『やみ窓』あらすじとネタバレ感想!現実に疲れた女性が窓を通じてやり取りする異世界
2年前に結婚し、夫と死別した柚子は昼間はコールセンターのシフト制で働くフリーターだ。義理の母は柚子に息子を殺されたと罵倒する。柚子が味わった地獄は、別の形となって続いていた。それは何の前触れもなく突然やってくる異界のものたちとの闇の取引だ。いつ蹂躙されるともしれない危険と隣り合わせだが、窓の外の哀れな貧しい物の怪たちの来訪を待ちわびる柚子なのであった……。(「やみ窓」)
Amazon商品ページより
月蝕の夜、「かみさん……」土の匂いのする風が吹き、野分の後のように割れた叢に一人の娘が立っていた。訛りがきつく何をしゃべっているか聞き取れないが、柚子を祈り、崇めていることが分かった。ある夜、娘は手織りの素朴な反物を持ってきた。その反物はネットオークションで高額な値が付き……。そんなとき団地で出会った老婦人の千代は、ネットオークションで売り出した布と同じ柄の着物を持っていた のだ。その織物にはある呪われた伝説があった……。(「やみ織」)
ほか、亡き夫の死因が徐々に明らかにされ、夢と現の境界があいまいになっていく眩暈を描いた「やみ児」、そして連作中、唯一異界の者の視点で描いた「祠の灯り」でついに物語は大団円に。色気と湿気のある筆致で細部まで幻想と現実のあわいを描き、地獄という恐怖と快楽に迫った傑作。
篠たまきさんの作品である本書。
窓を通じて異世界の住人とやり取りをするわけですが、それは明確な怪異というわけではありません。
相手は訛りが強く聞き取りにくいですが、ちゃんとコミュニケーションがとれるし、主人公である柚子がイニチアチブを握っている状態のため、怖いという感情は控えめです。
一方で、時おり見せる異世界の住人の凶暴性や、現世でのやり取りから見られる虚脱感など、違った角度から描かれるホラー要素もあります。
怖さもありつつも、僕は全体を通じて流れる切なさが好きで、大満足でした。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
疲れ果てた女性
本書の主人公は、黒崎柚子という女性です。
三十代半ばのフリーターで、夫とは死別。
高齢の独居者ばかりが住む団地に住んでいて、華やかさの欠片もない生活を送っています。
少しずつ語られますが、柚子は夫との生活に小さな違和感をいくつも抱えていて、ある不慮の事故で夫を亡くした際は彼の両親から強く責められます。
特に彼の母親からの追及は今も続いていて、それが柚子を疲労させていました。
ただ生きるためだけに働く無為な生活。
そんな柚子ですが、誰にも言えない秘密を抱えていました。
窓
柚子の家の窓。
それは夜になると、ここではない世界に繋がることがあります。
窓を開けると、そこには人の形をした何者かがいて、持ち寄ったもので柚子に物々交換を申し出てきます。
持ち寄るものは食べ物、そうでもないものと多彩で、来る相手も様々。
ある日から、柚子は彼らが持ってくるものには価値があることを知って、ここで物々交換をしては現世で売りさばいて生活資金に充てていました。
それに対して、窓の外のものたちが要求するのは空のペットボトル。
柚子はまるで神のように振る舞い、彼らと交渉しますがそこには危険もあり、彼女はお金のためだけではなく、それすらも生きがいにしていました。
無為な日々
窓が異世界に繋がるタイミングは、いつなのか柚子には予想できません。
夜になれば繋がりますが、それが何日も連続することもあれば、1ヵ月も繋がらないこともあります。
そのため常に窓の近くで待つ必要があり、柚子は常に寝不足でした。
さらにいつ窓が繋がらなくなるかもしれないため、昼の仕事もやめるわけにはいきません。
柚子は生きるために社会でも懸命に働きますが、周囲の人間が悪いわけではないのに生きづらく、現実よりも現実感のある描写に生々しさと残酷さがあります。
感想
残酷な現実
本書でまず目を引いたのは、現実世界の残酷さです。
今は亡き柚子の夫とのエピソードが語られますが、彼が明確な悪ではないものの、優れてもいないことが明示されています。
柚子のためにしていることが彼女の意向に反しており、取り繕う柚子に対して喜ばせ甲斐がないと言えてしまう。
欠点としてずばり言い当てることは難しいのに、明確に良くない夫であることが分かる描写。
こういう人はいて、モヤモヤが止まらないと、読みながらその再現性に驚いてしまいました。
柚子視点なので彼女に非がないかどうかは分かりませんが、それでもこの現実は辛い。
しかもこれがほんの序の口であることがすぐに分かるので、現実が残酷であることをまず突きつけられます。
ホラーの組み込みが上手い
本書は窓を通じて異世界の住人とやり取りするわけですが、これが色々と面白いです。
価値観も何もかもが違う相手と交渉するわけですから、当然注意が必要です。
相手が要求してくるのが空のペットボトルなので大したものではありませんが、簡単にあげていては相手がつけあがり、さらなる報酬を要求してきます。
おまけに強硬な姿勢を取り過ぎれば相手を怒らせ、襲われたらひとたまりもありません。
柚子は彼らと渡り合うために神のような役割を演じますし、護身も忘れません。
生きるためとは危険が大きいやり取りですが、柚子はいつからかそこに生きがいを見出していて、窓の外が単なる恐怖の対象として描かれていないところが面白かったです。
おわりに
闇の取り引き。
このワードから連想される非合法さは少なく、どこかほの暗い喜びや怒り、切なさなどが印象的でした。
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