『三月は深き紅の淵を』徹底ネタバレ解説！あらすじから結末まで！
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『白鳥とコウモリ』あらすじとネタバレ感想！加害者家族と被害者家族が交差した時に見える真実とは
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二〇一七年、東京竹芝で善良な弁護士、白石健介の遺体が発見された。
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捜査線上に浮かんだ倉木達郎は、一九八四年に愛知で起きた金融業者殺害事件と繋がりがある人物だった。
そんな中、突然倉木が二つの事件の犯人と自供。事件は解決したと思えたが。
「あなたのお父さんは嘘をついています」。
被害者の娘と加害者の息子は、互いの父の言動に違和感を抱く。
父の死に疑問を持つ美令と父の自供に納得できない和真。
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事件の蚊帳の外の二人は‶父の真実″を調べるため、捜査一課の五代の知恵を借り禁断の逢瀬を重ねる。
過去と現在、東京と愛知、健介と達郎を繋ぐものは何か。
やがて美令と和真は、ふたり愛知へ向かうが、待ち受けていた真実は――。
光と影、昼と夜。果たして彼等は手を繋いで、同じ空を飛べるのか。
東野圭吾さんらしい良質で、心の琴線に触れるミステリです。
『今後の目標はこの作品を超えることです』と言わしめるほどで、それも頷けるものでした。
東野作品に慣れている人であればある程度予想がつくストーリーですが、それもしっかりずらして展開してくるので驚きもあり、リーダービリティを維持しつつも感動を与えてくれる。
やはりベテラン作家は伊達ではありません。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
事件
車の中で弁護士の白石健介が死体で発見されます。
凶器のナイフは刺さったままで、他殺の線で捜査が始まります。
刑事の五代努は所轄の中町と共に関係者から話を聞きますが、簡単にはいきません。
スマートフォンのGPS情報から事件当日の動きは見えてきましたが、なぜそういった動きをしたのかが見えてきません。
また白石は様々な人から信頼を集めていて、恨みを買うようなことは考えにくい状況でした。
繋がり
捜査の段階で、倉木達郎という人物が浮かび上がります。
愛知県在住で、倉木は白石法律事務所に電話をした履歴がありました。
なぜ愛知に住む倉木が、わざわざ東京の白石を選んだのか。また相談内容は何なのか。
五代は倉木に会いに行き、事情を話して質問します。
倉木の説明はスムーズで、不可解さはあるものの、決して筋が通らないものではありません。
東京に息子が住んでいて、往来があるようですが、そこで五代は違和感を抱きます。
倉木が最後に東京を訪れた日を訂正したのです。
そこには意図があるように思えますが、その正体まではこの段階では分かりません。
目的
五代は倉木の息子・和真にも当たり、事情を聞きます。
倉木と話は食い違っていませんが、和真でも倉木の東京での動きを把握できてないことが分かります。
五代と中町は、息子に事情を話していないことや上京頻度を鑑みて、女性が絡んでいると推測。
白石が立ち寄ったコーヒーショップから『あすなろ』という小料理屋が出てきます。
五代たちはあすなろを営む母娘に事情を聞きますが、事件はさらに深さを増していきます。
感想
止まることのない読書
良作は良い意味で頭に残らない。
それを改めて思いました。
長年読書をしてくると新鮮さはどんどん失われ、時間が経つにつれて忘れる割合が増えていきます。
後になっても覚えている作品は、何か強烈なインパクトがあるか、頑張って読まないといけないほど癖が強くて、読み手のアクティブさが求められる時です。
そういった意味で、本書は一度も読む手が止まることはありません。
それくらい情報の過不足がないし、今物語がどこにいて、次にどこに向かうかが明確です。
それでいてしっかり読者の驚きや感動を誘う仕掛けしっかり用意していて、ただ読みやすいだけではない。
東野圭吾さんってすごいんだな、とちょっと馬鹿な感想を抱きました。
王道な東野圭吾
内容としては、従来の東野作品の延長にあるようなものです。
事件には人間の過去や心情が濃密に絡まっていて、誰が悪だと断言できない難しさがある。
そこに男女の恋愛も絡み、構図としては非常に分かりやすいです。
これまで東野作品を多く読んできた人からすると、新鮮味は薄いかもしれませんが、その分、安心して読めます。
ただ一点だけ違和感を伝えると、それはタイトルの無理やりさです。
ちゃんと意味が通るタイトルなのですが、作中の登場人物が口にした時、どうしも違和感がありました。
同じことを表現するのであれば、もっと違う表現をするのではないか。
タイトルのために無理やり言わせている感があり、その点だけが個人的に残念でした。
内容には影響は全くないので、気になる人は気になる、くらいの認識でOKです。
時代の流れ
これは本書に対する批評というよりも、個人的に思ったことです。
本書では倉木の不審な動きに対して『女の影』を見てとり、『女は全員女優』だと五代たちが発言して、女性の演じる能力の高さを評しています。
これまでのミステリ、サスペンスでは散々言われてきたことで、僕も頷けるところです。
一方で、近年では多様性が重視されるようになったため、何でも恋愛に繋げるようなことはなくなったし、女が～といった大きい主語での話は聞かなくなったな、としみじみ思いました。
内心、みんながどう思っているかはさておき。
時代とずれているように見えるけれど、本質は今も変わっていないと思っているし、僕はこういった内容が大好きです。
生きづらさを感じると同時に、東野作品は安心して楽しめるから好きだな、と改めて思った次第です。
おわりに
東野作品をあらかた読み終えてしまったため、こうして新作を読めることは本当にありがたいです。
本書は映像化がしやすそうなので、映画化されたらぜひ見たいところです。
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