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『スタープレイヤー』あらすじとネタバレ感想!十の願いであなたは何を叶える?

harutoautumn
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路上のくじ引きで一等賞を当て、異世界に飛ばされた斉藤夕月(34歳・無職)。そこで10の願いが叶えられる
「スタープレイヤー」に選ばれ、使途を考えるうち、夕月は自らの暗い欲望や、人の抱える祈りの深さや業を目の当たりにする。
折しも、マキオと名乗るスタープレイヤーの男が訪ねてきて、国家民族間の思惑や争いに否応なく巻き込まれていく。
光と闇、生と死、善と悪、美と醜――無敵の力を手に、比類なき冒険が幕を開ける!
鬼才・恒川光太郎がRPG的興奮と神話世界を融合させ、異世界ファンタジーの地図を塗り替える、未曾有の創世記!

Amazon商品ページより

地球ではない、まるで死後の世界のような何でもありの世界で物語が展開される本書。

冒頭で、この世界のルールが細かく提示されるのですが、しっかり実例を出しながら教えてくれるので、非常にリーダービリティの高い親切設計になっています。

それでいて面白さは損なわれておらず、ただ読みやすい作品では当然終わっていません。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

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あらすじ

籤引き

斎藤夕月は買い物の帰り道、真っ白な男と遭遇します。

男は運命の籤引きだといい、夕月に箱を差し出します。

彼女は怪しいと思いながらも無視できず、つい籤を引き、見事に一等を当てます。

一等はスタープレイヤーでした。

夕月はどんな詐欺だろうと身構えていると、頭の中が白い光で包まれます。

見知らぬ世界

気が付くと、夕月は見渡す限り緑の丘にいました。

白い男に拉致されたのかと思っていると、近くに東屋があり、そこに黒い長方形のものが置いてありました。

そこにはフルムメアなる人物のメッセージが書かれていて、ここが別の惑星であること、夕月に十の願いが叶えられる力が与えられたことなどが分かります。

この情報だけでは何も分かりませんが、夕月には石松というシステム上の案内人がいて、彼が答えられる範囲で色々教えてくれます。

夕月はお試しの願いを叶え、これらが嘘ではなく真実であることを実感します。

他のスタープレイヤー

はじめ、夕月は少しずつ願いの叶え方を覚えていって、スタープレイヤーの活用方法を学んでいきます。

見た目すらも思い通りに変えることができて、地球で明るい将来を失ってしまった夕月にとってここは楽園でした。

しばらくは気ままな時間を過ごし、百日経過したら元の世界に戻ることも可能ということで、それで戻る予定でした。

ところが、ここで夕月の他にも人間がいて、そこにスタープレイヤーも含まれていることが判明します。

少しずつ行動範囲や知識が広がり、夕月はこの世界の奥深さが可能性に気が付いていきますが、それは危険との隣り合わせでもありました。

感想

どこにもない世界

恒川光太郎さんの作品は、どこにもない世界を作り出します。

本書しかり、『滅びの園』しかり、『金色機械』しかり。

現実にあるものをベースにしつつも、どこか違和感が拭えないものが共存していて、それがこの世とは思えない世界と読者に認識させます。

ファンタジーといってしまえば簡単ですが、ファンタジーでは片づけられないその世界の理と活用方法。

毎回世界観は違うのに、恒川さんの作品だと思えるのは、この独特な世界観とそこに潜む不条理ゆえでしょうか。

ここ最近の読書の中でも、僕自身の熱量がかなり高かったです。

素晴らしい設定

本書は設定がとにかく素晴らしいです。

十の願いが叶えられるということで、最初はドラゴンボールの神龍のイメージでした。

ところが、スタープレイヤーによる願いの成就はそんな簡単なものではありません。

願ったものは具体的でなければいけませんが、一つの願いに複数の願いを込めることができます。

本書の冒頭で、夕月が自分の思いつくものを詰め込んだ趣味の悪い庭がその例です。

だからスタープレイヤーの創意工夫次第で、どんなことでもできます。

これが本書の鍵となっていて、読者の予想が及ばない無数の展開に繋がっていました。

夕月をはじめとしたスタープレイヤーが頭を巡らせてどんな願いを叶えるのかを見るのも楽しいですし、彼らが神のような存在になっても、どこまでも人間であることが分かるのも面白いです。

真意

本書中では、結局この世界を生み出したフルムメアの真意は分かりませんでした。

本当に冒頭だけメッセージが出てきて、あとは音沙汰なしです。

僕はこの記事を書いている時点で、本書の続編である『ヘブンメイカー』を読んでいないので、この疑問が続編で解決するのかは分かりません。

しかし、本書だけで終わらせるにはもったいない世界観だったので、まだこの世界が続くことが嬉しくて仕方ありません。

おわりに

何でもありのファンタジーかと思えばそんなことはなく、下敷きには恒川さんらしい自由な発想と理不尽さ、そして強かさがあります。

恒川作品の面白さに改めて気づかされました。

とりあえずは『ヘブンメイカー』を読んで、この興奮をさらに高めたいと思います。

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