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今邑彩『よもつひらさか』あらすじとネタバレ感想!テイストは違うけれど統一感のある全12篇のホラー短編集

harutoautumn
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現世から冥界へ下っていく道を、古事記では“黄泉比良坂”と呼ぶ―。なだらかな坂を行く私に、登山姿の青年が声をかけてきた。ちょうど立ちくらみをおぼえた私は、青年の差し出すなまぬるい水を飲み干し…。一人でこの坂を歩いていると、死者に会うことがあるという不気味な言い伝えを描く表題作ほか、戦慄と恐怖の異世界を繊細に紡ぎ出す全12篇のホラー短編集。

「BOOK」データベースより

ホラーのオススメ作品を探すとまずランクインしている本書。

僕は『よもつひらさか(黄泉平坂)』というタイトルからして惹かれて読んだのですが、ホラーというジャンルで括ってしまうにはもったいないと思う短編集でした。

軸にホラーがありますが、短編によっては奇妙な後味だったりミステリ色の方が強い作品もありますので、12篇の中からお好みの話を見つけてもらえればと思います。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

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あらすじ

見知らぬあなた

私の住むマンションの近くの公園でバラバラ死体が見つかります。

頭はなく身元不明ですが、左太ももに古い火傷の跡が見つかっており、私の脳裏に元夫が思い浮かびます。

元夫と連絡がつかず不安に思っていると、学生時代から匿名でずっと文通をしていた相手から手紙が届きます。

そこには犯行をほのめかすような文章が書かれており、私は文通相手が元夫を殺害したのではと疑います。

被害者は本当に元夫なのか。

文通相手が犯人なのか。そもそも誰なのか。

過去と現代が描かれ、やがて私は一つの真実に辿り着きます。

ささやく鏡

私は亡くなった祖母から円形の和鏡を受け継ぎます。

和鏡は主人である私の未来の姿を映す鏡で、恐ろしい鏡だと祖母に忠告されていたにも関わらず、私は事あるごとに鏡で未来の自分を知り、それに従って人生を歩んでいきます。

素晴らしい鏡ではないか。

私はそう思っていましたが、やがて祖母の言っていたことの本当の意味を知るのでした。

茉莉花

女流作家・添田康子のもとに文泉社の吉川が訪ね、仕事の打ち合わせをします。

プロフィールを確認する段階で添田の本名が『添田茉莉花(まりか)』であることが判明し、吉川はその名前についてやたら聞いてきます。

添田はさすがにおかしいと感じ文泉社に電話をすると、目の前にいるはずの吉川本人が電話に出ました。

では、目の前にいるこの女性は誰なのか。

恐怖を覚える添田に対して、女性は真実を語り出すのでした。

時を重ねて

探偵業を営む私は大学時代の友人・小泉の依頼で彼の妻・美砂子の浮気調査をします。

美沙子は一泊の旅行に一人で出掛けますが、持っている電車の切符は二枚。

浮気相手と一緒というのが妥当なところですが、尾行すると美砂子は一人で、隣は最後まで空席でした。

それだけでなく美砂子は見知らぬ人に声を掛け、電車やカフェラウンジの席をわざわざ代わってもらったのです。

美砂子は最後まで一人で浮気をしている気配はなく、私が判断に困っていると後日、美砂子が事務所を訪れました。

彼女は私の尾行に気が付いており、あの旅行の本当の意味を打ち明けるのでした。

ハーフ・アンド・ハーフ

真由子は癌で亡くなる直前の父親を安心させるため、浮気をお互いに許すという条件で辰彦と結婚。

現に真由子には同性の恋人がおり、辰彦も公認で遊べると喜んでいました。

しかし、真由子の雑貨店の店員・妙実と恋仲になってしまい、真由子と離婚することを決意。

真由子も辰彦に執着はなかったので離婚することにしますが、お互いの財産を折半することに異常にこだわる節があり、それは辰彦の想像を遥かに上回るものでした。

双頭の影

とある店に『双頭の影』と呼ばれる話が高額で売られていて、私は好奇心を抑えられずに購入します。

すると店の主人は『双頭の影』について話を始めます。

この話は主人が温泉宿で出会った人から聞いた話で、その人の生まれた寺の天井には人間の形をした黒い染みがあったのだといいます。

しかし頭が二つ、腕が三つ、足が四つある化物の姿をしていました。

話の中で『双頭の影』の正体は判明するのですが、本当の恐怖はその後に待っていました。

家に着くまで

私はタクシーに乗り込み、運転手と女性キャスターが殺害された事件についてお互いの持論を披露することになりました。

しかし、車内には次第に不穏な空気が立ち込めるようになり、最後にその理由が判明します。

口は災いのもと、がぴったりの短編です。

夢の中へ……

少年は現実に絶望し、夢の中へ行こうと夜の学校のプールに飛び込みます。

しかし死ぬことも昏睡状態になることもなく、三日後に少年は目を覚ましました。

それ以降、少年の気持ちを知った周囲の人間は少年への誤解を解き、現実は地獄ではなくなりました。

少年はそのまま大人になり、平凡なりに幸せな人生を歩むことになりますが、物語はまだ終わっていませんでした。

穴二つ

樋渡は既婚でありながら掲示板で若い女性のメールフレンドを募集します。

しかし圧倒的に少ない女性から簡単にメールをもらえるはずもなく、樋渡は女性のふりをすることにします。

するとミドリという女性からメールがきて、二人はメールで連絡を取り合うようになります。

やがて会いたいという気持ちが募った頃、ミドリは会えないといって自分が男であることをカミングアウト。

これで二人の交流は終わるはずでしたが、相手の男は樋渡の想像を絶するような人間でした。

遠い窓

まり子は房総半島のはずれにある古い木造の洋館に引っ越し、一目で気に入ります。

洋館にはかつてそこで暮らしていた画家の残した絵が壁に掛けられていましたが、ある日、まり子は絵が前見た時と違っていることに気が付きます。

描かれたアパートの窓。

前は鎧戸がしまっていたはずなのに、今は一つだけ開いていたのです。

他にも変化はあり、それが影響してかまり子は夢で描かれたアパートに入り、そこであの画家と会うようになりました。

事故で両足を失った悲しみ、妻を亡くした夫の恋人の疎ましさを抱えるまり子にとって、唯一の癒しの時間でした。

しかしある日以降、絵は一番最初の状態に戻ってしまい、夢を見ることができなくなってしまいます。

まり子は父親が何かしたのだと思い込みますが、最後にこれまでの話を大きく覆す事実が判明します。

生まれ変わり

私はコンビニで偶然出会った女性・佐々木悦子に運命を感じます。

彼女こそが大好きだった今は亡き叔母・貴子の生まれ変わりだと信じて疑いません。

私は早速悦子のことを調べますが、彼女にはすでに婚約者がいました。

彼女と結婚するのは私だ。

私は自分の狂気じみた考えを疑うことはなく、悦子と結婚するためにあらゆる手を尽くします。

しかし、私の狂気は読者の想像を超えるものでした。

よもつひらさか

私は駆け落ちをして家を出た娘から久しぶりに連絡をもらい、孫の姿を見に娘の家に向かいます。

道中、青年と偶然会い、向かう方向が一緒ということで同行します。

二人が上る坂は『よもつひらさか(黄泉平坂)』と呼ばれ、古事記に登場する黄泉の国へ繋がる坂道と同じ名前でした。

名前だけでなく、この坂で亡者と出会って現世に戻ってこれなかった人がいるという噂もあります。

私は青年の話を真剣には受け止めていませんでしたが、やがて違和感を抱き、その正体に気が付いた時、絶望に襲われるのでした。

感想

短さを感じさせない濃厚な時間

12篇も収録されているので、一つの短編は三十ページほどしかありません。

普通の長編であれば設定の紹介程度であっという間に消化してしまいそうなボリュームです。

しかし、本書の短編はどれもこの短い文章の中で読者に状況を伝え、衝撃的な結末を突きつけてきます。

それが12篇もあるのですから、それはもう濃厚な読書時間でした。

ホラーだけが魅力ではない

本書はジャンルとしてホラーに分類されますが、決してホラーだけが魅力ではありません。

目を逸らせない恐怖が魅力であることは確かですが、短編によってはミステリ要素が強いものもあるし、奇妙な読了感に襲われるものもありました。

12篇もホラーだけを読むと飽きがきそうですが、本書はそうなりません。

ホラーを目的に読んだ人は戸惑ったり不服を覚えるかもしれませんが、根底にはちゃんとホラーがありますので、ぜひこの機会に色々なテイストの短編を楽しんでもらえればと思います。

あっさりし過ぎているものもある

一冊の小説として非常に面白く、ぜひ読んでほしい作品ですが、さすがに短編が12篇もありますので多少のクオリティの差や好みの違いが出てきます。

個人的に『ハーフ・アンド・ハーフ』や『家に着くまで』、『よもつひらさか』は迫りくる緊迫感が好きでした。

『遠い窓』も疑心暗鬼な状態からのどんでん返しは見応えがありました。

一方で『時を重ねて』、『夢の中へ……』は結末があっさりしていて、面白みに欠けると思いました。

ミステリ的な楽しみ方など別の方向に振り切っていれば別ですが、いまいち楽しみ方が分からないテイストというか、楽しみ所がよく分からないというのがしっくりきます。

テイストを変えた12篇ですので、好みが人によって分かれるのは当然です。

あまり気負いせず、自分に合った作品を全力で楽しみ、合わない作品は読み流すのも正解だと思います。

こういうことが出来るのも短編集の醍醐味です。

おわりに

純粋なホラーではないところに本書の魅力があり、怖いだけで終わらない読了感は定期的に読み返したいと思わせてくれました。

ぜひ結末を想像しながら読んでみてください。

当たっても予想以上の驚きが待っていることもありますし、違った時の意表を突かれた恐怖は何度も体験してもたまりません。

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