『どこの家にも怖いものはいる』あらすじとネタバレ感想!五つの幽霊屋敷話に共通する何かとは?
三間坂という編集者と出会い、同じ怪談好きとして意気投合する作家の三津田。その縁で彼の実家の蔵から発見された「家」に関するいくつかの記述を読むことになる。だが、その五つの幽霊屋敷話は、人物、時代、内容などバラバラなはずなのに、奇妙な共通点が……。しかも、この話を読んだ者の「家」には、それが訪れるかもしれないらしい。最凶の「幽霊屋敷」怪談登場!
Amazon商品ページより
五つの恐怖話が登場する本書。
最初は関連があるといわれても、どこかピンときません。
しかし、関連する話が増えるごとにその意味が分かり始め、やがて一つの答えが見えてきます。
ホラー×ミステリの融合が見事で、いつの間にか世界観に入り込むこと必至です。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
発端
三津田が出版社の三間坂秋蔵と話したことが、物語の発端となります。
仕事の依頼から二人の関係は始まりますが、三間坂は三津田のファンということもあり、はじめは共通の話題である三津田の書籍に関することでした。
次第に話題が尽きてくると、三間坂が話題を切り出します。
時代も、場所も、人間も。
全く関係ないにも関わらず、どこか似た話を持っているのだと。
主婦の話
一つ目は、一般家庭の主婦の話です。
とある一家が引っ越してきます。
夫婦に幼稚園児の子どもの三人で、しばらくは平凡な暮らしに見えました。
ところが、主婦の日記にはどこかおかしな記載があり、家に何かがあるような雰囲気が漂います。
物音が聞こえる。ホコリがたまる。
それ以外にもキヨちゃんという謎の存在が登場しますが、この正体は主婦の記述の時点では分かりません。
少年の話
二つ目は、田舎の少年・石部鉋太の語りです。
家が大工ということで、将来は大工になることを期待されつつも、鉋太は学校の勉強が楽しくて仕方ありませんでした。
そんな彼の住む村には昔から神隠しが起こるといわれています。
加えて割れ女という化け物の噂もあり、それが現れたら一目散に逃げるように注意されています。
鉋太の話にこの割れ女が登場するわけですが、彼の記述だけでは何が起こったのかは正確には分かりません。
奇妙な類似点
三津田は二つの話を聞き、確かに奇妙な共通点を見出します。
何が関連しているか分からないけれど、感覚として二つの話は確かに似ている。
三間坂から話を聞いた時点で、この感覚の正体は掴めません。
やがて、さらに三つの話が集まり、三津田はそれらから思いがけない共通点と真実を見出します。
感想
単発でも面白い
本書には五つの奇妙な、怖い話が登場し、そこに隠された共通点を探すことが目的になります。
探す過程はまさにミステリで、高いレベルでホラーと融合していることはいうまでもありません。
まず評価するポイントとして、五つの話それぞれが単発でも面白いということです。
これだけでも短編、あるいは中編が成立しそうなくらい濃密で、どこか不気味さが残る恐怖があります。
ミステリとして楽しむ方法もありますが、あまり推理に興味がないという人でも、本書の与える不気味さ、恐怖を味わうだけでも十分に楽しむことができます。
推理の面白さ
ホラーである一方でミステリでもあるので、推理も同様に楽しむことができます。
五つの話は場所も時代も人物も違うので、共通点を見つけ出すのは、はっきりいって難しいです。
公平なミステリのように、推理材料が明らかで、そこから真実を見出すのとはちょっと毛色が違います。
僕はミステリとしても楽しむつもりで読んでいましたが、終盤に三津田が真実を明かすまで、まったくピンときませんでした。
しかし、真実を明かされてみると伏線はたくさん張られていて、その回収も鮮やかで見事でした。
正直、こじつけではないかと思うような部分もあるにはありましたが、そんなことは些末であると思えるくらいに納得度の高い真実で、ミステリとしても完成度は高いのではないかと思います。
三津田作品の中でもオススメ
三津田さんの作品は面白い、かつ読みやすい作品が多いので、基本的にはどれでもオススメできます。
その中であえてオススメと聞かれれば、現時点で僕は本書を推します。
読書が得意でない人でも比較的読みやすく、読み始めれば、三津田や三間坂のように五つの話にのめり込み、そこに隠された共通点探しに夢中になるはずです。
おわりに
圧倒的なリーダビリティ、面白さで、三五〇ページがあっという間に終わってしまいました。
ここまで読み手に怖さ、面白さを届けてくれる作品は早々ないので、気になった人は絶対に手に取ることをオススメします。
次の話はこちら。
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