『堕ちる 最恐の書き下ろしアンソロジー』あらすじとネタバレ感想!奈落に堕ちるようなホラー小説
あらゆるホラージャンルにおける最高級の恐怖を詰め込んだ、豪華アンソロジーがついに誕生。宮部みゆき×切ない現代ゴーストストーリー、新名智×読者が結末を見つける体験型ファンタジー。芦花公園×河童が与える3つの試練の結末。内藤了×呪われた家、三津田信三の作家怪談、小池真理子の真髄、恐怖が入り混じる幻想譚。全てが本書のために書き下ろされた完全新作! ホラー小説の醍醐味を味わうなら、まずはここから!
Amazon商品ページより
二冊同時に刊行されたうちの一冊である本書。
ホラーやその他ジャンルで活躍する作家が勢揃いしているので、ホラーファンにはもちろんのこと、ホラーを読んでみたいという人の入門書としても最適になっています。
実力は誰もが認めるところなので、安心して読めます。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
あなたを連れてゆく【宮部みゆき】
十五年前の話。
僕は小学校三年生の夏休み、叔母であるルミのところに預けられます。
親族内で変わり者といわれているルミですが、僕は彼女と、そして彼女の娘であるアキラと次第に仲を深めていきます。
そんなある日の夜、猫が鳴く声で目を覚まし見に行くと、そこにはアキラがいて、不思議なことが起きます。
竜狩人に祝福を【新名智】
ゲームブックのようにワンセクションを読んでは、読者の選択によって話の流れが変わるように構成されています。
はじめはタイトルにあるようなファンタジーに思えましたが、最後の描写でそれが誤りだったことが明らかになります。
月は空洞地球は平面 惑星ニビルのアナンナキ【芦花公園】
僕はおじいちゃんから河童の話を聞きます。
河童というと、一般的に頭にお皿を載せていて全身が緑色をイメージしますが、実際は人間と変わらないのだといいます。
そして彼らに何かに誘われたとしても、絶対に乗ってはいけないと厳しく言われます。
僕はしつこかったので話半分に聞いていましたが、実際に河童に遭遇し、思いがけない事態に巻き込まれていきます。
函【内藤了】
石川哲夫はパチンコでお金を減らし、貧しい生活を送っていました。
ある日、郵便受けに立派な封筒が突き刺さっていて、中にある資料には遺産相続に関することが書かれていました。
石川には小須田清十郎なる祖父がいて、彼の所有する家を相続したいのだといいます。
数億円にのぼる遺産に胸を躍らせる石川ですが、その家が問題でした。
湯の中の顔【三津田信三】
冒頭、創作におけるパクリ問題について書かれ、そこから本編が始まります。
二十年近く前、僕は某出版社の校閲の仕事をしているNからとある話を聞きました。
それはNが叔父から聞いた話で、僕はその体験談が田中貢太郎の短編『竈の中の顔』に似ていることに気が付きます。
Nとの話の中で、体験と該当の作品が入り混じっている懸念があげられましたが、叔父の体験談には現実に起きたようなリアルさがあり、それが明らかにされます。
オンリー・ユーーかけがえのないあなたー【小池真理子】
三十年ほど前、私は司法書士事務所で働いていました。
依頼人が亡くなり、その人が所有するマンションの部屋の点検、物の整理などする必要があり、一人で信越地方にあるそのマンションに向かいます。
ボスに教えてもらった近道を使うと、そこで十数人の人たちが集まっているところに遭遇します。
祭りか新手の新興宗教かと思い、私はあまり関わらないようにしてその場を去り、マンションの管理人に挨拶をして作業に移ります。
管理人の家族の温かさに居心地の良さを覚えた私ですが、帰ってからおかしなことがあったことに気が付きます。
感想
特色あふれる作品集
ホラー好きであれば、ラインナップにある作家の多くを名前だけでも聞いたことがあるのではないでしょうか。
ベテランもいれば、新進気鋭の作家もいて、今のホラーを語る上で外せない面々です。
すでに活躍していることもあり、作品を読んだだけでその作家が書いたことがすぐに分かる内容になっていて、誰にも真似できない唯一無二の作品がずらっと並んでいます。
すでにファンだという人であればその作家らしい作品を堪能できますし、初見という人でも、その良さが響けばその作家さんを深堀していく楽しみができます。
そういった意味でも汎用性が高く、買って間違いなしの一冊です。
超大作とまではいかない
いずれも良作ではありますが、彼らの傑作と比べると、小ぶりな印象は否めません。
面白いのだけれど、読んだ後もその世界観から脱げだせないような強烈さはない、といった感じです。
そういった観点からすると、個人的には小池さんの作品が良かったです。
今までのイヤミスというイメージを覆し、怖さの中に切なさや温かさが込められていて、短い中で作品の良さが詰められていてオススメです。
一方で三津田さんの作品ですが、短編でも前置きが長めで、今回はそれが裏目に出ている印象です。
長編だとそれが面白いので、この辺りも好みが難しなと思いました。
おわりに
近年ホラー界隈が盛り上がってきているので、本書がさらなる起爆剤になってくれると嬉しいです。
そして本書そのものには関係ありませんが、芦花公園や三津田信三という名前を見ただけで買いたくなるので、改めて彼らへの絶対的で一方的な信頼を感じました。
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