『聖なる怠け者の冒険』あらすじとネタバレ感想!小冒険を愛する全ての人へ
一年ほど前からそいつは京都の街に現れた。虫喰い穴のあいた旧制高校のマントに身を包み、かわいい狸のお面をつけ、困っている人々を次々と助ける、その名は「ぽんぽこ仮面」。彼が跡継ぎに目をつけたのが、仕事が終われば独身寮で缶ビールを飲みながら「将来お嫁さんを持ったら実現したいことリスト」を改訂して夜更かしをすることが唯一の趣味である、社会人二年目の小和田君。当然、小和田君は必死に断るのだが…。宵山で賑やかな京都を舞台に、ここから果てしなく長い冒険が始まる。
「BOOK」データベースより
2009年に朝日新聞で連載していたものがベースになっている本書。
いわゆる森見ワールド全開の作品で、どちらかというと森見ファン向けな印象を受けました。
また単行本化、文庫化にあたってそれぞれ大幅に修正されている珍しい作品で、全てを読み比べて違いを見つけるという楽しみ方もできます。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
本書はとある土曜日を舞台にした物語です。
本来であればゆっくりしたり親しい人と一緒に過ごしたい休日。
社会人二年目の小和田は平和で静謐な休日を求めていました。
しかしその日は何やら小冒険の気配がして、緩く賑やかな土曜日が始まるのでした。
正義の味方
本書には正義の味方が登場します。
その名は『ぽんぽこ太郎』。
狸のお面を被った怪しい風貌ゆえにはじめは警察に幾度となく通報されていましたが、今やすっかり定着してみんなの人気者です。
ぽんぽこ太郎は小和田と出会って以来、彼に何らかの才能を見出し、会うたびに跡を継ぐ気はないかとしつこく勧誘してきます。
怠けたい小和田は断りますが、ぽんぽこ太郎も簡単には諦めません。
一方、探偵の浦本はぽんぽこ太郎の正体を探ってほしいと依頼され、怠けたい彼はアルバイトの助手・玉川に任せます。
玉川はぽんぽこ太郎の跡継ぎであろう小和田に近づけばぽんぽこ太郎に会えると考え、小和田を尾行します。
尾行はバレバレで、小和田はなぜか玉川と行動を共にすることになり、このようにして物語は広がっていきます。
悪の組織?
ぽんぽこ太郎は正義の味方ゆえに当然敵?もいます。
彼は謎の組織に狙われては撃退しますが、相手は別の組織に命じられただけで狙われる理由が分かりません。
その先の組織を倒しても結果は同じで、次第に疲弊していきます。
土曜日一日とは思えないボリュームで、物語はラストに向けてスピードを増します。
聖なる怠け者たちはどのような充実した土曜日を過ごしたのか。
そしてどのような日曜日を手に入れたのか。
その答えが本書にあります。
感想
愛おしい小冒険
本書を端的に表現するなら、愛おしい小冒険でしょうか。
冒険という名にふさわしいドタバタな土曜日だけれど、決して現実離れした完全なファンタジーなわけでもない。
充実した休日を求める人もいれば、素直に怠けたいと思う人もいて、その緩さが作品のメリハリに役立っています。
登場人物はどれも森見さんらしい一癖も二癖もある人たちばかりで、読んでいて愛おしさが止まりません。
いわゆる森見ワールド全開な作品で、森見ファンであれば満足できること間違いなしです。
もう少し振り切れてほしい
一方で、森見さんの作品がはじめてだという人にはあえて最初にはオススメしません。
優良だけれども、『夜は短し歩けよ乙女』や『四畳半神話大系』といった過去作と比べるとやや振り切れていないからです。
本書は過去作に比べて森見ワールドを保ちつつも冗長さが軽減されています。
非常に読みやすくなっているのですが、それがかえって読み足りない原因になっていると感じました。
また森見さんが作中に神視点のような形で登場するのですが、それが作品への没入感を邪魔しているような気がして、面白いと感じながらも今一つ内容に集中できませんでした。
面白いんだけれど、なんだか……。
そんな風に思ってしまい、もったいないことをしてしまったというような読了感です。
おわりに
後半は単なる批判のような内容になってしまいましたが、僕自身、この読了感はもったいないと思っています。
面白い作品だったのは間違いないので、ぜひ少し時間をおいてから再チャレンジします。
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