『ブラックナイトパレード 3巻』ネタバレ感想!あらすじから結末まで!
平凡なコンビニ店員・日野三春は、あるクリスマスの夜、顔のない黒いサンタクロース・クネヒトによりブラックなサンタ会社に就職させられてしまう!! 仕事にも慣れ、一攫千金の北極ドリーム「トナカイ資格試験」に意気揚々の三春だったが、自分の父親がかつて赤いサンタクロースであった疑惑が浮上、おまけにDQNな後輩・カイザーくんのありえない姿も目の当たりにして、大混乱!! 謎が謎を呼ぶ極北ワンダフルワールド、衝撃と驚愕の第3巻!!
Amazon内容紹介より
前の話はこちら。
発売の延期が続き、このまま発売されないのではと心配していましたが、2018年クリスマスに間に合うように発売となりました。
大分内容を忘れていましたが、まだ三巻なのでそこまで見直すのも難しくありませんでした。
そして、肝心の内容はというと、これまで以上に濃密で、すでに次巻が気になる内容でした。
驚きの真実が次々と明らかになるのに、それ以上に謎が提示されるので、興味がつきませんでした。
この記事では、そんな本書の魅力をあらすじや個人的な感想を交えながら書いていきたいと思います。
ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。
第13話『呪いの!?アンフォーチュンジンジャークッキーの巻』
見知らぬ部屋で目覚めた三春。
壁にかかった幕を引くと、そこには赤いサンタの服を着た父親の肖像画が飾られていました。
三春は、父親がトラックの運転手で、運転中の事故で亡くなったと思っていましたが、真実はどうやら違うようです。
このサンタハウスでは、トナカイはトラックなので配達中の事故もあり得ますが、本当に事故なのかと三春の脳裏に疑問がよぎります。
その時、ブォーと大きな音が鳴り、三春はびっくりして部屋を見渡します。
そこで志乃がいないことにようやく気が付き、唯一あるドアを開けます。
そこには、ドライヤーをカツラのとれた頭にあてるバスタオル一枚の志乃がいました。
三春は見てはいけないと目を覆う素振りを見せますが、何を勘違いしたのか志乃は慌ててカツラをかぶり、バスタオル姿を見られていることには何も思っていません。
志乃はタンスの中からストライプの長袖のシャツを取り出して着ますが、ぶかぶかでワンピースのようになります。
タンスには同じ服しかありませんでした。
誰が住んでいるのだろうと疑問に思いますが、そこで志乃はソリッドで誰かが寝ていることに気が付き、毛布をゆっくりと剥ぎます。
顔を出したのは工場長で、侵入者~!と慌てて飛び起きます。
ここは工場長の部屋で、彼は志乃が自分の服を着ていることに気が付くと、ストーカー…?と本気で恐怖を感じている様子。
一通りやりとりが済むと、三春は壁にかかった肖像画の人物について聞きます。
それに対し、工場長は舌打ちをし、志乃もここでようやく三春の父親が赤いサンタであることに気が付きます。
工場長はこのことは他言無用だといいます。
そして、三春の身の安全のために詳しい説明はできないと前置きをした上で、このサンタハウスにはクリスマスが大好きなやつばかりではないことを教えてくれます。
クリスマスが憎くてたまらない、どうしようもない怨霊のような存在がいるとして、排水管のようなところに所狭しと詰まった目つきの鋭い大量のネズミが描かれています。
彼らは赤いサンタの復活を望んでおらず、三春はそいつらが父親を殺したのだと断言するように言いますが、工場長はそれについても言えないようで三春は怒りでパニックになります。
すると頭上の丸い模様の部分がエレベーターのように降下し、そこにはクネヒトが立っていました。
彼は、四歳の三春が赤いサンタになると承諾してくれたことを明かし、三春もあれが夢でなかったことを確認します。
クネヒトは、当時の彼を赤いサンタの素質で溢れた聖人だと絶賛しますが、三春は、今はクソみたいな二十三歳だと全く嬉しそうではありません。
そこでクネヒトはカイザーが浮かばれないと彼の名前を出し、三春のスマホにカイザーからメールが届きます。
そこには本物の赤いサンタの帽子を被ってばっちり加工までしたカイザーの自撮り写真が表示されていて、クネヒトは彼が三春の影武者であることを明かします。
場面は変わり、一人部屋で写真の出来栄えにはしゃぐカイザー。
その時、天井の一部分が空き、一匹のネズミが様子をうかがいます。
すると、カイザーの頭上に何かが落ちてきて、見るとそれは可愛らしい人間型のジンジャークッキーでした。
いい匂いだとカイザーは食べようとしますが、突然クッキーはチョコのようにぐにゃりと形を崩し、頭、手足が伸びます。
頭はカイザーの口をふさぎ、手足は彼を拘束するようにグルグルと巻き付きます。
身動きがとれなくなると、ようやく数匹のネズミが下りてきて彼に近づきます。
ここで三春たちのいる部屋に戻り、クネヒトが解説します。
カイザーは三春の手柄をさも自分の手柄のように話していましたが、それによってネズミたちは彼を排除しないといけないと判断しました。
さらにクネヒトは、三春と志乃が騒いだため、念のためにカイザーに『トッピング』し、ネズミたちを彼に集中させたのです。
おそらくトッピングとは、本物の赤いサンタの帽子だと思われます。
三春が電話をしますがカイザーは出ず、工場長に操作を頼み、クネヒトが降りてきた装置を使って一人上にあがります。
クネヒトは、そんな彼を四歳の頃と変わらないといい、口元に巻いていたスカーフを外します。
そこに顔はなく、ただ帽子が浮いているようにしか見えませんが、クネヒトは、三春には自分の顔が見えているよねと言い、工場長と志乃は驚きます。
しかし、三春は見えて当然だというリアクションをとり、クネヒトは最高だと改めて彼を賞賛します。
工場長も上にあがり、二人はカイザーのもとを目指しますが、工場長は異様にネズミを恐れていました。
というのも、工場長が着てる親帽子の中身は実はネズミたちに食われていて、その帽子を身にまとう工場長自身もいまだに狙われているからです。
脱げばいいだけの話ですが、子帽子たちは親帽子の命令でないとプレゼントを作らないため、仕方なく着ているのだといいます。
そして、ひどい目に遭わせたカイザーなど放っておくよう三春に言いますが、彼はカイザーに爆発してほしかっただけで、死んでほしかったわけではないと一人で先を急ぎます。
部屋に着くと、何百匹におよぶネズミたちが何かに群がっていて、侵入してきた三春に対して何匹か向かってきます。
三春は近くにあったフライパンで対抗しますが、その時、ネズミたちが一斉に吹き飛ばされ、中からジンジャークッキーの拘束をほどくカイザーが現れます。
クッキーは元来た天井から逃げようとしますが、カイザーが頭部にある急所を噛み砕くと、死んだように動かなくなります。
襲われたカイザーはピンピンしていて、三春に変わってフライパンを受け取ると、ワンスイングで何十匹というネズミを仕留めてみせます。
助けにきた三春のことを、五年前と何も変わらないとカイザーはいい、三春はそこで気を失います。
第14話『大福もちビターストーリーの巻』
ここからは回想。
五年前の二月、三春の大学受験当日で、 彼は試験前にコンビニに寄ります。
入る時、クネヒトらしき人物とすれ違いますが、三春は気のせいかと気にせず店内に向かいます。
店内に違和感を覚え、すぐに店内の商品全てがいちご大福であることに気が付き、何かにつまづいて転びます。
その何かとは、座って居眠りをしていた店員のカイザーでした。
彼はいかにも寝不足そうで、発注ミスでいちご大福を五千個入荷してしまったことを客である三春に打ち明けます。
そこに店長から電話が入り、カイザーは『いなちゃん』のせいだといいますが、店長は取り合ってくれず、全部売るか全て買い取るよう言って電話を切ります。
カイザーはとりあえず三春に押し売りしようとしますが、三春は他のコンビニに移ろうとします。
ところが、ここ以外は激混みで、他で買い物をする余裕がありません。
すると、カイザーは三春に言われたものを巧みに探し出すと、会計に移ります。
この時、カイザーは当たり前のように親のお金で受験する三春のことを内心見下していました。
三春は飲み物を持ってくるとレジを離れ、カイザーに再び電話がかかってきます。
店長かと思いましたが、相手は母親の礼子でした。
彼女は昨日からオールでホストクラブにいて、大量の酒を注文していました。
カイザーが何かを言う前に電話の相手はホストに変わり、ホストにとってお金は愛だとして、礼子が夜なべして一生懸命作る借金のあるカイザーは愛されているとふざけたことを言います。
カイザーは言い返してやろうとしますが、電話は切られ、自分の不幸な人生を呪います。
そして、能天気そうな三春を見て頭の何かが切れ、カイザーは三春に無断でいちご大福を追加し、計十個を会計し、三春もそれに気が付かずに店を後にします。
すぐにカイザーは八つ当たりをしてしまったことを後悔しますが、その時、どこからか『見ーちゃった』と声がします。
カイザーはすぐに辺りを見渡しますが誰もおらず、空耳だと声のことを忘れます。
ここで『いなちゃん』について説明が入ります。
いなちゃんはカイザーの先輩で美人で看板娘でしたが、仕事は何もしませんでした。
しかし、店長に気に入られているためクビになることはありません。
カイザーは、なんでもお願いを聞いてあげないと愛されていないと感じるいなちゃんに対して、母親を重ねていました。
怖すぎて、彼女たちの要求を何一つ拒否できないのです。
しかし前日、カイザーのちょっとした発言がきっかけでいなちゃんの機嫌を損ね、その翌日、つまり今日になっていなちゃんはバイトをやめ、五千個のいちご大福が届いたのでした。
場面は変わり、一限のテストを終えてすでに疲れている三春。
ここで彼はようやくカイザーに余計ないちご大福を買わされたことに気が付き、怒りを覚えます。
その時、女性の試験官が彼の目の前に立ち、本当にいちご大福を五千個も入荷したのかとジワっています。
それはいなちゃんでした。
本名は赤井稲穂といいます。
彼女はその大量のいちご大福の写真を撮って、ツイッターに上げ、三春は彼女も一緒に映った方がいいと写真を撮ってあげます。
そして同じ教室の受験生の机にこっそり置くと、その様子も写真に収めます。
試験が始まり、いなちゃんはツイッターをチェックしますが、そこで自分になりすましたアカウントが、いなちゃんの誤発注で五千個ものいちご大福を入荷してしまったこと、受験にはいちご大福を食べると縁起がいいと発信されていることに気が付きます。
フォロワーはそれを信じ、三春はダメ押しで自分の周りでは流行っていると先ほど撮った写真をアップ。
これで一気にブームが到来。
カイザーのいるポーソンにいちご大福を求めて客が殺到します。
そこに三春が合流し、二人がいちご大福をほとんど売った頃には深夜の二時になっていました。
カイザーはこの借りはいつかか返すと、休憩する三春を置いてレジに立ちます。
その客はいちご大福を十個買いますが、勝手に買わせるなんて悪い子だね、と誰も知らないはずのカイザーの朝の出来事を口にします。
見上げると、そこにはクネヒトがいて、彼はこの店のオーナーだといいます。
クネヒトはエコバックがあるとワニのような口の袋を取り出し、袋が彼を食おうとするのを制止。
年俸一千万円の正社員にならないかとスカウトします。
カイザーにはトナカイの一人『ダッシャー(泥よけ)』になってほしいと、ダッシャーと名前の入った黒いカードを渡します。
サンタのための泥よけだといい、三春は必ずサンタになるとクネヒトは断言。
それまで三春を守るのがカイザーの仕事だといい、カイザーも借りを返すにはちょうどいいと引き受けるのでした。
第15話『ベルトコンベアは試練と思い出を乗せての巻』
三春が、自分の父親が赤いサンタだと知ってから一週間が経過。
クネヒトの部屋には鍵がとりつけられていて、電話をかけても出ません。
カイザーにそのことを相談すると、個人面談の申請をすればいいと用紙をくれます。
さらにトナカイの二次試験では目立たないほうがいいとアドバイスし、三春はそれに反発。
しかし、カイザーの部屋の中を見て絶句します。
そこには彼を狙って侵入し、返り討ちあった何百匹ものネズミの死体が転がっていました。
怖くて逃げだすと、試験会場に向かおうとしていた志乃と鉄平と合流。
個人面談の申請を済ませてから会場に向かうと、二次試験の会場は三春の配属された炭鉱、つまりプレゼントが運ばれてくるベルトコンベアでした。
試験官は工場長で、彼は試験を受ける人に向かって言います。
モチベーションとかやりがいを求めるな、トナカイに残るのは大金と消耗し切った体だけだと。
そこにプレゼントの入った巨大なカートが運ばれてきて、二次試験の説明が始まります。
これからベルトコンベアにプレゼントが流れてくるので、自分の手持ちのプレゼントと同一であれば入れ替えるよう指示されます。
正解すれば一点、不正解、もしくはスルーしたら一点減点され、試験終了時に得点がマイナスになった受験者は失格だと告げ、試験は始まります。
三春は慌てて手持ちのプレゼントを把握しようとしますが、同じ包装紙な上に柄も覚えにくく、二時間も作業して休憩に入る頃には疲れ切っていました。
さらに休憩中、この作業が五日間続くこと、時間は夜十時から深夜二時、さらに通常業務をこなした上でのことだと告げられ、一同は絶望します。
そんな中、鉄平だけがすぐに対応し、仮眠を取り始めます。
覚悟の違いに落ち込む三春ですが、そこにクネヒトが現れ、休憩を一時間に延長。
やり過ぎな工場長に一人文句を漏らし、個人面談を申請した三春を自分の部屋に呼びます。
三春は父親のことを聞きますが、クネヒトが取り出したのは彼の雇用契約書でした。
そこには自分の仕事について、血縁者であろうと話してはいけないと書かれていて、クネヒトはその文言を盾に質問への回答を拒否します。
追い打ちで袋は、企業秘密はある程度の立場にならないと知ることは出来ない、トナカイですらない三春のことを部外者呼ばわりし、ここで彼の心は決まりました。
ある程度の立場になってやると、鬼気迫る表情で試験会場に戻ります。
ベルトコンベアに流れてくるプレゼントを見ているうちに、三春は父親と過ごしたクリスマスのことを思い出します。
そして、同じに見えていたプレゼントの細かい違いに気が付けるようになり、一気に得点を重ねていきます。
慌てた工場長は三春のところだけコンベアスピードをフルにしましたが、それでも三春はミスをすることはなく、泥よけであるカイザーも必死です。
それを見ていた鉄平は自分も頑張ろうと気合を入れますが、出てきたプレゼントに対して何か気が付き、次の瞬間、ベルトコンベアに突っ伏すように倒れます。
三春や志乃が叫ぶ中、鉄平は自分が見張っていないとあいつ、サンタクロースが弟たちのところに来ると必死で起きようしますが、そのまま意識を失います。
彼の頭の中には、自分の父親の姿が浮かんでいました。
第16話『鉄の心の巻』
試験は中断。
三春の頼みで、クネヒトは鉄平の試験を明日に繰り越すことを約束してくれ、三春は鉄平を部屋に運びます。
この時、クネヒトは自分の顔を見ても驚かない人物について、三春の他に鉄平の名前を挙げます。
しかし、どうやら鉄平にはクネヒトの顔は見えていないようです。
鉄平を担ぎ、彼の部屋に入る三春と救護係と思われる女性。
部屋には資格の本ばかりで、布団すらありません。
ここで鉄平はほとんど寝ておらず、倒れるのもこれが初めてでないことが判明。
部屋には亡くなった母親の遺影、弟たちと一緒に映る写真は飾られていましたが、父親の写真はありませんでした。
ここで鉄平の回想。
彼の父親は、体の弱い母親が内職で稼いだお金を全てパチンコに突っ込むクズでした。
しかし母親が病死すると、さすがの彼も仕事を見つけてきて、サンタクロースになったんだと子どもたちに教えます。
彼はプレゼントを調達するといっておもちゃ屋に子どもたちを連れて行くと、服を着替えさせて何度も並ばせて限定品を大量に購入。
それを高値で売りさばく。
つまり『転売ヤー』でした。
鉄平がそのことに気が付いたのは、父親が家を出た後のことで、高校に上がる頃には洗脳も解けていました。
ところが、末の弟・綱平だけは今でもクリスマスの時期になると父親の手伝いをしていて、鉄平はやめるよう説得。
食い下がる弟に対し、サンタなんかいないと言って傷つけてしまいます。
それでも綱平の欲しがるライダーベルトは自分が買うと言って、父親を追い返します。
この頃、鉄平は弟たちを養うために必死でアルバイトをしていて、なんとかライダーベルトを購入すると押し入れに隠しておきます。
そしてクリスマスイブの夜、疲れて戸締りせずに寝ていると、物音で目を覚ました鉄平。
家の中に父親がいました。
優しい言葉をかけて帰る父親に、プレゼントを持ってきてくれたのだと本気で信じます。
しかし、押し入れを開けると隠していたプレゼントがなくなっていて、ようやく気が付きます。
父親は、鉄平がライダーベルトを買うことを覚えていて、それを盗みに来たのです。
鉄平はようやく父親が救えないクズであることに気が付き、一生許さないと心に決めます。
彼はベルトコンベアに流れてくる荷物を仕分けするアルバイトをしていますが、途中でネズミが現れ、一つの段ボールがベルトコンベアから落ちてしまいます。
鉄平が慌てて確認すると、送り主は父親で、それは本来、綱平がもらうはずのものでした。
魔が差した鉄平は拾わず、足でベルトコンベアの下に隠し、何事もなかったように振る舞います。
本来であれば監視カメラに映ってすぐにバレてしまいますが、なぜか偶然ネズミがカメラを塞いでいて、鉄平の行動は記録されていませんでした。
悩みながらもプレゼントを持って帰る鉄平ですが、帰り道、ネズミが話しかけてきます。
人の言葉を話すネズミに驚く鉄平ですが、相手はかまわず顔のない黒いサンタが迎えに来ることを彼に教えます。
ネズミは鉄平と気が合う、自分もサンタが嫌いだといい、彼に協力してくれます。
鉄平は自分に何をさせたいんだと問うと、ネズミは彼の耳元で何かをささやき、鉄平はそれくらいと大したことないように言います。
ネズミはそれを聞いて、クネヒトよりも先に会えたことを安心します。
よく見ると地面に例のジンジャークッキーが落ちていて、それは伸びて鉄平の中に侵入、彼を支配します。
そして、その状態と鉄平とクネヒトは出会い、クネヒトは彼をスカウトするのでした。
ネズミからこの報告を受ける数字の一、二、三の番号が振られた台。
カーテンの中から白い手袋に指輪のはまった両手が出現し、鉄平なら本当の意味で子どもたちを助けられると喜んでいました。
そして最後に、クネヒトと契約を済ませ、綱平にライダーベルトを手渡す鉄平。
彼はここでもサンタなんていないと言いますが、笑顔です。
クネヒトに就職先のことを理解しているのかと聞かれると、誰よりも理解しているといいます。
あんなものは、いない方がいいってことを、と。
第17話『異世界練間とはじめてのおつかいの巻』
トナカイ二次試験が終了し、三春、志乃、鉄平、カイザーは揃って無事に突破し、簡単なパーティーを開きます。
やはりカイザーが一番の高得点でしたが、本領発揮した三春のせいで必要以上に頑張ったようです。
ここでカイザーは、クネヒトに言われて鉄平を注意して観察していましたが、もし『そう』だとしたら、すでに完全に餌付けされて手遅れだと彼の料理を楽しんでいました。
一方で、本心で三春たちのことを仲間と思っているように感じていました。
そして、最終三次試験が始まります。
外套を着用の上、すさまじい吹雪の正門外に集合させられた受験者たち。
工場長の後について建物を壁伝いに進むと、コンビニの入口があり、入るとそこは『ポーソン練間北口店』でした。
驚く三春をよそに工場長はアイスの入ったケースに入っていきます。
そこには地下に降りる階段が用意されていて、降りるとそこは上と同じ場所と同じように見えます。
また外が見えることから、地下ではない可能性もあります。
クネヒトはここを『裏側』、初代赤サンタが作った、サンタにしか干渉できないトナカイの本部だといい、そこには七人のトナカイが座っていました。
ルドルフ、そしてダッシャー(カイザー)はいません。
クネヒトは今回の試験を『はじめてのおつかい』だといい、入口から出ると、外にはプレゼントの積まれたトラックが何台も置かれていました。
四人一組で班を作ることになり、三春、志乃、鉄平、カイザーが同じ組になります。
クネヒトからプレゼントのリストの入ったタブレット端末、おもちゃのようなナイフが入った護身用の武器が支給され、三春は星に目玉がついたものを背負わされます。
四人は昼間にもかかわらず誰もいない町を車で走り、プレゼントを配る家を目指しますが、志乃はリストの子どもが全員『保留フォルダ』の子どもであることに気が付きます。
保留フォルダとは、家の中がチムニーに映らずに室内の様子が分からない家のことで、一軒目の家に到着。
家に上がって子供部屋にプレゼントを置きますが、簡単すぎると三春は疑問に感じます。
すると背中に背負った星の目が開き、辺りの状況を記録していきます。
実はこれは『ベツレヘムの星』と呼ばれる、上空からのチムニーの目で捉えれない場所を補うための装置で、三春が背負うことによってグーグルカーのような役目をしています。
それによって弟がいることが判明し、追加でプレゼントを持っていきます。
弟の部屋には『三倍戦士サンバイン』のフィギュアが何体も置いてあって、三春は懐かしく思いながらプレゼントを置くと、二体のサンバインが動き出します。
最初はよく出来ていると感心する三春ですが、その内の一体が蹴りを放つと、壁が大きく凹み、ようやく異変に気が付きます。
もう一体は手に持つ光線銃で三春のことを狙っていて、彼は死を覚悟します。
しかし、そこに一人のトナカイが駆け付け、三春を助けてくれます。
トナカイはすぐにフードを外し、正体を現します。
それはなんといなちゃんでした。
カイザーたちもそこに駆け付けますが、彼はいなちゃんがトナカイの一人『Vixen(ヴィクセン)』であることを知っていたようです。
いなちゃんは、カイザーがトナカイのダッシャーであることをさらりと明かし、三春を驚かせますが、サンバインはまだ動いていてそれどころではありません。
逃げながらいなちゃんに助けを求める志乃ですが、クイズに答えられたら助けるとして、動くサンバインとそうでないサンバインの違いについて聞かれます。
志乃は正解を答えられませんが、三春は派手な見た目から気が付きます。
動いているのは最終形態、つまりクリスマス商戦に合わせて販売されたクリスマスプレゼントだと。
正解しますが、ここでタブレット端末に新しく十歳の女の子の反応が出現。
一同も気が付けばその女の子の部屋にいました。
十歳ということは、最大で十体の敵が現れる。
動くのは頭と手足が付いたものだけと決まっているので、そう多くはならないことが多いのですが、その部屋はぬいぐるみに囲まれていて、大量のぬいぐるみが動き出して一同を取り囲みます。
肝心のいなちゃんも、この数は無理だと諦めていて、またしても一同は死を覚悟します。
ところが次の瞬間、ぬいぐるみは一瞬で吹き飛び、視線の先には剣のようなサイズの縫い針を持ったルドルフが立っていました。
第18話『降臨!サンタマニアの巻』
実はいなちゃんが救難信号を出していたのでした。
しかし、カイザーはいつもと違い、敬語でルドルフに謝ります。
いなちゃんは気にせず彼に近づきますが、次の瞬間、ルドルフはいなちゃん、カイザーの順番で持っている針で刺します。
すると、見えない糸で結ばれるようにカイザーの左腕の袖、いなちゃんのコートの背中部分がくっついてしまいます。
ルドルフはカイザーに対し、キツネはしっかりつないでおけと忠告し、窓から退散します。
志乃が慌ててお礼を言うと、ルドルフは屋根の上から手だけ出して振ります。
志乃はその光景に見覚えがあり、トイレと嘘をついて一人その場に残ります。
気になった三春も残り、後を追います。
志乃は追いかけて、ルドルフに追いつきます。
彼女を何度も救ってくれた手、それは先ほどのルドルフのものと同じでした。
しかし、志乃には気になることがありました。
もし三春の父親が赤いサンタであれば、彼は三春が三歳の時に亡くなっていて、八歳の志乃に会えるわけがありません。
そこで志乃が出した結論。
それは、本当は三春の父親は亡くなっておらず、ルドルフこそが父親なんじゃないかと。
志乃は、あなたは三春君の、と言いかけますが、そこに三春が追い付き、気が付くとルドルフはいなくなっていました。
三春と志乃が会話する中、それを建物の上から見下ろすクネヒトとルドルフ。
ルドルフは、自分の後継者がテストを受けているから一目見ようと来ていたのでした。
クネヒトは三春のことかと言いかけますが、ルドルフは三春じゃないと、持っている針の先端をクネヒトに向けます。
三春は一年で帰すと、クネヒトとルドルフは約束していたのです。
またルドルフの後継者について、目が良すぎる、丈夫だとルドルフは言及しています。
ここで場面は三春と志乃に変わり、二人は他のチームの配達エリアを突っ切って帰ろうとします。
その頃、その近くの家では別のチームがプレゼントを配っていました。
その中でマッチョで黒い肌の大男が、突っ切る三春と志乃を子どもだと勘違い。
窓ガラスを破り、頭から地面に落下し、下にあった車に突っ込みます。
突然のことに怯える三春と志乃ですが、男は頭から血を流しても平然と起き上がり、メリークリスマスと口にします。
ここでようやく二人が子どもでないことに気が付き、事情を説明。
車で送ってくれることになりましたが、配る先の分からないプレゼントが一つだけ余っています。
もしかしたら同じ建物の中にいるのではなと、一同はアパートを一室ずつ調べることに。
すると三春と大男は、同時に子どものいる部屋に気が付きます。
三春は指紋や足跡などから推測しましたが、大男は子どもの匂いをかぎつけていたのでした。
中に入ると、クリスマスプレゼントが襲ってくることを教える三春。
すると大男は一つのぬいぐるみを選び、それを自分のしていたベルトで机の脚に縛り、その隙にプレゼントを置きます。
本来であればここでプレゼントに攻撃されるはずですが、なんと大男が選んだぬいぐるみこそがクリスマスプレゼントでした。
しかし、大男はそれがクリスマスプレゼントだと当てたわけではなく、一番大事にしてるぬいぐるみだと思い、それだけは壊したくなかったと話し、先ほどの家でプレゼントを壊したことを後悔していました。
これで任務は完了し、車に戻ろうとする一同。
大男は赤いサンタ服にこだわっていて、彼は他の人と違い、クネヒトではなく赤いサンタに連れてきてもらったのだと明かします。
おわりに
ルドルフ=三春の父親という可能性が浮上し、これからどういう展開になっていくのか非常に楽しみです。
また、最後に強烈なキャラが登場し、彼も物語の重要人物になりそうですね。
待たされた甲斐のあった、非常に中身の濃い一冊でした。