『黒猫と歩む白日のラビリンス』あらすじとネタバレ感想!現代アートの謎が詰まった短編集
若き大学教授とその付き人という関係から一歩踏み出し、新たな生活を送り始めた黒猫と私。ある日「本が降ってくる奇妙な夢を繰り返し見る」という女子学生の相談を受けた私は、黒猫と共にその言葉の真意を探り始める。だが、まもなく当の女子学生が詩集に“降られ”昏倒する事件が……巻頭作ほか芸術展への脅迫事件、覆面画家が残した風刺画の真実など、現代アートをめぐる5つの謎に黒猫と付き人が迫る書き下ろし短篇集
Amazon商品ページより
大学教授とその付き人という関係から先に進んだ二人を描く短編集である本書。
進んだからといって甘々な関係になることはありませんが、ちょっとした言動や行動に愛が溢れ、穏やかな気持ちになれます。
また五つの現代アートに関わる謎も興味深いものばかりで、短編集といっても読み応え十分です。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
本が降る
付き人は唐草教授から精神が不安定になっている生徒・久本可乃子の相談に乗ってほしいと頼まれますが、確かに可乃子の様子は変わっていました。
図書館に籠る一方で、図書館に怯えた様子。
学内と学外で変わる服装。
何度も見るおかしな夢。
付き人はその夢の内容に心当たりがあり、それはかつて大学の同級生で詩人として天才と呼ばれた有村乱暮の詩の内容でした。
可乃子は乱暮の詩を読んだことはないといいますが、付き人が詩を読み上げると謎の言葉を残して立ち去ってしまいます。
その後、付き人は図書館で、乱暮の書物に囲まれて倒れている可乃子を見つけて驚きます。
その光景は乱暮の詩の内容そのものでした。
鋏と皮膚
黒猫は珍しく姉・冷花の家を訪ね、いきなり昔話を始めます。
冷花が高校一年生の時、隣の家に住んでいた節子という女性の葬儀が行われ、冷花は虹色の服を着て現れ、陰口を叩かれたことがありました。
反抗期ゆえの行動に思われましたが、それでも不自然さは拭えません。
三日前に節子の夫・シゲヤが亡くなり、その息子・ジュンから冷花に届いた一通の手紙。
このタイミングだからこそ明かせる真実があるのではないのか。
黒猫は過去を紐解き、冷花はついに過去の真実を明かします。
群衆と猥褻
黒猫が芸術監督として参加していた『芸術の不発展』ですが、とある作品の過激さゆえに政府が中止要請を検討する事態になってしまいます。
そんな時、付き人の家を後輩の水守香奈枝が訪れ、しばらく泊めてほしいと強引に押しかけます。
香奈枝こそが問題の作品の作者だったのです。
黒猫の推薦により、同性である付き人が彼女のボディーガードを務めることになりますが、そう簡単にはいきませんでした。
シュラカを探せ
付き人は灰島教授に頼まれ、一緒にS区の区長・宇田のもとに行きます。
S区に覆面アーティスト・シュラカのアートと思われるものが出現しましたが、本当にシュラカのものかどうか判断がつかない状況にありました。
宇田は灰島に本物かどうかを見極めてほしいと依頼されます。
しかし、灰島は本物であると断言した上で依頼を断り、付き人に後を押し付けます。
付き人もつい大見得を切ってしまい、灰島の助力を得ながらシュラカに近づくことになりました。
贋と偽
大学教授であり、画家でもある元木は妻を亡くし、一ヶ月経っても大学に姿を見せません。
このままでは休職届を出すか離職するしかなく、付き人は現状を打破するために黒猫に相談します。
亡き妻の妹・優歌の夫で贋作コレクター・山下蟻宇と黒猫は面識があり、山下主催の『贋作展示会』が予定されていました。
元木が招待されている可能性は高く、その場に行けば元木と接触できる可能性があります。
黒猫にも招待状が届いているため、付き人もついていくことになりますが、そこで思わぬ事態に出くわすことになりました。
感想
関係性の進んだ二人
ベッドで寄り添い、体温を感じ合う二人。
そんなシーンが早々にあり、二人の関係はこんなところまで来たのかと感慨深いものがありました。
もちろん状況を読む力、単純な知識量などは黒猫がまだまだ勝っていて、美学者という点では付き人より先をいっています。
しかし、付き人は美学者としても確実に成長し、黒猫に追いつこうと必死に努力しています。
黒猫も彼女の実力を正しく把握していて、焦らなくても一緒にいてくれる優しさを見せてくれます。
素直な言葉ばかりで表現されない関係だからこそ、お互いに大切にしていることがうかがえ、全体を通して安心して読むことが出来ました。
発展途上の付き人
美学者として成長している付き人ですが、それでも最先端をいく人たちからすれば未熟です。
悔しいと思いつつも、そのこと自体は付き人も認めています。
しかし、そこで彼女は止まりません。
未熟なりに自分の頭を回転させ、自分の感性と知性を最大限に活かして物事を捉え、自分なりに表現します。
本書の中でも付き人の成長が見られ、そのことを評価してくれる人たちがいる。
この関係がとても素敵で、読んでいてこんなに嬉しくなる作品はなかなかないと思います。
シリーズの今後
黒猫シリーズの愛読者である自分にとって、本書は非常に充実した時間を提供してくれました。
しかし、今後の展開について思うところもあります。
黒猫と付き人の関係は次のステージに進み、時には気持ちを言葉にして、時には行動で示して、お互いに必要としていることを伝えています。
日々の変化を恐れずに受け入れて、思い合う時間を大切にしていることは伝わります。
でも、『黒猫』シリーズのゴールはどこにあるのだろうと不安になることがあります。
いつまでも二人の物語を見ていたいのは当然ですが、それは生み出されるべき物語であり、シリーズを延命させるための物語ではありません。
ここまでじれったくなるくらいに丁寧に二人の関係を描いてきましたので、ぜひ有終の美を飾ってもらいたいと今から願ってやみません。
おわりに
関係性の進んだ黒猫と付き人ですが、それが決してゴールではなく、二人は変わり続けます。
関係性もそうですし、美学者としての在り方も変わり続けます。
それが寂しくも楽しくあり、いつまでも読んでいたい愛おしいシリーズだと改めて思えた一冊でした。
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