『殺戮にいたる病』徹底ネタバレ解説!あらすじから結末まで!
永遠の愛をつかみたいと男は願った―。東京の繁華街で次々と猟奇的殺人を重ねるサイコ・キラーが出現した。犯人の名前は、蒲生稔!くり返される凌辱の果ての惨殺。冒頭から身も凍るラストシーンまで恐るべき殺人者の行動と魂の軌跡をたどり、とらえようのない時代の悪夢と闇を鮮烈無比に抉る衝撃のホラー。
「BOOK」データベースより
本書は我孫子武丸さんによるとんでもないホラーです。
ミステリ作品が読みたい時期に巡り会った一冊で、現代本格における叙述トリック作品の最高峰とも言われている作品です。
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叙述トリック
物語は殺人者である稔、母親の雅子、警察を引退した樋口の三人の視点から進み、やがて冒頭の蒲生が逮捕されるシーンに辿り着くという流れです。
やや視点が入れ替わり過ぎて酔ってしまうような感覚もありましたが、ラストの衝撃といったら、一瞬書かれていることの意味が分かりませんでした。
素直に読むのもありだし、最初から疑いの目で読んでいくのも楽しいと思います。
是非最後まで読んだら、もう一度読み直してみてください。最初は気が付かなかった細かい点に気が付き、緻密な構成に思わずため息が出るはずです。
ここでは、その叙述トリックについて解説したいと思います。
以下、ネタバレですので、未読の方はご注意ください。
トリックについて
この作品最大のミスリードは稔=雅子の息子と思い込まされる点にあります。
序盤で
雅子:息子が犯罪者ではないかと疑っている
稔 :雅子が疑い始める3か月も前に初めて人を殺した
とあります。
もうこれだけで雅子が息子である稔のことを疑っているようにしか見えなくなってしまいます。
しかし実はそうではなく、あとで順番に説明していきますが、稔=雅子の夫であり、息子は別にいるのです。
息子の名前(信一)が最後まで出てこないのもミスリードの原因になっています。
別のブログでとても分かりやすい解説をしている方がいらっしゃったので、ここでは簡単にこの話のトリックについて、最初から順番にポイントを整理していきます。
p.28 息子の部屋から、赤黒い液体が残ったビニール袋が見つかった
雅子が息子である信一が人を殺したのではないかと疑っていますが、実は信一も父である稔が人を殺したのではないかと疑っていました。
信一は稔が捨てたこのビニール袋を入手し、自室に置いていたのでした。
p.37 江藤佐智子:ニーチェの権威とお知り合いになれたことだし
稔は大学院生であると偽り、会話している中で佐智子から出た言葉。
いくら院生で勉強しているといっても権威は言い過ぎでは?稔は若い外見をしているが実際は四十三歳の中年なので、院生はさすがに無理がある気がします。
ということは、佐智子はこの時点で、稔が院生ではないことに気が付いた上で付き合っているのかもしれないという可能性が出てきます。
もしくは、稔が先生であることをあらかじめ知っていたかどちらかだと推測されます。
p.38 稔は自分の車を持っていたが、今日は乗ってきていなかった
都心に暮らす大学生が自分の車を持っているでしょうか?
都心の大学に通う上でまずは必要としないはずです。
雅子の口からも贅沢をしなければ専業でいける程度の給料とあるので、これが父親の車→稔がその父親という流れがなんとなく見えてくると思います。
p.47 稔が出かけると、雅子は息子の部屋に入った
普通であれば、呼称が違う=別人と判断しますが、ここまでですでに息子=稔と刷り込んであるので、あまり気にされません。
しかも稔が出かけるのを待って息子の部屋に入るため、息子の部屋=稔の部屋と誤認しても仕方がありません。
p.65 稔が講義を休講させた
学生であれば講義を休むことはあっても、休講する権限などあるはずがありません。
稔が助教授だからこそ出た言葉ですので、トリックに気が付きやすいポイントだと思います。
しかし、母から話しかけられたことで母=雅子と誤認してしまいますが、実は稔の母=容子のことを指しています。
稔の父は亡くなっていますが、母は健在で、母の容子、稔、妻の雅子、息子の信一、娘の愛の五人家族であることが分かります。
p.72 十五、六の少女からおじさん呼ばわりされる稔
大学生でもこう呼ばれる可能性は十分あるため、違和感がないのが面白いところです。
しかし、実際は正真正銘おじさんなのでした。
p.94 イタリアンのコース料理
大学生で数千円もするコース料理を知り合ったばかりの少女と行くでしょうか?
しかも初めてではないということで、ここも違和感の一つでした。
p.105 母と娘とおせちを作った
この母が雅子であれば、「娘と」もしくは「母と娘で」となるはずです。
文字通り捉えるならば、雅子の母と雅子の娘と雅子の三人で作ったことになります。
この母は容子のことを指しています。
さすがに義母と書いたら明らかなので仕方ありませんが、ちょっと卑怯な気もします。
まあ、雅子の視点ですから、こう書いても不自然というほどではありません。
p.133 雅子が家族旅行を提案したのに対し、お母さんと行けばいいと答える稔
この前に愛と雅子が話しているので、一見愛に対して雅子と行ってくれば?と言っているように見えますが、実際は母の容子と行ってくれば?と雅子に提案しているのです。
前の描写でみんなが食卓に揃っているとあるので、この場には容子もいます。
しかし、雅子の視点から容子は出てきませんので、この発想に至ることが難しいのがポイントです。
あと、ここで稔と信一が一緒に出てきますが、p.65の稔の口調と息子の口調がちょっと違うのも気になりました。
ただし、真相を知ったからこそ気が付く程度の差異なので、大した違和感ではないのかも知れません。
おわりに
このように一度真実に気が付くと、違和感はたくさん出てきます。
しかし、それに気が付かせないあたりが本当にうまいと思う名作です。
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