『オーデュボンの祈り』徹底ネタバレ解説!あらすじから結末まで!
コンビニ強盗に失敗し逃走していた伊藤は、気付くと見知らぬ島にいた。江戸以来外界から遮断されている“荻島”には、妙な人間ばかりが住んでいた。嘘しか言わない画家、「島の法律として」殺人を許された男、人語を操り「未来が見える」カカシ。次の日カカシが殺される。無残にもバラバラにされ、頭を持ち去られて。未来を見通せるはずのカカシは、なぜ自分の死を阻止出来なかったのか?卓越したイメージ喚起力、洒脱な会話、気の利いた警句、抑えようのない才気がほとばしる!第五回新潮ミステリー倶楽部賞を受賞した伝説のデビュー作、待望の文庫化。
「BOOK」データベースより
2000年に発売された伊坂さんのデビュー作。
大学生の頃に読んで今回が十年ぶりの再読でしたが、当時とは違った面白さを見つけることが出来ました。
デビュー作とは思えない設定と文章力。
一見、まとまりのないことだと思えた事柄が徐々に収束していき、納得と感動の結果がそこに待っています。
他作品から伊坂さんの小説を読み始めた人からしたら、本作はファンタジーでシュールなので少々驚かれるかもしれません。
ですが、彼の持ち味は健在で、その魅力をもっと味わいたいというのであれば、本作は外せない重要な作品だと思います。
本作は場面が次から次へと入れ替わること、登場人物が多いこともあって、読み終わっても把握しきれていないという人もいると思います。
そこでこの記事では、そんな人の頭の整理になるように登場人物、あらすじなどを僕の感想を交えながらまとめていきたいと思います。
ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。
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登場人物
ここでは主な登場人物を挙げていきます。
あらすじを追う前の整理に役立つと幸いです。
伊藤
本作の主人公。五年間勤めたソフトウェア会社を退職。コンビニ強盗をして捕まるが、パトカーから逃げ出したところを轟に連れられて荻島に来ていた。
城山
伊藤の中学時代の同級生。現在は警察官。残忍な性格だが頭が良く、裁かれない立ち位置から人の破滅を眺めることを何よりも好む。伊藤の逮捕に関与し、そこから元恋人の静香に目をつける。
静香
伊藤より二歳年上の元恋人。自分の存在価値を求め、仕事に打ち込むキャリアウーマン。城山から伊藤がコンビニ強盗をしたことを聞き、彼の行方を気にしている。
祖母
すでに他界した伊藤の祖母。彼の行動原理は彼女の教えによるところも多く、度々回想で登場する。
優午
喋るカカシ。百五十年も前から荻島を見守っていて、未来を見ることができる。ただし、未来について他人に教えることはほとんどなく、島民からは信頼されると同時に恨まれることも少なからずあった。
日比野
まるで長年の友人のように伊藤に接してくる島民。幼いころから両親がいないせいか、考え方が独特で人とのコミュニケーションがうまくいかないことがしばしばある。
轟
荻島で唯一島内外を行き来している男。
園山
元画家。五年前、妻を殺害されてから気が狂い、反対のことしか話せないようになってしまった。また決まった時間に散歩することでも知られ、島民の時計代わりにもなっていた。
曾根川
伊藤より三週間前に荻島に来た、百五十年ぶりの島外の人間。伊藤とは違い、優午の存在を信じなかったり轟ともめたりと、島民からはあまり歓迎されていない。
若葉
十歳前後の少女。地べたに寝そべり、耳を当てて自分の心臓の音を聞くのが好き。
草薙
二十代前半の青年。郵便配達をしている。妻の百合が彼の支えであり、百合の言うことを鵜吞みにする傾向がある。
百合
草薙の妻。落ち着いた雰囲気の女性。亡くなる人の手を握る仕事をしている。
桜
荻島で唯一殺害を許されたといっても過言ではない男。桜は気に入らなければ老若男女問わず殺害し、島民もそれを当たり前のように受け入れている。ちなみに名前の発音は春に咲き乱れる『桜』と同じ。
ウサギ
市場にいる女性。体重は三百キロくらいあり、気が付いたら身動きがとれなくなり、それからは市場の自分の店で暮らすようになった。身の回りの世話は夫がしてくれる。
田中
三十代。生まれつき右足の股関節にハンデを抱え、普通に歩くことが出来ない。
佳代子と希世子
双子の姉妹。美しい容姿をしているが、残酷だと優午は称している。
小山田
日比野の幼なじみで、警察官。威張ったり見栄を張ることはなく、勤勉家。
あらすじ
荻島
主人公の伊藤が目覚めると、彼がいたのは荻島という江戸時代から外界から遮断されている島でした。
伊藤はコンビニ強盗に失敗し、パトカーで連行されている最中に逃走。
轟という島で唯一島内外を行き来する男に出会い、この荻島に連れてこられたのです。
荻島にはこの百五十年間、島外からの人間が来たことはなく、伊藤が二人目でした。そして三週間前、一人目となる曾根川という男も轟が連れてきたとのこと。
伊藤は訳が分からないまま、日比野という馴れ馴れしい男に荻島を案内してもらいます。
癖の強い島民が多い中でも特に伊藤を驚かせたのが、優午という名前の喋るカカシでした。
優午は未来を見通すことができ、伊藤が来ることを予め知っていました。
そして、荻島について教えてくれます。
かつて鎖国にあった日本において、支倉常長という男がスペインとの外交にこの島を利用するよう取り付け、だから西洋の文化が入ってきたというのです。
また現在は、轟が島外から日用品などあらゆるものを持ち帰ってくるため、外との関わりを遮断していても現代のものがあるとのこと。
また日比野から、この島には足りないものがある。そして、それを外の人間が置いていくというものだという言い伝えがあることを教えられます。
しかし、この時点で伊藤にそれが何なのかは分かりませんでした。
その後も様々な島民と触れ合うが、知れば知るほど不思議で仕方ありませんでした。
夜、眠れない伊藤は、再び優午の元を訪れて話します。
普段未来のことを教えてくれない優午だが、帰りたいと思うまで帰らない方が良い、飛び降りそうな人がいたら助けなさい、元恋人である静香に手紙を出し続けなさい、自転車をこぎましょうなど、様々なアドバイスをくれます。
それからオーデュボンというアメリカ人の話になります。
百年以上前に鳥の図鑑を出版した人で、優午は鳥が好きなのだという。
また優午は、島に欠けているものを知っているが、それが何なのかが分からないと言います。
疑問が多く残りましたが、少しだけすっきりした伊藤は、アパートに戻って眠りにつきました。
未来の見えるカカシ・優午の殺害
ところが翌日、日比野から優午が殺されたと知らされる伊藤。
現場に駆け付けると、優午はバラバラにされ、頭部は無くなっていました。
ここで伊藤の脳裏にある疑問がよぎります。
優午はこの未来を予測できなかったのか?
警察の小山田は調査に乗り出しますが、これまで警察は事件が起きるとまず優午に頼っていたため、調査するためのノウハウを持っておらず、調査は進展していきません。
伊藤は独自に調査することを決め、まずは優午から教えてもらったオーデュボンについて教えてもらうために田中の元を訪れます。
オーデュボンとは?
田中は生まれつき足に障害を持ち、それゆえに島民ともあまり仲がよくありません。
そんな彼にとって、友人と呼べるのが優午と鳥たちでした。
田中が話すには、オーデュボンは動物学者であり、リョコウバトという種類の鳩を発見しました。
彼らは億単位の群れで行動しますが、人間の乱獲によって絶滅に追いやられてしまったのです。
田中の見せてくれたリョコウバトの求愛の絵。彼はこの鳥たちを愛していたのです。
しかし、何もできなかった。
優午はそんなオーデュボンに自分を重ね、この島がもしリョコウバトのような末路を辿るのであれば、オーデュボンのように見ているしかないと嘆いていました。
しかし、それが優午殺害とどう繋がっているのか、伊藤には分かりません。
その後も多くの島民から優午殺害前後の様子を聞きこみますが、なかなか犯人特定には至りませんでした。
また小山田の話から、未来の見通せる優午を邪魔に思う人間が優午を殺害したのではないかと思うようになっていました。
また日比野は佳代子とデートすることになり、伊藤に自転車をこいでほしいと依頼してきます。
それは優午から言われた言葉であり、そこに何かを感じた伊藤は引き受けることにします。
伊藤は草薙に自転車を借り、日比野のデートを盛り上げます。
その後、笹岡という男の息子が女性を襲おうとしたところ、桜に殺害されてしまいますが、島民は誰も騒ぎません。
伊藤は改めて島の不思議なルールに驚かされました。
曾根川の殺害
時は同じくして、曾根川が殺害されているのも発見されました。
しかし、頭を殴られて殺害されていることから、桜がやったのではないと分かります。
一体誰がこんなことをしたのか。
優午を殺害した犯人が見つかっていないにもかかわらず、謎がまた一つ増えてしまいました。
百合の失踪
今度は百合がいなくなったと草薙から知らされます。
日比野は草薙を焚き付け、女性を襲っていると噂されている安田という男が犯人だと決めつけ、こらしめに向かいます。
一方、伊藤は桜に会いに家まで行きます。
伊藤は彼を恐れていましたが、普通に会話することが出来、若葉からもらった花の種を植えて、花を育てようとまで言いました。
今度は轟の家に向かいます。
すると、家の地下から何やら物音がして、伊藤はそれを指摘しますが、轟は明らかに動揺していて、何かを隠していることは明白でした。
一方、笹岡の葬儀に現れた安田を問い詰めますが、彼は百合の失踪の件について何も知りませんでした。
しかし、そこに桜が現れ、伊藤たちは去る背中に銃声の音を聞いたような気がします。ただし、安田が殺されたかどうかは分かりません。
その後、伊藤は日比野に轟が怪しいと話を持ち掛け、百合を監禁しているのではと考えましたが、そのタイミングで百合は自分で戻ってきました。
話を聞きたいのは山々ですが、まずは轟のことを対処することにしました。
地下を捜索するためには一時的に轟を島の外に出す方が良いと考え、伊藤は前に渡して葉書をやめ、今から渡す葉書を急いで静香に渡してほしいと依頼します。
轟が島を出てから捜索することにしたため、その間に百合に会って話を聞きます。
百合は至って平然としていましたが、誰が亡くなったのだという伊藤の問いに、表情を曇らせます。
彼女の仕事は死にゆく人の手を握ることであり、伊藤は百合が誰かの手を握りに出かけていたのではないかと考えていました。
小山田の乱入で答えは聞くことができず、仕方なく今度は轟の家に向かいますが、道中で伊藤は気が付きます。
百合が看取ったのは、園山の妻なのだと。
実は園山は狂ってなどいなく、嘘しか喋らないという嘘をつき続けていたのです。
つまり、五年前に園山の妻は死んでいなかったのです。
真相を知りたいところですが、まずは轟の家に向かいます。
地下を調べますが、オーディオ機器があるだけで、他には何もありませんでした。
落ち込む伊藤を日比野が励まし、次は園山の家に向かいます。
しかし、園山は留守で、代わりに声を掛けてきたのは百合でした。
彼女の語る真実。
やはり園山の妻は生きていて、つい朝方に亡くなったのです。
妻は五年前の暴行で顔にひどい傷を追い、外に出られなくなってしまいました。
そこで園山は気が狂ったふりをすることで家に人を近づけず、妻の世話に専念することにしたのです。
また百合は曾根川には何もしていないと言い、同時に園山もこの件とは関係ないことが証明されました。
そんな中、またしてもトラブルが発生します。
足の不自由な田中が見張り台に昇り、無理に下ろそうとしたら飛び降りると言うのです。
困惑する一同ですが、ここで伊藤はまたしても優午の言葉を思い出し、彼を助けるために上へ昇ります。
梯子を昇る間、伊藤は優午のことを考え、ここにきて真相を理解します。
優午は確かに未来を見通していて、伊藤に指示を出していたのです。
そして頂上につき、伊藤は言います。
田中が優午を殺害したのであり、それを優午が望んだのだと。
田中は無言ですが、それは自白と同じでした。
自殺できない優午は、誰かに殺してもらうしかないのです。
また、頂上には絶滅したはずのリョコウバトがいました。
ここで全てが一つに繋がります。
優午は未来が見通せることに疲れ、死にたいと考えていました。
また曾根川の目的が、絶滅したはずのリョコウバトを撃ち殺すことだと判明します。
鳥を愛する優午にとって、それは許せないことでした。
だから彼は死ぬ前に田中に指示を出し、曾根川が死んだ夜、彼を河原に呼び出しました。
しかし、田中は故意に曾根川を殺害したのではありません。
防衛のために持っていたブロックですが、その日、伊藤の漕いでいた自転車のライトが光ったのです。
すると、驚いた曾根川は転び、同時に田中は手からブロックを離しました。
結果として、それが曾根川の頭に落ち、彼は死にました。
それを優午は予測していたのです。
謎はこれで解決しました。
田中はオーデュボンの書いたリョコウバトの求愛の絵に向かって祈ると、それを紙飛行機にして空に放ちました。
また優午の頭は田中が途中まで持ち帰り、さらにそれを園山が持ち帰ったことが分かりました。
それを伊藤は、園山の妻に優午が謝罪したかったのだと推測します。
またウサギに会いに行くために、さらに園山に運んでもらったのだと推測しました。
城山の魔の手
物語の裏では、伊藤の元恋人である静香に目を付けた城山が、彼女のことを狙っていました。
薄汚い男を雇い、乱暴をしようとまで考えていました。
しかし寸前で、伊藤が急ぎだと言って渡した葉書を持った轟が二人の前に現れ、静香は伊藤が荻島にいることを知ります。
混乱する静香ですが、ここでとうとう城山は本性を露にし、轟を脅迫して荻島に連れて行かせます。
静香も同行させ、さらなる悪だくみを考えていました。
結末①~城山の最後~
荻島に到着した城山たち。
まず伊藤は移動で疲れたのでお茶でももらおうと近くの家、桜の家に寄ります。
彼は警察官という肩書きで桜を安心させようとしますが、残念ながらそんなことは桜に関係ありません。
しかも運が悪いことに、城山は桜が植えた花の種が埋まった場所を踏んでしまったのです。
当然、城山には裁きが下ります。
事情が呑み込めないまま、桜に拳銃で殺害されるのでした。
結末②~この島に足りなかったもの~
城山の脅威が去り、伊藤と静香は再会します。
静香は城山が撃たれたことで動揺していましたが、いいんだと優しく言う伊藤。
そして、最後の謎に気が付きます。
轟の地下室にオーディオ機器しかなかったのではなく、オーディオ機器を隠していたのです。
彼は桜がうるさいことを嫌っているのを知っていて、隠していたのです。
さらに伊藤は、島に足りないものが何かを思いつきます。
それは『音楽』でした。
伊藤は静香に持ってきたアルトサックスを丘の上で吹いてほしいとお願いします。
荻島は、彼女を百年以上も待っていたのだと。
そして最後に、丘の上には園山が持ってきた優午の頭がありました。
おわりに
かなり内容を省略していますので、あくまで読後の整理として活用していただけると幸いです。
当然のことですが、作品はこの記事の何百倍も面白いです。
デビュー作から才能を見せつけてくれた伊坂さんには、本当に感服しました。
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