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『恐怖小説キリカ』あらすじとネタバレ感想!現実と恐怖が入り混じるホラー小説

harutoautumn
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恐怖、また来る。デビュー作(日本ホラー小説大賞『ぼぎわんが、来る』)、戦慄の舞台裏。ああ最愛の妻までも……大きな文学賞を総ナメにしている錚々たる作家たちが選考委員を務める新人文学賞を獲得した「僕」。隣には最愛の妻・キリカ。作家デビューは順風満帆かと思われたが、友人が作品を曲解して、「作家とは人格破綻者である」「作家は不幸であるべき」と一方的な妄想を僕に押し付け、執拗な嫌がらせをはじめる。しかしその結果、僕は妻のとんでもない秘密を隠し切れなくなり……これぞ最恐のサイコ・ホラー!

Amazon商品ページより

澤村伊智さん自身が主人公を務める本書。

もちろんフィクションではありますが、時折、現実と創作の境界が曖昧になるような感覚があり、読み進めるごとに本書の虜になってしまいました。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

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あらすじ

受賞

香川隼樹はKADOKAWAが開催する第二十二回日本ホラー小説大賞に『ぼぎわん』という作品を応募し、見事大賞に選ばれます。

もちろん隼樹は喜びますが、それ以上に喜んでくれたのが妻の霧香でした。

お世話になった人や友人たちにもそのことを報告し、専業というわけではありませんが、プロの小説家としての第一歩を歩み出します。

打ち合わせ

KADOKAWAの内場という女性が隼樹の担当者となり、出版に向けての作業が始まります。

まずはペンネームの変更。

長く使える名前が良いということで、ペンネームを『澤村伊智』に改めます。

内容はおおむね問題ないものの、リアリティについて指摘があり、改稿の作業も進めます。

そんな時、隼樹は友人の梶尾からフェイスブックのアドレスを教えられ、それを見るよう言われます。

友人の誤解

教えられたアドレスは、同じく友人の副島のもので、そこには隼樹や彼のぼぎわんについて書かれていました。

隼樹は敗残者で不適合者であること。

ぼぎわんには離婚した隼樹の元妻への憎しみが込められていて、それは副島の感想ではなく事実であること。

どれも副島の誤解で、ほとんどが嘘といって差し支えない内容でした。

隼樹は憤る霧香をなだめつつも、嫌な予感を覚えていました。

悪化

後日、隼樹は実際のところを副島に聞くと、彼は悪びれるどころか自分のしたことを自慢しているようでした。

さらに隼樹がぼぎわんを書けたのは離婚という不幸を味わったからで、離婚した妻を紹介したのは自分だから、隼樹をプロデュースしたのは自分だと。

明らかな誇大妄想にもかかわらず、副島はそう信じて疑いませんでした。

もはや隼樹がやめるよう説得できる段階ではなく、最終的に二人は決裂して険悪になりますが、そこから副島の行動はエスカレートし、恐るべきことが次々に起こります。

感想

題材は現実?

この記事の冒頭にも書きましたが、本書の主人公は香川隼樹という駆け出し小説家で、ペンネームは澤村伊智ということで、著者がそのまま主人公になっています。

初の受賞作はのちの『ぼぎわんが、来る』で、選考委員には実際の有名作家たちが揃い踏みしています。

本書の最後にはフィクションであることが明記されているものの、どうしても本書が現実にあったことなのでは?と想像してしまいます。

全てが起こったことでなくとも、いずれかは澤村さんの経験なのではないか。

もしそうだったとしたら、それだけでもう恐ろしい。

何度も押し寄せる恐怖

本書の良いところは、読者の期待を裏切らない恐怖だと思っています。

序盤はこの後に怖い展開が待っているんだろうなと思わせる展開が描かれ、事実、その通りになります。

しかし、本書はそこで終わりません。

副島の狂気はもちろん怖いのですが、それは序の口に過ぎない。

そう読者を嘲笑うかのような展開が待っていて、中盤以降はもうページをめくる手が止まりませんでした。

途中からはグロテスクな描写も加わり、ここでサイコ・ホラー小説という紹介の意味を知りました。

現実に影響を及ぼす

本書では、読者のレビューとそれに対する隼樹の反応が描かれますが、これがまた怖い。

僕はブログという形で書籍の感想を書いていて、時には自分には合わなかった等、著者の方からすればあまり気持ちのよくないことも書いています。

澤村さんの作品も多く扱っていて、思わず過去の記事を全て見返してしまいました。

これらの記事を澤村さんが読んでいたりするのだろうか。

万が一にも読んでいた場合、本書のような結果を生み出してしまうのではないだろうか。

ブログはもちろん続けるつもりですが、記事を書く時、それが自分に悲劇をもたらすのではないか、などと頭をちらつくようになりました。

それほどまでに本書の影響力は絶大で、それゆえに面白かったです。

おわりに

実はタイトルや表紙からそこまで期待感を持っていたわけではないので、予想以上の内容に大満足でした。

人間が一番怖い。

それを表現した一つの作品だと思います。

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