『春にして君を離れ』あらすじとネタバレ感想!一人の女性が旅路の中で自身の人生を振り返る
女の愛の迷いを冷たく見すえ、
Amazon商品ページより
繊細かつ流麗に描いたロマンチック・サスペンス
優しい夫、よき子供に恵まれ、女は理想の家庭を築き上げたことに満ち足りていた。が、娘の病気見舞いを終えてバクダードからイギリスへ帰る途中で出会った友人との会話から、それまでの親子関係、夫婦の愛情に疑問を抱きはじめる……(解説 栗本薫)
クリスティーの作品の中でも本書を一押しする声が多かったので、ずっと読むのを楽しみにしていました。
そして読んでみると、その声も納得です。
物語としては驚くくらい何も起こらないのですが、主人公の胸の中では様々な過去の出来事や思いが顔を出し、風は次第に嵐に変わるように激しくなります。
人によって結末の解釈が異なるところも面白く、これまでクリスティーのミステリばかり読んでいたので、新たな発見です。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
幸せな女性
ジョーン・スカダモアは自身の幸せを自認していました。
年齢を感じさせない肌でほっそりとしていて、溌剌としています。
キャリアウーマンになろうという気など全くなく、妻や母親として全力を尽くしてきました。
愛する夫に、子どもは三人いていずれも結婚して家を出ています。
ジョーンは自分がいないと、という自負があり、それを誇りに思っていました。
そんな彼女が主人公となり、この心境が物語の進行につれて変化するところが見どころになっています。
旅路
ジョーンは末娘のバーバラが住むバグダッドを訪れ、イギリスへの帰り道でした。
途中の自動車での移動が予定より遅れてしまい、乗る予定だった汽車に乗り遅れてしまいます。
仕方なく宿泊所に泊まって次の列車を待ちますが、ここでトラブルが起きます。
ひどい雨によって線路が流れてしまい、しばらくは汽車が通れない状況になりました。
想定外のハプニングですが、ジョーンにはどうすることもできず、一人宿泊所で暇な時間を過ごします。
自問自答
ジョーンは長期滞在の予定ではなかったため、暇な時間を潰すための手段を持っていませんでした。
そのせいか思考はこれまでの人生を振り返ることにあてられ、次第に違和感を抱いていきます。
はじめは旅に出る前に別れた夫のちょっとした行動、子どもたちの些細なやりとりですが、それらに対してジョーンの自信が揺らぎ始めます。
自分は何とも思っていなかったが、実は相手は自分とは違うことを考えていたのでは。
考え出すと思考は止まらず、過去のあらゆる出来事に対して疑問が生じはじめ、自分が思っていた人生ではなかったのかもしれない、と思うようになり、ついに認知の歪みが正されます。
感想
何も起こらない
冒頭でも書きましたが、本書では何も起こりません。
ジョーンが旅路の帰り、汽車が動かないことで現地に足止めされ、滞在を与儀なくされるものの最後には無事に夫のもとに帰る。
ただそれだけです。
しかし、ジョーンの胸の中は違います。
暇を持つことなどなかった彼女にとって、この時間は思いがけない内省の時間となりました。
内省によって自分の認知しているものが違ったのではないか。
これが何度も繰り返されることによって心の中には嵐が吹き荒れるようになり、現実の静けさと正反対になっているところがまず面白かったです。
幸せか、不幸せか
本書でよく言われるのは、結末の解釈です。
詳細は伏せますが、本当のことに気が付いたジョーンは物語の中で間違いなく変わりました。
自分が思っていたような人生ではなかったことを知り、自分のしてきたことに対する罪悪感がこみ上げます。
一方で、彼女を取り巻く人たちはその変化を知りません。
中年の女性が今さら現実を知ったところで、態度や言動・態度を変えられるのか。変えられないのであればただ不幸せになっただけではないか。
そんなレビューも見られました。
しかし、僕は幸せの一歩だと信じています。
この先、真実に気がつかないという保証はなく、もっと年を重ねてからだとそのダメージは計り知れません。
一方で、ジョーンの年齢であの溌剌さがあれば、まだ変われるのではという希望が残されている気がしました。
まあ、仮に気がついても今まで通り過ごして、やり過ごすだけの図太さがあるのでは、と思うような描写もあるため、それはそれで彼女自身は幸せなのではないでしょうか。
おわりに
タイトルが何度もリフレインされるところが印象的でした。
そして初見で受ける印象とは違った意味合いがあり、その違いが味わい深さを生んでいました。
人間描写の細やかさ、深さがダントツで、僕も本書を一押しします。
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