宝石の国
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『宝石の国 13巻』あらすじとネタバレ感想!

harutoautumn
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ひとり地上に残されていた主人公・フォスフォフィライトのもとに、人間を祖とする月人たちがやってきた。フォスは祈り、月人たちは無に帰したとされる。さらに途方もない年月が過ぎたのち、フォスは新たな岩石生命体と出会い、対話することによって幸福を感じるようになるがーー。強くてもろくて美しい、宝石たちの物語、完結巻。

Amazon商品ページより

シリーズ最終巻となる本書。

前の話はこちら。

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本当に誰もいなくなった世界。

神となったフォスが何を見て、何を感じて、何をするのか。

表紙の美しさから最後に至るまで、余すことなくお楽しみください。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。

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あらすじ

第九十九話『始まり』

フォスは本当に誰もいないことを知り、地面に突っ伏します。

すると、何者かの声が聞こえてきて、そちらに向かいます。

そこにいたは卵のような形をした岩石で、新しい岩石生命体だとフォスはいいます。

フォスは動けるよう、見えるようにしてあげると提案しますが、岩石はそれを拒否。

今のままで何の問題もないのだといいます。

フォスは岩石と話して、理解します。

自分は誰からも愛されたいという望みがあったのに、多くを求めて全てを知って全てを得ても、自身の望みの正体を知ろうともしなかったと。

それでは満たされるはずがない、とフォスは後悔します。

それから二人は話をして、お互いに出会えたことを喜ぶのでした。

第百話『調和』

フォスは出会った岩石とコミュニケーションをとり続けていました。

さらに別の岩石とのコミュニケーションも試み、それは長い時間のかかるものでした。

移動する岩石を追いかけると、彼は地面に何やら文字を彫ります。

そのパターンをフォスが読み取ると、岩石が歌い出します。

するとフォスは、マントのような部分だけを残して、姿を消してしまいます。

第百一話『残余』

岩石生命体たちの交流。

しばらくしてフォスが再び姿を現します。

あまりに幸福で、溶けてなくなりたくなったのだといいます。

フォスは彼らの驚くべき早さの変化を、人間のようだと思います。

人間はもういないと思い直しますが、すぐに気が付きます。

自分の中にいると。

体を構成するフォスの胴体、そのインクルージョン内に微かに人間が残存していて、先ほどの暗い直感の正体は、残っている人間が存続と進化を要求しているからだと気が付きます。

岩石たちが話し始めたのは、自分の中の人間の存在が彼らに影響を与えたのではないか。

フォスはこれ以上干渉しないでくれと願いながら、岩石たちを手に持って運びます。

彼らが何かを見つけたと感じた場所。

そこに突然、黒い触手で岩石たちを掴む目玉が現れ、人間の匂いがするといいます。

第百二話『兄』

目玉はフォスに気が付くと、海に飛び込んでしまいます。

助けを求めるのでフォスが救ってみると、目玉は相手がフォスのなれの果てであることを知っていました。

一方、フォスも目玉の正体を理解していて、『金剛のお兄様』と呼びます。

金剛と違い人間を内包していないため、残ったのだといいます。

目玉は人間のことを古代生物だと表現し、この星に悪影響を与え続けた生物だと表現。

気が付くと、岩石の生命体はまた二人増えていました。

これからどうするのかと問われ、フォスは目玉にお願いします。

自身のインクルージョンが人間の残香を放っているため、自身を消す方法を知らないかと。

第百三話『無垢』

目玉はフォスを消す方法は分からないとした上で、フォスに人間が残っているかの分析を始めます。

すると、そんなものはいないことが判明。

残っているフォスフォフィライトはひとかけらだけで、それを念入りに調べますが、やっぱりいません。

匂いについては本来の人間と少し違いますが、そのうち消えるとのこと。

それでもフォスは石ころへの影響を懸念して、リスクを除去したいと考えますが、目玉は見えないといいます。

フォスはまだ納得できず、目玉に自身の破壊をお願いします。

すると、目玉は月人から、フォスフォフィライト本来の純粋な部分が胸に残っているため、その辺りは取るなと言われていることを明かします。

最終的な診断は『杞憂』としますが、フォスが神様であることを考慮すると、杞憂が現実になって人間を創ってしまう可能性もあると言及。

リラックスが必要だとアドバイスして、誰にでもいつか終わりがくるから大丈夫だといって元の場所に移動を開始します。

フォスは、金剛の記憶の中で見たアユム博士の『すべては変わっていく』という言葉を思い出します。

それからフォスは、石ころたちに悪影響を及ぼす可能性があるとしても、アユム博士の話を彼らに聞いてほしいと思います。

最悪の種の中にあっても、美や善を果たそうとした者達がいたことを伝えたいと。

フォスは石ころたちを前に、話を始めます。

かつて、宇宙は無垢で満たされていた、と。

第百四話『楽園』

冒頭で人間のことを伝え終えますが、それまでに千年が経過していました。

人間は何が幸せなのか分かっておらず、不満があった。

一方で、石たちの考える幸せとはみんなの幸せであり、それは善悪・時間さえも関係ない、本当にみんなの幸せでした。

人間の話をしても彼らは影響を受けておらず、最も知的な生命体であることは揺るぎませんでした。

続きは三万年後になり、一同は眠りにつきます。

フォスは、金剛の力で石たちと会話することができ、月人の研磨によって彼らを汚染する不安から守られ、それはまさに楽園でした。

それから時間が経過し、水星が太陽に飲み込まれようとしていました。

第百五話『太陽』

太陽が膨張して水星を飲み込み、その影響で地上の気温が大幅に上昇していました。

頭上にそびえる巨大な太陽。

フォスは能力を使う機会がなかったため、それらは退化し、太陽をどうにかする術などありませんでした。

兄機や石たちは何事もなく終われることを幸せに思い、この星の終わりに立ち会えることに感動を覚えます。

そんな時、兄機の持っていた種状のものにひびが入り、やがて蓮の花のように展開して中から台座のようなものが現れます。

それは月の技術と類似したもので、気温が設定値を超えたために起動したのでした。

機器は遠方の惑星をリストアップし、脱出を助けてくれる装置でした。

しかし、どこに逃れようとも恒星の膨張に追いつかれ、終わりを迎えることに変わりはありません。

それでも石は新しい歌のアイディアのために時間がほしいといい、みんなで逃げようとします。

ところが、フォスが突然残ると言い出します。

彼は橋を燃やさなければならないことを告げるのでした。

第百六話『橋』

フォスは人間と新たな無機生命体の狭間の存在であり、人間の根絶という仕事をここで完成させようとしていました。

兄機は、フォスが人間を再誕させる可能性を説明しますが、それでもフォスは人間を焼き尽くし、新しい生命のために贈り物を用意しようとしていました。

石ころたちは、フォスの中の人間を良い方向に育てようとしますが、人間とは一個体の中に善と悪といった相反するものが混在していて、予想を超える悪影響を与える可能性は否めません。

議論は平行線。

フォスは兄機たちを脱出させると、清々しい気持ちの中で人間と共に最後を迎えようとしていました。

一方、兄機たちもまた己を信じ、再び地球に戻ると、フォスの中から彼の一部を取り出して再び脱出します。

これで本当の別れとなり、フォスは彼らの良い旅を祈るのでした。

第百七話『終わりに』

兄機はフォスの「人間のいないところ」を持ち帰っていました。

一方で、フォスは太陽の膨張による影響で体は崩壊し、わずかな間だけで昔の彼を取り戻して消えていきます。

こうして太陽系は最期を迎えたわけですが、兄機たちの手元にはフォスから取り出したものが残されていて、彼らは「一番小さい弟」として大事にすることを決めます。

ところが、ここでも問題がありました。

兄機が一度地上に戻った時、宇宙船の操作をオートからマニュアルに切り替えていましたが、それを変更しないまま運航したため最高の星を通り過ぎてしまい、かつエネルギー切れで知らない星に不時着していまいます。

安全かどうか確認しようとした兄機が船外に出ると、そこには花が咲き乱れる楽園のような風景が待っていました。

第百八話『宝石の国』

遠い未来、僕らは「宝石」になった。

それがこの物語のスタートでしたが、ここではそのさらに次の時代が描かれます。

前回の不時着からさらに長い時間が経過していました。

人間のいない部分だけになったフォスに兄機がいいます。

月人にお前のことを頼まれたのだと。

兄機はただの便利道具として生まれたにもかかわらず、この楽園にまでたどり着けたことに満足感を得ていました。

やり切った兄機は砂の様に消えていきます。

次にフォスは咲いた花を見ようと身を乗り出しますが、乗り出しすぎて足?を滑らせて落ちてしまいます。

その先にはフォスよりも大きな宝石が待っていて、当たってフォスの一部が欠けます。

欠片は、新しい宇宙を見に行って、大きくてきれいな彗星になったのだといいます。

フォスは、誰かの気分を明るくしてるといいなと願いますが、尾を引くように飛ぶ彗星を、見上げるかつてのフォスの姿がそこにはありました。

最後に残ったフォスは、あそぼ!と声を掛けます。

感想

感傷的な読了感

ついに終わってしまった。

でも、ちゃんと終わりを見届けることができた。

そんな相反する気持ちがあり、トータルでいえば感傷的な気持ちです。

途中に休載を挟みながら、ゆっくりと、そして予想がつかないような展開を見せてくれた本書。

単行本を手にした時、まず美しい表紙に惹かれます。

はじめは儚さは感じ、次第に優しい希望のようなものを感じ取っていて、読み始める前から感傷的になっていました。

内容についても、連載を追っていたので、こんなことだったな、という気持ちでしたが、やはり単行本としてまとめてみるとまた違った見え方がしました。

連続することによって各話の持つ意味が明確になり、一つの作品としての輪郭が見えてかなり読みやすかったです。

そして、フォスをはじめとした登場キャラクターの心情の揺れ動きが見やすくなり、ゆっくり丹念に読むことが出来ました。

じっくり読み返したい

買ってからも、心の準備が出来るまで読めなかった本書ですが、読み終わると今度は一巻から通して読みたいという欲求が出てきました。

物語全体を通じて、フォスたちはどんな物語を紡いでくれたのか。

メッセージもそうだし、単純に強くてもろくて美しい、宝石たちをじっくり読みたいという気持ちがあります。

また、市川春子さんの作品は初読だけでは完全に理解が難しいことが多いので、改めて込められた意図など丁寧にさらっていければと思います。

読み進めた時、どんな気持ちを抱くのだろう。

想像しただけで嬉しくなってきます。

おわりに

素晴らしい作品を最初から最後まで追うことができ、本当に感謝しかありません。

飾っているだけでも美しく、読んでも面白い。

これから先も定期的に読み返したい、自分の中での不朽の名作となりました。

市川春子さん、本当にお疲れ様でした。そして本当にありがとうございました。

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