『ユア・フォルマV 電索官エチカと閉ざされた研究都市 』あらすじとネタバレ感想!
――いつか私の「秘密」が公になったとしても、どうかかばわないで下さい。
Amazon商品ページより
敬愛規律の「秘密」を頑なに守るエチカと、彼女を共犯にしたくないハロルド。対話を避ける二人の溝は深まっていた。
そんな中、解読が続けられていた謎のAI「トスティ」が、ドバイの技術研究都市「ファラージャ・アイランド」で開発された可能性が浮上する。所有者の人格を反映した分身アミクス「ego」が浸透する都市への潜入捜査は、その環境の特殊さから困難を極める。研究都市に住む天才少年・ユーヌスの協力もあり、徐々に真相に近づくエチカたちだが、同行していたビガの身に異変がおこって――。
エチカとハロルドが出会ってから一年、彼らの長い冬が、また始まる。
シリーズ第四弾となる本書。
前の話はこちら。
お互いのことを考えているのに、その方向は真逆。
しかも自分の抱える感情の正体に気が付いていないため、それを上手く表現することができません。
表面上は取り繕いながらも、深い溝を抱えたまま捜査を続けるエチカとハロルドが見どころであり、胸が苦しくなることが多々ありました。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
事情聴取
『ペテルブルグの悪夢』の再来と解決から約二週間が経過したところから始まります。
警察は、事件に関与していたシュビンに対して取り調べをしていました。
彼の証言で、ハロルドが彼を脅したことが明かされます。
ハロルドは救命措置だと涼しい顔で説明しますが、エチカには彼が本当に脅していたことが分かっていました。
なぜならハロルドは通常のアミクスと違い、敬愛規律を遵守しない行動もとれるからです。
しかし、人間にとってそんなアミクスが存在するなど信じられるはずがなく、このことを本当に理解しているのはエチカ含めたごく少数の人間だけでした。
次なる目的地
分析型AI『トスティ』の分析が進み、実際のコードを隠蔽する隠し扉が発見されます。
使用されているプログラミング言語は独自のもので、製造者であるラッセルズがドバイに潜伏している可能性まで突き止めます。
ドバイには『ファラーシャ・アイランド』という研究都市があり、ここでは分析AIの研究が盛んになっていて、トスティがここで開発されたことが推測されます。
ここで議論していても限界があるため、トトキはエチカたちにファラーシャ・アイランドにて直接調査することを命じます。
捜査
捜査の冒頭で、ファラーシャ・アイランドでは今年から島全体で人間とアミクスの人格を同期させる大規模な実験『Project EGO』が行われていることが明らかになります。
エゴトラッカーというデバイスを身につけることでユーザーの人格を解析し、そのデータをペアリングしたアミクスと共有することで、アミクスがもう一人の自分になるのだといいます。
本来の捜査から外れたものだったはずですが、捜査の中でこの技術が障壁となって立ちはだかります。
特殊な環境の中で、物語は新たな一面を見せます。
感想
不安定な関係
エチカとハロルドは誰にも明かせない秘密を共有することになりますが、それによって対立してしまいます。
エチカは何としてもハロルドを守りたい。
彼もまたエチカを守りたいと考えていますが、それを同時に満たすことはできず、二人は溝を作ってしまいます。
エチカがもう少し器用で素直であれば、違った関係が築けたかもしれません。
しかし、そんな彼女だからこそハロルドとここまでの関係が築けたわけで、二人にとって必要な試練なのかもしれない、と思いながら読んでいました。
ビガとフォーキンがいてくれることで雰囲気も暗くなりすぎずに済みました。
巨大な悪
エチカたちが追っている存在が、いかに巨大で秘密を暴かれないよう徹底しているのかが明かされます。
当然、エチカの強みである電索にも対策が施されていて、今後の捜査が今まで以上に難しくなることが予想されます。
そして、エチカは戻ることのできない道をさらに奥まで進み、ハロルドの願いとは真逆の行動をとり続けます。
この行動が、彼女たちの関係にどう影響を及ぼすのか。
高いリーダビリティもあり、終始楽しむことができました。
おわりに
昨今あまり流行らなそうな設定なのに、それを読ませてしまう強さを改めて感じさせてくれました。
エチカやハロルドをこれから待っている困難が簡単に予想できますが、彼らの幸せを願って次も読みたいと思います。
次の話はこちら。
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