『青空と逃げる』徹底ネタバレ解説!あらすじから結末まで!
深夜の交通事故から幕を開けた、家族の危機。押し寄せる悪意と興味本位の追及に日常を奪われた母と息子は、東京から逃げることを決めた――。
辻村深月が贈る、一家の再生の物語。読売新聞好評連載、待望の単行本化。
Amazon内容紹介より
とある事故をきっかけに失踪する父親。
父親を探す人たちに追われる母親と子供は居場所を追われ、いつ終わるとも知れない現実逃避に疲弊し、とある結末に行き着く、そんな内容になっています。
母親である早苗と息子の力(ちから)の視点を行き来する本作では、それぞれの不安が描かれ、親子のすれ違いや絆の再確認など、幾度となく心を動かされます。
辻村さんには二人のお子さんがいて、それが本作、特に早苗の細かな心情にまで行き届いているのを感じ、今の辻村さんだからこそ描くことの出来る作品になっているのだと感じました。
以下は本書に関する辻村さんへのインタビューです。
青空に思いを託して書いた、家族再生のミステリー…作家・辻村深月さん|OTEKOMACHI
この記事では、そんな本作の魅力をあらすじや個人的な感想を交えながら書いていきたいと思います。
ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。
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平穏を切り裂く来訪者
本庄早苗はかつて小さな劇団に所属していて、そこで夫の拳と出会い、息子である力を授かりました。
早苗は出産を機に劇団を止めてしまうが、拳は劇団員として働き、平穏な日々を過ごしていました。
ところが、拳が交通事故に遭ったという知らせから一家は不幸の道を突き進むことになります。
事故当時、拳は遥山真輝という女優が運転する車に同乗していて、そこからダブル不倫報道が世間を賑わせます。
おまけに事故で真輝は顔などに大きな傷をつけてしまい、女優としての復帰は絶望的。
それを苦にして自殺したことから拳は、真輝が所属していたエルダープロの人間に追われることになり、失踪してしまいます。
エルダープロは何としても拳の行方を掴もうと今度は早苗と力を執拗に追いかけ、恐怖を覚えた早苗は力を連れて東京を離れて、四万十に逃げてきました。
力の小学校のことを考えて夏休みの間だけとはいえ、早苗の友人である聖子や四万十の人たちの温かさもあり、二人は束の間の安らぎを得ます。
しかし、それも長くは続きません。
エルダープロの人間は早苗が働く食堂に現れ、拳の行方を聞いてきます。
早苗は聖子の後押しもあり再び力を連れて逃げ出します。
行く当てもない中、なんとなく島がいいのではという早苗の提案により、二人は兵庫県にある家島に向かうことにしました。
家島での束の間の生活
家島に辿り着いた二人ですが、観光シーズン以外での島外の人間は珍しく、島民からは歓迎と疑いの眼差しで見られます。
夏休みも残りわずか。その間は島にある旅館に泊まることにしました。
早苗が不安を抱える中、力は自分より二歳年上、中学一年の藤井優芽と出会います。
彼女もまた今年の四月に家島に来たばかりでした。
両親が離婚し、部活では部員とトラブルを起こし、行きづらくてサボってしまう優芽に力は不思議と親しみを覚え、わずかですが同じ時を過ごします。
そして家島を去る時、優芽はまた来てねと力に言い、力はそれを嬉しく思いました。
ところが、帰りの船の中、早苗は小学校の始業式が今日だったことに気が付きます。
始業式に間に合わせるはずが、意図せず力を無断でサボらせてしまった。
しかしその一方で、東京に戻る覚悟が自分にはないことに気が付きます。
また力から、拳の事故を機にクラスでいじめられていることを聞かされます。
これで東京に戻る理由はなくなり、早苗はもう少し二人で逃げようと言います。
この時、早苗の脳裏にある記憶が蘇ります。
力の夏休み初日、買い物から帰ってくると部屋に違和感があり、力のクローゼットを調べます。
すると、そこからタオルにくるまれた血まみれの包丁が見つかり、早苗は力が拳を刺したのではないかと疑いました。
しかし、それは今になっても聞くことができず、早苗の胸の内にしまわれています。
思い出の地、別府
次に二人が向かったのが、昔、拳や早苗が芝居で来たことのあるという別府でした。
早苗は昔の記憶を頼りに宿を見つけ、仕事を探します。
その中で自給の良い『砂かけさん』の求人を見つけ、すぐに応募します。
面接を経て、早苗は無事に採用され、砂かけさんとして働くことになりました。
一方、周囲からは二人は逃げてきたのではないかと疑われていてましたが、本当のことは話せずにいました。
そんな中、力も銭湯のお風呂掃除をしてお小遣いをもらうなど、子供なりに頑張っていました。
早苗は砂かけの仕事に苦労しながらも、力がいるおかげで負けられないと踏ん張り、頑張ることが出来ました。
そして仕事にも慣れ、ここで暮らすことを考え始めます。
力にもここの学校に通わないかと提案しますが、それでも力の頭には東京の学校のことが思い出され、この話は保留になります。
また砂かけさんにはそれぞれ一芸があるものだと教えられた早苗は、劇団仕込みの歌で周囲を驚かせ、以前にも増してここでの居場所を手に入れます。
ここまでは順調でした。
しかしある日、テレビ局が早苗の働く砂場を訪れたことで事態は一転します。
訪れた俳優の中にはエルシープロ所属で早苗の知る人物もいましたが、対応はベテランの砂かけさんがするため、早苗に話が回るはずはありませんでした。
しかし、話の流れで歌のうまい砂かけさんがいることを知ったテレビ局が早苗に興味を持ち、そこでエルダープロの人間に早苗の存在がバレてしまいます。
この時点で、バレていないと早苗は言い聞かせ、平常心を保つよう努力します。
しかし、結果として、早苗の存在は知られていました。
年末のある日、力の前に自殺した遥山真輝の息子、達海佑都が現れます。
来た目的が分からない力を尻目に佑都は来いよと強気な姿勢で、力は彼についていきます。
その中で教えてもらったこととして、彼は一人で別府に来ていました。
また被害者面している早苗と力が気に食わないと佑都が言い、思わず力は佑都に飛び掛かります。
最初こそ意表をついて優位に立つ力ですが、年齢、体格で勝る佑都に勝てるはずもなく、殴られることを覚悟します。
ところが、佑都は復讐のために来たのではありませんでした。
佑都は自分の母親がどうしようもない人間だと知っていて、それでも嫌いじゃなかったと言います。
彼もまた、力と同様に両親に巻き込まれて傷ついていたのです。
さらに佑都が言います。
拳は仙台にいると。
早苗の元に二人で戻ると、拳が仙台にいることを彼女に伝える力。
早苗は佑都が真輝の息子であることから警戒しますが、力が嘘はついていないと思うという言葉を信じます。
そして、やはりエルダープロの人間に自分の居場所がバレてしまったことを知り、もうここにはいられません。
早苗はお世話になった人たちにまた来ることを約束し、力と二人で仙台に向かいます。
父を探して仙台へ
仙台に着いた二人ですが、拳の居場所を知りません。
途方に暮れていると、疲労から早苗が倒れてしまいます。
子供である力にできることはありませんが、それでも助けを呼ぶことは出来ます。
力は近くでボランティア活動していた人たちに声を掛け、母が熱を出しているから助けてほしいとお願いし、一人の女性が二人の泊まる宿に来てくれます。
その人物の名前は、谷川ヨシノ。
『島はぼくらと』に登場した、コミュニティデザイナーの彼女です。
上記作品を読んだ人であれば、ヨシノの登場が何よりも強い光に感じられたはずです。
ヨシノは気を遣わせない接し方で二人を世話し、年末年始の宿まで提供してくれることになりました。
早苗の体調も少し回復し、二人はヨシノに連れられて『樫崎写真館』を訪れます。
宿を経営しているわけではありませんが、震災の時にはボランティアの人を泊めることも多かったと言い、二人はここに住まわせてもらうことにしました。
また早苗はヨシノに拳の行方を知らないかと尋ねます。
すると、ヨシノは知りませんでしたが、ヨシノの知り合いに拳を知っている人がいて、仙台を中心とした劇団の手伝いをしていたが、今はどこにいるか分からないと言います。
行方こそ分かりませんでしたが、拳が生きていたことに安堵する早苗。
早苗は泊めてもらった恩を返したいといい、劇団で培ったメイク術を駆使して写真を撮りに来た人たちのメイクをします。
また、早苗はとある決意をして、力に聞きます。
「お父さんと連絡、取ってる?」
それに対し、力は頷き、拳の居場所も知っていると言いました。
結末
仙台に着いて、力が助けを求めたこと。
そのアドバイスをくれたのは、拳だったのです。
力は夏休みの初日、右手に傷を負った拳と会っていて、連絡先を教えられていたのです。
クローゼットにしまわれていた包丁についた血は、拳のものでした。
しかし、切りつけたのは力ではありません。
佑都でした。
復讐のために拳を殺そうとした佑都ですが、包丁を握りしめて止めたのが拳だったのです。
手の傷は、その時に出来ました。
拳は自分でしたことだからと佑都を逃がし、傷がなくなるまで東京を離れようと決心したのです。
また拳と真輝の間には何もなかったと拳は言います。
そうして拳と力は別れた後も連絡を取り合っていました。
毎月のお小遣いや風呂掃除でもらったお小遣いは、そのために使っていたのです。
また佑都のもとに差出人も住所も書かれていないハガキが届き、それが拳からのものだと気が付いた佑都。
消印が仙台だったため、拳が仙台にいると知ることが出来たのです。
本当は両親に離婚してほしくない力ですが、拳がいなくなってからの早苗は逞しく生きていける強さを持っていて、どちらかを選ぶことなんて出来ません。
だから早苗に、離婚したいならそうしたらいいと言います。
それに対し早苗は、力が拳とどんなやりとりをしていたのかを聞きます。
その中でエルダープロとの話し合いがなんとかなりそうなこと、拳が北海道にいることを教えてもらいます。
早苗は何よりもまず、拳に会いに行きたいと言いました。
そして、二人は北海道に向かいます。
女満別空港に着くと、そこで拳は待っていました。
腕の中に飛び込む力と、受け止める拳。
その手には見たのことのない傷がありました。
早苗は、ここに来る飛行機の中でみた青空のことを拳に話そうと思いました。
早苗は拳に荷物を預けると、三人で手を繋ぎ、親子で一緒に太陽の下へと歩いていきます。
おわりに
揺れ動く心理描写はさすがとしか言いようのない出来でしたが、それに加えてその土地ごとの風景の描写は本当に鮮やかで、『島はぼくらと』に通じるものを感じました。
辻村さんの作品はどこかで必ず繋がっている。
そのことを再確認した作品であり、結末に心が優しくなれる温かさが待っていました。
この感動は僕の文章で表すなど到底できません。
ぜひ本書を手にとって読んでみてください。
その感動が、あなたをきっと豊かにしてくれます。
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