『ラザロの迷宮』あらすじとネタバレ感想!二つの事件が交わる良作ミステリ
作家の月島は謎解きイベントに参加するため、湖畔の洋館を訪れる。集まった8人に案内役は連続殺人事件を予告。しかし、それは単なるゲームの趣向ではなく、彼らは惨殺死体を目の当たりにする。一方、所轄刑事の美波は、署に飛び込んできた血まみれで記憶喪失の青年の事情聴取を担当することに。彼の記憶回復のため催眠術による捜査を試みるが……。二つの事件が交差する傑作サイコ・ミステリ。(解説・我孫子武丸)
Amazon内容紹介より
神永学さんの作品を久しぶりに読みました。
八雲シリーズのようにキャラクター重視というよりも、ミステリ直球の作品で、読み応えも抜群。
四年近くかけて書き上げたことにも納得の一作です。
本書に関する神永さんへのインタビューはこちら。
誰も、すべての企みを見破ることはできない。――神永学、20年目の挑戦。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想などを書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
相談
刑事の美波紗和のもとに藤木ナミという女性が現れ、ルームシェアしている友人・ミオと連絡がとれないため探してほしいと依頼します。
ミオはストーカー被害にあっていて、ナミは彼氏からDVを受けていたことからルームシェアをするようになっていました。
連絡がとれなる直前、ミオが今の家をストーカーに見つかったと怯えていたため、何か関係があるのではないかと思われますが、ナミはミオのフルネームすら知らないことが判明します。
夜の店に勤めていることからミオという名前自体が源氏名であり、本名でない可能性があります。
紗和は調べるつもりでいますが、前途多難を感じていました。
襲撃
ナミの相談を受けていると、警察署に大型のナイフを持った血まみれの青年が現れてその場は騒然とします。
幸い、青年はラザロという言葉を残して気を失ってしまい、事なきを得ます。
ラザロは新約聖書に登場する人物だが、どういう意味か?
調べると血は青年のものではないことが分かり、誰かを殺傷した可能性が高くなります。
しかし青年は記憶喪失になっていて、こちらの捜査も難航します。
ゲーム
月島理生は友人の永門学と共に参加型の謎解きイベントに参加します。
月島はミステリ作家であり、一般人に比べてアドバンテージがあるように匂わせます。
そこはラザロの迷宮と呼ばれていて、二人はスマホなど通信機器を預けて中に入ります。
参加者と自己紹介しあうと、このイベントでは三件の殺人事件が起こり、犯人はこの中にいるのだといいます。
月島たちはゲームとして取り組みますが、事件が起きて驚愕します。
本当に人が死んでいるのでした。
感想
二つの視点
本書は紗和の視点、月島の視点が細かく交互に描かれ、終盤に入るまで交わることはありません。
関連しそうな情報が出てきても、それが二つの間にどう関係しているのかが読めません。
二つの視点にはどんな意味があるのか。
読者はそれを意識しながら読むため、ボリュームが多くとも常時頭を働かせて読むことができました。
それでいてストレスはあまりありません。
それは神永さんの持ち味でもリーダービリティの高さで、それは本書でも存分に活かされています。
リーダービリティが高いから面白くないかというと、全くそんなことはなく、このボリュームのあっという間に読ませてしまう実力はさすがで、二十年も作家を続けた人だからこそ出せるパワーだと思いました。
油断厳禁
本書はミステリとしてよくできていて、最後に提示される解答に驚く人も多いのではないでしょうか。
記憶喪失や参加型ゲームということで、ある程度ありきたりな展開を予測することができます。
そのままの結末ではないだろうと、展開を派生させて予測するわけですが、当然、神永さんはそこを簡単に超えてきます。
しかも突飛なアイディア勝負ではなく、読者が納得して唸ってしまう真実です。
それまでの積み重ねもあり、真実が見えた時のカタストロフがすさまじいものがあり、ミステリを好きになった頃の新鮮な感覚を思い出しました。
おわりに
もしかしたら神永さん=キャラクター小説ということで本書を敬遠する人が一定数いるかもしれません。
しかし、それはもったいないと断言します。
それくらい読んで損しない一冊になっているので、ミステリ好きであればぜひ読んでみてください。
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