湊かなえ『少女』徹底ネタバレ解説!あらすじから結末まで!
親友の自殺を目撃したことがあるという転校生の告白を、ある種の自慢のように感じた由紀は、自分なら死体ではなく、人が死ぬ瞬間を見てみたいと思った。自殺を考えたことのある敦子は、死体を見たら、死を悟ることができ、強い自分になれるのではないかと考える。ふたりとも相手には告げずに、それぞれ老人ホームと小児科病棟へボランティアに行く―死の瞬間に立ち合うために。高校2年の少女たちの衝撃的な夏休みを描く長編ミステリー。
「BOOK」データベースより
湊かなえさんにすっかりはまってしまい、本作もあっという間に読んでしまいました。
『告白』でも思いましたが、湊さんは読ませるのがうまいというか、目が離せなくなる文章を書くんですよね。
本作はもっと殺伐した感じになるのかと予想していましたが、二人の少女の友情に焦点を当てた青春ミステリーで、最後の部分を読むまで心が温まっていました。
誰もが知らないところで、悲劇の歯車はちゃんと回っていたのですね…
以下は、本書が映画化された際の湊さんへのインタビューです。
『少女』原作者、湊かなえさんインタビュー|トーキョー女子映画部
この記事では、そんな本書の魅力をあらすじや個人的な感想を交えながら書いていきたいと思います。
ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
誰かが自殺する
冒頭で、誰かが書いた遺書の前半が提示されます。
内容からして女子学生だと分かるので、ここでは彼女とします。
この物語では、この遺書が誰のものなのか? というのが一つの焦点になっています。
物語には、由紀に敦子と自殺を匂わせる女子生徒が二人も登場しますので、読者はどっちが死ぬの? なんて推理しながら読み進めていきます。
また序章では遺書の持ち主に対する誰か(仮にAとする)の心情が述べられていて、そこから得られるヒントが以下の通り。
・Aと彼女は同じクラス。
・Aと自殺した彼女は親友ではないが、それなりに仲が良かった。
・自殺するような子ではなかった。
・彼女は『死』を知っていた。
・Aには親友がいる
後述しますが、この条件でいえば紫織が怪しいと分かります。
二年で編入してきた彼女なら、由紀や敦子と親友とまでは呼べないのも頷けます。
しかも、彼女は『死』を知っています。
ところが、話はそう簡単ではありません。
親友である由紀と敦子ですが、彼女たちはお互いを疑い、仲は険悪になっています。
この状態ならば、親友ではないと言ってもおかしくはありません。
また『死』についても、紫織の話に触発された二人はそれぞれ『死』を探すようになるので、除外することはできません。
これらの点も踏まえて、あらすじと解説に入りたいと思います。
導入部分
公立の女子高、桜川高校に通う桜井由紀と草野敦子。
二人は小学一年生の時、剣道教室『黎明会』で知り合い、それからずっと親友でした。
敦子は剣道が強く、小学六年生の時には全国優勝を果たします。
しかし、中学三年生の夏、県大会の決勝で足をひねり、チームは負けてしまいます。
すると、学校の裏サイトで心ない誹謗中傷が書かれ、A子と書かれていますがそれは明らかに敦子のことでした。
それ以来、敦子は剣道をやめてしまい、嫌われることを恐れるようになってしまいます。
その影響か何をするにも自信がなく、人の目を常に気にしています。
それに対し由紀は、小学五年生の時に、認知症のおばあさんの暴力にあい、左の握力のほとんどを失ってしまいました。
それが原因で感情の起伏が乏しくなり、何事にも冷めていて、周囲を上から見ています。
二人の歯車はいつしかずれてしまい、その友情に亀裂が生じていました。
その原因の一つとして、『ヨルの綱渡り』という由紀の書いた小説があります。
彼女は自分に自信を無くしてしまった敦子を励ますためにその小説を書きましたが、あろうことか国語教師の小倉に盗作され、世間に発表されてしまったのです。
敦子は、小倉の自慢話から話のモチーフが自分であること、そしてそれを書いたのが由紀なのだと悟ります。
全てを読んでいない敦子にとって、それは敦子のことを馬鹿にした他の友達と同じことであり、由紀のことを拒絶するようになります。
そんな重苦しい雰囲気が流れる二人ですが、そこに滝沢紫織という少女が間に入ります。
彼女は二年の時に編入してきた生徒で、最近は三人で行動するようになっていました。
そんなある日、紫織は自分の親友が自殺して、本当の死というものを知ったのだと二人に話します。
肝心な部分はぼかされていて、紫織からしたら少しでも気持ちを軽くしたかったのかもしれません。
しかし、それを聞いて二人は思います。
由紀はそれが自慢と分かっても羨ましいと感じ、敦子は自分も死というものを理解すれば、由紀の本当のことを話してもらえるのではと。
それから二人は別々の方法で、『死』というものを探すようになりました。
死ぬ瞬間を見るために
由紀
由紀は『小鳩会』というボランティアグループに参加し、読み聞かせのためにS大学附属病院小児科病棟を訪れます。
そこで知り合ったのが小太りの少年・タッチーと、美少年・昴で、これ以降、由紀は二人に会いに行くようになります。
ある日、昴がもうすぐ手術であり、助かる見込みがほとんどないことをタッチ―から知らされた由紀。
昴には離婚して離れ離れになった父親がいて、連れてきてほしいと頼まれます。
ヒントはほとんどなく、見つけることは至難の業に思えましたが、最高の最期を演出しようと由紀は、昴の父親を探すことにします。
そして、昴の父親の元同僚の男(由紀は三条と仮称した)に辿り着きますが、父親の行方を教えて欲しければ夜に一人で指定した場所に来いと言われます。
明らかに体目的に思えましたが、それでも由紀は応じ、彼氏である牧瀬を連れて指定の場所に向かいます。
そこでいくつかの要求をされますが、その様子を牧瀬が撮影していたことで形成逆転。
相手の男の本名が滝沢だと判明し、この事実をバラさない代わりに高雄の情報を得ます。
高雄は『シルバーシャトー』という施設で働いていることが判明しました。
敦子
敦子は体育の補習で、夏休みの二週間、特別養護老人ホーム『シルバーシャトー』で働くことになりました。
露骨に敦子のことを避ける高雄孝夫という中年のおじさんとペアを組むことになり、敦子は嫌々ながらも死を探します。
すると、早くもチャンスが訪れます。
水森さん(後に由紀のおばあちゃんと判明)というおばあちゃんが喉に餅を詰まらせたのです。
それは敦子の望んだことのはずですが、あまりに苦しむ様子に咄嗟に口の中に掃除機を突っ込み、餅を取り除くことに成功。
それで周囲から褒められ、介護福祉士の道を考えるようになります。
また小倉について、由紀が小倉の持つ学校内のデータを流出させたことで退職に追い込まれ、最期に自殺します。
さらに小倉の日記から、彼はセーラという女子高生と援交していることが分かり、日記の内容に腹を立てた敦子は学校の裏サイトにこの事実を書き込みました。
そして、そこに高雄孝夫に対する犯行予告が書かれているのを見つけ、敦子は由紀が書いたのだと考えました。
水森さんを助けたのは対外的には高雄ということになっていて、由紀が余計なことをした高雄のことを憎んでいると考えたからです。
それから敦子は高雄を守るために彼について回りますが、そこで高雄が『ヨルの綱渡り』を読んだことがあることを知り、彼の迷惑をよそに、彼の自宅に寄ってそれを読ませてもらうことにします。
そこで敦子は、高雄が痴漢の冤罪で逮捕されたことがあり、それが理由で自分のことを避けていたのだと知ります。
そして、『ヨルの綱渡り』は敦子のことを馬鹿にしたものではなく、由紀が励ますために書いてくれたのだと知ります。
無性に由紀に会いたくなり、また自分を理解してくれる高雄にも恋に似た感情を抱くようになりました。
結末
由紀が『シルバーシャトー』に向かうと、そこには高雄と敦子がいて驚きます。
敦子は由紀を警戒していますが、気にしている余裕はありません。
昴がこれから手術に臨むが、成功の確率が低いので、励ますためにも一緒に来てほしいと頼み、三人でS大学附属病院小児科病棟に向かいます。
高雄が息子に走り出し、感動の再会になるはずでしたが、高雄の向かった先はなんとタッチーの方でした。
二人は名前を入れ替え、昴(小太りの少年)の父親である高雄を呼び出すために由紀を利用していたのです。
昴は、高雄が冤罪で逮捕されたことで母親が心の病気にかかってしまったと高雄を恨み、殺そうと考えていたのです。
昴はナイフを高雄の背中に突き立てますが、すぐに敦子がナイフを振り払ったことで大事には至りませんでした。
そして、二人はもう『死』を見たいなんて思ったりしません。
いつの間にか仲直りして、今まで言えなかったことを共有します。
また後日談として、学校の裏サイトに書かれた高雄の犯行予告はタッチー(美少年)が書き込んだもので、高雄を殺す気持ちを揺るがないようにするための決意表明だと判明しました。
因果応報~自殺したのは誰?~
ハッピーエンドかと思いきや、最後に新事実が判明します。
紫織は示談金を目的とした嘘チカンをしていたことがあり、明記されていないものの、最後の被害者が高雄で、紫織の父親が滝沢だと分かります。
また、自殺した親友とは小倉と援交していたセーラのことでした。
最後に遺書の後半が提示され、書いたのが滝沢紫織だと判明して、物語は幕を下ろします。
この悲劇の連鎖について、簡単にまとめると以下の通りです。
① 紫織は嘘チカンで高雄を逮捕に追い込む。また親友である星羅は小倉と援交していた。
② 由紀が情報を流出させたことで小倉が自殺。また敦子が二人の援交のことを裏サイトに書いたことで、星羅は自殺に追い込まれた。
③ 由紀は紫織から嘘チカンの話を聞き、滝沢から金を巻き上げようと企む。しかし、滝沢はそれを拒否し、逮捕されて、紫織は犯罪者の子供となった。
④ 親のことで紫織はいじめに遭い、最後には自殺した。
因果応報という言葉が度々作中に登場しますが、まさしくその通りになった結末でした。
魔が差すことは誰でもありうるかもしれませんが、しっかり自分を律しないと取り返しのつかないことになります。
このラストを見て、他人事とはとても思えませんでした。
おわりに
青春物語に見せかけて、最後の最後にやってくれました。
だから湊さんの作品が大好きなのです。
まだ読んでいない作品がたくさんありますので、それらもこれから読んでいきたいと思います。
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