏み出す
健一はもちろん、美紀も成長するにつれて朋子の死を受け入れ、自分なりに心の整理をつけます。
しかし、健一は朋子一筋と決めても何人もの女性に魅力を感じ、その人と新たな人生を歩めないかと考えます。
最愛の人を失ったのですから、当然の感情です。
朋子やその両親を裏切ることにならないか?
美紀は自分が結婚してしまうと、朋子というママを一生失ってしまうのでないか?
いくら美紀や親戚が許したとしても、簡単に割りきれる問題ではありません。
最終的にナナという再婚を考えられる女性と出会いますが、それを果たすために乗り越えなければならない壁がたくさん待ち受けています。
時には悩み、時には傷つき。
それでもお互いを理解し合い、次のジャンプに向かってステップを踏み続ける。
その苦悩の日々は何度も涙が溢れるほど尊いもので、自分の家族を大切しなければならないことを改めて教えてくれました。
正解などない家族の形
本書では『普通』という暴力が何度も登場し、健一たちを苦しめます。
両親が健在で、子どもが大きくなるほど子育ては楽になり、大多数の意見が正しいとされる世の中。
読んでいてとても苦しくなる問題でした。
でも、それを乗り越えていかないと先には進めず、二人は理解を求めるために何度も考えを伝え、次第に理解を勝ち取っていきます。
もちろん、周囲が多様性を受け入れることも重要ですが、恐れずに理解を求めていくことが大切なんだと思いました。
おわりに
『きみの友だち』ですぐに重松さんのファンになった僕ですが、本書もかけがえのない一冊となりました。
使い古された当たり前の言葉も、健一や美紀たちと苦労を共にしたことで、これ以上ないほどの大切なメッセージとなり、しっかりと受け止めることができました。
最後に、頑固でちょっと嫌だった義父が存在感を増していき、最後に年長者としての貫禄を見せつけてくれた構成はお見事の一言です。
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