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『言の葉の庭』小説の徹底ネタバレ解説!あらすじから結末まで!

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また会うかもね。もしかしたら。雨が降ったら―。雨の朝、静かな庭で2人は出会った。靴職人を志す高校生の孝雄と、謎めいた年上の女性・雪野。迷いながらも前に進もうとする2人は、どこへ足を踏み出すのか。圧倒的な支持を受けた劇場アニメーション『言の葉の庭』を、新海誠監督みずから小説化。アニメでは描かれなかった人物やエピソードを多数織り込み、小説版ならではの新たなる作品世界を作り上げた傑作。

【「BOOK」データベースより】

舞台は新宿御苑などが中心で、新海さんの作品ならではの鮮やかな風景を見ることができます。

いつもは少年と少女の触れ合いを描いていますが、今回は少女ではなく大人の女性です。

それゆえに二人の間に温度差があり、それが縮まっていく過程も必見です。

また作中、何度も万葉集の詩が引用され、意味も小説中に書いてありますので、興味を持ちながら古典に触れることができます。

最後に、アニメとは違って細かいディティールまで描かれていますが、物語の本筋にあまり関係のない部分は省略しています。ご了承ください。

この記事では、そんな本書の魅力をあらすじや個人的な感想を交えながら書いていきたいと思います。

ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。

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出会い

物語の主人公は、高校一年の秋月孝雄。

彼は中学一年の時に両親が離婚し、現在は母親と十一歳離れた兄・翔太と三人で暮らしています。

複雑な環境から自分だけが特別可哀そうだと思い込み、好きな人を傷つけ、飲酒したり、学校に行かないこともありました。

そんな彼も高校一年になり、周囲の同級生よりも少しだけ大人になりました。

 

ある雨の日。

孝雄は学校をサボって新宿御苑を訪れます。

彼は靴職人を目指していて、今週末には次の靴の製作に取り掛からないといけない。

そんなことを考えながらいつも雨宿りする東屋に向かうと、スーツを着た女性が先客としていました。

女性はビールを飲んでいて、これが雪野百香里との出会いでした。

二人はL字のベンチに座りますが、言葉は交わさず、孝雄はノートに靴のアイディアを描きます。

孝雄は雪野と会ったことがある気がしていて、雪野は一度否定しますが、すぐに思い当たります。

そう、雪野は孝雄の通う高校で以前まで古典教師として勤めていたのです。

しかし、雪野はそのことをこの場では明かさず、万葉集の収録された一つの和歌を詠み、その場を後にするのでした。

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不思議な交流

次に孝雄が東屋を訪れた時も、先に雪野はいました。

今日も雨が降っています。

好奇心で雪野が話しかけ、交流が生まれます。

孝雄は雨の日の午前中だけサボると決めていて、午後の授業に間に合うように行ってしまいます。

雪野は孝雄の去り際に、雨が降ったらまた会うかもと口にしていました。

その言葉で、自分がまたこの少年と会いたいと望んでいることを雪野は自覚するのでした。

その日、関東地方は梅雨入りしました。

劣等感

映画では全く描かれていない翔太とその彼女・寺本梨花も、小説版ではしっかりと描かれています。

翔太は梨花と同棲する予定ですが、四歳年下の梨花に劣等感を抱いては当たり、うまくいかない自分に嫌気が差していました。

孝雄の視点から見る翔太は嫌な兄ですが、それは嫌っているわけではなく、孝雄への劣等感の現れでした。

そして、孝雄や梨花のことを羨ましく思っていました。

 

ある日、翔太はまたしても気まずいデートをしてしまい、咄嗟に家で飲まないかと提案します。

家には孝雄がいて、孝雄と梨花はすぐに仲良くなります。

そして翔太は、そんな二人を見て自分の気持ちに素直になることができました。

八月の初旬、無事に梨花との同棲の住まいに引っ越し、翔太は夢に向かって進む梨花や孝雄を認められるようになるのでした。

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二人の関係

梅雨入り以降、雨は降り続き、孝雄と雪野は約束もしていないのに何度も新宿御苑の東屋で会います。

雪野はすごい美人なのにどこか人間離れしていて、知らず知らずそんな彼女に惹かれていました。

スーツを着て社会人のような装いなのに、朝の東屋にいる。

不思議で怪しくもありましたが、孝雄はそれを迷惑とは思っていませんでした。

慣れてきたせいか、孝雄は靴職人を目指していることを話します。

それに対して雪野は、励ますのではなくただ微笑んでくれて、それが孝雄の気持ちを軽くしてくれます。

それから雨の日は決まってお弁当を二人分作り、雪野にも渡して一緒に食べました。

こうして二人の奇妙な関係は続き、雪野のことについて深く聞くことはありませんでした。

罪悪感

本書では雪野サイドからも物語が描かれます。

雪野は学校をサボる孝雄と過ごすことに罪悪感を抱きながらも、その時間に甘え、お互いに良くないと思いながらもその時を待ち望んでいました。

雪野と元彼が電話をするシーンがありますが、そこで雪野が味覚障害であること、これまではアルコールとチョコしか味がしなかったのに、孝雄のお弁当も味がすることが判明します。

原因は仕事によるストレスだと思われますが、仕事を辞めた今でもそれは続いています。

正確には病欠扱いで、退職手続きはこれからになります。

雪野は元彼との電話で、自分は嘘つきで、今も嘘をつき続けていることに罪悪感を抱いていました。

 

そんなある日、雪野はお弁当のお礼にと孝雄に靴作りの解説本をプレゼントします。

すると、孝雄は今靴を一足作っていて、雪野の足を見せてくださいとお願いします。

その時間はあまりに完璧で、雪野のこの先の人生を温め続けると確信させるほどでした。

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特別な領域

これは、雪野の元彼である伊藤宗一郎の目線で描かれた物語です。

伊藤は孝雄の通う高校の体育教師で、遅刻が続く孝雄に説教しますが、反省した様子は見られません。

伊藤はルールに厳しい教師で、融通の利かない面がありました。

彼の夢の中で、雪野と孝雄が出てくることがあり、知らず知らずのうちに二人の関係を感じ取っていたのかもしれません。

二人には、他人には明け渡さない特別な領域があるように感じられました。

だから伊藤は孝雄が苦手で、雪野に惹かれたのだといいます。

原因

そして夏休みが明け、退職手続きのために雪野が学校に現れます。

退職届が受理されると共に、雪野がそこに至るまでの経緯が説明されます。

 

当時、雪野が担任をしていたクラスの生徒・相澤祥子は雪野に対して敵意を見せ、次第にクラスを主導して集団で雪野の授業をボイコットしたり、雪野と話す生徒を無視するようになりました。

その結果、クラスのほとんどが雪野に対して敵意を向けることになりました。

雪野は次第に精神的に参っていきますが、伊藤は雪野が解決するべき問題だと手を貸しませんでした。

そのうちに祥子の彼氏が雪野に告白し、雪野が断ったことで祥子のプライドが刺激されたことが判明。

雪野は次第に味覚をなくし、欠勤するようになりましたが、それでも伊藤は手を差し伸べることができませんでした。

 

雪野が退職手続きをして帰った後、孝雄は三年生数人に喧嘩を売り、一方的に殴られるという事態が発生します。

その中には祥子もいました。

祥子のこれまで

本書では祥子のことも描かれます。

彼女は三年の十二月になっても進路が決まらず、伊藤の目には痛々しく映っていました。

祥子は幼い頃から男が苦手で、恋愛とも無縁でした。

ちなみに中学時代、祥子はサヤちん、勅使河原という男子と三人で行動していますが、この二人は『君の名は。』にも登場しています。

しかし、東京の学校に通っていることから、『君の名は。』とは別の世界観であることが推測されます。

祥子はこのままではいけないと思い、中学三年の時メイクやダイエットなどに力をいれ、生まれ変わります。

その結果、今までの冴えない自分が嘘のようにモテるようになり、代わりに三人の時間は減ります。

その後、祥子とサヤちんは同じ高校に進学し、勅使河原は男子校に進学します。

 

高校進学後、祥子は恋に落ちます。

相手は男子ではなく若い古典教師で、それが雪野でした。

決して付き合いたいとかそういった感情ではありませんでしたが、これまで恋をしてこなかった祥子にとって、それは恋に違いありませんでした。

しかし雪野のガードは固く、なかなか仲良くなれません。

そのまま二年生になり、祥子は先輩の牧野に恋をします。

牧野は学校のスターで、祥子の告白から交際がスタート。

そして、二年生の担任は雪野です。

夢のような日々が待っているはずでした。

しかし、牧野が優しいのは表向きだけで、本当は自分本位で祥子を振り回すことに何の抵抗もない最低な性格をしていました。

祥子は嫌われたくないと体調を崩しますが、それでも牧野から離れられません。

牧野に好かれようと必死な祥子ですが、ある日、牧野が雪野に言い寄っているところを目撃してしまいます。

翌日、祥子は牧野にそのことを聞くと、牧野はあっさりと認め、その日以来、メールも電話も返事をしてくれなくなります。

会うのは祥子を抱く時だけ。

そして、やがてそれもなくなりました。

次第に祥子はストーカーのようになり、雪野が牧野の気持ちを奪ってしまったことに気が付きます。

だから祥子は、牧野を好きな気持ちを憎しみに変え、雪野にぶつけるようになったのでした。

それで祥子の気持ちは晴れわたるのでした。

 

こうして祥子は雪野を学校から追い出すことに成功しますが、馬鹿なことをしたことに気が付いています。

そしてあの日、孝雄が祥子の前に現れ、彼女の頬を平手で殴ります。

祥子はそれを罰だと捉えました。

停滞

孝雄は祥子の取り巻きに殴られながら、雪野はなぜ本当のことを黙っていたのかと怒りに震えました。

 

雪野の足に触れたあの日以来、雨は降っていません。

孝雄は雪野の囚われ、しかし東屋に行く口実はありません。

孝雄は停滞します。

それでもうまく歩けなくなってしまった雪野のために、いっぱい歩きたくなるような靴を作るのだと一心不乱に努力をします。

そして二学期の授業初日、学校で雪野を見つけるのでした。

ここではじめて、孝雄は雪野がかつて自分の高校の教師だったことを知ります。

友人たちが雪野の身にあったことを知り、相澤のもとに行き、現在に至ります。

会いたい

ある日、孝雄は新宿御苑に行きますが、そこに雪野はいませんでした。

ホッとしたすぐ後に、孝雄は気が付きます。

本当は雨が降らなくても、雪野に会いたいのだと。

こんな風に終わってはいけない。

そんな風に思っていると、そこに雪野が現れます。

気が付くと孝雄は、万葉集の歌を詠みます。

それは二人が初めて会った日に、雪野が口にした歌の返し歌でした。

久しぶりに話していると、雷が落ち、雨が降り始めます。

ここで雪野は初めて孝雄の名前を知ります。

ずぶ濡れになった孝雄が風邪を引かないようにと、雪野は彼を家に連れて行きます。

孝雄が食事を作り、二人で食べる家族のような幸せな時間。

不安はいつの間にか消え、孝雄は今が一番幸せだと思うのでした。

幸せの終わり

今が一番幸せ。

それは雪野も同じでした。

しかし彼女は、この幸せが長くは続かないことを知っています。

終わりを告げたのは、孝雄でした。

孝雄は雪野が好きだと伝えますが、雪野は自分の気持ちを押し殺しいいます。

来週、四国の実家に引っ越すのだと。

雪野はあの東屋で、一人で歩けるよう練習をしてきました。

そこに孝雄も、孝雄の作る靴も必要ないと。

それを聞いた孝雄は、借りた服を脱いで部屋を出ます。

雪野は、そんな孝雄に怒りを覚えました。

自分は好きだと伝えないのを我慢したのに。

しかし気が付くと、部屋を飛び出していました。

すぐに追いつき、二人は見つめ合います。

救われた

孝雄は、さっきのことは忘れてくださいと雪野にいいます。

あなたのこと、嫌いだと。

孝雄はいくつものひどい言葉を雪野にぶつけますが、そのどれもが本心とは真逆の言葉でした。

堪えきれずに涙を流すと、雪野が抱きしめてくれます。

雪野は毎日、学校に行こうとして、怖くて行けなかったこと、そしてあの場所で孝雄に救われたことを叫び、大声で泣きます。

二人が抱き合う中、雨は夕日に照らされて金色に輝いていました。

結末

孝雄は初めての靴を完成させますが、とても商品として売れるような出来ではありませんでした。

それでも情熱は勢いを増し、靴作りを職業とするためにフィレンツェへの留学を決めます。

それはしたい、という希望ではなく、する必要があるからです。

 

一方、雪野は言葉通り、四国に戻り、今は小さな島の高校で古典教師をしていました。

そして四年半ぶりに東京を訪れ、あの場所に向かいます。

そして孝雄も、フィレンツェでの二年を経て日本に帰国。

雪野にはいてもらうためのパンプスを持ってあの場所に向かいます。

そこには、泣き出しそうに緊張した雪野が待っていました。

雪野は孝雄を見つけるとゆっくりと笑顔になります。

それはまるで雨がやむみたいだと孝雄は思うのでした。

最後に

僕はアニメも小説も見ましたが、小説はアニメで描かれていない細部までしっかりと描かれていて、映像美とは違った美しさがそこにはありました。

どちらも甲乙つけがたいので、絞らずにぜひどちらも楽しんでください。

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新海誠さんの他の作品はこちら。

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