『私の頭が正常であったなら』あらすじとネタバレ感想!失った悲しみに美しさが交わる短編集
最近部屋で、おかしなものを見るようになった夫婦。妻は彼らの視界に入り込むそれを「幽霊ではないか」と考え、考察し始める。なぜ自分たちなのか、幽霊はどこにとりついているのか、理系の妻とともに謎を追い始めた主人公は、思わぬ真相に辿りつく。その真相は、おそろしく哀しい反面、子どもを失って日が浅い彼らにとって救いをもたらすものだった――「世界で一番、みじかい小説」。その他、表題作の「私の頭が正常であったなら」や、「トランシーバー」「首なし鶏、夜をゆく」「酩酊SF」など全8篇。それぞれ何かを失った主人公たちが、この世ならざるものとの出会いや交流を通じて、日常から少しずつずれていく……。そのままこちらに帰ってこられなくなる者や、新たな日常に幸せを感じる者、哀しみを受け止め乗り越えていく者など、彼らの視点を通じて様々な悲哀が描かれる、おそろしくも美しい”喪失”の物語。【解説:宮部みゆき】
Amazon商品ページより
なかなか刺激的なタイトルの本書。
ホラー要素がありつつも、根底には悲しみを背負った人たちの心の機微があり、その細やかで繊細な描写が読んでいて贅沢でした。
暗めな話も多いですが、何か悲しみを背負った境遇や現状の人であれば共感できることも多く、明日に向かう力が得られる内容になっています。
もちろんホラーという観点で読むのもオススメです。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想などを書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
世界で一番、みじかい小説
僕は妻の千冬と幸せに暮らしていますが、ある日、家の中で幽霊と思しき男性を目撃します。
心配になって千冬にきくと、彼女も同じ人物を目撃していて、恐怖なしに冷静に観察していました。
千冬が色々試してみて、男性が幽霊であることは間違いなさそう。
特に何かをしてくるわけでもないし、ではなぜ男性はこの家に現れはじめたのか。
二人は調査を開始して、やがて男性の正体に気が付きます。
首なし鶏、夜をゆく
僕は小学六年生の時に田舎の学校に転入しますが、クラスメイトに馴染むことができません。
もう一人似た子どもがいて、それが水野風子でした。
風子はいつも同じ服を着ていて、頬もこけていて、十分な家庭環境で育っていないことは一目瞭然です。
少しして彼女の両親が交通事故で亡くなっており、叔母に育てられていることを知ります。
そんなある日、僕は帰宅途中の雑木林で風子を目撃しますが、彼女が京太郎と呼んで世話していたのは首から上がない鶏でした。
酩酊SF
私はホラー小説やSF小説を書いています。
ある日、大学時代の後輩Nから相談があると呼ばれ、そこで小説になりそうなアイディアがあるがどのように書いたらよいか分からないと相談されます。
それは、酒を飲んで酩酊すると、その間だけ意識が過去に戻れる能力を持つ女性の話でした。
Nはこの能力を用いてお金儲けをする話にできないかと考えていて、私は競馬で儲ける方法を教えます。
次に会った時、Nは納車されたばかりの車に乗っていて、彼が話していたアイディアが創作ではなく本当の能力だったことが発覚します。
布団の中の宇宙
小説家のTはそこまで売れずとも作品を書いて一定の評価を得ていましたが、ここ十年は新しい作品を書いていませんでした。
Tいわく、書きたいものを書き終えてしまったことが原因ではないかといいます。
そんなある日、Tの作品が発表されます。
私はTと飲むことになり事情を聞くと、新しい作品を書けたのはとある布団のおかげだといいます。
子どもを沈める
私の高校時代の友人三名が自分の子どもを殺害するという事件が発生します。
吉永カヲルのもとにその内の一人から手紙が届き、高校のグループの最後の一人であるカヲルが同じことをしないか心配だと書かれていました。
そして、こんなことになってしまった原因として、生田頼子に彼女たち四人が学生時代にしたことが書かれています。
物語が進行する中で、四人が頼子にしてしまったこと、その復讐と三人の事件の原因が明らかになります。
トランシーバー
俺は息子のヒカルにおもちゃのトランシーバーをプレゼントします。
しかし一年後、東日本大震災の津波によって俺は妻とヒカルを失ってしまいました。
深い悲しみの中、俺は酒によって現実逃避します。
そんな時、ヒカルにあげたトランシーバーからヒカルの声がしました。
私の頭が正常であったなら
表題作。
私は優秀な男性と結婚し、娘の祐子が生まれて幸せでした。
※祐子の『祐』の漢字は正しくは『示+右』ですが、変換で出ないため便宜的に別の漢字をあてています
しかし、言葉の端々から性差別的な意識が見られ、やがて私や祐子に手を出すようになります。
危機を感じて離婚することにしましたが、本当の悲劇はこれからでした。
おやすみなさい子どもたち
私は大型クルーズ船に乗っていましたが、何らかの理由によって沈没の危機に瀕してしまいます。
子どもたちの面倒を見る中、私は足を滑らせて海に落ちてしまいました。
意識を取り戻すと、見知らぬ場所で見知らぬ人がいます。
相手は天使を名乗り、私が死んでいることを打ち明けるのでした。
感想
様々な悲しみ
本書はどの物語の根底にも悲しみがあり、その種類は多種多様です。
主人公は子どもから大人まで幅広く、家族由来する悲しみや、それ以外の悲しみもあります。
喪失をテーマにまとめつつも、登場人物や設定が本当に幅広く、良い意味でまとまりが弱いです。
ホラー色が強い作品もあれば、SF的な話もあるし、感動的なエンタメ作品もあります。
これだけの幅を持ちつつも、それを丁寧な描写によってリーダービリティ高く読者に届ける。
山白朝子さんの作品はいつ読んでも上質で感心してしまいました。
特にオススメ作品
本書はこれ、というオススメ作品を選ぶのがなかなか難しいですが、個人的に好きなのは『世界で一番、みじかい小説』と『トランシーバー』です。
前者は千冬がクールで可愛いです。2000年代のアニメヒロインにいそうな設定で、けれど最後にほんのり切なくて温かいものを差し込んできて、油断していたのでちょっとした感動というギャップが良かったです。
後者はタイトルの意味もすぐ分かるし、震災をテーマにあるので物語の方向性は明確です。
主人公が一人の女性と出会うことで悲しみから立ち直っていくわけですが、過去は過去、現在は現在ときっぱりいくのではなく、あくまで乗り越えた先にあるのだという連続性が感動的でした。
おわりに
タイトルと良い意味でギャップのある作品でした。
背筋が凍るようなホラーではありませんが、心が豊かになる栄養を多分に含んでいて、誰にでもオススメしやすい作品でした。
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