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『向日葵の咲かない夏』徹底ネタバレ解説!あらすじから結末まで!

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明日から夏休みという終業式の日、小学校を休んだS君の家に寄った僕は、彼が家の中で首を吊っているのを発見する。慌てて学校に戻り、先生が警察と一緒に駆け付けてみると、なぜか死体は消えていた。「嘘じゃない。確かに見たんだ!」混乱する僕の前に、今度はS君の生まれ変わりと称するモノが現れ、訴えた。―僕は、殺されたんだ。半信半疑のまま、僕と妹・ミカはS君に言われるままに、真相を探る調査を開始した。

「BOOK」データベースより

叙述トリックが盛り込まれたミステリというか、ホラーともとれる異色な作品です。

何度読んでも話の流れを忘れてしまうのですが、一方で怖かった、気持ち悪かったという感覚は残っている、それくらい強烈な作品です。

人によって合う合わないが顕著に出ると思いますが、驚きを求める人には是非読んでほしいと思います。

以下の道尾さんへのインタビューで、本書についても言及されています。

嗜好と文化「私のポリシー」:第82回 道尾秀介さん「やりたくないことはやらない」 – 毎日新聞

この記事では、そんな本書の魅力をあらすじや個人的な感想を交えながら書いていきたいと思います。

ネタバレになりますので、未読の方はご注意下さい。

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あらすじ

友人の死

冒頭、大人になった僕が小学校四年生の時に起きた事件について回想するという形で物語は進行します。

この時点で、妹は事件の一年後、四歳の誕生日を迎えてすぐに死んだことが分かっています。

ここからは、事件当時のこと。

僕ことミチオが小学校四年生の夏休み前の終業式の日を迎え、欠席していたクラスメイト・S君にプリントと宿題を届けに行くことになります。

ここ一年、ミチオの住む町では犬と猫が合わせて八匹も次々に殺されるという事件が起きていました。

しかも死体の膝の部分の骨は折られ、口には石けんが詰められていて、注意するよう言われていました。

S君の家に向かう途中、ミチオは九匹目の犠牲となった猫の死体を見つけます。

この猫も骨が折られ、口には石けんが詰められていて、ミチオは怖くなって走ってS君の家に向かいます。

呼び鈴を押しますが中には伝わっておらず、玄関先で飼われている犬のダイキチはミチオに対して吠え始めます。

ミチオはそれをかわし、ドア脇の呼び鈴を押しますが、それでも誰も出てきません。

意を決してドアに手を掛けると、鍵がかかっていないのか開き、ミチオは中に入ります。

薄暗い和室にS君がいますが、ミチオはすぐに違和感に気が付きます。

S君の両足は床に着いていません。

首を吊っていて、首があり得ないほど伸び、すでに死んでいました。

ミチオは怖くなって逃げ出し、学校に戻って担任の岩村に助けを求めます。

消えた死体

ミチオから事情を聞いた岩村はすぐに警察に連絡し、別の教師にミチオを送ってもらうよう頼んでからS君の家に向かいます。

ミチオが家に帰ると三歳になる妹のミカがいて、事情を説明。

そこに岩村から事情を聞いた母親が帰ってきますが、ミチオのことを嘘つき呼ばわりし、ミカを異常なほど甘やかします。

その後、岩村が刑事の谷尾、竹梨を連れて家を訪れます。

結論から言って、S君の死体は見つかりませんでした。

排泄物と思われる染みだけが残り、それも誰かにふき取られた後でした。

しかし、S君の母親が家に戻って確認すると、自殺した時に使用したと思われるロープが見つかり、さらに箪笥を引きずったような跡も見つかり、自殺が本当にあったのかどうか、何とも言えない状況にありました。

ミチオは本当にS君の死体を見たと改めて訴えますが、岩村たちは帰っていきます。

母親は彼らが帰ると、ミチオに『お前が□□□□□□□って』と言いますが、衝撃的すぎてうまく聞き取れません。(後に『また殺したんだ』と判明)

しかし、ミチオはこのまま黙っているつもりもなく、ミカと一緒に考えていると、ミカはトコお婆さんに相談しようと提案。

二人はトコお婆さんに会いに行き、事情を説明します。

すると、彼女は不思議な呪文を繰り返した後、『臭いが』とだけ囁きます。

トコお婆さんは相談した内容について答えではなく、ヒントをくれる能力を持っていて、しかしその後自分で言ったことは覚えていません。

二人はたったこれだけのヒントを頼りに、再びこの不思議な出来事について考えます。

生まれ変わり

S君の死体を見てから一週間後、ミチオはS君のことを忘れようと努めようとしていた時、家の二階から声が聞こえます。

ミチオが確認しに行くと、部屋の中からミチオのことを呼ぶS君の声が聞こえ、ミチオは驚愕します。

S君は蜘蛛に生まれ変わったというのです。

とりあえずミチオはS君をジャムの瓶に入れ、母親に見つからずに家に置くことに。

ミカにも事情を説明し、S君は事件について語ります。

自分は、岩村に殺されたのだと。

しかし、その理由は今は話せないと言いますが、事件の様子を話してくれます。

消えたS君の死体ですが、岩村が隠したのではと考えていました。

そして、現場に刑事と向かうことで、現場に残した指紋があってもおかしくない状況を作り出したのではないかと。

ここでミチオはトコお婆さんのヒントの正体に気が付きます。

死体を目撃したあの時、ミチオは岩村からハンカチを預かっていました。

ダイキチは、S君を殺害した犯人の臭いがしたから吠えたのではないかと、ミチオは考えます。

状況を整理した後、S君は二人に言います。

自分の身体を見つけてほしいと。

尾行

岩村の犯行を実証するために、ミチオたちはS君の死体を見つけることを決意。

車で持ち帰った死体を自宅に置いているのではと推測し、岩村の家に忍び込むために尾行をすることに。

事件から十日後、学校でS君の失踪についての説明会が開かれることになり、S君も連れていきます。

彼の頼みで母親に会いにS君の家に寄ると、ダイキチに吠えられている老人がいました。

泰造です。

ダイキチの首輪を押さえつけていた杭が抜け、泰造の襲い掛かろうとしますが、咄嗟のところでS君の母親が止めて事なきを得ます。

泰造は母親に何かを伝えるために家を訪れたようですが、S君は母親の顔を見られて安心し、集会に向かいます。

やはりS君の死体はいまだ見つからず、情報を集めていました。

その後、教室に集められたクラスメイトたちは岩村からいくつか質問をされますが、その時、ミチオの後ろの席に座るスミダという女の子が、S君に気が付きます。

誰にも言わないという彼女の言葉を信じ、ミチオたちは校舎の外で岩村を待ち伏せますが、谷尾たちの聞き込みで遅れそうなため、万が一を考え、一度家に戻ってミカを連れてきます。

その後、岩村が出てきたので尾行開始。

電車に乗るようなので切符を買おうとしますが、運悪く岩村に見つかってしまいます。

行き先を聞かれて駅名が出てこないミチオですが、ミカか咄嗟に答えて岩村は納得。

別れた後、岩村から少し離れた車両に乗り込みます。

岩村のアパートに到着すると、運が良いことに岩村は車で外出し、しかも鍵はかかっていません。

ミチオはミカを駐車場に隠れさせ、S君と二人で部屋の中に入ります。

そして驚愕します。

部屋の中には、ミチオと同年代の男の子の裸の写真がたくさんありました。

S君は殺された理由が分かった?と聞き、ミチオは答えようとします。

その時、なんと岩村が帰ってきてしまい、ミチオは慌ててお風呂場に隠れます。

すると、ミチオを呼ぶ岩村の声が聞こえ、ミチオは辛うじて声を殺します。

そして岩村が奥の部屋に入ったのを見て逃げ出そうとしますが、S君の声が聞こえて振り向きます。

テレビに録画されたビデオが映し出されていて、それは裸で嫌がりながらも笑うS君でした。

アパートから出るとミカと合流しますが、さっき見た映像のことは話せません。

帰り道の公園で、ミチオはS君と二人きりで話します。

岩村はああいうことが好きで、友達のいないS君は弱味につけこまれて騙され、それが行き過ぎて殺されてしまったのではないかと、S君は言います。

ミチオは彼を慰め、S君が見つからなかったことを残念がります。

そして、名札がなくなっていることに気がつくのでした。

先生の性癖

駅に着くと、ミチオたちは泰造と会います。

泰造はミチオの質問から、彼がS君の死を自殺ではなく殺人だと考えていることに気が付き、一冊の本の名前が書かれたメモを差し出します。

『性愛への審判  六村かおる』

事件に関係があるのか分からないが、気になるのだといいます。

泰造と別れると、ミチオは無くした名札のことを気にしていて、助けを求めるべくトコお婆さんに会いに行きます。

ミチオはS君が蜘蛛だということも含めて説明すると、トコお婆さんは『ダイキチ  英語』というヒントをくれます。

家に戻ると、早速ヒントの解読に取りかかります。

そこでS君は、ダイキチは元々ラッキーという名前にしようとして、見た目と合わないから日本語にしたのだと教えてくれ、ヒントの意味が分かります。

岩村の『岩』は英語で『ロック』。

泰造から教えられた本の著者は六村かおるで、六村→岩村と変換することができます。

ミチオたちは、岩村の名前がオカマっぽいと記憶していたので、かおるで間違いありません。

つまり、岩村がその小説を書いたことになります。

これが犯罪立証の役に立つのではと考え、翌日、ミチオたちは図書館に向かいます。

そこに目的の本はありました。

読んでみると、内容のほとんどが男の子の殺害、死体をいじったりすることばかりで、すぐに読むのを止めて借ります。

谷尾にこのことを伝えようと電話しますが、ミチオたちの小学校に行っていることが判明。

家に寄ってミカを置くと、学校に向かいます。

谷尾はいましたが、事情を話す前に岩村がそれを遮り、刑事たちを帰してしまいます。

そして、ミチオが自分の本を持っていることに気が付き、それを奪い取ると、余計なことを話さないよう釘を刺すのでした。

S君の嘘

翌日、S君の家の方向にパトカーが走っていくのを目撃し、ミチオとS君は向かいます。

なんと、S君の死体が家の庭で見つかったのです。

また家へ帰る途中、トコお婆さんがS君の家に向かうのを見掛けます。

その後ニュースで、S君の死体は足こそ折られていないものの、口には石鹸が詰められていたことを知ります。

また、テレビでは再び猫が殺され、足を折られ、口に石鹸を詰め込まれていたと報じられていて、その後、トコお婆さんの写真が写っていました。

S君の母親に会いに行き、事情を聞きます。

S君の死体はダイキチが運んできたもので、どこから運んできたのかは分からないといいます。

さらに、警察にも言っていないとした上で、S君は以前、腐った肉を利用して、死体を持ってこさせる練習をダイキチにさせていたことを教えてくれます。

また、家の縁の下から猫の声が聞こえ、ある時から聞こえなくなったから母親が確認すると、そこには仔猫の骨が入った瓶があったのだといいます。

つまり、S君が瓶の中で仔猫を飼い、成長するにつれて大きさが合わなくなって死んでしまったことになります。

家に戻ると、ミチオはS君を問い詰めます。

しかし、S君は悪びれる様子もなく、ミチオは彼を信じていいのか分からなくなっていました。

やがて恐ろしいことを思い付きます。

S君にプレゼントとしてミチオが用意したのは、S君よりも巨大な女郎蜘蛛でした。

嫌がるS君を無視してミチオは女郎蜘蛛を瓶に入れ、S君は逃げ惑います。

やがて逃げるのを諦めたS君は『ミチオ君も、みんなと同じだったんだね』と口にし、ミチオはようやく自分のしてしまったことに恐怖を覚えます。

慌てて瓶を床に落とすと、出てきた女郎蜘蛛を潰します。

ミチオはS君にもミカにも謝罪し、一応元通りの関係になります。

しかしこの時、ミチオはなぜS君が瓶の中で仔猫を飼ったのか、分かる気がしました。

告白

ミチオは終業式の日、岩村から預けられたS君の作文を思いだします。

そこには小さな×印が八つ書かれていて、その意味をようやく理解します。

ミチオはミカを残し、S君に自分の考えを披露します。

作文にある文字に×印をつけたのではなく、地図に自分が犬猫を殺した場所をチェックし、それが下にあった原稿用紙に写ってしまったのだと。

一方、S君は自分が確かに犬猫の死体の発見場所を記載して、それが写ったものだとへらへらしています。

しかし、ミチオはこう返されることを予想していました。

S君の作文には八つの×印が書かれていますが、八匹目が新聞に載ったのは作文提出の三日後で、殺した本人以外が書けるはずがありません。

騙されたと知ったS君は怒りますが、人間だった時の記憶が曖昧だと犬猫殺害を認めません。

これ以上いがみあっても仕方ないと仕切り直し、二人は新たな可能性に目を向けます。

集会の日の朝、泰造はダイキチに跳びかかられていましたが、それは死体の臭いがついていたからではないか。

犬猫を殺害していたのは、泰造なのでは?

ミカとS君を残し、ミチオは泰造の家に向かいます。

家の中に通されると、泰造はすでに刑務所に入る覚悟を決めていました。

そこでミチオは、泰造が犬猫を殺害したことを知ることが出来た理由を話しますが、泰造は自分が犯人?と疑問を挟みます。

そして、誰にも言わないと約束した上で、泰造は言います。

犬猫を殺害していたのはS君で、その足を折っていたのが自分だと。

真実

はじめは一年前、近所で小学生の女の子が交通事故で亡くなった頃のこと。

泰造はアルバイトでS君の家の近くにある百葉箱の中を覗いて林の温度と湿度を確認するという作業をしていました。

そしてその作業の帰りに、最初の犬の死体を見つけました。

その時、泰造を恐怖が襲います。

昔、母親が亡くなった時、近所の人が棺に死体を納めるために母親の死体の足を折りましたが、数日後に死体は消えてなくなり、足を折る作業をした人の一人が殺害されるということがありました。

それ以来、泰造は死体が蘇るのではないかと怯えていました。

もちろん、蘇ったわけではありません。

死体は犬か何かが掘り起こし、殺人も単なる偶然で、泰造もそのことはもう分かっていますが、理屈では割り切れないトラウマになっていました。

だから泰造は、蘇らないようにと犬の死体の足を折りました。

そして、そんな泰造の姿をS君は見つけ、同じ考えを持つ人間だと同情するのでした。

それ以来、S君は犬猫を殺害するとメモに死体の置き場所を記し、泰造に教えるようになりました。

しかし、足を折ったのは泰造ですが、口に石鹸を詰め込んだのは彼ではないといいます。

そして九番目の地図が泰造の元に届くと、地図はS君の家を示していて、行くとS君が自殺していました。

最後に、泰造はS君の死体は持ち去っていないと否定し、話を終わらせます。

その後、ミチオはS君の母親も会い、こう聞きます。

ダイキチは、石鹸が嫌いかと。

すると、過去の経験からダイキチは石鹸を怖がるようになったことが判明し、ミチオは庭を調べます。

そして、向日葵の咲き並ぶ場所であるものを見つけ、家に戻ってS君を問い詰めます。

ダイキチに死体を持ち去る練習をさせたのは、死体発見現場近くで自分の目撃証言があると不利になるため、ダイキチに回収させようとしたのです。

ところが、泰造を見掛けたことで計画を変更することになり、今度はダイキチに死体を持っていかせないようにする必要がありました。

そこで死体の口に石鹸を詰め込み、ダイキチから遠ざけたのです。

それでもしらをきろうとするS君でしたが、ミチオの本気な様子に真実を話そうとしますが、その前にミチオはS君を潰し、ミカに食べさせるのでした。

この部分について、意味が分からないと思いますが、その理由は後述します。

終わり

百葉箱のところにいる泰造。

ミチオがなくした名札は彼が持っていて、ミチオのフルネームが『摩耶道夫』だと判明します。

そこにミチオが現れ、まだ警察に連絡していないことを知ると、間に合ったと胸をなで下ろします。

ミチオは、泰造の嘘を見抜いていました。

泰造が死体の足を折ったのは、蘇るかもという恐怖からではなく、ただ折りたいという願望からでした。

そして、S君の死体を持ち去り、部屋に細工したのも泰造です。

死体遺棄が発覚することを恐れたからです。

ところが、すでにミチオが死体を目撃した後だったので、その努力も無駄に終わります。

死体は物置に隠しておきましたが、死体が発見された日、ダイキチが持ち去ってしまいます。

では、なぜ自殺した時は死体はそのままだったのか。

それは、S君があらかじめ石鹸をくわえていたからです。

ミチオが庭で見つけたのは、この石鹸です。

しかし、ミチオが重要視しているのはここからです。

ミチオは足を折るという欲求を抑えられず、S君の自殺後、一匹の三毛猫を殺害しますが、それこそがトコお婆さんだったのです。

ミチオはトコお婆さんと普通に会話していましたが、それらは全てミチオの妄想ということになります。

本当のトコお婆さんはすでに亡くなっていて、ミチオはあの三毛猫がトコお婆さんの生まれ変わりだと信じていたのです。

泰造は、トコお婆さんを殺害することで一連の事件の犯人がS君ではないと思わせるよう撹乱します。

『性愛の審判』について教えたのも、撹乱の一つです。

それに対して、ミチオは物語を終わらせたくてここ来たのだといい、一年前、泰造が目撃したスミダの交通事故についても言及。

彼女もまたすでに死んでいて、ミチオが話しているのはただの百合の花で、彼はそれがスミダの生まれ変わりだと信じていました。

さらに、ミカに話し掛けますが、泰造からしたら、それはただのトカゲです。

つまり、ミチオはS君をトカゲに食べさせただけなのです。

ここでミチオの異常性が明らかになり、彼は泰造の家から持ってきた包丁で泰造を殺害し、自殺に見せかけようとしますが、泰造は慌てて逃げます。

しかし、やがて百葉箱に戻ってきてしまい、中に隠れて体力の回復を待ちます。

ところが、外から強い衝撃が入り、ミチオの声がします。

彼はあらかじめ泰造に腐った豚肉をぶつけてマーキングしていて、ダイキチを連れて追わせたのです。

死を覚悟する泰造ですが、なぜかダイキチはミチオにおそいかかり、その隙に逃げ出そうとします。

しかし、ミチオはダイキチを返り討ちにし、泰造も手にかけます。

泰造は途切れる意識の中、自分の足を折られる音を聞くのでした。

結末

一週間後、ミチオはミカの他にカマドウマを飼っていました。

なんと、泰造の生まれ変わりです。

ニュースでは、これまでの事件は泰造がしたこととして処理されていました。

ここで、泰造はS君が本当に自殺したのかとたずねます。

それに対して、ミチオは自分が自殺させたのだといいます。

夏休み明け、演劇会をやることになっていて、ミチオはS君とペアを組む予定でした。

しかし、ミチオは嫌で仕方なかったため、終業式の日の朝、死んでくれるようお願いし、本当に自殺してしまうのでした。

またS君が自分が殺されたと言い出したことについて、ミチオは彼のために何か頼み事をされたかったため、そういう物語を作ったのでした。

しかし、泰造は嘘だと否定。

本当は自殺させてしまったことを忘れたかっただけだと指摘し、ミチオもこれを認めます。

さらに、母親がどうしてミチオを異常に憎むのか、理由が判明します。

三年前、ミチオは母親の誕生日に買った花を下駄箱に隠し、サプライズを仕掛けます。

火事だ!下駄箱が燃えている!と叫び、母親にそこを調べてもらおうとしたのです。

ところが、母親は階段を踏み外し、お腹の中にいたミカは死んでしまったのです。

ここまできて、ミチオは物語に疲れてしまい、壊すことを決意。

花火に火をつけ、カーテンに向けると燃え始めます。

部屋が燃え上がる中、父親と母親がやってきて、彼女はミカを抱きかかえますが、それはただの人形でした。

ミチオは二人だけで逃げるよう言いますが、咄嗟に父親と母親はミチオを窓から突き落として助けるのでした。

その後、親子四人が焼けた家の跡を眺める描写があります。

この時、ミチオには火傷の痕があります。

母親はミチオとミカが無事に生きていることを喜び、父親も同意。

家族が再生したような描写です。

今後、ミチオは関西に住む親戚に引き取られることになり、ミチオは今夜、待ち合わせることになっていました。

最後の描写で、四人を太陽が照らし、影を作りますが、影の数は一つだけ。

つまり、生き残っているのはミチオだけで、両親は火事で死んでしまったことが読み取れます。

つまり、他の三人はまたしてもミチオが作り出した物語の一部ということになります。

おわりに

冒頭で、ミチオは彼女(=ミカ)のことを思い出したら、きっとまた自分が壊れてしまうと言っているので、現在はまともになっているようです。

しかし、生まれてこなければ良かったとも言っているので、今も決して幸せというわけではないのでしょう。

視点であるミチオ自身が狂っているので、読者がこのトリックに気が付くのは難しく、賛否両論あると思います。

一方で、作品全体が醸し出す気持ち悪さ、怖さは一読の価値ありだと思いますので、叙述トリック好きな方はぜひ読んでみてください。

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