『骨灰』あらすじとネタバレ感想!灰がもたらす異常現象の正体とは?
大手デベロッパーのIR部で勤務する松永光弘は、自社の高層ビルの建設現場の地下へ調査に向かっていた。目的は、その現場について『火が出た』『いるだけで病気になる』『人骨が出た』というツイートの真偽を確かめること。異常な乾燥と、嫌な臭い――人が骨まで灰になる臭い――を感じながら調査を進めると、図面に記されていない、巨大な穴のある謎の祭祀場にたどり着く。穴の中には男が鎖でつながれていた。数々の異常な現象に見舞われ、パニックに陥りながらも男を解放し、地上に戻った光弘だったが、それは自らと家族を襲う更なる恐怖の入り口に過ぎなかった。
Amazon商品ページより
東京都内で繰り広げられるホラーである本書。
骨の灰と書いて『こっぱい』と読みますが、この骨灰がどこまでもつきまとい、登場人物たちを狂わせていきます。
拡大を続ける狂気の中で、事態解決に向けて登場人物たちが奮闘します。
直木賞候補作家インタビュー「東京の土の中に潜む禍いの真相」――『骨灰』(冲方丁)|本の話
この記事では、本書のあらすじや感想などを書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
調査
松永光弘は渋谷駅の再開発に携わる企業のIR部に所属していて、投資家の動向に悪影響を与える恐れのある事象に対して、日々対処に当たっていました。
ある日、ツイッターで渋谷駅の東側に建設中の建物に関するつぶやきが投稿されます。
そこには施工ミス、病気、有害という穏やかでない単語に、それぞれ写真が添付されていました。
写真だけではその文言が本当であると判断できないようなものでしたが、放っておけば増長し、いつ投資家に悪影響を及ぼすか分かりません。
松永は一人、東棟と呼ばれる建物の地下に降り、写真の場所を探します。
異常
写真の場所を一つずつ特定し、問題がないことを確認していきます。
このまま完了できるかと思った矢先、松永は違和感を抱きます。
異常に乾く喉。
『鎭』という謎の文字。
床に降り積もる灰。
さらに下に降りると、まるで火を焚いているかのようにひりつき、何かがおかしいことは明らかでした。
謎の人物
松永はこれ以上の調査に限界を感じ、出ようとすると、出口が見当たらないことに気が付きます。
パニックに陥る中で、神棚が置かれた祭壇にたどり着きます。
そこでは空気が澄み、辺りとは明らかに異なっていました。
この神棚がこの異様な空気を遠ざけている?
松永の理解が追い付かない中、そこには穴があって、中に鎖に繋がれた男を見つけます。
見た目だけであれば浮浪者が住みついたように見えますが、鎖がある以上、何者かによって繋ぎ止められているのは明白でした。
松永は男を助けようと穴に降りますが、これがさらなる異常事態への引き金となります。
感想
日常と非日常の曖昧さ
本書は渋谷駅を中心に、怪異とは縁の遠そうな、人気の多い場所が舞台になっています。
しかし、ちょっと場所をずらすだけで、都心でも怪異は潜む場所がある。
これがまず怖いなと思いました。
さっきまで喧騒に包まれていていたのに、気が付けば怪異に見舞われている。
この日常と非日常の曖昧さが本書の特徴の一つだと考えます。
物語が進むと骨灰は自宅まで侵食し、どこにも逃げ場がなくなるほど拡大します。
逃げたくても、どこにも逃げ場のない恐怖。
ぜひ堪能してほしいポイントです。
冗長な部分もある
基本的に設定や構成は面白いのですが、欠点をあげるとすれば冗長な部分があることです。
骨灰によって異常になっていく様を丁寧に描いていくわけですが、これがややしつこいです。
減らしても物語の展開に影響がない上に、あったところですごく面白くなったのかというと、なんともいえないところ。
さらに伏線のような描写、設定が登場するわけですが、最後まで読んでもそれが特に活きてこないケースも多く、勝手に期待して勝手に残念に思うということが何度もありました。
本書の内容であれば、百ページくらい減らしてもちょうど良かったのではないか。
この辺りは人によって賛否が分かれるかもしれません。
おわりに
冒頭から惹きつけられる、新しいホラーでした。
日常にも、実は怖いことって潜んでいる。
そんな体験をしてみたい人は、ぜひ本書に挑戦してみてください。
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