『ととはり屋敷』あらすじとネタバレ感想!比嘉姉妹シリーズの前日譚を描く作品
あの家族は呪われている――。
Amazon内容紹介より
最強の霊能者・比嘉琴子には6人の弟妹がいた。だが、生き残ったのは真琴だけ。弟の双子・龍也と虎太を襲ったキャンプ場の惨劇、その下の弟の肇が挑んだ少年野球チームの怪、末子の栞が命がけで対峙した凶悪な獣。住人不在となった比嘉家は、いつしか呪われた家として話題を集めていた。家に現れる「ととはり」という文字列と、人を襲う化け物の正体とは――。家族の歴史を紐解く、比嘉姉妹シリーズの前日譚となる短編集!
比嘉姉妹シリーズ第九弾となる本書。
前の話はこちら。

本書ではここまで詳細が描かれてこなかった比嘉家にフォーカスが当たります。
真琴や琴子の他にも明確に登場した兄弟がいつつも、なぜ二人以外はすでに亡くなっているのか。
不穏だった事実がここでようやく開示されるので、彼女たちがどのようなバックボーンのもとに成り立っているのかが理解できて、ファンにとってかなり意味のある内容でした。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想などを書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
チノカゼ、あるいは怪談の双曲線
双子の兄弟である比嘉龍也と虎太の話。
龍也は地歴部の活動でキャンプに出掛けていて、虎太は弟の肇と妹の栞を連れて幼馴染の貴島奈津の家に泊まりにきました。
比嘉家には良からぬ噂が立っていて疎遠になっていますが、奈津は虎太との距離感を昔のように戻したいと思っていました。
そんな時、虎太が突然苦しみ出し、意識を失ってしまいます。
虎太が目覚めると、語ったのは地歴部員の一人が鉈で斬りつけられるシーンを見たという衝撃の内容でした。
受け継がれるもの
真琴は働いている店に来ている客と、酒を飲みながら話しています。
客視点から進行する話で、彼が話すのは小学六年生の頃の話でした。
客こと俺は少年野球のチームに入っていて、チームメイトの堤に奇妙なことが起こっていました。
彼の周りで不思議なことが起こり、彼は事あるごとに鼻血を出していて、何かに怯えていました。
誰も状況を理解できない中、視えると噂の同級生を頼ることにしますが、それが比嘉肇でした。
このイベントはフィクションです/この怪談は実話です/この小説はエンタメです
比嘉家で起きた悲劇が『Qさん家』という名前で展示されることになりました。
監修者、映像制作者などからどのようなコンセプト、心意気で制作したのかが語られます。
一方で、入院している真琴のもとを妹の栞がお見舞いに訪れるシーンも描かれ、比嘉家の実際とそれをエンタメとして消費する人たちが交互に開示されます。
メイク・ユア・チョイス
目が覚めると、四人の男女が足枷をはめられ、見知らぬ場所に閉じ込められていました。
一人の女性は赤ちゃんを抱えています。
そのうちの一人が真琴でした。
全員が直前の記憶を失っており、情報を共有しながらなぜここにいるのか、犯人の目的は何なのかを考えるところからスタートします。
かたので駅の怪
比嘉美晴の中学生時代の話。
林間学校の最終日、美晴はクラスメイトの石垣尚美とともに抜け出し、担任の山崎に怒られているシーンから始まります。
真琴はサボったのだと悪びれもせず言いますが、尚美の様子から、彼女の事情に付き合い、そのように辻褄を合わせようとしていることが分かります。
何者から逃げてきたことが分かりますが、その正体が何なのかが描かれます。
ととはり屋敷
表題作。
私は会社をリストラされ、現在は警備員のアルバイトと動画配信でなんとか生活していました。
次の配信テーマとして近所にある廃屋での潜入レポートを考えていて、そこは心霊スポットとして知られていました。
私はそこが本物だとして、廃屋の前に建っていた家が比嘉家のものであることが判明します。
そして私はそこで恐怖体験をしていて、比嘉琴子の同級生だったことが明かされます。
感想
不幸な一家
ここまでのシリーズで、比嘉家を悲劇が襲ったことが分かっていました。
琴子や真琴の関係、言葉の端々から分かる事実だけでも、普通の家では経験しないようなことが多数あって、だから現在では琴子と真琴しか生き残っていないことも分かっています。
本書ではどのようにして比嘉家が現在に至ったのか、様々な時代や視点を持って語られます。
当然ですが、人が死ぬ様を描くのですから、決して楽しい話ではありません。
そして悲劇が襲ったことを承知で読みながらも、なぜこのようなことばかり起こるのだろう、という理不尽さを感じずにはいられませんでした。
現在の視点ではそこまで感じられませんが、兄弟の仲は決して悪くなく、一つの家族として当たり前の幸せを享受しようと生きている姿が描かれることで、余計に胸が苦しくなりました。
見え方が変わる
本書はシリーズものなので当然ですが、単品で読んで楽しむというよりも、ここまでシリーズを読んできた人たちの補完的な立ち位置にあります。
本書を読むことで比嘉家の深いところまで理解できて、だからこそ現在の琴子と真琴の関係が分かり、琴子に対して感情移入をすることができました。
普段は冷徹で感情がないように思われがちな琴子ですが、彼女がいかに家族のことを大事にしていて、しかし不器用ゆえにそれを的確に伝えられないことも分かります。
不器用なのは真琴も同じなので、それが分かってくると、これまでの二人のやり取りや行動も違った見え方ができて、新たな発見をすることができます。
本書を読んでから既存作品を読み返すのもオススメです。
おわりに
シリーズの中でも特殊な一冊で、今後のシリーズを展開する上で重要な作品だと感じました。
この時点での最新作である『ざんどぅまの影』でも比嘉家が掘り下げられるということなので、合わせて読むとさらに楽しめるかもしれません。
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