『違国日記 2巻』ネタバレ感想!あらすじから結末まで!
人見知りな小説家・35歳(亡き母の妹)。素直な姪っこ・15歳(姉の遺児)。女王と子犬。…まだ慣れない2人。人見知りの少女小説家・高代槙生(35)が、姉の遺児・田汲朝(15)を勢いで引き取ってから、同居生活が始まった。卒業式のため久しぶりに中学校へ登校した朝は、とあるショックな事件により、親友・えみりに激昂して、学校を飛び出してしまう。ぐちゃぐちゃな心を抱えて帰った朝。しかし、家にいるのは〝大人っぽくない大人〟槙生なのだった。さて、不器用な女王の反応はーー?
Amazon内容紹介より
不器用人間と子犬のような姪がおくる年の差同居譚、素顔が見えてきた第2巻!
前の話はこちら。
槙生に引き取られ、少しだけ落ち着いた朝ですが、槙生から今までの住んでいた家の整理に行こうと提案されます。
死んだ両親との思い出が残る家を訪れ、二人にどんな変化が訪れるのか?
相変わらず言葉選びや仕草がいちいち自然で、とても素直に読める作品でした。
そして、何気ない一言が人生の教訓のようにずばずばと心に刺さります。
ここでは、あらすじと個人的な感想を書いていきたいと思います。
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朝の住んでいた家に到着した二人は、作業を分担して整理を始めます。
槙生は姉が暮らしていた家を複雑な心境で片づけていきます。
そこから見えてくるのは、今まで自分が見たことのなかった姉でした。
そして、何かを見つける度に槙生を否定する姉の言葉が蘇り、いちいちため息をつく槙生。
ふと『来週中』という文字が目につき、槙生はベランダの物干し竿にぶら下がったタオルを見て思います。
この家には、来るはずだった来週が訪れず、そのままにされているのです。
世界から忽然と存在が消える。
嫌いな姉とはいえ、思わずしんどいなと呟いてしまいます。
しかし、休んでばかりもいられません。
コーヒーを飲んで休憩しながら次の段取りを考えていると、朝の手には誕生日にもらったというお気に入りの赤いマグカップが握られていました。
槙生は赤い食器を買ったことがないので、すぐ朝のだと分かるねと言います。
それから二人は冷蔵庫の整理に入り、綺麗に使われている様子は槙生の家とは大違いです。
槙生が冷蔵庫から取り出した瓶。
中にはピクルスが漬けられていました。
槙生たちの母もよく作ったというと、朝はそれが好きで、お母さんもよく作るよと言います。
そこで槙生は、朝が母親のことを現在形で話すことに気が付き、英語の授業のように過去分詞、現在完了進行形ついて説明します。
すると、朝も槙生が母親のことをいつも過去形で話すことに気が付くと、槙生は過去完了形だと言います。
ここで色々と会話をしますが、槙生の言い方はいちいち難しく、でもそれが朝には心地よかったりします。
結局、ピクルスは持って帰ることになり、細かく刻んでちらし寿司にしようと槙生が提案すると、朝は喜んで整理に勤しみます。
しかし、ねむいと呟く朝に、槙生はショックで弱っていることを心配し少しでも寝ることを勧めます。
すると朝は、眠たくなったら寝ると言って自分の部屋の片づけに向かいます。
いなくなると、槙生は思わず大きなため息をつきます。
ゴミが溜まると、槙生はゴミを捨てに外に出て姉が見てきたであろう外の景色を眺めます。
それから何度もさよならと呟きながらゴミを捨てますが、部屋への帰り道もさよならは止みません。
こんなに悲しくないのが嘘のように。
部屋に戻ると朝は眠っていて、槙生は悲痛な面持ちでそれを見るのでした。
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大体片付け終わると、唐突に明日が卒業式だということに気が付いた朝。
すでに捨てる袋の中に入れてしまっていたため、二人で手分けして探しますが、槙生はふと家族の良いことも悪いことも思い出します。
卒業式当日。
一人でいいの?と念押しするも、うんと素っ気ない朝。
出かけようとすると、槙生は記念に一枚写真を撮り、朝は照れ隠しのように不機嫌になりながら家を出ます。
夜出前にしようと思うと槙生が言うと、即座にピザと返事するのでした。
玄関が閉まると、槙生は一息つきます。
撮った写真を眺めてもっとちゃんと撮っておけば良かったと思いながらも、仕事に取りかかります。
学校に着くと、朝の親友のえみりが涙を浮かべながら朝に歩み寄り、手を取ります。
するとその背後から朝を呼ぶ教師の声が聞こえ、職員室に来るよう言われます。
意味の分からない朝に、えみりは事情を話そうとしますが、教師はそれを遮ろうとします。
しかし、今じゃなきゃダメなのッ!とえみりが言い切り、そして朝の両親が亡くなったことを母親に話したところ、母親が先生に電話し、学年中の連絡網で朝のことが回ってしまったのだと言います。
朝は驚く間もないまま職員室に連れていかれ、謝るえみりだけが置き去りでした。
職員室に連れていかれた朝ですが、先生の余計な気遣いに反発し、今度は静かにと別の先生に注意され、彼女は激高します。
ふつうで卒業式に出たかったのに!!
ゴミ箱を蹴飛ばすと、先生たちの静止を振り切って廊下に出ます。
廊下にはえみりが待っていましたが、最悪、大ッ嫌いとひどい言葉をぶつけると、学校を後にします。
道中、あなたの感じ方はあなただけのものという槙生の言葉が蘇ります。
気が付くと、引き払ったはずのマンションに着いていて、ただならぬ様子に管理人は心配しますが、朝はそれを断って槙生の家を目指します。
しかし、駅の路線図を見ても帰り方がなかなか分からず、朝は放心状態で道の縁石に腰かけます。
その間にもえみりからメッセージが何度も届きますが、朝は呆然と持っているスマホを下におろします。
場面は変わり、さすがに帰りが遅いと心配になってメッセージを送る槙生。
すると、そのタイミングで朝が帰宅します。
槙生は様子のおかしい朝に声を掛けますが、なんでもないと朝は反抗的です。
しかし、同じ屋根の下で暮らす以上、それでは生活が出来ません。
槙生が問いただすと、朝は帰り道が思い出せなく…まで言って涙を流します。
握られたスマホには、今もなおえみりからメッセージが届いていました。
槙生は体が冷えているとろくな考えにならないと考え、足湯を用意して朝の前に置きます。
朝は初めてであろう足湯に怪訝な表情を浮かべながらも足をつけ、話し始めます。
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心配しているつもりで、言葉は投げやりで気持ちが伝わってこない槙生の態度に朝は怒り、話はなかなか進みません。
そこで槙生は、後悔しなければ卒業式は出なくてもいいけど、友達は違うと言います。
必ずしも学生時代の友人が必要というわけではないけれど、自分にとって奈々は必要なんだと言う 槙生に、朝は今と奈々といる時では態度も話し方も違う槙生に気が付きます。
こんなやつは他にはいない、と言う槙生。
そこで槙生は話し疲れると仕事に戻ってしまい、朝は奈々とのメッセージのやりとりを見返し、えみりの未開封のメッセージを前に唸ります。
一方、槙生のもとには奈々から露出の高い服を着た奈々の写真が送られてきて、メッセージのやりとりの中で当時やりとりしていた手紙のことを思い出します。
槙生はその手紙を荷物の中から見つけると、朝を読んで好きなピザを決めるよう言い、それから奈々から送られてきた写真、手紙を順番に見せます。
その手紙には、『6年間きみがいなかったら、私は息ができなかった』と書かれていました。
槙生はそれを読んで、『生きていていいんだ』と思ったと話します。
それを聞いた朝はえみりの大切さを思い出し、メッセージを見てすぐに電話をかけます。
電話口のえみりは泣いていました。
そして、朝はそんなえみりに嫌いなんて嘘だと言い、両親のことを話せるのはえみりしかいないと涙ながらに訴えるのでした。
無事に和解したことを槙生に報告し、これで一件落着のはずでした。
しかし、さらにえみりとえみりの母親が謝りにとあいさつしに来たいと朝に告げられ、槙生は面倒なことになったと思うのでした。
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春休み。
笠町が二人の家を訪れます。
仲良く見える二人のやりとりに、朝は恋愛の匂いを嗅ぎつけて注意深く見守ります。
笠町からは槙生を意識しているように感じられますが、槙生には一切そんな意識はなさそうでした。
槙生は冷蔵庫の牛乳がないことに気が付くと、初対面の二人を残して部屋を出てしまいます。
残された二人。
朝は笠町に対して槙生の彼氏かとストレートに聞きますが、それに対して笠町は今は違いますと余裕の回答。
しかし、朝にはその意味が分かりませんでした。
でも次第に以前付き合っていたことに気がついた朝は、別れた理由を切り出し、笠町は動揺します。
その脳裏には、鋭い目で睨みながら涙を流す槙生。
ようやく立ち直った笠町は、自分が傲慢だったと言います。
それから遠回しに朝のストレートな言い方を注意すると、朝の両親はあまり感情的にならないことが分かり、それは笠町の両親も同じでした。
そこに槙生が帰ってきます。
笠町はその様子を眺め、頭の中では『笠町くんには分かんないよ』と泣く若き日の槙生を思い出していました。
それから何気ない会話をしていると、ふいに朝が入学案内の中にあった一枚の書類を見つけます。
そこには、原則として毎日お弁当を持ってこなければならないことが書かれていました。
朝はそれを二人に見せ、槙生も苦々しい表情を作ります。
そもそも弁当箱がありません。
笠町は節約のために弁当も作ることがあるそうですが、女子高生が食べるにはちょっと色気が足りないし栄養バランス的にも心配です。
三人は頭を悩ませ、これまで親に作ってもらっていたお弁当に関する記憶を掘り返していきます。
そこで笠町は、母親に対して毎日お弁当を作ってくれたことに感謝していると前置きしつつも、自分を育てることと愛情は別の所にあったと話します。
母親は、完璧なものを与えれば息子が完璧になると思い込んでいたのです。
つまり、うまくやりたかったのです。
すると、槙生からそういうところがあったと指摘され、親に似たことに驚く笠町。
昔言ってくれればと抗議しますが、槙生は余計なことを言って嫌われたくなかったのだと話します。
本人の中ではそこに恋愛のれの字もありませんが、朝はすぐさま反応し、しかし机の下で笠町で軽く蹴られます。
し、と口の前で指を立てる笠町に、朝は意味に気が付いて自重します。
笠町の頭の中では、槙生の言葉以外に、自分を理解してくれない親に対して怒りをぶつける当時の自分が蘇っていました。
そこで笠町が出した結論。
それは、気負うことはないということでした。
話がひと段落つくと、台所で笠町と朝が夕飯の準備をします。
ソファーでアイスを食べながら寝そべる槙生。
そこで不意に朝の母親の話になり、『槙生ちゃんは小説家なんだよ』と朝に教えていたことが判明します。
その言葉を聞いた途端、槙生の表情に怒りが差し、姉の言葉が蘇ります。
『槙生、あんた、恥ずかしくないの? 妄想の世界にひたってて』
『小説だか何だか知らないけど、もう少し現実に向き合えば?』
笠町が帰り、朝が別れた理由を槙生に聞くと、槙生は動揺して腰をドアノブに打ち付けます。
ようやく落ち着くと、勝手に卑屈になって爆発した自分が悪かったと反省する槙生。
お互いに反省しあう二人が理解できない朝。
この話はここで終わってしまいますが、朝はすぐに今度はなぜ母親のことが嫌いなのかと聞きます。
すると、あなたには話さないと槙生は強い口調で言い、この話を終わらせます。
朝は謝りますが、槙生は怒ってそれを受け止めてくれません。
まだ朝は、槙生に受け入れてもらえてなかったのです。
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ある日、あまぞんから注文していた弁当箱が届きます。
包装を開けていると、ふと目が合う二人。
槙生は怒ってしまった夜のことを思い出して睨みますが、朝は槙生が化粧していることに気が付き、今日かわいいね!と思っていたこととは全然違うことを言って槙生は拍子抜けします。
今日は槙生が出かける日でした。
時間になると、槙生はいそいそと出かけていきます。
今日は、奈々を含めた学生時代の友人たちと飲む日でした。
飲み始めて早々、話は朝のことになり、槙生が朝を大事にしようとするけれど、姉の子供だと思うと躊躇してしまうことを明かします。
それは、愛せないということでした。
しかし、飲み会終了後、友人の一人・もつと帰りながら話す中で、子育てだと思わずに槙生だからできる立場があるし、それが出来れば愛せなくってもいいのだと諭されます。
犬でも引き取ったと思って、と言われ、槙生の頭の中ではその物語が綴られていきます。
泥酔して帰宅すると、朝はまだ起きていました。
槙生は子犬のことを思い出し、朝の髪の毛を思い切りかき乱します。
意味が分からないでいる朝ですが、構わず槙生はおやすみと寝てしまうのでした。
翌朝、槙生のスマホには打った記憶のない文章が残っていて、しかし朝のことは犬だと思ってああしたとそこはちゃんと覚えていたのでした。
おまけ
槙生、朝、えみりの寝相が描かれています。
朝がきれいに寝ていることにびっくり。素直だからですかね。
おわりに
二人が一緒に暮らす上で障害となる今は亡き姉の存在がグッと出てきた回でした。
いや、そもそも姉が生きていれば朝は幸せだったのでこんな言い方はあんまりですが、今のところ、あまり気持ちの良い人とは思えません。
このわだかまりが今後どのように爆発し、どのように消化していくのか。
非常に楽しみです。
次巻はこちら。