『代表取締役アイドル』あらすじとネタバレ感想!地下アイドルが取締役になって会社を改革?
会社というワンダーランドに迷い込んだアイドルに襲い掛かる不条理の数々!
……あなたにバカと戦う覚悟はありますか?握手会で起こった事件のせいで、アイドル活動ができなくなっていた河野ささら。
Amazon商品ページより
そこに降って湧いたのが、ある大企業からの社外取締役のオファー。
たまたまテレビを見ていた社長が、ちょっと気の利いた発言をしたささらを気に入って、思いついた起用だった。
その企業、レトロフューチュリア株式会社は、アンプ用の真空管や、テープレコーダーやカセットテープやビデオテープ用の磁気ヘッド、計算尺や手回し計算機の交換部品といった古い規格の製品の隙間産業で儲けていたが、ある大学で、学生が面白半分にレトロフューチュリア社製の真空管を極低温に冷やしたところ、それが量子ゲートとして作用することが発見され、原理はわからないが、とにかくレトロフューチュリア社製の真空管を使えば、今までより桁違いに安く、量子コンピュータが実現できると、この一点において、いっきに世界規模の大企業となった会社。
「目指せ、世界一」や「売上1兆円」というあり得ない目標も、イエスマンだらけの役員会では、社長の一声で決まってしまい、研究所では、データ改ざんは当たり前、逆らった社員には陰湿ないじめが待っている……。
そんな会社で、お飾りにでなく、自分の頭で考えようとするささら。
敏腕美人秘書・菜々美とともに、ダメ会社の危機をささらは救えるのか!?
笑っている場合ではない、本当は怖い企業小説!
解説・澤島優子
小林泰三さんというと、常識の通じない奇作ともいうべきホラーが真っ先に思いつきますが、本書はなんとコメディです。
しかも主人公は元地下アイドルで、現取締役。
その設定で小林さんならではのブラックユーモアが詰まっているので、もう面白くないわけがありません。
本書に関する小林さんへのインタビューはこちら。
<小林泰三インタビュー>会社という不思議の国に迷い込んだアイドルの奮闘記|本の話
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
謎のオファー
河野ささらはハリキリ・セブンティーンという地下アイドルグループに所属していましたが、ある日、握手会に参加したファンが引き起こした事件によってアイドル活動が絶望的になります。
そんな時、マネージャーの基橋から連絡が入り、新しい仕事が入ります。
それは、会社の取締役になるというものでした。
これだけでも地下アイドルに舞い込む仕事ではありませんが、驚くのはここから。
仕事を依頼してきたのは、レトロフューチュリアという大企業で、ささらに提示された年俸は一億円でした。
無茶な命令
ささらを取締役に任命したのは社長の石垣忠則で、理由は彼女の若い感性を必要としてのことでした。
しかし、ささらには経営経験などあるはずもなく、会社の業績を上げるための案が出せるはずがありません。
忠則は社長の座を息子の忠介に譲り、忠介がまともならまだ何とかなりました。
ところが彼もまたまともな感性を持っていません。
ささらが言われるがままに出した案を鵜呑みにして、レトロフューチュリア社は売上十倍という地獄のようなプランを全社的に提示するのでした。
崩壊のカウントダウン
売上十倍にしようとして、できるはずがありません。
しかし、社員はできなければどんな処遇でも甘んじて受けると署名させられているため、拒否権などはじめからありません。
そうすると、残された手は不正のみ。
こうしてレトロフューチュリア社は一気に崩壊に向けて動き出し、ささらもまたこの波に飲まれていきます。
感想
面白い設定
会社の取締役や社長。
多くの人が一度は憧れる絶対的な立ち位置ではないでしょうか。
それに、経営経験ゼロの地下アイドルが突然就任する。
しかも就任した会社が一族経営で、業績とは裏腹に危ないところだった。
もうこの設定だけで面白すぎます。
ちょっとでも気を抜けば、こんな設定はありえないと現実に戻ってしまいそうですが、そこは小林さん。
冗談のようで本気の意味不明な掛け合い。
これによってまるで異次元に迷い込んだような没入感が生まれ、読者は最初から最後までこのありえない設定を楽しむことができるようになっています。
このあたりはさすが小林さんという感じで、今更ながら惜しい人を亡くしたのだとちょっと気持ちが暗くなったりもしました。
ブラックユーモアはそれなり
小林さんといえば笑えそうで笑えないブラックユーモアが特徴ですが、本書にもそのエッセンスが入っています。
レトロフューチュリア社の面々は誰もかれもがいい年をして、論理が完全に破綻した主張をなんとためらいもなく発します。
しかもそれを理解できない相手を罵倒するしか能がないので、ささらでなくとも頭が痛くなって当然です。
この経営陣の異常さと、ささらの常識ぶりの対比。
これがうまく機能していて、面白かったです。
一方で、『アリス殺し』などで見られるような行き過ぎなほどのブラックさはありません。
これをちょうど良いととるか、物足りないととるかは人によるかもしれません。
僕はラストの爽やかさが好きで、ちょうどよい塩梅だったのではと思っています。
おわりに
お仕事コメディを小林さんが描いたらどうなるのか。
そのありそうでなかった組み合わせがうまくかみ合って、また新しい面白さを提供してくれた作品でした。
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