『孤狼の血』あらすじとネタバレ感想!正義を問う圧倒的な警察小説
昭和63年、広島。所轄署の捜査二課に配属された新人の日岡は、ヤクザとの癒着を噂される刑事・大上とコンビを組むことに。飢えた狼のごとく強引に違法捜査を繰り返す大上に戸惑いながらも、日岡は仁義なき極道の男たちに挑んでいく。やがて金融会社社員失踪事件を皮切りに、暴力団同士の抗争が勃発。衝突を食い止めるため、大上が思いも寄らない大胆な秘策を打ち出すが…。正義とは何か。血湧き肉躍る、男たちの闘いがはじまる。
「BOOK」データベースより
警察小説は専門的な用語や世界観がたくさんあり、執筆することが容易でないことは読んでいるだけで分かります。
しかし、柚月裕子さんは女性でありながら男性社会の象徴のような警察、ヤクザの世界を見事に描いてくれました。
映画では本書とは違う魅力が描かれていて、どちらも必見です。
映画化に対する柚月裕子さんへのインタビューはこちら。
映画『孤狼の血』原作者・柚月裕子インタビュー「四拍子揃ったすごい映画になると確信」
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
規格外の男
日岡秀一は広島にある呉原東署の捜査二課に赴任し、暴力団係に配属となります。
遣り甲斐のある仕事に意気込む日岡でしたが、コンビを組むことになった上司の大上章吾は警察官とは思えない男でした。
赴任初日、日岡にわざとヤクザに因縁をつけさせ、弱みを握って情報を仕入れることから始まり、その後も違法行為のオンパレード。
日岡ははじめ大上のやり方に反発を覚えますが、次第に彼のことを信頼するようになり、舎弟のような関係にまでなります。
一方、大上は日岡に厳しく当たりますが、それは期待の裏返しでした。
また大上の息子は一歳の時に妻もろとも事故で亡くなっていて、名前を秀一といいました。
名前が同じということもあり、大上は日岡に期待を寄せていました。
小さな火種
加古村組が経営に関与する呉原金融の経理・上早稲(うえさわ)が三か月もの間行方不明になっていて、捜索願が出されていました。
加古村組は上早稲を必死になって探していることから、何かトラブルになっていることは間違いありません。
一方、尾谷組の組長・尾谷は殺人罪の共謀共同正犯の罪で刑務所に服役していますが、もうすぐ出てくるところでした。
呉原最大の暴力団である五十子会は傘下の加古村組を使って尾谷が出てくる前に決着をつけようと尾谷組のシマを荒らし、尾谷組は若頭の一ノ瀬が中心となってそれに対抗していました。
大上は尾谷組と警察官・ヤクザという立場を超えたところまで入れ込んでいて、次第にこの争いに巻き込まれていきます。
しかし、これらは本当の事件の小さな火種に過ぎませんでした。
絶体絶命
大上の鬼気迫る捜査によって、上早稲がすでに殺害されていることが判明。
死体も見つかり、加古村組を芋づる式で逮捕できる準備が整ったかのように思えました。
ところがこの時、尾谷組が五十子会の幹部・吉原が撃たれてしまいます。
これによって両組は止められない状態にまで熱くなり、全面戦争がいつ起きても不思議ではありません。
おまけに戦争を止められるかもしれない唯一の人物である大上は、何者かによってこれまでの違法行為を通報され、自宅謹慎を余儀なくされます。
大上不在の中、日岡は必死に自分にできることをしますが、時間は容赦なく過ぎていきます。
大上はそれらの報告を聞き、覚悟を決めて行動を開始するのですが、本書には誰も思いつかないような大きな事件が隠されていました。
感想
とてつもない熱量
本書を読んで圧倒されました。
他の作品を寄せ付けない圧倒的な熱量を秘めていて、もう最初から最後まで目が離せませんでした。
警察やヤクザを題材にすると、その世界特有の言葉、ルールが膨大にあり、それを覚えて小説に組み込むだけでも大変だとすぐに分かります。
しかし、柚月さんはその膨大な情報を吸収し、自分の武器として時に巧みに、時に真っすぐ使って読者を魅了してくれました。
ジャンル関係なく、こんなに面白い小説があったのかと読んでいる途中に何度思ったことか。
警察とヤクザの複雑な関係ゆえに違反行為のオンパレードで、暴力的な言葉、行動も数多く登場します。
過激なシーンが苦手という人にとって、本書は刺激が強すぎるかもしれません。
しかし、これを読まないなんてもったいない、と思ってしまうのも事実で、それだけの圧倒的なものを本書は持っています。
ギラついた魅力
柚月さんの作品を読んでいて、おじさんを描かせたら右に出る者はいないとずっと思っていました。
それくらい仕草や言動、態度に独特の嫌らしさがあり、同時にカッコ良くもありました。
本書は警察官、そしてヤクザが物語の中心なので、どうしても男性が多く登場します。
男性だけでも何十人と登場しますが、それぞれに個性的な性格、心情があり、特に主人公コンビの大上と日岡は別格です。
細かいこと抜きに彼らがカッコ良いから本書が面白い、と言い切ってしまってもいいかもしれません。
しかし、もちろんそれだけではありません。
主に男性を支える側の女性もかなり魅力的に描かれていて、特に志乃の女将である晶子は
大上や日岡に負けず劣らずカッコ良いです。
自分なりに分析すると、柚月さんの描く人物は誰もが自分の軸を持ち、ぶれないところにカッコ良さがあるのかもしれないと感じました。
正義とは何か
本書を読むと、正義とは何かと考えずにはいられません。
世間一般からすれば、警察は正義の象徴で、常に正しい行いをしているように見えます。
しかし、彼らも一人の人間であり、間違えを起こすことだってあるし、生きるために分かっていても悪事に手を染めることもあります。
一方で、ヤクザ=悪と認識する人が多いと思いますが、彼らの人情は厚く、忠誠を誓った人のために尽くす姿は素直にカッコ良いです。
そして、警察とヤクザは表裏一体の関係にあり、お互いに利益を得るために話を合わせることもあります。
正義は本当に警察にあるのか。
そもそも絶対的な正義など存在するのか。
この葛藤は日岡が常に持っているもので、僕もそのことをずっと考えながら読んでいました。
答えがないからこそ、それぞれが己の信念に従って決めるしかないのかもしれません。
おわりに
事件が芋づるのように繋がり、とても全貌が見えてこない複雑な構成。
命を懸けた人たちの覚悟。
一瞬たりとも飽きない、最高の読書時間でした。
絶対に面白いから読んでほしい。
そう誰かに勧めたいと思ったのは本当に久しぶりで、本書に出会えたことに感謝しています。
次の話はこちら。
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