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『θは遊んでくれたよ』徹底ネタバレ解説!あらすじから結末まで!

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25歳の誕生日にマンションから転落死した男性の額には、θという文字が書かれていた。半月後、今度は手のひらに赤いθが書かれた女性の死体が。その後も、θがマーキングされた事件は続く。N大の旧友・反町愛から事件について聞き及んだ西之園萌絵は、山吹ら学生三人組、探偵・赤柳らと、推理を展開する。

「BOOK」データベースより

Gシリーズ第二弾となる本書。

前の話はこちら。

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前作の『φは壊れたね』と比べると、グッと事件解決に向けた推理が面白くなり、何より森さんの作品を読んできた人であればつい『おっ』と言ってしまうような人たちが登場、もしくはその存在の気配がします。

相変わらずタイトルの意味はこの時点でも分かりませんが、今後への期待がより高まる、そんな話です。

この記事では、そんな本書の魅力をあらすじや個人的な感想を交えながら書いていきたいと思います。

ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。

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飛び降り自殺と謎のマーキング

冒頭、早川聡史という男性が部屋のベランダから落ちて死亡する事件が発生します。

彼の額には、口紅と思われる赤い文字で『θ』と書かれていました。

その半月後、今度は木村ちあきが、勤務先の病院の屋上から転落して死亡。

こちらも自殺と見られ、彼女の右手の手のひらには赤い口紅のようなもので同じく『θ』と書かれていました。

二つの事件を刑事の近藤が担当しますが、二人の被害者にこれといった共通点が見つかりません。

そうこうしているうちに、今度は高島健之が仕事先の建設現場で死体で見つかり、こちらも自殺である可能性が高いことが分かりました。

そして、彼の右足の裏には、やはり赤い口紅で『θ』と書かれていました。

分析

西之園萌絵がこの事件について知ったのは、旧友でN大病院で働く反町愛から話を聞いたからでした。

彼女は警察に依頼され、三つの口紅が同一のものなのか調べるためにN大のキャンパスにいました。

一方、三人の被害者・高島はC大の助教授・国枝の同期で、加部谷恵美、海月及介は国枝の授業の一環として高島に現場を案内してもらう予定になっていましたが、延期となっていました。

萌絵はこの件について国枝に相談し、国枝の下で研究する山吹早月も事件について知ることとなります。

さらに今度は、探偵の赤柳が亡くなった早川の姉から依頼され、事件について調べ始め、恵美のことを尾行していました。

こうして多数の人間が知るところとなり、事件は次第にその様相を呈していきます。

チャット

山吹の友人・舟元は早川とバイト先で知り合い、彼の葬儀に参加します。

そこで早川の姉に声を掛けられ、早川のパソコンを調べてほしいと依頼されます。

舟元はパソコンを自宅のマンションに持ち帰ると、偶然同じマンションに住む赤柳と会い、早川の姉が事件について知りたがっていることを話し、自分はパソコンの中身を調べることにします。

早川はパソコン初心者で、大したデータもなく、舟元はブラウザの履歴を調べます。

すると、ブックマークに登録されているものの、パスワードがないと閲覧できないページがあり、URLに『theta(θ)』とありました。

さらに調べると、パスワードを忘れた時用のヒントを見つけ、『葉っぱは見られ、鳥は死なない』と書かれていました。

舟元は自分だけではどうにもならないと判断して、山吹に助けを求めます。

この時、山吹は海月と食事をしていて、去り際、フェニックスという言葉を残します。

スペルは『PHENIX』と『PHOENIX』があり、アメリカでは後者が多いといいます。

山吹は海月と別れ、舟元のマンションに行くと、海月に言われたスペルを打ち込みます。

すると、正解は『PHOENIX』でした。

ヒントの意味ですが、『葉っぱは見られ』は観葉植物のフェニックスを意味し、『鳥は死なない』は不死鳥(フェニックス)を意味しています。

目的のホームページはシンプルで、画面では『あなたは誰ですか』と問いかけてきます。

山吹はパソコンの向こうの誰かとチャットを繰り返すうちに、相手が人工知能であると予測します。

θについて聞くと、チャットをする二人の関係がθだといいます。

しかし、プログラムゆえか、ほとんど情報は得られませんでした。

一方、愛が病院の夜勤についている時、女性が病院の屋上から飛び降りたと同僚の飯場が教えてくれます。

愛も現場に行きますが、助かる見込みはなさそうです。

女性が担架で運ばれる中、脱げたハイヒールの内側には赤い文字で『θ』と書かれていました。

状況整理

四人目の飛び降りから三日後、萌絵と恵美は事件のことを近藤から聞きつけ、N大病院の愛のもとを訪れます。

四人目の飛び降り者は田中智美といい、かつて非常勤事務員としてN大病院で働いていたことがありました。

また被害者の検死には全てN大病院の郡司教授が関与していること、飯場が以前智美のパソコンの画面を見た時、デスクトップの壁紙には『θ』の一文字が写っていたこと、使われた口紅はどれも同一であることが判明します。

しかし、四人には決定的な繋がりがなく、θだけが四人を繋げている状況で、犯人もその目的も見えてきません。

それから、被害者には男性もいるため、自殺だとすると口紅を使うことに違和感があります。

内緒のお願い

数日後、N大病院で夜勤中だ愛は、郡司に内緒の頼まれごとをします。

彼は口紅を愛に渡し、事件で使われたものと比較してほしいといいます。

事情は分かりませんが、愛に断ることはできず、過去の試料と比較分析します。

すると郡司の持ち込んだ口紅は、事件で使われたものと同一だと言ってもいいくらいに成分が似ていたのです。

愛がこの結果をどうしようかと悩んでいると、萌絵から電話が入り、それから少しして愛のところまで来てくれます。

萌絵は屋上が見たいといい、愛に鍵を開けてもらって屋上に出ます。

自分の目で確かめ、こんな場所で無防備でいられるということは、相手はよほど親しい人間なんだろうと萌絵は推測します。

その時、救急車のサイレンが鳴り響き、M工大に向かっているのが分かります。

二人は病院から少し離れたM工大に行くと、そこには屋上から飛び降りて重症だと思われる女性が倒れていました。

救急隊員が搬送作業をする中、その女性の頬には赤い口紅で『θ』と書かれていて、愛は女性が郡司の娘・美紗子であることに気が付きます。

一方、萌絵は現場を確認しようと建物に入り、女子トイレにブランドものの口紅が置かれているのを見つけます。

その時、犀川から電話が入ります。

犀川が約束をすっぽかしたことで萌絵は怒っていましたが、彼女が飛び降り自殺をすると勘違いした犀川は慌て、迎えに来てくれることになります。

二人は犀川の運転する車の中で事件について話し、仲直りします。

事件とはあまり関係のない描写ですが、二人の関係が以前よりも対等になっていることがうかがえ、森ファンとしては嬉しいシーンでした。

あの人の影

五章の冒頭、赤柳は見知らぬ女性と待ち合わせをし、彼女の掛ける電話の相手と話します。

相手はVシリーズに登場する保呂草でした。

赤柳と保呂草は知人で、赤柳はMNIという宗教団体について聞きます。

保呂草は直接会う時間はないとして、電話を持つ女性に相談してくれれば自分にも伝わるとして、電話を切ります。

この女性はおそらくですが、同じくVシリーズに登場する各務亜樹良ではないかと思います。

赤柳は、保呂草の代わりに女性にことの詳細を話します。

早川がやっていたチャットについて、以前にも同じような話を聞いたことがあり、それがMNIでした。

調べると、チャットのサーバーがMNIの研究所にあることが分かりました。

さらに彼らが待ち合わせした建物、それこそが今は誰も使っていないMNIの総本部でした。

しかし、女性は手を引いた方が良いと忠告。

MNIの資金も、組織も、全て真賀田四季に吸収されたといい、これには赤柳も驚きます。

ちなみに四季は、S&Mシリーズなど多くの森作品に登場する天才科学者です。

結局、別れ際になっても女性は名前を教えてくれませんでした。

真実

M工大から飛び降りたのはやはり美紗子でした。

今も意識不明の重体ですが、今も治療中です。

萌絵は郡司から頼まれ事をしたことを警察に話すよう愛に勧めますが、彼女は将来のことを考えて決められずにいました。

そこで国枝の研究室に集まった面々で、近藤や赤柳も含めて事件ついて話すことになります。

まずはじめに近藤より、萌絵が見つけた口紅から美紗子の指紋が見つかったこと、これまでの四件の事件で使われた口紅と類似していることが報告されます。

次に赤柳から早川の件が報告されますが、宗教団体の絡んだ自殺ということが以外分かっていません。

それから早川は自分宛てにメモとしてメールを送っていて、そこには『シータは遊んでくれたよ』と書かれていました。

これでは埒が明かず、萌絵がもう一度説得し、愛の持つ郡司に関する情報を開示します。

それでも結論は出ず、近藤と赤柳が帰ります。

その後も話を続けていると、海月が事件について口を開きます。

彼は仮説だと前置きした上で、早川のは単なる自殺で、二人目以降が偽装だといいます。

つまり早川は自分でθと書き、二人目以降は別の人物がそれぞれを関連付けさせるために書いたことになります。

二人目は自殺ですが、θと書かれたのは検死の時で、それが出来たのは郡司です。

三人目も同様ですが、恵美は同じ口紅であることに違和感を覚えていました。

しかし、これも考えてみれば簡単で、愛に渡されたサンプル自体が入れ替えられていたのです。

そして犯人の目的は四人目の智美の殺害でした。

彼女だけが靴の中にθが書かれていましたが、他と違い、智美に怪しまれずに体に書くことができなかったからです。

萌絵の推理から、犯人は智美と親しい人物ということになります。

それが可能だった人物として、海月は飯場を挙げます。

口紅のサンプルの入れ替えは郡司にもできますが、智美の殺害時、郡司は地上にいたため犯行は不可能です。

智美は以前、N大病院に勤めていたことがあったため、そこで飯場と親しくなったのでは、そして彼女のパソコンにθの文字が書かれていたのは飯場の嘘だと考えることができます。

さらに美紗子の事件について、これは彼女自身による飛び降りだと考えられ、そうすることで五つの事件の関連性を高め、飯場の犯行だと発覚する可能性を低くする効果があります。

美紗子の頬にあるθの文字は、彼女自身が書いたものです。

推測ですが、飯場と美紗子は特別な関係にあり、郡司も公認の中でした。

しかし、飯場にとって智美が邪魔になり、リスクを負ってでも殺害し、後に郡司が飯場、もしくは郡司が事件に関与していることを突き止め、美紗子の持つ口紅の分析を愛に依頼したことになります。

これが事件で使われたものと一致したのは、飯場が何らかの事情で美紗子の口紅を手にし、それを犯行に使ったことが考えられます

話が終わり、愛は萌絵の運転する車で送ってもらうことになり、海月の仮説は正しいといいます。

一方、実は萌絵は事件の真相を知っていました。

というのも、愛の話抜きで犀川が事前に謎を解いていたからです。

それを聞いた近藤もあえてあの場では黙っていたのでした。

萌絵も本当のことを話すつもりでしたが、海月が話しだすうちにタイミングを失ってしまったのでした。

ここで、これまでの犀川の役割を海月が果たしていることが明言されます。

結末

最後に、早川も利用していたチャットで人工知能と会話する人物がいます。

明記されませんが、これが四季に見えたのは僕だけでしょうか?

会話文のみですが、『死にたいですか?』と聞いていない方が四季だと思います。

おわりに

少しずつ面白さに拍車がかかってきたように思います。

過去作とのリンクも含めると、やはりファンの方がより楽しめることは間違いないと思います。

次の話はこちら。

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