『死との約束』あらすじとネタバレ感想!絶対君主を殺害したのは誰か?

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「いいかい、彼女を殺してしまわなきゃ…」エルサレムを訪れていたポアロが耳にした男女の囁きは闇を漂い、やがて死海の方へ消えていった。どうしてこうも犯罪を連想させるものにぶつかるのか?ポアロの思いが現実となったように殺人は起こった。謎に包まれた死海を舞台に、ポアロの並外れた慧眼が真実を暴く。

「BOOK」データベースより

アガサ・クリスティの作品の中でも特に人気のあるエルキュール・ポアロシリーズの一冊である本書。

三谷幸喜×クリスティ名探偵勝呂(すぐろ)シリーズの『オリエント急行殺人事件』、『黒井戸殺し』(原作は『アクロイド殺し』)に続く第三弾としてドラマ化されました。

ドラマの公式サイトはこちら。

死との約束 フジテレビ

https://www.youtube.com/watch?v=0RXKSKXLrkI

原作の設定を日本に置き換え、小説とはまた違った面白さのある作品に仕上がっています。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

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あらすじ

囚われの家族

エルサレムのホテルに、代わったアメリカ人の家族がいました。

ボイントン家一行です。

ボイントン夫人は夫を病気で亡くし、莫大なる遺産を相続していました。

それによって何不自由なく四人の子どもを育ててきましたが、その育て方は異常でした。

かつて刑務所の女看守をしていたことが影響しているのか、ボイントン夫人は子どもたちを常に自分の監視下に置かなければ気が済まず、世間とは没交渉で暮らしてきました。

成人している子どももいますが、莫大な資産があるために仕事もさせません。

長男・レノックスはネイディーンという女性と結婚しましたが、彼女のまた同様に監視下に置かれています。

ネイディーンはボイントン夫人に犯行的ですが、子どもたちはその状態が当たり前で育ったため母親の手から離れるという選択肢をもっておらず、憎しみを募らせつつも何もできずにいました。

ボイントン夫人は大ぐものようなでっぶりとした体をしていて、家族の助けなしではどこにも行けません。

ボイントン夫人以外の家族は、まさに奴隷でした。

君主の死亡

ボイントン家と同じホテル滞在していたサラ・キングは、子どもたちをなんとかボイントン夫人から解放できないかと考え、行動に移しては敗北してきました。

しかし、チャンスが訪れます。

ペドラを観光中に次男・レイモンドはサラに接触し、彼女のことを愛していることを伝えます。

その後、ボイントン夫人が次女・ジネブラ以外に自由を与えた時間があり、その時間を利用してレイモンドはサラに接触。

自分の勇気を試して臆病者でないことを証明してからサラの助けを借りたいと宣言します。

サラはレイモンドの意思を尊重して見送りますが、その夜、事件が起こりました。

ボイントン夫人が亡くなっていたのです。

病死か、他殺か

名探偵のエルキュール・ポアロはアンマンに滞在中ボイントン夫人の死を聞かされて興味を持ちます。

彼女は心臓に病を抱えていましたが、医師の資格のあるサラの所見から単なる病死では片付けられない問題がいくつも浮上しました。

一つは、ボイントン夫人の手首に注射器による傷痕があること。

長女のキャロルは、誤ってピンを指してしまって出来た傷だと説明しています。

もう一つは、旅先で一緒だったもう一人の医師、テオドール・ジェラールの薬箱に入っているジギトキシンの量が非常に減っていたのです。

ジギトキシンは心臓に作用する劇薬であり、多量のジギトキシンを一度に投与すれば心臓麻痺を引き起こすことが出来ます。

ボイントン夫人はジキタリスの入った薬を服用していたので、ジギトキシンを用いれば彼女が誤って薬を飲み過ぎてしまったと偽装することが可能になります。

また、ポアロはエルサレムのホテルで、レイモンドとキャロルがボイントン夫人殺害計画をほのめかす話を聞いていました。

ボイントン夫人から解放されるべく、兄弟姉妹の誰かが犯行に及んだのか。

それとも別に犯人がいたのか。

ポアロは丁寧に証言を集め、やがて事件の真相にたどり着きます。

感想

クリスティ作品の中でも読みやすい

クリスティ作品ではたくさんの登場人物が出ます。

人種、性格、言動や行動によって分かりやすいよう差別化されていますが、見慣れない名前

が多いので登場人物の名前と関係性を把握するだけでも一苦労です。

しかし、本書に関してはその心配がありません。

登場人物の約半分はボイントン家に限定されており、他の人物もそう多くないので、クリスティ作品の中でもかなり読みやすいと思います。

分かりやすく面白い

もちろん読みやすいだけでなく、ミステリとしての魅力が詰まっています。

事件の気配がする、今でいう死亡フラグ立ちまくりの序盤。

予想通り、起きる殺人事件。

ポアロによって状況が丁寧に整理され、犯人特定までスムーズに進む推理パート。

王道ミステリの見本のような作品で、ミステリに不慣れな人でも推理の楽しさや魅力に気が付ける懐の広さを持っています。

またクリスティ作品では旅先が舞台であることが多く、本書もそれに該当します。

旅行を楽しむような一面もあり、ミステリとうまく融合させて現実からの逃避行にはもってこいです。

ドラマにも乞うご期待

三谷幸喜×クリスティ名探偵勝呂シリーズとして第三弾となる本書のドラマですが、前二作は原作の設定や魅力を踏襲しつつもドラマならではの面白さを加えていて、どちらもかなり好評でした。

推理小説だとなかなか読み進められないという人もいると思いますが、ミステリ・サスペンスドラマであれば意外と最後まで見ることが出来たという人もいると思います。

読書が苦手という人は、ぜひドラマから挑戦してみてください。

視聴後に原作に興味が出たら、ぜひクリスティによる『死との約束』にも挑戦してもらえればと思います。

おわりに

文庫で三五〇ページありますが、その長さを感じさせないほど設定が分かりやすく、かつ文章が魅力的で引き込まれます。

今回は中近東が舞台なので、エルサレム、ヨルダン、ペトラといった地名に興味を持った人

には、旅行ものとしての一面も楽しんでもらえればと思います。

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