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『アリス殺し』徹底ネタバレ解説!あらすじから結末まで!

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最近、不思議の国に迷い込んだアリスという少女の夢ばかり見る栗栖川亜理。ハンプティ・ダンプティが墜落死する夢を見たある日、亜理の通う大学では玉子という綽名の研究員が屋上から転落して死亡していた―その後も夢と現実は互いを映し合うように、怪死事件が相次ぐ。そして事件を捜査する三月兎と帽子屋は、最重要容疑者にアリスを名指し…邪悪な夢想と驚愕のトリック!

「BOOK」データベースより

『不思議な国のアリス』、『鏡の国のアリス』といえば誰もが知る児童小説であり、数多くの作品に影響を与えていますが、本書もそれらがモチーフになっています。

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さらに面白いのが、本書では不思議の国の登場人物と地球での登場人物は表裏一体の関係にあり、お互いに影響を与え合っているということです。

そのため話が複雑に絡み合い、適当に読み流していると意味が分からないということにもなりかねません。

そこでこの記事では、本書の魅力をあらすじや個人的な感想を交えながら書いていきたいと思います。

ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。

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あらすじ

夢の中での殺人

アリスや白兎、メアリーアンに蜥蜴のビルなど、不思議な国のアリスでお馴染みのキャラクターが登場する世界から物語は始まります。

眠り鼠をポケットに入れたアリスはビルの提案で敵か味方を見分ける合言葉を提案され、『スナークは』と聞かれたら『ブージャムだった』と答えることを約束します。

不思議の国は慌ただしく、どうやらハンプティ・ダンプティが塀から落ちて死んでしまったことが判明します。

捜査には頭のおかしい帽子屋があたり、彼はこれは殺人事件だと主張します。

一方、地球を舞台にした世界。

栗栖川亜理は不思議の国の夢ばかりを見ていることに気が付き、そのことに違和感を感じながらも大学に向かいます。

すると大学には多くの警官が行きかっていて、一年上の大学院生・田中李緒に事情を聞くと、王子玉男という博士研究員(ポスドク)が屋上から落ちて死んだことを教えてもらいます。

悲しい事件ですが、亜理には他に考えることがありました。

実験装置を予約して今日実験する予定でしたが、捜査の関係で今日は実験できず、このままでは学会発表に間に合いません。

そこで亜理は今週実験装置を予約している同学年の井森健に順番を譲ってもらえるよう交渉します。

井森にも事情があって譲ってはもらえませんでしたが、別の装置で代用できるとアドバイスをもらい、一件落着のはずでした。

しかし、彼は何かを思い出したといい、夢の世界にいたビルしかしないはずの合言葉を口にします。

『スナークは』

これに対して亜理は、答えてしまったら二度と元の世界に戻れないと理解しながらも答えないわけにはいきませんでした。

『ブージャムだった』

二つの世界はリンクしている

井森のこの言葉で、地球と不思議の国には繋がりがあることを知った亜理。

つまり亜理=アリスで、井森=ビルです。

一方、不思議の国ではハンプティ・ダンプティを殺害した犯人の捜査が始まり、頭のおかしい帽子屋と三月兎が担当していますが、彼らはアリスが犯人であると譲りません。

当然、アリスは動機がないと反論しますが、夢の世界の住人は頭のおかしい人ばかりで、話せば話すだけ向こうのいいように解釈され、一向にアリスの容疑は晴れません。

さらに白兎は『ハンプティ・ダンプティの落下音の後、アリスが庭から逃げ出した』と証言し、アリスはますます不利な立場に立たされます。

一方、現実の亜理は井森と夢を共有していることを最初はなかなか信じられませんが、井森と話すにつれて信じないわけにはいかなくなります。

井森は亜理よりも先にこの現象に気が付いていて、王子もまた夢の世界の住人、ハンプティ・ダンプティであることを突き止めていました。

彼はこの現象を『アーヴァタール現象』と呼び、不思議の国に自分たちのアーヴァタールがいて、また王子とハンプティ・ダンプティの死から、二つの世界の死はリンクしている可能性があることを口にします。

つまりこのまま不思議の国でアリスが犯人と断定されれば、女王の命令によって死刑にあい、それは現実世界の亜理の死でもあるのです。

二人目の被害者

アリスは何としても無実を証明しようとビルと行動しますが、現実世界の井森とは違ってビルはあまり賢くなく、頼りになるとは言えません。

これらのことから、必ずしも現実と不思議の国で見た目や能力が似ているわけではないことが分かります。

ビルは目撃者である白兎に会い、証言の意図を確認することを提案します。

二人は白兎に会い、地球のことを話します。

すると、白兎もまた同じ夢、不思議の国でいう地球のことを見ていることが分かり、彼の地球での名前を聞きます。

最初は記憶が曖昧でしたが、やがて白兎は自分が田中李緒だと思い出します。

また証言についても聞きますが、間違いないと断言します。

さらにそこに頭のおかしい帽子屋から、グリフォンが殺されたという報告が入ります。

現実では同じ大学の篠崎教授が死亡し、死因は牡蠣中毒でした。

つまり、彼がグリフォンということになります。

不思議の国では、ハンプティ・ダンプティ殺害の容疑もあり、今回もアリスがやったのだという見方が強まっています。

本来であれば殺害時刻はビルと一緒にいたので、それを証言してもらえればアリバイが成立するはずですが、ビルの記憶力ではそのことを保証することが出来ず、新たな証拠を探す必要があります。

そこで二人は、篠崎研の広山准教授、田畑助教に話を聞きます。

ここでも不思議の国の話を出し、広山=公爵夫人、田畑=ドードーであることが判明します。

広山は多忙を理由に二人の頼みを断ろうとしますが、亜理は言葉巧みに広山を説得し、夢の世界でアリスが犯人でないことを証明する手伝ってもらうことにします。

不思議の国では、グリフォンの死因が判明し、大量の牡蠣を口にいれたことによる窒息でした。

またこの世界の牡蠣はしゃべることが出来、まだ生き残っている牡蠣を連れてきて事情を聞きます。

牡蠣の証言からグリフォンが騙されて大量の牡蠣を一度に口に入れたことが判明しますが、犯人の名前を口にする前になんとビルが食べてしまいます。

こうして貴重な証人はいなくなってしまい、アリスはますます不利な立場に置かれます。

唯一の証人の死亡

現実では、二人の元に谷丸、西中島という刑事が訪れ、彼らもまた夢の世界のことを知っていることを匂わせてきます。

亜理は事情を話そうとしますが、信用できないという井森の言葉によって今は夢の世界での正体は隠すことにします。

また亜理は李緒から、びっくりパーティーについて、井森には絶対に内緒にしてほしい、当日まで二人だけの秘密にしてほしいと言われます。

その後、亜理は李緒と不思議の国のことについて話していましたが、突然、そこに包丁を握りしめた男が登場します。

男の動きから自分が狙われていると感じた亜理は李緒と離れ、男の注意を引こうとしまうが、振り向いた時には李緒が刺されていました。

亜理は男を地面に倒し、李緒の元に駆け寄りますが、彼女は『レッドキングには誰も絶対に勝てない』と言い残し、死んでしまいます。

その後、男は持っていた包丁で自殺してしまいます。

夢の世界では李緒のアーヴァタールである白兎が死んでいました。

彼のお手伝いをしているメアリーアンによると、誰かから草刈り機をもらい、その箱を開けた途端、彼は消えてしまったのだといいます。

状況から考えて、草刈り機ではなくスナークだったと推測されます。

スナークとはとある生物のことで、草刈り機と紛らわしいと言えばスナークと決まっています。

また羽毛を持っていて噛みつくものや頬髭を生やして引っ掻くものなど、色々な種類が存在しますが、あるスナークはブージャムであり、ブージャムに出会うと消え失せて、二度と現れないのだといいます。

こうして唯一の証言者である白兎を失い、アリスはいよいよ追い込まれていきます。

ダイイングメッセージ

現実で、李緒を殺害したのが武者砂久という男だったことが判明します。

彼は覚せい剤を打っていましたが、あくまで不思議の国で殺害された→現実世界も連動したということであり、武者に動機があったわけではなく、たまたまその役に当てられただけに過ぎません。

また会話の中から、谷丸たちは事件の真相は不思議の国に隠されていて、そちらで証拠を掴み次第、犯人、もっといえばアリスの首をちょん切りたいという思惑が透けて見えます。

もはや猶予はなく、亜理は井森と共に現実世界で調査を進めます。

ちょうどその時、篠崎研の田畑が精神的に不安定になっているという話を聞きます。

また広山は不思議の国では公爵夫人で、 女王に対して頭のおかしい帽子屋を捜査官のに任命しようとしたのを反対してくれた経緯もあり、信用できると再度聞き込みに行きます。

ハンプティ・ダンプティ、グリフォンの殺害について、当時、女王は公爵夫人とクリケーをしていてアリバイがあり、執拗にアリスを犯人にしたがる理由が分かりません。

また、公爵夫人は白兎から、ビルのためにびっくりパーティーを開くのだと聞いていたことが判明します。

また田畑の様子がおかしいことについて聞くと、広山が無理難題を押し付け、とても一人ではさばききれない仕事を割り振り、一種のパワハラを行っていました。

彼女はそのことについて何も気にしていませんが、今は気にしている場合ではありません。

田畑には一応篠崎教授を殺害する動機が浮かび上がってきたため、現実で広山が田畑を、不思議の国でアリスたちがドードーを追及することで話がまとまります。

不思議の国で、アリスとビルはドードーに地球でのことを聞きますが、犯人だと疑われていることに気が付いてドードーは口をつぐみ、真実を教えてもらえません。

またその時、ビルの元に公爵夫人から手紙が届き、そこには例の件で知らせたいことがあるから、至急、公爵邸の裏庭の物置小屋に一人で来てほしいという内容が書かれていました。

一方、現実では広山が二人の中学生にお金を渡しているところを目撃する亜理。

広山が言うには、中学生たちが因縁をつけてきて、命が惜しければ金をよこせと言われ従ったのだといいます。

しかし、彼らと事件の関連性は今は分かりません。

そんな時、谷丸たちが亜理たちの元を訪れ、井森との関係性を聞いた上で、ある写真を見せてきます。

そこには真っ赤に染まったよく分からない物体が写っていて、警察はそれを井森の死体だといいます。

当時、彼は酒に酔って道端で眠り込み、そのまま嘔吐した。

さらにそこに野良犬が現れ、彼を食べ、血まみれの野良犬が発見されたことで井森の死体が発見されたのだといいます。

あまりのことに亜理は嘔吐してしまいますが、それでも気を持ち直し、事件について考えます。

これまでの会話からどうやら井森が真犯人に至る重要な事実に気が付いたことが分かり、これまでの情報から推理を始めます。

一方、ビルがどのように殺害されたのかも明かされます。

彼が一人で物置小屋に行くと、外から鍵を閉められ、中にはバンダースナッチという狂った獣がいて、ビルは絶望します。

近くにいるスナークがブージャムだった時か、ヴォーバルの剣なしでジャバウォックに挑む時に匹敵する絶望。

ビルはあっという間に食いちぎられてしまいます。

意識が朦朧とする中、彼はアリスにダイイングメッセージを残すのでした。

真犯人とあっけない最期

亜理はビルの残したダイイングメッセージの存在を知り、広山の元を訪れます。

ビルは死ぬ間際、血で床に『公爵夫人が犯人だということはあり得ない』と残していました。

そんな当たり前のことをなぜ残したのか?

広山と話す中で、亜理は真実に気が付きます。

亜理が犯人であると証言した白兎。

彼は視力が弱く、臭いでアリスのことを判別していたのです。

またビルのためのびっくりパーティーについて、白兎は不思議の国の広山に話していましたが、白兎が公爵夫人に話していたとは考えにくい。

すると、広山の不思議の国でのアーヴァタールは公爵夫人ではなく、白兎のお手伝いのメアリーアンだと分かります。

白兎は体臭が似ているメアリーアンとアリスを勘違いしていました。

また白兎がアリスをメアリーアンだと勘違いしている時に、彼女は地球では亜理なんだとビルに紹介されたため、白兎=李緒は亜理=メアリーアンだと最後まで勘違いしていたのです。

つまり、白兎の証言に間違いはなく、犯人はメアリーアン=広山ということになります。

真実を突き付けられると、広山はあっさりと自分が犯人だと白状します。

彼女は十年以上前から地球と不思議の国のリンクには気がついていて、出世するために篠崎教授を殺したのです。

初めは王子=篠崎だと勘違いして殺害したため、王子は哀れな犠牲者ということになります。

さらに広山は自分の正体がバレることを恐れ、白兎とビルも殺害したのです。

追い詰められた広山は鋲打ち銃を取り出し、それで亜理を殺害するように見えました。

しかし彼女は銃を自分の眉間に当て、自殺してしまいました。

こうして事件は解決したように見えました。

真相とルール

犯人は分かりましたが、自殺してしまったためそれを証言してくれる人がいなくなってしまい、窮地に落とされるアリス。

すると、そこに謎の人物が現れ、メアリーアンが犯人であることを証明できるといい、アリスを連れてある場所に向かいます。

すると暗闇の中、その人物はアリスの首、手首、足に枷をつけて拘束し、正体を現します。

メアリーアンでした。

実は不思議の国が現実で、地球は赤の王様(レッドキング)の見ている夢、つまりアーヴァタールだったのです。

だから地球で死んでも不思議の国の自分は無事で、地球のアーヴァタールも復活する。メアリーアンはこのことを知っていて自殺したのです。

メアリーアンはアリスを殺害するのはリスクが高いと判断し、彼女を監禁することに決め、彼女にクッキーを食べさせます。

しかし、監禁もほんの束の間です。

クッキーを食べたアリスの足が大きくなり、足枷の中で圧迫されます。

先程のクッキーには体が大きくなる茸が入っていたのです。

メアリーアンはアリスの体が大きくなり、枷のついた首、手首、足首が切断される。

その後、それぞれにネックレス、ブレスレット、アンクレットをつけて、事故に見せかけようとしているのです。

アリスは必死の抵抗を見せますが、拘束されている上にメアリーアンもクッキーをタベテいるため巨大化し、突き飛ばされてしまいます。

そうしているうちに足首が切断され、いよいよ死ぬのも時間の問題です。

その時、アリスはポケットからあるもの掴み、窓の格子の間から外に投げます。

そのままアリスは死亡し、メアリーアンは外に出てアリスが投げたものを探しますが、何も見つかりませんでした。

結末

地球で勝ち誇る広山。

ところが、彼女の前に亜理が現れ、彼女は驚愕します。

実はここで大きな勘違いがありました。

亜理はアリスのアーヴァタールではなく、アリスと行動を共にしていた眠り鼠だったのです。

そして、アリスのアーヴァタールは亜理のペットのハムスター・ハム美だったのです。

アリスは死ぬ間際、眠り鼠を窓の外に逃がしていたため、こうして亜理は助かったのです。

そこに刑事が二人現れますが、広山はあくまでしらを切ります。

ところが、ここでさらなる事実が発覚します。

谷中が女王、西中島が公爵夫人だったのです。

広山が公爵夫人を名乗った時点で嘘に気が付き、ずっとマークしていたのです。

こうして女王自らが真相を知ったため、広山にもはや逃げ場はありません。

不思議の国にて、メアリーアンは処刑されます。

ところが、実は一度も処刑などしたことがなかったため、メアリーアンの首は一向に切断されず、死ぬほどの苦しみだけが続きます。

そして、地球側。

広山からお金をもらっていた中学生は頭のおかしい帽子屋と三月兎のアーヴァタールで、小遣いを渡されて手なづけられていたのです。

最後に、地球なのにチェシャ猫が現れ、メアリーアンが無茶をしたことで夢に綻びが生じ、赤の王様(レッドキング)が目覚めようとしていることを告げます。

この地球はレッドキングの夢であり、彼が目覚めれば当然消滅します。

亜理は大好きな世界が消滅してしまうと涙しますが、レッドキングがまた眠れば新たな夢が始まるとチェシャ猫は言い、亜理は次の地球がいい地球であるよう祈るのでした。

おわりに

真実に至るまでのいくつものカラクリもそうですが、会話の至るところにユーモラスが溢れる名作でした。

本書を見てアリスに興味を持った人は、ぜひルイス・キャロルの原作を読んでみてはいかがでしょうか。

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