『境遇』徹底ネタバレ解説!あらすじから結末まで!
政治家の妻であり、息子のために描いた絵本『あおぞらリボン』がベストセラーとなった高倉陽子と、新聞記者の相田晴美は親友同士。共に幼いころ親に捨てられ児童養護施設で育った過去を持つ。ある日、「息子を返してほしければ、真実を公表しろ」という脅迫状とともに、陽子の息子が誘拐された。「真実」とは一体何なのか。そして犯人は…。絵本『あおぞらリボン』(作・みなとかなえ、絵・すやまゆうか)を特別収録。
「BOOK」データベースより
本作は朝日放送の創立六十周年を記念して、ドラマのために書き下ろされた作品です。
同じ境遇にある二人の女性の繋がりについて、それは果たして境遇ゆえに生まれたものなのか、描かれています。
以下は、本書が映像化された際の湊さんへのインタビューです。
境遇 | インタビュー | ABC創立60周年記念スペシャルドラマ
この記事では、本作の魅力についてあらすじや個人的な感想を交えながら書いていきたいと思います。
ネタバレになりますので、未読の方はご注意下さい。
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あらすじ
同じ境遇を抱える二人の女性
高倉陽子と相田晴美は共に親に捨てられ、別々ですが児童養護施設で育った同じ境遇を持つ親友同士。
陽子は政治家である夫・正紀のサポートのために息子である裕太に寂しい思いをさせてしまうことが多々あり、せめてもと彼のために『あおぞらリボン』という絵本を書きます。
すると、これが大ヒット。
陽子は絵本作家として一躍有名人になります。
実は、絵本の内容は晴美の実体験を元にしていて、親戚が無断で絵本として発表してしまったことを陽子は謝罪しますが、晴美は気にしていません。
むしろ気になったのは、『ハッピータウン』というショッピングセンターのオリジナルエコバッグを肩から提げた年配の女性でした。
陽子の知り合いではありませんが、自宅周辺だけでなく、自宅から離れた裕太の通うスイミングスクール近くでも見かけたことで、陽子のファンなのではと警戒します。
ここで、陽子と晴美の出会いについて。
晴美は『朝陽学園』で十八年過ごし、大学に進学した後に行われた文化の日のイベントで陽子と出会います。
市のボランティアグループの中に陽子がいて、彼女の読み聞かせには多くの子供たちが集まり、何不自由なく育ったように見える陽子に、晴美は腹が立ちました。
しかし、実は陽子も『ゆうあい園』という児童養護施設に生後間もなく預けられていました。
実際はその年に今の両親に引き取られたため、児童養護施設で育ったわけではありませんが、実の両親に捨てられたという境遇に変わりはありません。
そのことをきっかけに二人は交友を深め、親友になります。
その後、陽子は自分たちが親友になれたのは同じ境遇だからかな、と漏らすことがありました。
晴美はその不安を和らげようと、実の母親が残してくれた青い、空色のリボンを半分に切り、陽子の手首に巻いてあげるのでした。
これこそが、あおぞらリボンの元の話です。
晴美は、陽子の口から直接絵本の出版について教えられなかったことに多少の不満を覚えましたが、それでも許しました。
しかし、この境遇がきっかけとなり、とある事件が発生します。
誘拐
正紀のサポートに絵本作家としての仕事に追われ、裕太と一緒にいる時間をなかなか作れない陽子。
そんな彼女を支えていたのは、親友の晴美の存在、そして彼女のくれた青いリボンでした。
しかし、そんなことはお構いなしに、正紀の母・弘子は『ミツ子の部屋』という国民的トーク番組の出演を陽子の許可なしに決めます。
これは選挙が近い正紀に少しでも投票数を集めるための作戦であり、日頃から境遇のせいで冷たく扱われる陽子に拒否することなんてできませんでした。
ある日、陽子は予定より早く取材を終え、裕太のスイミングスクールのお迎えに行こうかと考えますが、予めお願いしていた正紀の秘書・亜紀とすれ違いになると困ると思い、選挙事務所に戻ります。
ところが、いつまで経っても二人は戻らず、自宅にいる弘子からは帰りが遅いのではと電話がきます。
二人ともきっと寄り道しているのだろうとあまり深く考えずにいると、午後五時半になって亜紀が事務所に到着しますが、裕太の姿が見当たりません。
聞くと、亜紀が迎えに行った時には、すでに他の誰かが裕太のお迎えに来ていたというのです。
自宅の弘子にも確認しますが、そっちにも裕太は帰っていません。
嫌な予感がした陽子は、正紀の親友で選挙を後押しする岩崎と亜紀と一緒に裕太を探しに出ます。
スイミングスクールの受付で聞くと、裕太の友人・良介の母親が他の子もまとめて連れていき、公園で遊ばせていたのだといいます。
そこで亜紀がお迎えの時間よりも遅く来たことが判明しますが、今は事情を聞いている暇はありません。
陽子が良介の母親に電話すると、家で話を聞かせてくれることになり、三人で向かいます。
良介の母親は裕太を連れて行った女性を見たが、特段怪しい様子はなく、裕太もいつも通りでとても他人だとは思わなかったといいます。
さらに外見の特徴としてハッピータウンのエコバッグが挙げられ、例のよく見かける女性が頭をよぎります。
さらに亜紀のもとに母親の道代から連絡が入り、事務所に戻ってきてほしいと言われます。
戻ると、後援会会長の後藤、その妻の道代、弘子の三人がいて、後藤から差し出された紙は脅迫状でした。
息子を返してほしければ真実を公表しろ。白川渓谷事件を思い出せ。そう書かれています。
陽子は警察に通報しようとしますが、大事な選挙に影響が出ると後藤に止められ、また正紀にも伝えてはいけないと言われます。
陽子は黙りますが、こうしている間にも裕太は怖い目にあっているかもしれません。
そこで陽子は、取材原稿だと言って、FAXを送ります。
相手は新聞社で働く晴美です。
その夜、晴美は原稿に重大なミスが見つかったと嘘をついて事務所を訪れ、裕太の誘拐について聞かされます。
自宅にも犯人から何か届いているのではと陽子が提案し、晴美に車で自宅まで送ってもらいます。
これこそが陽子の作戦であり、事務所から抜け出すために原稿の中に晴美へのメッセージを隠していたのです。
そして陽子は、高倉事務所の秘密、半年前に世間を賑わせた不正献金疑惑を調べ、新聞に載せてほしいと晴美に依頼します。
真実とは、不正献金疑惑のこと。
陽子はそう考えました。
しかし、裕太を連れ去った女性について晴美は触れ、実は目的は陽子なのではと口にします。
誰かが陽子の境遇を知り、それを打ち明けさせようとしているのではと。
しかし、あくまで仮設であり、二人で話しているだけでは埒が明きません。
晴美は不正献金疑惑について調べると言い、翌日再び合流することにしました。
真実の公表
その夜、正紀から連絡が入り、岩崎から裕太の誘拐を教えてもらったことを教えてくれます。
正紀は仕事をキャンセルして帰国することになり、このことは後藤には黙っていることにしました。
陽子は一度事務所に戻りますが、亜紀と道代は帰宅した後でした。
さらに亜紀が、陽子が浮気をしているという見知らぬ人からの電話を受け、そのために裕太を迎えに行くのが遅れてしまったことが判明します。
さらにメールで、晴美は岩崎を警戒するようにと陽子に言います。
謎は深まるばかりです。
翌日の朝、晴美は有給をとって陽子の家に向かい、調べたことを報告します。
不正献金は正紀の先代から始まったことで、告発したのは岩崎だといいます。
晴美は岩崎が犯人だと考えていましたが、陽子はそれを否定します。
明け方に、新しい脅迫状がFAXで届いたのです。
そこには真実のヒントとして樅の木殺人事件という言葉か提示されています。
それは、三十六年前に起きた殺人事件のことで、場所は陽子の預けられたゆうあい園と同じK市にある樅の木町で起きたものです。
高松秀夫が同僚の下田俊幸によって殺害され、下田は現金百万円を持って逃走しますが、一週間後に自首。
下田は無期懲役を言い渡されるも、肺炎で獄中死しています。
後藤たちは事務局には関係ないと喜び、むしろ陽子に関係しているのではと言い始めます。
しかし、それでも真実とは何なのか分からず、二人はここで別れ、陽子は岩崎と二人で裕太の通うスイミングスクール周辺を調べることに。
脅迫状のFAXが送信されたコンビニを調べると、例のエコバッグを提げた女性がまたしても浮上します。
さらに範囲を広げると、その女性を知っているという本屋に出会い、女性の名前は橋本弥生でどんぐりクラブというボランティアグループに所属していること、そして陽子たちよりも前に正紀が訪れ、弥生のことを聞いていたことが判明します。
岩崎はメールで正紀に事情を聞きますが、弥生について調べるなと一刀両断されてしまいます。
そこに晴美から電話が入り、岩崎抜きで会いたいと言われます。
そこで陽子は晴美と合流し、岩崎は弥生についてさらに調べることにしました。
生い立ち
ファミレスで合流した晴美は、陽子に樅の木町殺人事件について調べたことを報告します。
被害者である高松の妻は事件をきっかけに精神が不安定になり、後に睡眠薬を多量摂取して死亡。
一方、加害者である下田の妻は心臓病を患っていたが、当時妊娠をしていて、どうやら無事に出産したらしいことが分かりました。
同じK市にあることから、陽子は自分が下田の娘であり、母親も心臓病のために育てられず、自分を施設に預けたのではないかと推測します。
晴美は早合点しないよう注意するも、事実かどうか確認するためにもゆうあい園の園長に会おうと提案します。
ゆうあい園はすでに閉鎖していますが、園長は今はどんぐりクラブで活動していて、アポイントもすでに晴美がとっていました。
弥生と同じボランティアグループ。
そこに何かを感じた陽子。
さらに驚いたことに、晴美が調べたところ、加害者の妻の名前が下田弥生であることが判明し、陽子は自分が下田の娘なのではと絶望します。
園長にも会いに行きますが、収穫はなし。
しかし、それは陽子が下田の娘であることの否定材料にはならず、彼女は追い込まれていきます。
すると、そこに岩崎から連絡が入り、二人は岩崎と合流します。
岩崎はすでにどんぐりクラブに連絡を入れていて、確かに弥生はそこで働いているが、ここ一週間は心臓の持病で入院していることが判明します。
岩崎を信じられない晴美は、不正献金疑惑を告発したことを問いただすと、岩崎はあっさりと認めます。
ここまで調べてくれたことに感謝をする陽子。
彼女は自分が殺人者の娘であることを確信し、その真実を公表することを決めます。
そして、正紀がどんな返答をしようと、このまま彼の妻ではいられないと離婚まで決意しています。
帰り道、陽子は晴美に境遇が分かっても親友でいてくれありがとうとお礼を言います。
それに対して晴美は、真実を公表したら境遇から解放されようと提案します。
たとえ同じ境遇でなくても、親友なのだからと。
陽子の求めていた言葉はまさにそれであり、もう怖いものはありません。
自宅前で晴美と別れると、正紀もタクシーで到着したところでした。
陽子はこれから正紀に真実の公表について話そうとします。
その時、犯人から新たなFAXが届き、ミツ子の部屋で告白しろと要求してくるのでした。
テレビでの告白と真実
陽子と正紀の会話。
正紀は陽子よりも先に殺人者の娘であることを突き止めていましたが、弥生からこのことを内緒にしてほしいと頼まれていたのでした。
彼もまた、境遇など関係無く彼女を愛していたのです。
しかし、陽子の決意も固く、真実の公表も離婚も譲ろうとしません。
そこで正紀は、陽子にだけ真実の公表はさせないと、自分も不正献金疑惑について公表することを宣言します。
後藤たちは二人に強く反対しますが、二人は譲りません。
こうして二人は、テレビ本番を迎えるのでした。
本番が始まり、進行通りにミツ子と陽子の会話は続きますが、次第に陽子は台本を逸脱したことを話し、ついに自分が殺人者の娘であることを公表します。
これには番組スタッフも大慌てですが、逆になぜこのことを公表したのかを掘り下げようと覚悟を決め、番組は続行します。
すると、途中でなんと正紀が番組内に登場し、自分も不正献金疑惑 について明日、会見を開くことを発表します。
こうして番組は無事に終わり、なんとテレビ局の入り口で待っていたのは晴美と裕太でした。
再会を喜ぶ陽子たちでしたが、報道関係者に気付かれ、逃げるためにタクシーで二手に分かれ、陽子は晴美と乗ります。
陽子が事情を聞くと、裕太は被害者である高松夫妻の間には子供がいて、その人が預かっていたのだといいます。
気が付くとタクシーは目的地に到着し、そこは晴美の育った朝陽学園でした。
そこで晴美は告白します。
裕太を誘拐したのも、脅迫状を送り付けたのも自分であることを。
晴美は新聞社に入社し、自分の生い立ちを調べていく中で、自分が樅の木町殺人事件で殺害された高松夫妻の子供であることを知ります。
そして陽子の取材の日、女を尾行するとそれは橋本弥生で、彼女は陽子とは関係ないと逃げ出し、弥生が陽子の母親であることを確信したのです。
だからといって陽子を苦しめたかったわけではなく、下田の娘であることを自分自身で気付かせ、それを公表させたかったのだといいます。
しかし、改めて陽子は晴美の生い立ちを知っていれば、これまで過ごすような人間でないことを思い知り、早くこのことを終わらせたかったのだといいます。
その時、タクシーがやってきて、中から正紀、裕太、岩崎、そして弥生が降りてきます。
そこで弥生が語った真実。
弥生の娘は陽子ではなく、晴美だったのです。
彼女は絵本を見て陽子が自分の娘だと思っていましたが、ミツ子の部屋を見て、青いリボンのエピソードが陽子の親友のものなら、自分の娘は親友の方だと気付いたのです。
全ての誤解は解け、晴美は警察に自首すると言いますが、陽子はそれを止めます。
裕太に誘拐されたという自覚はなく、警察に聞かれる方がショックかもしれない。
許したわけではないけれど、これで終わりにしよう。
そう言って陽子は晴美からもらった青いリボンを取り出すと、それはお母さんに巻いてあげてと言い、二人は強く抱きしめ合うのでした。
結末
正紀は会見で、陽子は下田の娘ではなかったことを打ち明け、不正献金疑惑について公表し、後藤も罪を認めるのでした。
またゆうあい園の園長から手紙が届き、陽子は被害者・高松の娘ではないことが分かります。
そして最後に、あの事件から十年が経ち、晴美は陽子の許可を得て、裕太も成長してそこまで深く傷つかないだろうと、あの事件のことを公表することを決めます。
それが『境遇』というタイトルの寄稿であり、つまり本書なのでした。
おわりに
境遇というものがどれだけ人生に影響を与えるのか、そして誰かとの間に出来た絆は決して境遇だけが理由ではないことを、本書は教えてくれました。
傷つけあうだけではなく、最後に救いがある。
スッキリとした読了感のある作品でした。
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