『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん11 ××の彼方は愛 』あらすじとネタバレ感想!
あるところ、ある時代に双子の姉妹がいました。姉は妹をこう評します。「わたしと比べたら馬鹿」 妹は姉をこう評します。「よくできた姉様」 姉の方は父親によく似ています。「勘弁して」 妹の方は笑うと母親に瓜二つです。「あっはっは」 いつの頃からか、妹の存在を認識できなくなった姉。悪党を探して殺すために金属バットを持ち歩く妹。両親とそっくりで、嘘つきで壊れた二人。歪んだ双子の姉妹の、交わらない日常。そんな彼女たちが住む町で起きた連続殺人事件。そして、双子の姉は言いました。「うちの妹が犯人よ」と。――ねえ、まーちゃん。今度は僕たちの子供の話だってさ。
Amazon商品ページより
本編の続きにあたる本書。
前の話はこちら。
まさかの僕とマユの娘二人が主人公ということで期待が膨らみまくるわけですが、そこは入間さん。
キャラクターに愛着などないといわんばかりのストーリーで、シリーズ作品であることをこれでもかと突きつけてくれました。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
再現
うちの妹が犯人よ。
そんな不穏な始まり方をする本書。
枝瀬あゆは、妹のまいをそう捉えています。
町は平和で何も起こらないほどでしたが、今は連続殺人事件に襲われていました。
失踪で死体は見つかっていないけれど、おそらく殺人事件だろう。
みーまー本編と似たような状況で、物語が始まります。
家族状況
姉妹は両親を嫌っているわけではありません。
しかし、好きでいる理由も少なく、今は親元を離れて親戚の家に住んでいます。
姉妹一緒に暮らしているはずですが、あゆはある日を境に、まいを見なくなってしまいました。
妹ならそこにいるといわれても、あゆには見えません。
それはどういうことなのか。後になって明かされます。
僕とマユの子どもらしく、様々な事情を抱えていて、決して手放しに幸せとはいえない状況でした。
あゆはまいを探していて、大江湯女と一緒に探すことになります。
湯女はまいのことに詳しくはないため、ここで情報整理が行われます。
あゆが、まいを見えなくなったのが六、七年前。
気配を感じるけれど、決して彼女の姿を見ることはできない。
あゆは不自由を感じないとしつつも、まいを探しているところに不器用な愛情を感じます。
まいを探すきっかけとなった殺人事件は、すでに被害者が七人にもなっていて、決して偶然で片づけられるものではありません。
あゆはまいを探しながら事件を追うことになりますが、物語はみーまーらしく、悲惨な幸せに向かっていきます。
感想
歪でも進む世界
みーまー本編では、とても幸せとは言えないけれど、僕とマユが迎えられるであろう最大の幸せを掴み取りました。
人にはどうしても譲れない特性があり、世界と相容れないことだってあります。
これは多様性という言葉だけではどうしようもない部分で、本書はそこを冷静に描きつつも、生きることを肯定していました。
本書はその考えをしっかり受け継ぎ、僕とマユの子どもであるあゆとまいもまたその特性を引き継いでいました。
異端であるがゆえに、異端なりの幸せを見つけるしかない。
誰が悪いわけでもないのに一方的に割をくってしまう。
みーまーらしさがしっかり受け継がれていて、シリーズを読んでいるという感慨深さを味わいました。
難解さの先にあるもの
本書はシリーズ作ということで、かなり複雑な構成をとっています。
細かいミスリードが数多くされていて、流し読みしていると、気が付けば読書迷子になります。
しかし、それでも良いのかなと僕は思っています。
全てを一読で理解することは極めて困難なため、可能な範囲で正確に読み、疲れたら適当でも良いと思います。
後で認識の齟齬があれば、その部分を読み返す方が効率が良い場合もあるので、これは人それぞれの楽しみ方で大丈夫です。
そして本編同様、入間さんは人間とは思えない仕打ちをあゆとまいに与えます。
ある程度予想できたとはいえ、その理不尽さの深さはとても想定できるものではありませんでした。
ただし、シリーズ通して描かれるテーマは本書の根底にもあり、あゆとまいの幸せ、生き方もしっかり描かれるのでご心配なく。
おわりに
本編後の作品として、決しておまけでは終わらない素晴らしさがありました。
生きることがどれだけ難しくて、それでも生きてしまうことを本書は描いていて、大満足の一冊でした。
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