『花の鎖』徹底ネタバレ解説!あらすじから結末まで!
両親を亡くし仕事も失った矢先に祖母がガンで入院した梨花。職場結婚したが子供ができず悩む美雪。水彩画の講師をしつつ和菓子屋でバイトする紗月。花の記憶が3人の女性を繋いだ時、見えてくる衝撃の事実。そして彼女たちの人生に影を落とす謎の男「K」の正体とは。驚きのラストが胸を打つ、感動の傑作ミステリ。
「BOOK」データベースより
『イヤミスの女王』と呼ばれる湊かなえさんの作品。
この記事を書いている時点で、本作が一番心に残りました。
最初こそはイヤミスを念頭に入れていたので警戒しながら読んでいましたが、次第に本作に隠された秘密に気が付き、あとはあっという間に駆け抜け、言葉では言い表せない幸福感で満たされました。
途中でオチは読めましたが、そんなことは些細なことであり、それより大事なものを本作から受け取ることができました。
ちょっとだけ不満な点を挙げるなら、せっかく『K』の正体をミステリーの核として置いたのだから、そこをもう少し活かしても良かったのかなと今では思います。
正体に意外性がないのは良いとしても、彼のしてきたことに関していまいち共感できなかったので。
それでも本作が名作であることは間違いありません。
誤解がないように、ここで正しておきます。
以下は湊さんへのインタビューです。『セカンドステージはここから始まる』とかなり印象的なフレーズが用いられています。
ただ、本作は登場人物が入り乱れ、途中で混乱してしまう方もいると思うので、この記事では登場人物を整理しながらその魅力を書いていきたいと思います。
ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。
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登場人物の相関図
先に本作最大のネタを明かしてしまうと、各章の視点となる美雪、紗月、梨花は血縁関係にあり、いわば親子三代にわたる物語になります。
人物の関係は以下の通り。
途中p.302で美雪が『雪月花』の言葉を出し、親と子でこんな美しい関係を持てればと言及しているので、この仕組みに気が付いた人も多いはず。
これより下の記事で時間軸が分からなくなったら、この図を見て整理してみてください。
Kの正体
あらすじに入る前に、先に本作のミステリーの肝ともいえる『K』の正体について言及したいと思います。
これは北神浩一のことです。
彼は大学時代、紗月と交際していましたが、お互いの両親が抱える確執を知り、破局。
後に浩一は紗月の友人である希美子と交際、結婚します。
しかし、その数年後、彼は急性骨髄性白血病に侵されていることを知ります。
治療するためには白血球の型の合った人から骨髄液を移植する必要があります。
ところが、白血球の型が合う確率は親やきょうだいで四分の一、他人であれば何千分の一、何万分の一と極めて低い数字になってしまい、本来であればそう簡単にドナーが見つかるはずありません。
しかし、以前に大学時代の紗月の先輩である倉田も同じ病気で倒れ、その時の血液検査で紗月と浩一の白血球の型が同じであることが判明し、もっと言えばはとこだと後に判明するのです。
浩一や周囲の人間はこの事実を知っていて、紗月に骨髄液の提供を依頼。
紆余曲折ありましたが、紗月が提供したことを浩一には隠すという条件で無事に骨髄液は移植され、浩一は助かりました。
しかし、浩一は紗月が提供してくれたことに気が付いていて、だから移植手術を受けた毎年十月二十日に『K』という名義で花を贈り続けたのです。
真実は以上なのですが、個人的には梨花と同じく、浩一のしたことは自己満足に他ならないと感じてしまいました。
昔愛していたからこそ思いを隠し、相手の意志を尊重する。
それが相手を思いやる、愛という感情ではないでしょうか。
しかし、この縁があったからこそ梨花は祖母の美雪、母の紗月の思いを知ることが出来たので、この結末は本当に素晴らしいものだったと思います。
あらすじ
本書では各章ごとに雪、月、花のパートに分かれていて、それぞれ美雪、紗月、梨花の視点で物語が進行します。
ここではそれぞれの視点ごとにあらすじを交えながら解説したいと思います。
読者は最初、三人の女性の視点にはどれも『梅香堂』にきんつばが登場しているため、同じ時間軸の同じ場所で物語が進行しているように錯覚します。
しかし、実際は美雪→紗月→梨花の順番に時が流れているため、その点を考慮しながら以下のパートをご覧ください。
美雪の場合
美雪は大学卒業後、母方の伯父が役員をしている建設会社に事務員として就職し、そこで夫となる高野和弥と出会います。
彼女は和弥に好意を持っていましたが、ある日伯父からお見合いを勧められ、その相手が和弥でした。
晴れて二人は結婚し、子供にこそ恵まれませんでしたが、幸せな生活を送ります。
一方、従兄の北神陽介は伯父の建設会社に就職するも一年で独立し、大学時代の友人だった和弥の腕を見込んで新しい事務所を一緒に立ち上げてほしいと依頼します。
設計の仕事がしたかった和弥はこれを了承。
転職に合わせて、梅香堂のあるこの田舎町に和弥と美雪は引っ越してきました。
しかしある日、陽介の妻である夏美が美雪のもとを訪れ、そこで初めて陽介が営業をやらせるために和弥を引き抜いたのだと聞かされ、驚きます。
一方、夏美は和弥の引いた図面をある程度評価するも、ダメだと一刀両断します。
美雪はこの事実を和弥に伝えられずにいましたが、和弥は県が美術館のコンペティションを開催すると知り、そこには日本のピカソと呼ばれた香西路夫の作品を展示するのだといいます。
和弥は夢を叶えるために、仕事が終わってから図面を引き、美雪もそれをサポートします。
ある日、和弥は香西の描いた『未明の月』が御笠渓谷、通称雨降り渓谷だと知り、案内役を同じ会社の事務員の森山清志にお願いし、美雪と三人で向かいます。
森山は和弥がコンペティションに参加することを知っていて、それを応援するために香西のことを教えてくれながら御笠渓谷を案内してくれます。
さらに後日、夜中にも関わらず和弥に起こされた美雪は、二人で御笠渓谷に向かいます。
そこで和弥の見せたかったものは、『未明の月』に描かれたものと全く同じ風景でした。
和弥は完成した図面も見せ、その美術館にこの風景が描かれた『未明の月』を飾ることを想像し、二人で幸せな気持ちになります。
そして、見事に和弥の図面が選ばれました。
しかし、ここで問題が起きます。
なんと名義は和弥ではなく事務所に書き替えられていたのです。
いいんだと落ち込む和弥ですが、美雪は納得がいかず、一人で陽介の家に行って問い詰めます。
すると、陽介は悪びれるわけでもなく、構造上に問題があったため自分が修正した、だから選ばれたのだと主張し、そこで和弥が現れて美雪を止め、彼女は呆然とします。
一方で、陽介が和弥の図面のことを知ったのは、美雪が夏美に図面を見せたからではないかと考えますが、美雪はそのことを和弥に言えずにいました。
その後、和弥は次の夢に向かって歩き出しますが、さらなる悲劇が起きます。
森山から和弥が事故にあったと知らせが入ります。
病院に着くと、すでに和弥は亡くなっていました。
聞くと、陽介、和弥、森山の三人は美術館の建設予定地である御笠渓谷を訪れましたが、途中で雨が降ってきました。
危ないと判断した陽介と森山は和弥を止めますが、和弥が行くと譲らず岩場に向かい、そこから転落したというのです。
美雪は信じられず、陽介が嘘をついているだと考えました。
しかし、和弥になついていた森山が裏切るとは考えづらく、何がなんだかもう分かりません。
結局、犯人を知ったところで和弥は戻らないと美雪は諦めますが、陽介は事あるごとに自分は止めたのだと声高に言うので、ついに美雪は我慢の限界を迎えます。
和弥の死を悼む場で、陽介を人殺しだと罵ったのです。
しかし、親族一同から批判され、美雪は味方が誰一人いないのだと知り、自殺しようと和弥とかつて訪れた御笠渓谷を訪れます。
ところが、助けにきた森山のおかげで一命をとりとめ、さらにお腹の中に和弥との赤ちゃんがいることが判明。
美雪は涙を流すのをやめ、この子を和弥のように立派に育て上げようと決意します。
その子供こそが、紗月でした。
紗月の場合
紗月は大学時代に描いた高山植物のイラストを山小屋に置かせてもらったが、それが出版社の目に留まり、有名な作家の山岳小説の表紙を飾ることになりました。
それによってイラストレーターとなって画集まで出すことになり、今は公民館の絵画教室の講師をしながら梅香堂でアルバイトをしています。
母親の名前は明かされていませんが、美雪のことです。
美雪は娘の紗月に恋人が出来ないことを心配していましたが、紗月自身は気にしていませんでした。
美雪から嫌味を何週にもわたって言われ続けていたある日、紗月が帰ると美雪の機嫌が良いことに気が付きます。
聞くと、Kという人物から紗月宛に手紙が届いていて、美雪はこれを恋人からの秘密のラブレターと勘違いしているようでした。
中を見ると、差出人は短大時代の友人である希美子でした。
彼女であればイニシャルがKであることに説明がつきます。
希美子と自分を比べる美雪に思わず大声を上げてしまう紗月ですが、決して嫌っているわけではありません。
『竹野屋』という定食屋で働きながら女手一つで育ててくれた美雪に、紗月は感謝していました。
部屋に戻って希美子からの手紙を確認すると、そこには会って相談したいことがあると書かれていました。
困った時だけ泣きついてくるのは出会った時から変わっておらず、紗月はうんざりします。
短大時代も、一つ上の倉田という先輩に贔屓にされたいと希美子が近づいたところ、彼女は山岳同好会に誘われ、それに紗月を巻き込みます。
しかし、紗月にも目的があり、山岳同好会に入るのは好都合であり、その目的とは父親捜しでした。
紗月は希美子の呼び出しに応じ、五年ぶりに彼女と再会します。
希美子は本題を言い出しにくいのか、昔話をしてはぐらかそうとしますが紗月が本題を急かすと、浩一さんを助けてほしいのと夫の名前を出します。
この時点でまだ明かされていませんが、北神浩一は陽介と夏美の息子であり、紗月の元恋人でもありました。
浩一の名前が出ると分かっていても紗月は相談に乗る気になれずその場を去りますが、駅でちょっとした取っ組み合いになります。
そこに仲裁に入ったのが、公民館で働く前田でした。
希美子は浩一が倉田と同じこと(後で急性骨髄性白血病と判明)で苦しんでいると言いますが、それでも紗月は彼女を振り切って帰ってしまいます。
ある日、公民館の館長に紗月が梅香堂でアルバイトしていることを聞きつけた前田が梅香堂を訪れ、希美子から伝言を預かっていると言いますが、紗月はこれを追い返します。
彼女の頭の中では、浩一との出会いが思い出されます。
山岳同好会で希美子が目をつけた男性、それが浩一でした。
出会い頭、紗月は浩一のことをお父さんと呼び、それがきっかけとなって浩一は本当の父親のように紗月を気にかけてくれるようになりましたが、希美子はあまり面白く思っていませんでした。
また紗月がお父さんと言ったのは偶然ではなく、浩一が紗月のはとこに当たり、容姿も似ているためでした。
紗月は前田への態度を反省し、手土産を持って公民館にいる彼の元を訪ねます。
伝言を聞こうとしましたが、一緒に夕飯を食べることになり、二人は近くの居酒屋に行きます。
希美子から前田が預かった伝言はよくわからない内容でしたが、紗月にはよく分かりました。
ここで思い出されるのは、倉田のことで、彼女はコマクサのような女性でした。
倉田は辛くても誰も頼らない紗月の性格に気が付き、一日一回お互いに頼みごとをするというルールを作り、それが結果として紗月を楽にしますが、その倉田はもうこの世にいません。
紗月は山に咲いたコマクサが見たいと思いましたが、時期的に無理だと思われました。
しかし、前田は八ヶ岳に咲いていると話し、なぜか前田と紗月は二人で週末に登山に行くことになりました。
家に戻ると、再び回想が始まり、希美子が一度だけ紗月の地元に遊びに来たことを思い出します。
その時、浩一と倉田を独り占めするのはずるい、どちらか選んでほしいと言われ、紗月はある結論に至ります。
その答えを持って寮に戻ると、先に戻っていた倉田から三年前に完成した国立美術館に行かないかと誘われ、応じます。
また、美術館が浩一の父、陽介が設計したのだと教えられます。
美術館に着くと、倉田の体調が悪そうに見え、ここで帰ろうと紗月は提案しますが、これだけ見たいといって倉田が見せてくれたのが香西の『未明の月』でした。
そして、力尽きるように倉田は倒れてしまいます。
回想が終わり、登山の準備をしていると、ポストに何かが投函される音がします。
見に行くと、美雪宛ての手紙があり、差出人は香西久美子。
ここでは明かされませんが、後に差出人が夏美だと判明します。
内容は浩一の骨髄移植の件で、実名では見てもらえないと思ったため偽名を使ったのでした。
登山当日、紗月と前田が目指すのは八ヶ岳の中で最高峰の赤岳。
道中、紗月は倉田のことや希美子から頼まれたことを前田に話します。
倉田が倒れた日、病名が急性骨髄性白血病だと判明します。
急いで山岳同好会やその伝手を使ってドナーを探しますが、倉田と白血球の型が合う人はいませんでした。
しかし、偶然にも紗月と浩一の型は合っていました。
また輸血も必要でしたが、AB型の倉田に輸血できたのは希美子など少数の人間だけで、何もできない紗月は浩一にすがってしまいました。
こうして奇しくも紗月が浩一を、希美子が倉田を選んだ形になります。
そして一か月後、倉田が亡くなりました。
これがきっかけとなって紗月と浩一は交際を始め、倉田を利用して最低だと希美子から罵られます。
それでも時間が経つと希美子は許してくれて、お互いに幸せになるはずでした。
ところが、これまで付き合いのなかった母の伯母にあたる人が亡くなり、美雪は葬式に参列しないということで紗月が参列しますが、そこで母の伯母はなんと浩一の祖母だということが判明します。
つまり、紗月と浩一ははとこ同士ということになります。
紗月はそのことに運命を感じますが、葬式に参列した浩一の両親は紗月に対してどこかよそよそしく、対応に困っているようでした。
家に戻ってそれを美雪に報告すると、美雪は怒りをあらわにし、紗月の父親、つまり和弥は陽介に殺されたのだと今でも信じていました。
浩一もこの時点では何も知らず、両親に紗月と交際していることを打ち明けますが、そこで両家の確執を知ります。
それでも浩一は美雪ではなく自分を選んでほしいとお願いしますが、紗月には美雪を見捨てることなんてできません。
そして二人は別れ、やがて浩一と希美子が交際、結婚することになったのです。
二人の間には、伸明という息子も出来ました。
赤岳の頂上に到達すると、前田が案内したのは紗月も知る山小屋で、中には紗月が以前描いてここに置かせてもらった高山植物の絵が飾られていました。
そこにコマクサもあり、紗月は知りませんでしたが、前田はこれを見せようとここまで連れて来たのです。
前田は、この時点で初めて紗月が描いたものだと知りました。
家に戻ると、紗月は希美子のお願いの答えを決め、青いりんどうの花束を持って美雪に話します。
しかし、紗月の中で答えは決まっていて、彼女は浩一に骨髄液を提供することを決めていました。
ここでは語られていませんが、後に紗月と前田は結婚し、その間に生まれたのが梨花です。
梨花の場合
梨花はJAVAという英会話スクールの講師をしていましたが、経営破綻して経営者は逃亡。
梨花は無職になってしまいます。
さらに祖母の美雪は入院していて、すぐにでも手術を受けさせる必要がありますが、そのお金が梨花にはありませんでした。
梨花は美雪の貯金を手術代に使わせてほしいとお見舞いのついでに伝えようとしますが、逆にオークションに参加してあるものを手に入れてほしいと言われます。
そのためであれば全財産を使ってもいいと言われ、今さら手術のことは言えません。
そうなると、梨花が頼れるのはKという謎の人物だけでした。
Kは毎年十月二十日に母の紗月宛に豪華な花束を贈ってきて、梨花はあしながおじさんか何かと思っていました。
そして三年前、両親を事故で亡くした梨花の元にKの秘書(後に北神伸明と判明)を名乗る人物が現れ、経済援助を申し出ます。
しかし、働いていた梨花はこれを拒否します。
今さら援助を求めるのは厚かましいと思いながらも、でも梨花には他に方法がありません。
梨花はK宛に手紙を書きますが、ここで彼の住所を知らないことを思い出します。
唯一の手掛かりは、小中高の同級生である山本健太の両親が経営する『山本生花店』から毎年Kの花束が届けられていたということだけ。
梨花は健太に相談して、健太はKの住所を調べますが、個人情報のため入手することはできませんでした。
ところがしばらくして、美雪宛の花束が届き、梨花宛の手紙も添えられていて、そこにはホテルの喫茶ラウンジで会おうとメッセージが書かれていました。
梨花は嬉しくなって、その花束を持って美雪のお見舞いに行きます。
そこでKのことを聞きますが、美雪もその正体を知らず、でも梨花の母・紗月がそれだけのことをしたのだからそれでいいと、あまり深入りしません。
またその日、美雪の手術が決まり、病室に向かうと、そこには見知らぬ男性(後に森山清志と判明)がいますが、美雪が寝ていたことで出直すとのことでした。
Kが指定した当日、梨花がホテルに向かうと、待っていたのはKの秘書でした。
ここで彼がKの息子だと判明し、昔の恋人のためにここまでするKを理解できないと不愉快そうでした。
その態度に梨花も思い直し、手術代の援助を断りますが、そこで専務と名乗る男(森川清志)が現れ、そこでKと美雪にも関係があることが判明します。
そして、Kがすでに他界していることも伝えられます。
その場はなんとなく終わり、後日、梨花は森川に誘われ、清里に向かいます。
そこで待っていたのは伸明、その母親の希美子、そして夏美でした。
希美子の口から、紗月が夫の浩一のために骨髄液を提供してくれたことを明かされます。
浩一には提供者が紗月だとは黙っていましたが、浩一は気が付いていて、バレないようにKという名義で毎年、移植手術を受けた十月二十日に花束を贈っていたのでした。
当初、夏美は美雪の説得にあたりましたが、これまでの怨恨は解消せず、しかし紗月が判断したことであればそれに従うとし、移植は実現したのでした。
さらに和弥が死んだ日のことが森川の口から明かされます。
やはり陽介は嘘をついていて、登山を強行したのも陽介でした。
そして、陽介に和弥がコンベンションに参加することを教えたのは森川であり、彼はそれで疑われるのが嫌で陽介と口裏を合わせたのでした。
また彼は自分が香西のことについてレクチャーしたおかげで和弥があの図面を完成させたのだから、そこに自分の名前もあるだろうと勘違いしていましたが、そこには和弥の名前しかありませんでした。
彼はそれが悔しかったのだと語ります。
Kの死後、経済援助を申し出たのは夏美の案でしたが、彼女は美雪のことを何も分かっていませんでした。
さらには美雪の手術代、梨花の再就職先まで用意しようとするなど、根本的におかしいのでしょう。
希美子からも一日一頼みしてほしいと言われ、梨花は一つだけお願いします。
それは、『未明の月』を北神建築事務所が買い取り、和弥の設計した香西路夫美術館に寄贈するというものでした。
後日、梨花は車椅子に美雪を乗せ、美術館を訪れます。
清里での出来事も全て報告し、梨花の就職先も決まり、全ては終わりました。
その時、美術館では結婚式が行われていて、新郎新婦に渡してほしいと二人は係の人から一本ずつバラを手渡されます。
現れた新郎新婦を見た美雪は、花嫁が梨花だったらもっと良い日だったと皮肉を言いますが、梨花はそれが嬉しくて涙するのでした。
おわりに
親子三代に渡って受け継がれてきたものが感じ取れる、胸を動かされる作品でした。
ぜひこの記事で内容を整理したら、もう一度読んでみてください。
一度目以上の感動があなたを待っているはずです。
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