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『危険なビーナス』徹底ネタバレ解説!あらすじから結末まで!

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独身獣医の伯朗のもとに、かかってきた一本の電話―「初めまして、お義兄様っ」。弟の明人と最近、結婚したというその女性・楓は、明人が失踪したといい、伯朗に手助けを頼む。原因は明人が相続するはずの莫大な遺産なのか。調査を手伝う伯朗は、次第に楓に惹かれていくが。恋も謎もスリリングな絶品ミステリー。

「BOOK」データベースより

非常に壮大なミステリーであり、非常に男性目線な作品です。

自分と付き合っている女性でもないのに、他の誰かが寄ってくると下心があるのではとつい敵意をむき出しにしてしまう。

だから冷静な判断は失われ、読者もそれに引きずられることになります。

この感覚に共感できる人でも、この作品は賛否両論になるかと思います。

僕は楓のキャラクターがはまったおかげで、主人公の伯朗と同じ目線で楽しむことが出来ました。

本書は妻夫木聡さん主演でドラマ化され、2020年10月より放送され話題になりました。

日常劇場『危険なビーナス』 TBSテレビ

この記事では、そんな本書の魅力をあらすじや個人的な感想を交えながら書いていきたいと思います。

ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。

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あらすじ

惚れやすい男

主人公は、獣医の手島伯朗。

伯朗の父・一清はあまり売れない画家で、伯朗が二歳の時に脳腫瘍を発症。

症状が進行して死期を悟ったせいか、今までとは違う抽象画に着手しますが、未完成のまま一清は死亡。

しばらくは母・禎子と二人で暮らしますが、ある日、禎子は伯朗に矢神康治を紹介され、後に二人は結婚。

矢神家は大変な資産家で、跡継ぎを必要としていました。

そんな時、伯朗の九歳下の弟・明人が生まれます。

矢神家は明人を跡継ぎとして育てるために英才教育を施し、伯朗は両親の方針に反し、自分の進みたい道へと進みます。

その後、禎子が自宅ではなく、祖母の住んでいた小泉の家で亡くなります。

死因は溺死で、お風呂場で転んで、気絶してそのままだったといいます。

伯朗は獣医になると、たまたま知り合った院長の手伝いで池田動物病院で院長代理として働くことになりました。

今回の話は、そんな伯朗の元にとある女性から電話がかかってきたことで始まります。

失踪

伯朗の元に、明人の妻を名乗る矢神楓から電話があり、明人がもう何日も帰ってこないと伝えられます。

明人が結婚したこと自体初耳でしたが、会って話をしてみることに。

楓たちは結婚のことを誰にも伝えていませんでしたが、数日前、伯朗たちの父・康治の容態が危ないと康治の妹・波恵から連絡があり、仕事先のシアトルから二人で帰国したのだといいます。

そして書き置きを残して、明人は失踪。

自分が戻らない場合、楓のみで康治のお見舞いに行ってほしいといわれていましたが、誰も楓が明人の妻であると知らない状態で一人で行くのは無謀です。

そこでもはや矢神家の部外者ですが、面識のある伯朗が同行することにしました。

面会

伯朗も十年ぶりとなる康治との面会。

康治は、矢神家が経営する矢神総合病院に膵臓癌で入院していました。

会話することはできず、波恵が対応します。

波恵には明人が失踪したことは内緒にして話を進めていると、康治は『明人に、背負わなくていいと』と呟きます。

この時点で一同は、次期当主である明人に対して、矢神家を背負わなくていいといったものだと推測します。

矢神家について、近々親族会を開いて遺産相続のことを話し合うことになっていて、伯朗と楓も出席することになりました。

その後、伯朗は楓の厚意で明人のマンションに上がりますが、その頃から楓に対して徐々に好意を抱くようになります。

明人の部屋には小泉の家の写真が飾られていて、その裏には小泉の家の鍵が隠されていました。

しかし、家はすでに取り壊され、伯朗は更地になった写真を見て確認しています。

会話の中で、康治は神経科の医師で、サヴァン症候群の研究をしていたことが判明。

サヴァン症候群とは、言語や対人関係などの能力に著しい障害が見られる反面、知的分野や芸術分野で並外れた才能を示す症状のことをいいます。

そして康治は、とある画廊でサヴァン症候群と思わしき人物が描いたと思われる絵を見つけ、問い合わせます。

残念ながらその画家はすでに亡くなっていましたが、画家の未亡人には会うことができました。

それが、康治と禎子の出会いだと楓はいいます。

遺産相続

伯朗たちが参加した親族会には、波恵以外に六人の男女がいました。

矢神家は以前に比べてかなり傾いていましたが、それでも相応の遺産があり、誰もが遺産を狙っていました。

一同が遺産の骨董品などを確認する中、伯朗は禎子の遺品の中から一清の作品の写真が収まったアルバムを見つけます。

微笑ましい記憶が蘇る中、最後のページに写真が剥がされた跡があり、伯朗は一清の未完成だったあの絵だと確信します。

絵のタイトルは『寛恕の綱』と書かれていて、実物も見つからず、写真も消えていることに伯朗は疑問を抱きます。

楓は、遺産は全て相続したいという明人の意向を一同に伝えますが、これは楓のついた嘘でした。

一方で、波恵の姪にあたる支倉百合華は楓が本当に明人の妻かと疑っていました。

百合華が明人に好意を抱いているせいもありえそうですが、楓のような女性は明人のタイプではないのだといいます。

後に、楓が明人と行きつけのバーで生牡蠣を食べるエピソードを披露しますが、伯朗は幼い頃、明人は牡蠣が苦手だったことを思い出します。

しかし、すでに楓の虜になっている伯朗は、大人になって克服したのだろうと違和感を抱きませんでした。

研究

伯朗は親族会の中で、波恵の弟で康治の共同研究者だった牧雄に対して動物実験という言葉を使いました。

親族会の後、楓にそのことを説明します。

伯朗は小学生の頃、康治たちが勤務する泰鵬大学に禎子に連れてこられ、そこで動物実験の映像を目撃してしまいます。

それは頭蓋骨に穴をあけ、脳に電流を流されている猫の姿でした。

これは伯朗のトラウマになっていて、この時点で何の実験を行っていたのかは判明していません。

覚悟

康治の父で故人の康之介には佐代という愛人がいて、遺産相続のために養子にしています。

佐代には勇磨という息子がいて、親族会で顔を合わせて以来、勇磨は積極的に楓にアプローチをかけます。

楓もそれを受け入れ、明人のために情報を入手するためには何でもする覚悟がありました。

伯朗にとって楓はただの弟の妻ですが、勇磨に強い敵対心を抱きます。

更地になったはずの家

遺産相続の話の中で、伯朗は禎子の妹・順子から更地となった小泉の家も確認するよう忠告され、楓と共にその土地に向かいます。

すると、そこには取り壊されたはずの家が残されていました。

家は伯朗も知る近所の男性が管理していて、明人もたまに顔を出していたといいます。

明人は禎子の死に疑問を抱いて、現場保存のためにこの家を残した可能性が浮上します。

また、勇磨は明人が禎子から何か高価なものを受け継いだのではと疑っていて、この家に隠されている可能性もありました。

贖罪

小泉の家にあるアルバムの中に、学生時代の禎子が友人と写っている写真があり、伯朗はその友人が佐代であることに気が付きます。

そこで佐代の経営するクラブに行くと、佐代は知っていることを教えてくれました。

同窓会で禎子は佐代に再会し、一清が脳腫瘍でしばしば錯乱状態になることを打ち明けます。

佐代がそのことを康之介に話すと、康之介は康治に任せます。

康治は脳に電流を流して精神的な疾患を和らげる研究を行っていて、一清も禎子も喜んで話に乗りました。

その結果、一清の症状は改善されますが、急速に脳腫瘍は肥大し、数年で死亡してしまいます。

康治が禎子と結婚したのは、贖罪の意味もあったのではと佐代はいいます。

その後、禎子は佐代に対して、康治から『貴重過ぎて手に余るもの』を貰っていると話していました。

後天性サヴァン症候群

楓がとあるブログで、サヴァン症候群と思われる人物が描いた絵を見つけます。

描いたのはブログの主である女性の父親で、ある日突然、絵に目覚めたのだといいます。

伯朗はブログを運営する女性に連絡をとり、楓と二人で会いに行きます。

女性の父親は事故で脳に重度の損傷を受け、それから描いたのがブログにあった絵でした。

その絵はフラクタル図形ではないかと指摘され、脳に異常があるのではと父親は病院に通いました。

担当医は原因が分かりませんでしたが、ある日、その話を聞きつけた康治が声を掛けてきました。

康治は『後天性サヴァン症候群』という世界でも非常に稀な症状の研究を行っていて、同様の患者を探していました。

康治は一清への治療で、後天性サヴァン症候群という天才を生み出す思わぬ副産物を手にしていたのです。

しかし、康治はこの研究を発表しておらず、それどころかすでにやめています。

なぜなのか、という疑問が残りました。

家探し

勇磨に伝手をたどり、明人がすでに帰国していることを掴んでいました。

そこで楓は、全ての事情を勇磨に打ち明け、協力を求めます。

勇磨は康治の研究にビジネスの可能性を感じ、二人に協力することになります。

そこで三人は、研究について牧雄に聞きます。

康治は研究について慎重で、人間で実験するわけにはいかないため、動物で実験を行っていました。

伯朗が目撃したのは、その時の実験です。

いくつかの実例のデータもとり、研究は進んでいたはずでしたが、なぜ康治が発表しなかったのかは牧雄も知りませんでした。

研究のデータは今も残されている可能性があることが分かり、明人が禎子から受け取ったのは研究のデータだったのではと勇磨は推測。

捜索は明日することになり、一度解散。

伯朗は順子に、小泉の家に隠し場所がないか聞いてみますが、当てが外れてしまいました。

このまま調べる気になり、伯朗は楓の住む明人のマンションに向かいますが、そこには勇磨もいました。

勇磨を連れ込んだことに怒りを感じる伯朗ですが、今はそれどころではなく、三人は小泉の家に行って捜索を開始します。

すると、伯朗が以前確認したはずの天井裏から後天性サヴァン症候群に関するレポートが見つかりました。

目的のものが見つかり、一同は帰ろうとしますが、伯朗はふと何かに気が付き、楓と引き返します。

もう一度家に入ると、そこには順子の夫・憲三がいました。

真実

レポートを持っていたのは憲三でした。

そして今夜、伯朗が順子に話したことで、小泉の家が今も残っていること、伯朗たちがレポートを探していることを知りました。

そこで先回りしてレポートを置き、伯朗たちが帰るのを待っていたのです。

憲三の目的は、一清の『寛恕の綱』を見つけることでした。

憲三はかつて、頭の中に奇妙な図形が浮かぶと一清に相談されたことがあり、一清は『ウラムの螺旋』という図形を見て神の啓示を受け、『寛恕の綱』の制作に取り組んだのだといいます。

憲三は数学者として、寛恕の綱の完成が大変な宝になると確信していましたが、寛恕の綱は行方不明になってしまいました。

しかし十数年後、憲三は明人から寛恕の綱の写真を見せられて驚きます。

写真の日付が一清が亡くなった時よりもずっと後になっていて、絵がまだ残されているのでは、禎子が隠しているのではと考えました。

そこで十六年前、憲三は小泉の家に忍び込み絵を探しますが、見つけられず、しかも禎子に見つかってしまいます。

冷静さを失った憲三は、禎子を脳震盪に追い込み、助けるのではなく溺死と見せかけるよう工作しました。

その時に持ち出したのが、例のレポートでした。

全ての真実が明らかになると、憲三は家に火をつけ、自殺を図ります。

しかし、楓が憲三を背負い、伯朗と一緒に避難します。

その時、伯朗はあることに気が付き、燃える家の中に戻ります。

襖の中に寛恕の綱を見つけますが、火は絵を燃やそうと迫っていました。

伯朗は止めようとしますが、誰かに止められます。

相手は、明人でした。

結末

明人の口から全てが明かされます。

彼が帰国すると警察に声を掛けられ、明人を拉致監禁しようとする人物の存在を教えられます。

警察は首謀者を捕まえるために、明人が拉致監禁されたよう偽装したいと提案。

この首謀者とは、憲三のことです。

明人は条件を飲む代わりに、禎子の死についてもう一度調べて欲しいと依頼しました。

物証がないとなると、内部深くまで入り込む必要があり、警察は潜入捜査を選択。

そこで矢神家に潜入捜査官を送り込みます。それが楓でした。

勇磨はそのことを掴み、明人と楓に協力していたのでした。

明人は寛恕の綱を狙った犯人が身内にいると考え、小泉の家を取り壊したことにすることで油断を誘ったのでした。

明人の説明の後、伯朗は楓と二人きりになりますが、肝心なことについては最後まで聞けないのでした。

そして、後天性サヴァン症候群のレポートに関しては、明人の判断で発表は見送られました。

人間には踏み込んではいけない領域があると。

明人は、禎子が康治からもらった大事なものは寛恕の綱ではないかと考えていました。

寛恕の綱に憲三の考えるような価値がないと思う一方で、人を魅了する魔力があったのは確かで、康治は明人にこの絵のことを背負わなくていいと伝えたかったのでした。

矢神家は明人と勇磨の二人で立て直すことになり、明人と百合華もなんだかいい雰囲気でした。

後日、楓が伯朗の動物病院を訪れます。

彼女はミニブタの入ったケージを持っていて、これから長い付き合いになるとウインクするのでした。

おわりに

少々リアリティがない点が賛否両論分かれると思いますが、僕は非常に楽しめました。

ミステリー云々というより、伯朗のように楓に魅了された結果です。

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