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『百合小説コレクション wiz』あらすじとネタバレ感想!珠玉の百合アンソロジー

harutoautumn
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実力派作家の書き下ろしと「百合文芸小説コンテスト」発の新鋭が競演する、珠玉のアンソロジー。百合小説の〈今〉がここにある。

【収録作品(著者名五十音順)】

・アサウラ 「悪い奴」
・小野繙  「あの日、私たちはバスに乗った」
・櫛木理宇 「パンと蜜月」
・坂崎かおる「嘘つき姫」
・斜線堂有紀「選挙に絶対行きたくない家のソファーで食べて寝て映画観たい」
・南木義隆 「魔術師の恋その他の物語(Love of the bewitcher and other stories.)」
・深緑野分 「運命」
・宮木あや子「エリアンタス・ロバートソン」

◎カバー装画=めばち
◎カバーデザイン=名和田耕平デザイン事務所

Amazon内容紹介より

様々な視点で百合小説が楽しめる本書。

大学生の頃から百合作品に魅了されている僕ですが、まさか小説という大好きな媒体でこんな豪華な作品が読めるのかと、書店で見つけた時は嬉しくなってしまいました。

収録作品は面白いのはもちろんのこと、著者オススメの百合作品も紹介されているので、幅を広げるという点でも楽しめます。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想などを書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

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あらすじ

選挙に絶対行きたくない 家のソファーで食べて寝て映画観たい【斜線堂有紀】

那由他は恵恋のことが好きですが、彼女と付き合っていく中で自分の本音を隠すこともしばしばあります。

その一つが政治で、那由他はまったく興味がありませんが、恵恋は違います。

恵恋は政治的なイベントに参加して、場合によって那由他を誘いますが、その度に彼女はやんわりと断ります。

那由他は恵恋が好きということだけで十分なのに、二人の関係はそう上手くはいきませんでした。

あの日、私たちはバスに乗った【小野繙】

両親が働きに出かけている時間。

十歳のユアは一人で出産していました。

そんな時、クラスメイトの委員長・松浦が彼女をの家を訪れます。

叫び声を聞いて連続殺人犯では?と緊張しながら階段を上がりますが、そこには出産をしているユアがいて、理解不能な展開が続きます。

パンと蜜月【櫛木理宇】

蕗子は夫と伊万里と三人で暮していました。

結婚六年目にして、夫から好きな人ができたから別れてほしいといわれ、紹介されたのが伊万里でした。

蕗子は愛情こそないものの、離婚することに抵抗があることも事実で、夫と手続きの押し付け合いをしていましたが、そこで伊万里から提案されます。

離婚せず、三人で暮せば良いと。

こうして奇妙な生活が始まりました。

エリアンタス・ロバートソン【宮木あや子】

私は自宅でチラシを選別していると、ピアノリサイタルの案内を見つけます。

ピアニストの中にエリアンタス・ロバートソンという名前を見つけ、見覚えがありました。

スラヴ人の血の混じる、少女が思い浮かびます。

その少女は、私のかつての教え子でした。

ここから私の昔話が始まります。

悪いやつ【アサウラ】

木藤は高校生の真紀と会っていました。

真紀が女性のことが好きで、友人の葵に恋していることを話します。

木藤は真紀の話を聞きながら彼女に対してスキンシップをとっていて、二人はSNSで知り合ったことが分かります。

はじめは木藤がまだ大人になっていない少女を良いように扱っているように見えますが、真紀が葵を拉致しようと決心していることが後に分かります。

嘘つき姫【坂崎かおる】

一九四〇年の話。

物語の舞台はフランスのパリです。

第二次世界大戦の宣戦布告がされ、そんな中でわたしと母親は嘘をつきながら暮らしていました。

世の中の嫌なことに対して、母親はいまいち理解ができない、けれどユーモアあふれる嘘でそれを表現していて、わたしはそれを愛していました。

楽でない生活だけれど楽しい気持ちもありましたが、それがずっと続くことはありませんでした。

魔術師の恋その他の物語(Love of the bewitcher and other stories.)【南木義隆】

十七歳の少女・カルミラには好きな人がいて、隣に住む同い年の少女でした。

しかし、そんな二人のやり取りを見付けた人によって、二人は魔女認定されてしまいます。

火あぶりの刑にあいますが、カルミラだけは隙をついて逃げ出します。

好きな人を失って自殺しようとしますが、そこでローブをまとった魔女と出会います。

運命【深緑野分】

繭は気がつくと見知らぬ場所にいて、手にはなぜか油圧カッターが握られています。

学校らしき場所にいて、窓ガラスに映る自分を見ても、自分が誰か分かりません。

屋上に出ると瑠子という女性が待っていて、街並みにある塔を指して、繭があそこに向かわなければならないことを告げるのでした。

感想

様々な愛の形

愛にまつわる小説は数多くあり、恋愛だけにフォーカスしても多いことに変わりありません。

本書では女性同士の同性愛だけを取り上げていますが、収録作どれを読んでも、形がまったく異なります。

男女でもありそうなよくある恋愛ものもあれば、恋愛かどうか分からないけれど親密な距離、自分が当事者ではないけれど距離を置いて何かを願う人。

本当に多種多様で、さらに場面や時代設定も様々なので、百合というテーマで括ってもこれだけ広がりがあるのかと驚きました。

そして、いずれの作品も百合成分多めで、多いし深いです。

深さは尊さに通じていて、性的な部分を抜きにして摂取して純粋に嬉しいものでした。

性的な部分を抜きにしてと書きつつも、このような物語は百合でないと成立しないと思っていて、その辺りが百合作品の面白さかもしれません。

特にオススメ

どの作品も百合として申し分ないのですが、あえて一番を決めるのであれば『魔術師の恋その他の物語(Love of the bewitcher and other stories.)』です。

最初はファンタジーものとして読めますが、カルミラが薔薇子という弟子をとってから、百合もの感が顔を出します。

それも師弟関係という距離感もあって素直でなく、その焦らし方がまたたまりません。

それがあるからこそラストの展開でカタルシスを感じることができ、ここまで耐えてきた読者に百合の雨が降り注ぎます。

尊さや甘酸っぱさ、恋愛がシンプルに良いということ。

この純度が味わえただけでも、本書を読んだ価値があったといえます。

おわりに

百合好きであっても大満足できますし、なんなら百合という世界観をさらに広げる役目すら果たしてくれます。

反響があってから第二弾も出版されていますので、そちらも合わせて読むことを強くオススメします。

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