『少女七竈と七人の可愛そうな大人』あらすじとネタバレ感想!切なさを優しさが包む恋愛小説
わたし、川村七竃十七歳はたいへん遺憾ながら、美しく生まれてしまった。―男たちなど滅びてしまえ。吹け、滅びの風。半身を奪われるような別れ、あきらめていた人への想い、痛みをやさしさが包み込む。「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」の気鋭、桜庭一樹が描き出す、最高の恋愛小説。
「BOOK」データベースより
本書は恋愛小説にカテゴライズされると思いますが、その言葉だけでは到底表現できないような悩みや苦しみを抱えています。
他人から見れば羨むべき特徴も、本人にとってしてみれば不要なものもある。
人生の難しさ、理不尽さのようなものを強く感じさせられる一冊でした。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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七人の大人って誰?
内容に入る前に、本書のタイトルに七人の大人とあります。
読んだ人は分かると思いますが、まとめると以下の通りです。
- 川村優奈:七竈の母親
- 田中:優奈の元同僚教師
- 田中の妻
- 桂:七竈の親友・雪風の父親
- 桂多岐:桂の妻で優奈の友人、田中の妹
- 東堂:優奈の七人目の相手
- 梅木美子:芸能プロダクション部長
この大人たちがどう可愛そうなのか。
ぜひ本書を読む際に頭の片隅に入れておくと楽しめます。
あらすじ
辻斬りのように
冒頭、主人公である川村七竈(かわむらななかまど)の母親となる優奈の若い頃が描かれます。
優奈は二十五歳の時、ふと辻斬りのように男と遊びたいと思い立ちます。
平凡な自分を変えるのにそれが一番な気がして、優奈はそれから一か月ほどの間に七人の男と関係を持ちます。
そして誰のか分からない子どもを身ごもり、生まれてきたのが本書の主人公となる七竈でした。
男を憎む美少女
十七歳の七竈は美しく成長し、住んでいる旭川の誰もが彼女を凝視します。
しかし、決して幸せというわけではありませんでした。
七竈はいんらんな母親のせいで肩身の狭い思いをし、強い怒りでもって男が滅ぶことを望んでいました。
趣味は鉄道で、心を許せるのは親友でこれまた美形の雪風のみ。
七竈はそんな世界で生きていました。
少年との関係
七竈と雪風は恋人同士というわけではありませんが、お互いをかけがえのない存在だと思っています。
しかし、成長するにつれて二人の中である疑念が生まれます。
それは、二人が異母兄妹(あるいは逆)なのではというものです。
七竈の母親である優奈は至って平凡な見た目をしていて、七竈とは似ていません。
一方、雪風の父親はかつてその美貌であらゆる女性を魅了し、彼の血を受け継いだ子どもはみな美形に成長しています。
七竈と雪風が並んで見比べられると、そのことに気が付く人がいるかもしれない。
二人はそれが事実かどうか分からないものの、学校外で会う時はサングラスをつけて比べられないようにしていました。
二人の関係が永遠に続きますように。
しかし、時の流れは二人の関係にやがて変化をもたらします。
感想
世の中は悩みで満ちている
主人公である七竈は遺憾ながら美しく生まれてしまい、そのことに怒りや憎しみを抱いていました。
興味のない男たちがジロジロ見られるし、同性の後輩からはライバル視されるし、おかしな大人がたくさん近寄ってきます。
極めつけはインランな女性が母親だということです。
とにかく七竈には悩みがたくさんあり、それを和らげてくれるのが雪風や祖父、飼っている犬のビショップです。
幸せな面はもちろんありますが、これは不思議な性格になってもおかしくないという家庭環境です。
そして、悩みを抱えているのは七竈だけではありません。
極端な話、彼女の周囲のほぼ全員が悩んでいるのです。
振り切れているように見えても、外面からは想像もできないことで悩んでいることもあり、とても共感できるものもいくつかありました。
嫌な人だけれど、悩みを知ってしまうとどこか憎み切れない。
作品全体に哀愁が漂っていますが、それが愛おしくもある、不思議な作品です。
確かに恋愛小説ではありますが、僕は人々の人生を描いたもっとスケールの大きな作品であるように思えます。
変わることの儚さと美しさ
誰もが年をとり、決して同じ場所にとどまることはできません。
その時は不必要だったり、大したものでなかったりと感じることも、それがなくなってからはじめて大切だったことに気が付くこともあります。
時が過ぎれば手に入ると思っていたものが、実はもう手にしていて、年を取ることで失ってしまった。
終わりが近づいてくることを感じながら、今を享受する。
本書では時が移ろうことによって得られるもの、失うものがたくさん描かれていて、儚さと美しさを同時に感じることができました。
七竈と雪風の関係もそうだし、他の登場人物についても同じことがいえます。
独特な言葉遣い
僕が本書の魅力として挙げたいのは、独特な表現やフレーズの数々です。
お互いの名前を呼び合う七竈と雪風。
繰り返されることで切なさが倍増します。
現実世界では聞かないような会話文。
それでいてキャラクターをしっかり表現できていて、しっくりきます。
うぉん、と強弱をつけて鳴くビショップ。
読んでいるうちに、その加減だけでなんとなく彼の心が読めるような気になれます。
挙げればキリがないですが、そんな愛おしいポイントが満載で、それゆえに哀愁が漂っていてもそこに幸せもまた見出せるのかもしれません。
おわりに
基本的に切なく苦しいのですが、救われることもたくさんあり、そのバランスがとにかく絶妙でした。
改めて桜庭さんの描く人物は個性的で、好きだと再認識しました。
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