『犬神家の一族』あらすじとネタバレ感想!犬神財閥の遺産相続で生まれる数々の悲劇
信州財界一の巨頭、犬神財閥の創始者犬神佐兵衛は、血で血を洗う葛藤を予期したかのような遺言状を残して永眠した。佐兵衛は生涯正室を持たず、女ばかり三人の子があったが、それぞれ生母を異にしていた。一族の不吉な争いを予期し、金田一耕助に協力を要請していた顧問弁護士事務所の若林がやがて何者かに殺害される。だが、これは次々と起こる連続殺人事件の発端にすぎなかった! 血の系譜をめぐる悲劇、日本の推理小説史上の不朽の名作!!
Amazon商品ページより
シリーズ第五弾となる本書。
前の話はこちら。
佐清の一度見たら忘れられないビジュアルや特徴的な死体などの印象だけで、読むまで本書のことはほとんど知りませんでした。
その中で本書を読むことで単なる色物ではなく、犬神家で起こる壮絶な遺産争いが描かれていることが分かり、すぐに読み終えてしまいました。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
遺産
信州の財界の中に、犬神財閥という巨頭があります。
創始者は犬神佐兵衛翁という人物ですが、その人が昭和二十年代に息を引き取ります。
彼には全部で九人の血縁者がいて、さらに彼と縁の深い野々宮家の遺児・珠世がいます。
珠世を除く一同は佐兵衛翁が亡くなったことを悲しんでなどおらず、興味関心は彼の遺産にありました。
遺言状は顧問弁護士の古舘が持っていますが、佐兵衛翁の長女・松子の息子である佐清が復員するまで発表できないのだといいます。
奇妙な手紙
佐兵衛翁が亡くなって八ヵ月後、金田一耕助は那須を訪れていました。
若林豊一郎という人物から手紙が送られてきて、犬神家において犠牲者が出るような事件が起こりつつあるため調査してほしいという内容でした。
狂人としか思えないような内容でしたが、どうしても無視することができず、こうして足を運んだのでした。
その時、耕助は珠世と出会いますが、彼女が乗っていたボートから落ちてしまったため、これを救出します。
彼女いわく、ボートに穴が開いていたのだといい、それに驚いてバランスを崩してしまったのでした。
ここから耕助は犬神家の争いに巻き込まれていきます。
その後、今度は耕助と待ち合わるはずだった若林が死体となって見つかります。
耕助は、犯人の動機として、若林が犬神家に関する秘密を耕助にバラすことを阻止するために殺害したのではと考えます。
しかし、実際は耕助にすでに伝わっていることであり、これで手紙の信ぴょう性が上がったことになります。
これで事件を解決するまで帰るわけにはいかず、耕助は事件解決まで那須市に留まることを決意します。
感想
リーダビリティの高さ
僕は横溝正史作品はそこまでリーダビリティが高くないという印象がありました。
事情が込み入っていることやくどいほどの悪意を描く必要性もあり、読むのが疲れて大変だなと感じる時もありました。
その点において、本書は明らかに読みやすいと感じました。
話の舞台、設定、流れが明瞭で、どこを追えば良いのかが明白なので、目の前のことに集中することができました。
それでいてしっかり読者の予想を裏切る驚きも容易されていて、最初から最後まで面白いまま駆け抜けてくれたのが良かったです。
小説が良い
僕は本書をきっかけに映像でも見たのですが、その上で小説が良いと強く感じました。
映像だとつい強いビジュアルに惹きつけられがちですが、小説だとその辺りがニュートラルになるので、映像ではつい見逃してしまうような異様さにも目を向けることができ、本書の魅力を余すことなく体感できます。
また映像だと強烈すぎるシーンも、小説だとどこか醒めて見ることができ、このバランス感覚も小説ならではかなと感じました。
ただここは個人によるので、まだ片方しか体験していないという人は、ぜひどちらも試してみてください。
おわりに
有名になったのは設定の奇抜さだけではない。
それがようやく理解できて、本書の面白さ自体もあって充実感がすごかったです。
金田一耕助シリーズを読んでいてちょっと読みにくさを感じている人にもオススメな一冊なので、ぜひお試しください。
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