『双頭の悪魔』あらすじとネタバレ感想!二つの場所で起きた三つの殺人の真実とは
娘を連れ戻してほしいのです――山間の過疎地で孤立する芸術家のコミュニティ、木更村に入ったまま戻らないマリアを案じる有馬氏。要請に応えて英都大学推理小説研究会の面々は四国へ渡る。かたくなに干渉を拒む木更村住民の態度に業を煮やし、大雨を衝いて潜入を決行。接触に成功して目的を半ば達成したかに思えた矢先、架橋が落ちて木更村は陸の孤島と化す。芸術家たちと共に進退きわまった江神・マリア、夏森村に足止めされたアリスたち――双方が殺人事件に巻き込まれ、川の両側で真相究明が始まる。読者への挑戦が三度添えられた、犯人当て(フーダニット)の限界に挑む大作。妙なる本格ミステリの香気、有栖川有栖の真髄ここにあり。
Amazon商品ページより
学生アリスシリーズ第三弾となる本書。
前作の事件で大きなショックを受けたマリアが大学を休学し、高知の山奥にある集落に行ったことが本書の一連の出来事の発端になっています。
切り離された二つの場所で起こる三つの殺人。
動機が見当たらず推理は難航しますが、非常に推理のしがいがあります。
有栖川有栖さんから三つの挑戦状が叩きつけられ、読者が順番に整理しながら推理できるようになっていますので、ぜひ江神やアリスの立場で考えながら読んでみてください。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
戻らないマリア
前作『孤島のパズル』で起きた事件によってマリアは心に大きな傷を負い、大学を休学。
東京の実家に戻って自由な時間を過ごしていましたが、マリアは場所を決めずに一人旅に出ることにしました。
その中で中学の同級生である保坂明美に会いに高知の夏森村に向かいますが、明美の都合ですぐに会うことができず、マリアはさらに山奥にある集落に足を向けます。
そこには木更村という外界から閉ざされた集落がありました。
芸術の創造のためだけに存在し、部外者の立ち入りを固く禁ずる。
そんな集落にマリアは顔を出し、当然、追い返されました。
しかし、その拍子に足に怪我を負ってしまい、高熱が出ると集落で看病されることになり、やがて帰る気力を失ってしまったのでした。
マリアの父親は娘のことが心配になり、マリアを連れ戻してほしいと江神たち推理小説研究会に依頼。
かくして推理小説研究会の四人は、マリアを連れ戻すべく木更村に向かうのでした。
芸術家のコミュニティ
一同が木更村に到着すると、すでに先客がいました。
先客はカメラマンの相原で、彼の目的は木更村に逃げ込んだ元アイドル・千原由衣の姿を撮影し、世間にすっぱ抜くことでした。
木更村の住人は当然、相原を追い返し、同じタイミングでやってきた江神たちも仲間と勘違いされて追い返されてしまいます。
江神たちは一度は退却しますが、強硬策に出ます。
木更村の住人の目がない時に侵入を試みますが、織田のミスで見つかってしまいます。
幸い、江神だけがマリアの元に辿り着き、誤解を解いて留まることが許されました。
翌日、アリスたちも合流しようとしますが、豪雨による鉄砲水によって木更村と夏森村を繋ぐ橋が落ちてしまいます。
しかも土砂崩れによって夏森村も外界と遮断され、電話が繋がらなくなったせいで二つの村の状況を共有することも出来ません。
この状況において、ついに事件が起きました。
二か所で起こる三つの殺人事件
まずは木更村。
画家の小野は木更村の当主である木更菊乃との婚約を発表していましたが、小野はアトリエとして使っていた鍾乳洞で死体となって発見されます。
死体は不自然な格好をとっていて、右耳が切り取られていました。
しかも死体や彼の荷物には、住人である香西が作った香水がまかれていました。
小野は菊乃と結婚後、木更村を芸術ランドとして世間に公表するプランを考えていたため、木更村以外に行く場のない人間であれば彼を殺害する動機があることになります。
一方、夏森村。
由衣を執拗に付け回していた相原が首を絞められて殺害されているのが発見されます。
動機は木更村、あるいは由衣を世間に公表されたくないことだと想像できますが、夏森村側に木更村の住人はいないため、動機がどうしても不足してしまいます。
二つの断絶された場所で起きた二つの殺人。
さらに木更村では第二の殺人も起こり、動機の見えない三つの殺人が読者の前に立ちはだかります。
誰が、何のために殺人を行ったのか。
木更村、夏森村それぞれの視点から謎が推理され、最後には江神によって三つの事件の関連性が明らかにされます。
感想
とにかく推理が楽しい
シリーズ恒例の有栖川さんの挑戦状がありますが、今回は三つもあります。
最後は犯人当てと事件全体の構造の推理に分かれていて、いわば一つ25点の100点満点のテストのような感じです。
また、はじめの謎が解けないことには後の謎が解けない仕組みになっているので、僕は数学の試験を思い出しました。
前の推理を受けて、今度はどんな推理をしたらいいのか。非常に考え甲斐があります。
文量が多いため事件を整理するのが大変で、事件を解決するのは容易ではありません。
しかし、適度なタイミングで挑戦状が叩きつけられるので、自然と事件を推理しながら読み進められるように構成されています。
ミステリが好きになってしまう親切設計で、久しぶりに夢中になってミステリを読みました。
江神以外の存在感が抜群
これまでは江神が絶対的な探偵役となり、全ての事件を解決してきました。
しかし、本書は分断されてしまったことで二手に分かれて推理せざるを得えず、江神以外の部員の真価が問われました。
アリスはストーリーテラー的な立ち位置としてこれまでも探偵助手のような役目は果たしていましたが、本書では脇役で終わることの多い望月と織田も頑張ってくれます。
もちろん完璧な推理とはいえませんが、しっかり先輩らしさを見せる場面もあり、推理小説研究会としての強さが見どころの一つになっています。
しかし、江神がほぼ一人で解決したのに対して、アリスたちは三人がかりです。
しかもあくまで一つの殺人事件で、江神は二つの場所で連続して起きた殺人事件の関連性すら見抜いてしまいました。
もちろん江神サイドだからこそ解けた謎であることは間違いありませんが、僕の江神に対する信頼度はさらに上がりました。
さすが江神さん。
おわりに
タイトルといい、シチュエーションといい、ミステリとしてここまで楽しい作品はなかなかありません。
有栖川さんの挑戦状も相変わらず推理欲をそそるものがあり、夢中になって読んでしまいました。
それだけでなく、マリアと推理小説研究会の絆がいかに深いのかが分かる内容になっているので、今後の彼らの活躍に期待しないわけにはいきません。
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