【感想】『総合タワーリシチ』ハイテンションすぎる百合コメディ【ネタバレ注意】
ド猫っかぶり神奈が入学したのは曲者ぞろいの総合学科。省エネ天才児の悠に翻弄されつつ戦いの火蓋は切って落とされた!?百合アンソロつぼみの超ハイテンション百合コメディが新装版になって登場!その後の話描き下ろし24ページつき!
Amazon商品ページより
2017年に完全版として完成した名作百合コメディである本書。
癖がかなり強めですが、登場人物はコロコロ表情が変わって可愛いし、様々な百合カップルが同時に楽しめるのが見所です。
あまり深く考えず、作品の持つ勢いに身を委ねるのが正解です。
また、完全版を読むにあたって注意点もあるので、そこも解説したいと思います。
この記事では、本書の魅力や評価の分かれるポイントについて書いています。
多少のネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。
登場人物
内容に入る前に、主要な登場人物六人について説明します。
『総合タワーリシチ』完全版 1、2巻表紙より
メインカップルの二人。左が霧上神奈、右が羽岡座悠。
『総合タワーリシチ』完全版 1巻より
神奈たちと行動を共にするちゃらんぽらんズ。(神奈命名)
左から時任都、日下部ちはや、小間物屋リカ、穂高暁。
霧上神奈(きりがみかんな)
新入生代表スピーチをするほどの頭脳で、秀才。
極端な負けず嫌いで、誰に対してもムキになって突っかかる傾向にある。
特に無気力にも関わらず自分よりテストの点数が上だった悠に突っかかるが、じょじょにその魅力に気が付いていく。
不器用だが優しいところがあり、何だかんだいって面倒見が良い。
問題が起こるとすぐに暴力・破壊行為で解決しようとする癖があり、本書がハイテンション過ぎる理由の多くは神奈のおかげ。
羽座岡悠(はざおかゆう)
神奈が初対面で見惚れるほどの容姿で、全国模試一位をとるなど頭が良い。
どこか抜けていて天然なところがあり、会話がかみ合わないこともしばしば。
神奈との出会いこそ最悪だったが、次第にお互いに惹かれあっていき、恋愛面では神奈をリードしている。
穂高暁(ほだかあかつき)
メガネがトレードマーク。
整った容姿と気さくな一面から女子人気が高く、リカによく嫉妬されている。
気配りが出来るようでいて人の気持ちに鈍感で、ちはやと同じくアホ要員の一人。
時任都(ときとうみやこ)
温厚な性格で、運動神経抜群。
部活動には所属していないが、助っ人として色々な部活に呼ばれるほど。
巨乳ということもあって、展開に困るとすぐにお色気要員にされる。
常識人に見えて実はポンコツな面が目立ち、アホ要員であるちはやに実は面倒を見てもらっている。
作者いわく『真面目系クズ』。
ちはやにかなり依存していて、彼女が学校を風邪で休んだだけでこの世の終わりのように落ち込む。
また風邪の引いたちはやから電話でパンツの色を聞かれて嬉しそうに即答するなど、アホなちはやに釣り合うだけのぶっ飛び方をしている。
日下部ちはや(くさかべちはや)
自由奔放で気分屋。
美術が得意だが、自分がしたいと思うことにしか力を発揮できない。
トラブルの発端の多くはちはやで、幼馴染の都に迷惑をかけているように思われがちだが、実はちはやこそが真面目系クズの都の面倒を見ている。
小間物屋リカ(こまものやりか)
口数が少なく印象が薄いが、実は絶世の美少女で、昔は週一で誘拐されていたほど。
そのせいで男性恐怖症で、高所、血液など苦手なものが多く、かなり嫉妬深くてすぐに暁に八つ当たりをする。
神奈いわく、悠と合わせて『顔以外残念』。
儚げな見た目に反してけっこう男気があり、特に作者・あらた伊里さんの別作品『とどのつまりの有頂天 2巻』に収録されている番外編は必見です。
魅力
勢いが群を抜いている
百合コメディは数多くありますが、その中でも勢いが群を抜いています。
置いていかれないように必死に読んでも平気な顔して読者を置き去りにしてくれます。
真面目な人は理解しようとじっくり一生懸命読もうとするかもしれませんが、そんなに肩ひじを張る必要はありません。
表情がコロコロ変わり、好きなように動き回る少女たちを見ているだけで幸せになれるので、まずはその勢いに身を任せてしまってください。
じっくり読むのは二周目以降にすると、違った楽しみ方もできてオススメです。
純愛も楽しめる
勢い、つまりコメディ部分から書きましたが、本書はもちろんそれだけではありません。
百合の見どころである恋愛部分もかなりオススメです。
主に完全版二巻からになりますが、主要三カップルの関係が一気に進行し、恥ずかしがりながらも自分の気持ちを伝えるその姿は愛おしく、尊いものです。
色々な百合カップルが楽しめる
本書では主要な登場人物だけで三通りの百合カップルが楽しめます。
神奈と悠の恋愛は一番王道なもので、ページもしっかり確保されています。
一方で都×ちはや、暁×リカのカップルも後半になると一気に存在感を出し、違った百合模様を見せてくれるので、ぜひ自分のお気に入りのカップルを見つけてください。
あと、後半に登録する生徒会の面々の四角関係的な百合も必見です。(完全版二巻(Kindle版)の236ページ(88%))
個人的には服部→藤が一番好きで、あれはドキドキが止まりません。
百合度が高すぎない
百合度が高いと妙に生々しく、それが苦手だという人もいると思います。
特に社会人が主人公の作品にその傾向がありますが、本書は百合度がそこまで高くないので苦手な人も安心して読むことができます。
しかし、これは決して百合度が低すぎるというわけではありません。
少女たちが自由に動き回る可愛らしさがあれば、恋愛の時に見せる恥じらいと真剣さなどツボをしっかり押さえているので、あなたの百合を求める心をしっかり満たしてくれるはずです。
評価の分かれるポイント
百合度は低め
完全版二巻に収録されているあとがきにて、百合度はそこまで高くないと言及されています。
これは百合度がグッと上がった二巻を基準に発言されているので、一巻ではなおさらです。
少女たちの愛らしい戯れ、そして純愛を楽しむには十分すぎるほどの百合度ですが、もっと肉体関係など濃厚なものが欲しいという人には物足りないと思います。
登場人物が覚えにくい
これは作者のあらた伊里さんの作品に共通していえることですが、まず登場人物が短い話のわりに多いです。
特に本書はメインキャラクターが六人いるのですが、慣れないうちは顔と名前がなかなか一致しません。
しかも名前がちょっと珍しかったり、作中での呼び方に統一感がないので、余計に覚えるのに苦労します。
逆に読めば読むほど愛着が湧いて深く楽しめる作品なのですが、そこに辿り着くまでに少し苦労するかもしれません。
完全版の収録順に注意
これは読む際の注意ですが、完全版ではなぜか一巻の本編の後に二巻以降の書き下ろしが収録されています。
Kindle版でいうと230ページ(85%)以降のことです。
気が付かずに読むと、前後で少女たちの関係性に大きなズレが生じ、混乱したまま終わることになってしまいます。
書き下ろし自体は最高としか言いようのない出来なので、読む順番としては『完全版一巻(書き下ろし前まで)』→『完全版二巻』→『完全版一巻(書き下ろし以降)』でお願いします。
おわりに
慣れるまでに時間がかかる作品ですが、読めば読むほど馴染みが出て、とても愛着の持てる作品に成長してくれます。
僕が求める愛らしくて尊い百合が詰まった作品なので、百合に興味があるけれど馴染みがないという人も含めて読んでみてください。
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