『夜の木の下で』ネタバレ感想!あらすじから結末まで!
また会おうよ。実現しないとわかっていても、言わずにはいられなかった——。病弱な双子の弟と分かち合った唯一の秘密。二人の少女が燃える炎を眺めながら話した将来の夢。いじめられっ子からのケットウジョウを受け取った柔道部員の決断。会ったこともない少年少女のなかに、子供の頃の自分が蘇る、奇跡のような読書体験。過ぎ去ってしまった時間をあざやかに瑞々しく描く、珠玉の作品集。
「BOOK」データベースより
この作品は、表題含む六つの短編で構成されていて、過去の回想を通して登場人物の心情が語られていく、というスタイルです。
決して明るい話ではない
過去の回想が中心なんですが、思春期特有の悩みが鮮明に描かれ、人の死が絡んでくることも少なくありません。
しかし、複雑な暗い事情が混じり合う中で、一筋の光が差し込み、登場人物たちを導いていく。
それがあるからこそ、読み終わると不思議な読了感に襲われます。
ぜひ、読んで実感してください。
読者自身の過去を受け入れる
誰もが少年少女の頃に感じていた独特の雰囲気が鮮やかに描かれていて、それを今も感じているように瑞々しく描くことの出来る湯本さんが、素直に羨ましかったです。
今ならそんなこと、と鼻で笑ってしまうような些細なことでも、あの頃の自分からしたら大げさでなく死活問題で、何度も早く大人になりたいと思っていました。
でも、あの頃の悩みながらも若さを持て余していた自分は、今の自分のどこかにまだいて、文章を目で追う内に息を吹き返していくのが分かりました。
あの頃はもう嫌だと蓋をした記憶も、今思い返してみると甘い感傷の1ページというか、とても良い経験をしたんだな、と感謝すら覚えました。
多分、年老いた気でいても、まだ僕は人生を通して見たらまだまだ若造で、これから失っていくものも、きっとたくさんあるのでしょう。
だから今は苦しくても、その苦しみを自分なりに悩み、後で懐かしめるように頑張りたいと思います。
十代の出来事は人生を決めない
十代の方が本書を手にしたとしたら、まだこの回想のような状況にいるのかもしれません。
でも、安心してください。良くも悪くも、十代の悲しみや不幸はあなたの人生を決めません。
だから、今は自分の思うように生きてください。
その経験は、これからの素敵なあなたを形づくっていくはずです。
少なくとも、僕は本書に出会って、過去の自分を認めることができました。
青春は、成功しても失敗しても青春なんです。
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