SF

『ペンギン・ハイウェイ』徹底ネタバレ解説!あらすじなから結末まで!

ぼくはまだ小学校の四年生だが、もう大人に負けないほどいろいろなことを知っている。毎日きちんとノートを取るし、たくさん本を読むからだ。ある日、ぼくが住む郊外の街に、突然ペンギンたちが現れた。このおかしな事件に歯科医院のお姉さんの不思議な力が関わっていることを知ったぼくは、その謎を研究することにした―。少年が目にする世界は、毎日無限に広がっていく。第31回日本SF大賞受賞作。

【「BOOK」データベースより】

アニメ映画化され、名前だけなら知っている人も多いと思う本書。

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ペンギンが突然現れたことをはじめ、SF要素が魅力の一つですが、それ以上に主人公のアオヤマとお姉さんのやりとりが本当に読んでいて楽しかったです。

賢くても年相応の幼さを持つアオヤマの成長と、それを見守るお姉さん。

正直、盛り上がる物語ではありません。

しかし、森見さんの描くキャラクターは本当に魅力的で、いつまでも読んでいたいと思ってしまいました。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。

タイトルの意味

内容に入る前にタイトルの意味について。

本書の中でアオヤマが説明していますが、ペンギンは海から陸に上がる時に決まったルートを辿り、それを『ペンギン・ハイウェイ』と呼びます

日本ではハイウェイ=高速道路という認識ですが、英語ではハイウェイ=自動車が通行できる公道を指すので、ここでは単純に『ペンギンの道』という意味で考えて良いと思います。

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あらすじ

ペンギンの出現

郊外の街に住む小学生のアオヤマはある日、空き地で大量のペンギンを見つけます。

当然、ペンギンは郊外の住宅地に住んでいるはずもなく、アオヤマは彼らがどこから来たのかを調べ始めます。

その研究は、『ペンギン・ハイウェイ研究』と名付けられました。

一人で調べることもあれば、同じクラスで探検隊を組織するウチダとも調べたりします。

お姉さん

アオヤマには親しくしているお姉さんがいます。

お姉さんは歯科医院で歯科助手をしていて、アオヤマとは海辺のカフェで時々チェスをしたりします。

どこか不思議な魅力がある女性ですが、それを体現する出来事が起こります。

アオヤマの前で、コーラの缶をペンギンに変えてみせたのです。

しかし、その原理についてお姉さんにも分からず、この謎、そして自分の正体について解いてごらんとアオヤマに言うのでした。

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法則

アオヤマは誰にも内緒でお姉さんの謎を解くための研究を始めますが、簡単にはいきません。

お姉さんはいつもペンギンが作れるわけではなく、体調に波があり、元気な時もあれば具合が悪い日もあります。

ペンギンは何も食べなくても活動できるため、アオヤマはその源となるものを『ペンギン・エネルギー』と名付けました。

お姉さんは他にもコウモリ、シロナガスクジラなどを出すことができ、調べれば調べるほど謎は深まるばかりでした。

アオヤマはクラスメイトのハマモトという女子に相談を持ち掛けられます。

彼女は〈海〉を研究していて、アオヤマに助言を求めたのです。

〈海〉はアオヤマが『ジャバウォックの森』と名付けた森の奥にあり、透明な球体で宙に浮かんでいました。

ハマモトのこれまでの調査によって、〈海〉は拡大や縮小を交互に繰り返して直径を変化させることが分かっています。

そして拡大期が進むと『プロミネンス』という現象が起こり、小さな〈海〉が飛び出すのだといいます。

さらなる成果のために、ウチダも含めて三人で研究することになりました。

そして、次第に以下のような新たな事実も分かってきました。

・〈海〉の周りでは光の進み方が歪む

・ペンギンは〈海〉をこわす

・〈海〉を通過すると、過去に戻ることができる

これらのことから、〈海〉には既存の常識が通じないことが分かります。

お姉さんと〈海〉の関係

この二つを観察し続けた結果、意外な関連性が発覚します。

お姉さんの体調の波と〈海〉の拡大と収縮の波は同じ形をしていて、〈海〉の動きの数日後にお姉さんの体調の動きが追いつくように連動していました。

つまり、ペンギンだけでなくお姉さんもまた〈海〉と関係していることになります。

ハマモトはお姉さんが何かを知っていると警戒しますが、アオヤマは変わらずお姉さんを信じるのでした。

新たな問題

ある日、アオヤマはペンギンが、シロナガスクジラに似た、図鑑でも見たことのないような不思議な生物に飲み込まれてしまうところを目撃します。

それからお姉さんが、寝ている間にシロナガスクジラに似た生物=ジャバウォックを生み出していることが判明。

ジャバウォックとは、『鏡のアリス』に登場する架空の生物のことで、姿形が似ていることからそう呼んでいます。

問題が解決しない側から新たな問題がわいてきますが、アオヤマは全てが一つの問題であることに気が付きつつありました。

謎の生物

ある日、クラスのガキ大将であるスズキが見たこともない不思議な生物を捕まえ、学校に持ってきます。

アオヤマたちは見せてもらえませんでしたが、クラスメイトの証言からそれは以前目撃したジャバウォックだということが分かります。

大学の先生たちはこの不思議な話を聞きつけ、調査に乗り出します。

その中にはハマモトのお父さんも含まれていました。

アオヤマたちは自分たちの研究を貫くべく、森に入って〈海〉を観察します。

するとこれまでで一番拡大していて、何かが起こる予感がします。

しかし大人たちに見つかってしまい、二度と入ってはいけないと言い渡されるのでした。

事故

学校で事故の知らせがあります。

ハマモトのお父さん含めて、調査隊のうち五人が行方不明になってしまったのです。

アオヤマたちは先生たちの目を盗んで脱走すると、お姉さんを目指します。

途中で大人たちに捕まってしまい、お姉さんにたどり着いたのはアオヤマだけ。

アオヤマは、自分の考えるお姉さんの正体を明かします。

・お姉さんは人間ではなく、ペンギン・エネルギーで生きている

・ペンギン・エネルギーは〈海〉から放出されている

・〈海〉は世界のやぶけのようなもので、ペンギンはそれを修復できる

・しかし、〈海〉が壊れるとペンギン・エネルギーが減少し、お姉さんの元気がなくなる

・ジャバウォックはペンギンと対立していて、ペンギンを消せば〈海〉は大きくなり、お姉さんは元気になる

・代わりに世界はより壊れていく

お姉さんはこれが正しいのか答えることなく、アオヤマ、大量のペンギンと共に〈海〉に向かい、その中に入ります。

中で調査隊の人たちの無事を確認すると、〈海〉は崩壊するのでした。

結末

海辺のカフェで対面するアオヤマとお姉さん。

結局、お姉さんの正体は謎のままですが、アオヤマはその謎を解いてお姉さに会いに行くことを約束し、お姉さんはいなくなってしまうのでした。

アオヤマはどれだけ長い時間をかけてでもこの謎を解き、お姉さんと結婚することを決めていました。

そして、再び会えた時に話したいことがたくさんありました。

おわりに

ペンギンハイウェイは究極のおねショタだ!なんて言い方もされるので先入観を持たれがちですが、ぜひそういったものを排除して読んでほしいと思いました。

特にアオヤマの成長は目を離せません。

最後も別れて終わり、ではなく、諦めずにまた出会う道を選択しました。

これが叶うのかどうかは読者の考え方次第ですが、余韻も含めて穏やかな楽しさと切なさを味わえた名作でした。

森見さんの他の作品はこちら。