『違国日記 3巻』ネタバレ感想!あらすじから結末まで!
2018年 “心が救われるマンガ” No.1!!!
Amazon内容紹介より
雑誌、SNSで大絶賛の話題書!!
[ダ・ヴィンチ][an・an][BRUTUS][TV Bros.]等
歩み寄る女王と子犬。
両親の事故死により、田汲朝(たくみ・あさ、15)が
小説家の叔母・高代槙生(こうだい・まきお、35)の家に住んでしばらく。
親友・えみりを家に招いた朝だったが、槙生の人見知りが発動。
「超超超超ひとりになりたい」と槙生は執筆に没頭した……。
こちらを拒むかのような槙生の背中に、しょげる朝。
そこへ通常モードに戻った槙生は―――?
不器用人間と子犬のような姪がおくる
年の差同居譚、手を繋ぎ合う第3巻!
前の話はこちら。
この巻から朝は高校に進学しますが、これまで見えてこなかった歪みがようやく姿を現します。
ただでさえ思春期という気持ちが揺れ動いてどうしようもない時期なので、誰にも理解されない孤独は相当なものだと思います。
一方、槙生もまた慣れない共同生活に苦戦していました。
そんな二人が、どんな形になっていくのか。
この記事では、そんな本書の魅力をあらすじや個人的な感想を交えながら書いていきたいと思います。
ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。
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朝の高校の入学式当日。
槙生に見送られ、朝は元気に家を出ていきます。
駅の改札前でえみりとその母親が待っていて、早速えみりに抱きつきます。
母親はこの間のことを謝るようえみりに言われ、叔母である槙生にも挨拶したいと言いますが、来ないと平然と言われて戸惑います。
そんな様子には気が付かず、朝たちは高校での新しい生活に思いを馳せながら電車に乗ります。
学校に着くと、母親は保護者席に向かおうとしますが、その前に朝に言います。
こんな時に一人はやっぱりおかしいから、今からでも電話して来てもらいなと。
しかし、朝は親じゃないし、とばっさり切り、おじきをして生徒たちの方に走っていきます。
体育館には中学から一緒の男子、初めて会う友人がいて、言葉を交わします。
入学式が終わると、朝たち新入生は固まって移動しますが、そこで朝は不意に両親が亡くなってしまったこと、小説家の叔母と暮らしていることを明かします。
みんなはそれぞれ相槌を打ちますが、朝は気が付きます。
自分が、なんとなく孤立していることに。
何か愚かなことをしたという感覚はあっても、それが何なのかは分かりません。
彼女は、非凡だと思われたくてそう言ったのですが、それが見事失敗したのでした。
こんなことを話したら槙生な何て言うだろう。
そんなことを思いながら帰宅すると、入学式だからということで宅配ピザをとっていて、一緒に食事をします。
そこで朝は、注目されたかったのに失敗して嫌だったと、抽象的ですが自分の気持ちを伝えます。
しかし、槙生はへー、としか言わず、その反応は朝の予想したものとは全く違っていました。
そこで朝は気が付きます。
自分が予想していた槙生の反応は、全て母親に言われたことだと。
脳裏に、母親に寄り添う今より少し幼い朝が浮かびます。
朝はそれを振り切ってピザを口にすると、珍しく槙生から話をふってきます。
朝が目立ちたいと思うことを恥ずかしそうに言うと、槙生はそれを肯定し、自分もそうだと言います。
だから小説家をやっているのだと。
それで朝は安心し、槙生が小説家であると自慢っぽく言ったことを明かしますが、二度としないでと槙生は態度を一転。
自分たちは他人だから、自分が何者でも朝が目立ったことにはならないと。
朝はあまりピンときていないのか、生返事です。
代わりに槙生は、歌がうまいんだから軽音部はどうかと勧めますが、朝は母親が嫌がったからと乗り気でありません。
何かを察したのか槙生はへーとだけ言い、その先を言いません。
朝は、今日は反省の日だからと先を促すと、『もう、いないじゃん』、と思ったこと、いたところであなたの人生と人情を感じないことを平気で口にします。
朝は意味が分からないのか無反応で、槙生がよく喋ることを指摘。
どうやら仕事が一本終わり、脳みそのリソースに余裕があるようです。
この時、朝は自分の置かれている状況にようやく頭が追い付いてきます。
もう自分は、母親の意向に沿うことも、助言を求めることもできないのだと。
朝はこのことを日記に書こうと思いますが、書いたことに納得いかないのか文字を消すと、その上にうなぎを描くのでした。
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槙生が帰宅すると、えみりがお邪魔していました。
槙生は映画館でスマホを切ったままで、朝の連絡に気が付いていなかったのです。
えみりに気が付き、やがてここはもう自分だけの家ではないのだと改めて実感し、一人になりたいと切実に思っていました。
どうして自分はこんなに世界と繋がるのがうまくないのだろうと。
朝とえみりのやり取りを見ながら、自分の学生の頃もこんなにかしましかっただろうかと物思いにふけります。
そんな時、えみりは槙生に対して、好きなお菓子は何かと聞きます。
母親に頼まれた、手土産の偵察だと。
えみりは馴れ馴れしい態度が失礼だったかと思いますが、槙生は気にしていない、そしてそういう付き合いは苦手だから手土産は不要だと言います。
そして敬語について指摘され、あなたを尊敬しているから?と答えますが、二人は大爆笑。
それが余計にきつく、槙生は仕事をすると部屋に閉じこもります。
部屋にいつ飲んだか分からないかぴかぴのマグカップが置いてありましたが、朝たちがいるリビングに戻る気になれず、そのままにして仕事を始めます。
一方、えみりは朝が元気なことに安心しますが、朝はいまいちピンときていませんでした。
えみりはこのことを母親に相談すると、朝は無条件で何かをしてくれる人を失ってしまったから、えみりがそうしてあげなさいと言われていました。
だからいつでも朝のことを無条件で助けると宣言し、朝は嬉しくてえみりに抱きつきます。
無条件という言葉で、朝は母親のことを思い出します。
母親は朝のことを呼び、朝も呼び返そうとしますが、次の瞬間、車同士が衝突し、朝は唖然とします。
そこで朝は驚いて目を覚まします。
どうやら夢を見ていたようです。
えみりは、朝に髪を染めない?と勧め、帰る前にトレイに行きます。
その間、朝は出したコップを洗い、えみりが帰ることを槙生に伝えます。
ところが、槙生は仕事に集中しているせいかうるさい、しめてと振り向きもしません。
朝は怒って諦めると、えみりを見送ってカーテンを閉じます。
槙生に配慮してテレビを見始めますが、やがて夕飯はどうするんだろうと気にし始めます。
すると、槙生が急に部屋から出てくると、おもむろに料理を作り始め、最後に卵を置くと仕事に戻ってしまいます。
意味の分からない朝。
その後も槙生は仕事を終わらせる気配がなく、仕方なく一人で夕飯を食べることに。
それからしばらくして槙生は仕事を終え、リビングに来ますが、朝はソファーで膝を抱えて座っていました。
槙生は卵が残っていることに気が付き、卵を使った方がおいしいのにと指摘しますが、そこで顔を上げます。
泣いていて、食べ方なんか知らないもん、ばかっ!!と思いをぶつけるのでした。
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言い返してやったと思い、それでもまだ怒っている朝。
槙生は意味が分からず、そのままご飯を食べ始めます。
えみりとケンカでもしたかと思い、それから自分が十五歳の頃のことを思い出します。
そして、涙を流しながら前を見つめる朝を見て思い出します。
あの頃、自分たちはそれぞれ違った形の孤独を抱えていて、自分だけが一人で、自分だけが誰からも愛されなくて、自分だけが本当の恋を知らない。
そんなことを、誰もが多分思っていた、と。
槙生は食器を片付けると、ソファーに座る朝の隣に無理やりねじ入り、彼女の背後から肩を抱き寄せます。
驚く朝、槙生も不機嫌そうです。
そして槙生は、いつでも朝のことを慮ってあげられないこと、朝の寂しさや焦りを理解してあげられないと言います。
朝は母親が嫌いだから?と聞きますが、槙生は否定。
人といるととても疲れ、一人でないと仕事が出来ないのだと。
朝は、そんな槙生に寂しくないのかと聞きますが、槙生は全然と答えます。
そして、朝が槙生の息苦しさを理解できないのも、二人が別の人間だからと話します。
その上で、ないがしろにしたことを謝り、歩み寄ろうと提案します。
分かり合えないからこそ、歩み寄るのだと。
そこでお互いの要求を伝え、朝は一人でご飯は食べたくないと伝え、槙生は了承して今日のことを謝ります。
朝は、自分のことが好きじゃないのに?と遠慮がちですが、槙生はそんなことはないと否定。
愛してることと好ましいのは別で、どちらかといえば好ましく感じていると。
朝は寂しいと呟き、再び涙を流します。
それでも槙生は根本的にはどうにもしてあげられないと突き放しますが、朝は寂しいと何度も訴え、槙生はさらに彼女を抱き寄せます。
槙生は、朝の寂しさを受け入れ、しかし理解はしませんでした。
そして、朝は自分の両親のことが急に分からなくなってしまいます。
回想の中でケンカする両親。
朝はそれを『砂漠』と表現します。
砂漠にあるオアシスの水は、どれだけ自分を癒してくれても、決して自分の身体とは融け合わないのだと。
そして、朝はそのことを知らなかったのです。
朝が寝た頃、リビングで槙生は笠町と電話していました。
彼女は、突然現れた人間が干渉していいのかと悩んでいました。
しかし、笠町と話すことで、少しですが自分の考えが整理されるのでした。
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朝の回想シーン。
彼女はコールドプレイが好きで、それを知った母親は彼女がそういう男が好きなのかと勘違いしていました。
朝は、自分の砂漠に母親がついに気が付かなかったのだろうと思うのでした。
当時の母親のことを、幼い朝は同じく幼いえみりに報告します。
季節は夏で、蓋路はアイスを食べながら歩いています。
幼いながら、矛盾してるなと難しい言葉を使っています。
矛盾していること。
それは、朝の好きなことを否定するくせに、やりたいことがあれば何でもやっていいと言うところでした。
もう一度母親が朝を呼び、そこで朝は目が覚めます。
目から涙が流れていて、朝は鼻をすすります。
目覚めて槙生の作ってくれた朝食をとると、出かける間際、トイレットペーパーを買ってきてほしいと言われ、朝は思わず振り返ります。
朝、玄関で、母親にも同じことを言われたと。
それは何も不思議なことではなく、槙生たちの母親もまたそう言っていたからでした。
納得した朝は、さらに髪を染めていいかと聞きます。
すると、槙生は校則が許せば自分に許可を取る必要ないといい、朝はまたしても母親とのやり取りを思い出します。
かつて長かった髪を切った朝に対し、母親は男の子みたいと否定するのでした。
しかし、一方でなりたいものになりなさいと言う。
まさしく矛盾です。
場面は変わり、学校。
朝は部員募集のチラシがたくさん貼られた掲示板の前で浮かない顔をしていました。
そこに同じクラスの森という女子が現れます。
彼女はハーフなのか、背が高く、黒人のような風貌です。
彼女も入る部活に悩んでいましたが、友達に付き合って見に行った卓球部が良かったと話します。
森は朝に合唱部を勧めますが、歌は好きなんだけどと乗り気でない朝。
通りがかる三年生は進路の岐路に立ち、将来の夢がないと嘆いています。
ここで朝はまた母親との会話を思い出します。
中学に入学し、部活をどうしようと母親に打ち明ける朝。
すると母親は、彼女が歌が好きなことを挙げ、合唱部はどうかと言います。
次第に朝もその気になり、母親の言う事に従って合唱部に決めます。
その後も着る服、夕飯の献立、外食で頼むものなど、いつでも母親に従ってきました。
一方、父親は良識の範囲内で、母親に叱られなければ何でもいいと興味がなさそうです。
そして別の回想で、両親が褒めてくれなかったショートカットを褒めるえみり。
朝は肯定されたことで気が大きくなり、両親に分からせてやると言います。
しかし次の瞬間、両親の乗った車が事故に遭う場面に切り替わり、朝の立っていた場所が崩れます。
そしてようやく現実に戻ってきた朝。
彼女は、両親が亡くなってから、じっと静かに怒っていたことに気が付きます。
しかし、何に腹を立てているのか分かりません。
そこに複数の友達と話すえみりが通りがかり、朝は声を掛けますがえみりは通り過ぎてしまいます。
森は卓球部にすると言って立ち去り、朝は一人に。
朝はたくさんのことで頭がぐらぐらし、何も考えられません。
ふと、朝の味方だと言う母親に対して、まだ幼かった朝はこれまでため込んだ怒りをぶつけます。
そして、勝手に死んじゃった人が悪いんじゃん!!と。
そこで肩を叩かれ、我に返ります。
隣にえみりが立っていました。
友達と一緒で声を掛けられなかったことを謝るえみり。
わざわざ走ってきてくれたことに気が付き、朝に笑顔が戻ります。
二人は部活の話をし、朝は思います。
自分は何にでもなれる、ざまあみろ、と。
そして、軽音をやろうかな、と口にするのでした。
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自宅で執筆作業に集中する槙生。
スマホに電話がかかっていますが、嫌いだと頑なに出ません。
その相手は男性で、槙生が出ないから直接家をたずねようとオフィスを出ます。
場面は変わり、下校途中、槙生と会う朝。
笠町が職場でカキをたくさんもらったから来てくれるのだといい、朝も一緒に買い物に付き合います。
家に戻ると、槙生の部屋のインターフォンを押している男性がいます。先ほどの電話の相手でした。
彼は塔野と名乗り、弁護士で後見監督人だといいます。
生命保険の手続きでも会っているはずですが、槙生は覚えていませんでした。
塔野は家に上がると、朝の名義の口座から三十万が引き出されていたことを伝え、その理由を聞きます。
いきなりのことに槙生は混乱し、ゆっくりと確認しながら話します。
槙生は、朝の口座は彼女の学費、小遣い以外に使うつもりはなく、今回のことも知らないと言います。
しかし、塔野は別に詰問したいわけではなく、純粋に槙生が朝の面倒をちゃんと見ているのか気にしていただけでした。
塔野は失言が多く、何かと槙生を無意識に責めてしまいますが、気を取り直して口座のことを聞きます。
すると、朝は自分が三十万円のパソコンを買ったと何の気なく白状。
槙生は戸惑って理由を聞きます。
すると朝は、警音に入りたいけれど反対されるのが嫌で、パソコンがあったら音楽が出来ると思ったからと答えます。
塔野は槙生に行動を制限されているのではと思いますが、朝はそれを否定。
涙を流し、大人だから反対すると思ったと言います。
それは、完全に母親の影響でした。
朝はなんで泣いているのか自分でも分かっておらず、槙生は彼女の背中にそっと手を置きます。
とりあえずパソコンは返品することになり、朝は顔を洗いに行きます。
いなくなると、槙生は思わず大きなため息をつきます。
槙生は、朝が自分と母親の間で揺れ、どちらが正しいのか分からない状況にいることに気が付いていました。
塔野も事情を察したようで、ぜひ二人の力になりたいと言い、戻ってきた朝にも名刺を渡します。
すると朝はもらった名刺をどこかにテープで貼り付けます。
塔野は意味が分からないという顔ですが、槙生は真顔ですが思わず吹き出してしまいます。
塔野は玄関まで見送られ、別れ際に槙生と握手を交わします。
そして帰ろうとドアを開けますが、目の前に笠町が立っていました。
笠町は塔野のことを編集部の人と勘違いしていて、塔野もまた、笠町が槙生と付き合っているのかとつい聞いてしまいます。
笠町は辛うじて友人だと答えますが、内心、今微妙なところだから言うんじゃねえと怒っています。
そんな笠町の様子に気が付かない塔野は、そのまま帰ろうとして、不意に自分がまた失言をしたのではと振り返ります。
しかし、槙生は何も気が付いておらず、気にせず帰ります。
その後、三人で食事をとると、笠町と槙生はソファーで並んでワインを飲みながらテレビを見ます。
ふと笠町は槙生を抱き寄せ、槙生は驚きながらも思い出します。
笠町は慰める時、いつもこうしてくれて、自分も気が付いたら朝に同じことをしていることに。
それを聞いた笠町は嬉しそうで、二人はしばらくいい雰囲気に。
そこに朝の好きなバンドがテレビに登場。
笠町は渋いと言い、そこで朝が部屋から顔を出します。
目の前でいい雰囲気の二人に顔を赤くしながらも、好きなバンドを見ようと槙生の横に座り、三人でゆったりとした時間を過ごします。
ソファーにぎゅうぎゅうに座り、朝の好きな音楽について語り合う。
朝は両親を亡くして以来、初めて穏やかで、幸せだと感じられる夜を過ごしました。
自分だけが知らない国にいる、というような心地で眠らないのは久しぶりでした。
おわりに
ようやくお互いの本音をぶつけ、歩み寄り始めた二人。
最後はそこに笠町が間に入り、とても幸せな光景がそこにありました。
このまま幸せになってくれると嬉しいですが、失言の多い塔野がいつか取り返しのつかないことを言ってしまいそうな気もして、先がとにかく気になります。
次巻が出ましたら、また記事を書きたいと思いますので、乞うご期待!
次の話はこちら。