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湊かなえ『告白』徹底ネタバレ解説!あらすじから結末まで!

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「愛美は死にました。しかし事故ではありません。このクラスの生徒に殺されたのです」我が子を校内で亡くした中学校の女性教師によるホームルームでの告白から、この物語は始まる。語り手が「級友」「犯人」「犯人の家族」と次々と変わり、次第に事件の全体像が浮き彫りにされていく。衝撃的なラストを巡り物議を醸した、デビュー作にして、第6回本屋大賞受賞のベストセラーが遂に文庫化!“特別収録”中島哲也監督インタビュー『「告白」映画化によせて』。

「BOOK」データベースより

『イヤミスの女王』として不動の地位を確立した湊かなえさん。

その中でもデビュー作である『告白』は格別に面白く、多くの人が本書を一番にオススメするのも頷けます。

話としては単純ですが、それを読ませる圧倒的な迫力が何より魅力。

事件の概要は、第一章において教師の森口の口から全て語られますが、これが主観だらけです。

そのため、別の視点から見ると全く違う心情がそこにあり、複数の視点から見て始めて物語は完成します。

以下は本書に関する湊さんへのインタビュー記事です。

楽天ブックス|著者インタビュー 湊かなえさん『告白』

この記事では、そんな本書の魅力をあらすじや個人的な感想を交えながら書いていきたいと思います。

ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。

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あらすじ

第一章 聖職者

帰りのホームルームで、教師を辞めることを伝える森口。

辞めることもあってか、普段であればしないような話を生徒たちにします。

森口はシングルマザーで、四歳になる娘・愛美がいました。

愛美の父にあたる男性(後に桜宮と判明する)とは結婚が決まっていて、結婚式を目前にして妊娠。森口の検査のついでに桜宮も健康診断を受けることにしました。

しかし、そこで桜宮がHIV(後天性免疫不全症候群)に感染していることが判明。

それでも森口は結婚しようと申し出ますが、桜宮はお腹の子供が将来、父親がHIV感染者というだけで偏見を受けないように結婚を拒否します。

結局、森口が一人で産み、愛美を育てることになりました。

幸いなことに、生まれた後の検査で愛美はHIVに感染していないことが分かり、桜宮は残りの人生を捧げるように仕事に情熱を注ぎました。

森口は保育所に愛美を預けながら教師を続けました。

保育所では午後六時までしか預かってもらえないため、その後は中学校のプールの裏手に住む竹中に預かってもらっていました。

しかし竹中が入院してしまい、森口は仕事を早く切り上げて愛美を迎えに行くようになり、どうしても仕事で遅くなる日は保健室で待たせていました。

そんなある日、愛美がプールで亡くなっているところが発見されます。

愛美は竹中の家で飼われている犬のムクにご飯をあげているところを目撃されていたため、当初、事故死という見方をされていました。

しかし、森口はクラス中に言います。

愛美は事故で死んだのではなく、このクラスの生徒に殺されたのだと。

森口は、家族を青酸カリで殺害した当時十三歳の少女による通称『ルナシー事件』を例にとり、今の法律では未成年を裁けないことを訴えます。

また桜宮がとうとうHIVを発症してしまったことを知り、残された時間を家族三人で過ごそうと提案しますが断られ、そのことも後悔していました。

そして、森口が事件の真相を知ることになったきっかけについて。

愛美は人からもらったものは何でも森口に相談していましたが、遺品の中にあげた覚えのないわたうさちゃんというキャラクターのポシェットがあり、事件当日、愛美は本当に一人だったのかという疑問が湧いてきました。

ポシェットの中を調べると、中にはコイルのようなものが入っていました。

森口はそこで真相に気が付き、二人の生徒を別々に呼び出しました。

ここで森口は二人の犯人をA・Bと呼びます。

Aは目立つような生徒ではありませんでしたが、成績優秀でした。

一方でAは自分のサイトを持ち、そこで自作した道具で犬や猫を殺した動画を上げるなど残忍な面も見せていました。

森口がAを意識し始めたのは、Aが自作した感電する財布の実験台にされた時でした。

Aは後に改良品をコンクールに出し、特別賞を受賞します。

事件後、森口がAを化学室に呼び出すと、Aはすでに事情を察していて、むしろ自分が犯人であることがバレたことを喜んでいました。

Aは危険人物として認識され、皆から注目されたかったのです。

しかし、コンクールに賞を受賞しても思ったような評価はされず、一方で『ルナシー事件』が連日報道されることに嫉妬し、処刑マシーンの開発に没頭したといいます。

次に少年Bについて。

事件後、森口はBの家に行き、母親とBに対して中学入学からのBについて話しましたが、彼の母は学校の対応を非難し、息子を哀れみました。

また、彼は事件前に校則違反したことでペナルティとして、プールサイドと更衣室を掃除することになっていました。

Aは感電装置の電圧を上げることに成功し、そのターゲットを共謀者であるBに選ばせることにし、そこで挙がったのが愛美でした。

二人は放課後、プールにいる愛美に親しげに話しかけ、ママに頼まれたと嘘をついてわたうさちゃんのポシェットを渡し、ファスナーを触らせて感電させます。

愛美はショックで気絶。

Aは立ち去りますが、怖くなったBはわたうさちゃんのポシェットをフェンスの向こう側に放り投げ、愛美をプールに放り込みました。

これが事件の真相です。

そして、ここからが森口の復讐。

彼女は警察に真相を話しませんでしたが、決して二人を許したわけではありません。

森口はHIV感染者である桜宮の血液を採取し、それをAとBの牛乳の中に入れ、飲ませていたのです。

もし感染していれば、発症まで五年から十年かかるはず。

これで犯した罪の重さを知り、反省してほしい。

そう言い、森口の話は終わりました。

第二章 殉教者

クラス委員長である美月の視点。

彼女は、森口にあてた手紙を彼女がよく読んでいた文芸誌に投稿し、この章はその手紙という体をとっています。

手紙には森口が真相を話して以来、教室には異様な雰囲気が流れていることが書かれています。

あの日を最後に、美月の幼なじみであり、犯人Bである直樹は不登校になってしまいました。

犯人Aである修哉はあれからも学校に来ていますが、クラスメイトは彼が変わらず学校に来ていることに不安を感じていました

そして、森口に代わって担任になった寺田はこのクラスの事情を知らず、熱血ぶりを生徒に押し付けるような勘違いした教師でした。

それでもゴールデンウイークを過ぎると、クラスメイトは修哉を自然に無視できるようになり、一見穏やかな雰囲気になります。

しかし、寺田は事情を知らないにもかかわらず、直樹が学校に来やすい環境を作ろうと呼びかけ、週に一度、授業のノートのコピーを自分と美月で届けに行くことを決めます。

最初こそ熱心な担任に直樹の母親は心を許し、森口のことを非難しましたが、段々と寺田を迷惑がるようになります。

また、直樹も登校してくる気配はありません。

六月に入ると、今度は修哉に対するいじめが始まります。クラスメイトはこの異様な空気を楽しむようになっていました。

彼らはいじめを制裁だと考え、修哉はそれを受けても黙って耐えていました。

もし修哉を庇えば、今度はその人が制裁される。それはまるで魔女裁判のようなものです。

美月は最初こそ手を出しませんでしたが、周りの圧力に負けて牛乳パックを投げつけてしまいます。

しかし、ごめんと謝ってしまったことで有罪が決まり、美月は無理やり修哉とキスさせられてしまいます。

その日の夜、修哉にメールで呼び出された美月は、コンビニで一枚の紙を受け取ります。

それは修哉の血液検査の結果で、陰性でした。彼はキスによってHIVが感染しないことを美月に伝えたかったのです。

久しぶりに人間らしい表情をする修哉に、美月は話があると持ち掛けます。

彼女は森口の告白があった日、修哉と直樹の牛乳パックを持ち帰り、血液に反応する薬品で試しましたが、そこに血液なんて入っていなかったことを伝えます。

そこで二人は特別な関係になり、キスを交わします。

美月の初恋の相手は直樹でしたが、修哉はこの世でたった一人の味方でした。

翌日、修哉と美月は冷やかされますが、修哉はHIVに感染しているかもしれないということを逆手にとり、自分の血を振りかざすことでクラスメイトを黙らせます。

もう誰も修哉に嫌がらせなんて出来ません。

七月になり、修哉と美月はほとんど毎日、研究室で会っていました。

また、いつものように寺田と美月は直樹の家を訪れますが、寺田は近所の人にも聞こえるように直樹が不登校であること、美月といつも一緒に来ていることを伝え、それがさらなる悲劇の引き金となります。

その日、直樹が母親を殺害しました。

美月はこの件で学校側から事情を聞かれ、迷わず寺田を糾弾するのでした。

第三章 慈愛者

直樹の母親が殺害された後の話。

初めに直樹の下の姉である聖美の視点から始まり、母親がつけていた日記帳の記述が公開されます。

母親は高い理想を持ち、そのため他人の言う事を聞かず、思い込みの激しい人間でした。

愛美が死んだ事件も、森口が嘘をついていて、直樹は被害者なのだと哀れんでいました。

森口の告白があって以来、直樹は自分がHIVに感染しているかもしれないという思い込みから極端な潔癖症になってしまいました。

母はますます森口への恨みを募らせ、言いにくいことを書くと良いと直樹に日記帳を渡します。

しかし、いつまでも登校できる兆しのない直樹に、母親は次第に苛立ちを募らせます。

自分の子どもが引きこもりなどと言われたくない彼女は、直樹と一緒に無理やり病院に行き、『自律神経失調症』であるという診断書をもらいます。

帰り道、ハンバーガーショップで食事をとっていると、小さな女の子が誤って牛乳パックを落としてしまい、牛乳が直樹にかかってしまいます。

すると、直樹はトイレに駆け込み、吐いてしまいました。

それからも直樹の症状は悪化し、部屋から出てこない時間が増す一方。

とうとう辛抱できなくなった母親は、直樹が寝ている間に部屋に入り、彼の髪の毛を不格好に切ってしまいます。

そうすれば散髪でも行くだろうと軽く考えていましたが、直樹は起きると狂ったように叫び、母親を拒絶。

しかし翌日、突然、直樹はお風呂場で丸坊主にして、爪なども清潔にし始めます。

性格も明るくなっていて、その変化を母親は喜びました。

直樹はコンビニ行くと言って家を出て行きましたが、その数十分後、コンビニから電話で呼び出されます。

行くと、直樹が商品に自分の血液をつけてまわっていたことが判明。

訳の分からない母親は、汚れた商品を全て買い取って、直樹と家路につきます。

帰り道、ついに直樹は自分がHIVに感染していること、実は愛美は気を失っていただけで自分がプールに落として殺害したことを告白します。

それまで信じていたものが全て崩れ去り、母親は直樹と共に自害することを決意します。

ここまで読み終え、聖美は直樹の本心を確認し、なんとかして彼を無罪にしたいと考えていました。

第四章 求道者

直樹の視点。

彼は母親のプレッシャーを毎日受け、心の逃げ場を失っていました。

そんなある日、あまり話したことのない修哉に誘われ、彼の作った道具で悪いことをした人を懲らしめることになりました。

直樹は教師の戸倉や森口の名前を出しますが、修哉の反応はいまいち。

嫌われたくない直樹は、そこで愛美を名前を出します。

すると、注目されたかった修哉はその意見を採用し、実行に移すことにします。

直樹は張り切って作戦プランを考え、事件当日、愛美にポシェットを触らせて感電させることに成功しました。

ところが直樹の予想に反して愛美は動かず、修哉は得意げです。

共犯者になることを恐れた直樹は、自分だけしか知らないポシェットをフェンスの外に放り投げ、事故死に見せかけるために愛美をプールに落とそうとします。

すると、気が付いた愛美と目が合います。

直樹はあの修哉が失敗した殺人を成功させたいという欲求に駆られ、そのまま愛美をプールに落として殺害してしまうのでした。

事件は事故死とされ、修哉に対する優越感も満たされ、直樹は得意げです。

ところが、森口に真相がバレて、絶対絶命のピンチかと思われましたが、森口はこのことを警察に話すつもりはないといい、直樹はピンチを脱したと思います。

しかし、ホームルームで名前をぼかしたとはいえ森口によって事件の真相が告白されてしまい、もう学校にいることはできなくなり、不登校が始まりました。

絶望に立たされた直樹にとって、家族にHIVを感染させないことが唯一の使命になっていました。

いつしか彼は、そんな日々が続くことを望むようになっていました。

ところが、病院の帰り道のハンバーガーショップの出来事によってその親子が森口と愛美に見えてしまい、さらなる絶望にさらされます。

それ以来、寺田と美月がきても、監視されているような錯覚に陥るようになります。

それからは、髪が伸びたり垢がたまることで生を実感するようになり、不衛生な生活を送るようになってしまいます。

その後、母親が髪の毛を切り落としたことで生が失われたと感じて取り乱しますが、それでも死なない現状に疑問を抱き、思い切って髪の毛を全て刈り、垢も全て落とし、爪も切ります。

彼はそれを、生を失って自分がゾンビになったのだと感じていました。

数か月前に見たゾンビ映画を思い出し、仲間を増やしたら面白いなどと考え、コンビニで自分の血を商品につけて回ります。

しかし、ゾンビになっても受け入れてくれた母親の愛情に感動し、彼は罪を償おうと考えるようになりました。

自首しようと母親に真相を打ち明けますが、彼女はそんな彼をもう受け入れてくれませんでした。

一緒に死のうと包丁を持ち出す母親に、それでもいいかと一瞬思った直樹。

しかし、母親の顔に浮かぶ哀れみの表情に豹変。

逆に母親の持っていた包丁で彼女を刺してしまいます。

その後、病院でこれまでのシーンを思い出す直樹。

彼はショックで記憶喪失のような状態になっていました。

姉の聖美がお見舞いに来ている中、頭の映像に出てくる直樹が自分だとは認識できず、彼はいまも母親が生きていて、学校に行こうなどと考えていました。

第五章 心奉者

修哉の視点。

彼は遺書を残していました。

学校の体育館ステージ中央の演台の中に爆弾を設置して、二学期の始業式で、自分が表彰されるタイミングで起動させてやろうと考えていました。

修哉の母親は優秀な人間でしたが、結婚を機に夢を諦めるはめになり、直樹はそのことをいつも聞かされて育ち、母親の期待に応えられるよう努力していました。

そんなある日、母親は子育て中に書いた論文がきっかけで離婚を決め、修哉のもとを離れます。

修哉にとって、耐えられないほどの悲しみでしたが、最後の幸せを糧に再会を誓います。

翌年、父親は同級生だった美由紀と再婚します。

その後、子供が生まれますが、この家族の中に修哉の居場所はどこにもありませんでした。

修哉は成果を上げれば母親が見つけてくれると考え、自分のサイトを作ってそこに研究結果を上げます。

しかし、母親らしき人は誰も来ず、おかしな人間のたまり場となります。

そこで方法を変え、コンクールにびっくり財布で応募し、見事特別賞を受賞。

審査員の一人が母親と同じ大学の所属で、これで話が母親に伝わると思いました。

しかし、世の中は『ルナシー事件』で溢れかえり、誰も修哉の研究のことなど話題にしませんでした。

ここで注目されるためには、それ以上の罪を犯すしかないという発想に至ります。

修哉は犯行の目撃者として直樹を選び、愛美を手にかけます。

しかし、後でポシェットでは死ななかったこと、直樹がプールに落として殺したことを知り、計画が失敗したことで激しく動揺します。

森口が事件の真相に気が付いたことで、一度は救われたと思いましたが、真相を警察に話すつもりはないと分かると、再び絶望に落とされます。

しかし、桜宮の血液によって自分がHIVに感染したことを知ると、態度を一変。重病にかかったことで、心配して母親が会いに来やすくなったと喜びました。

彼にとって学校での嫌がらせなど何でもありませんでした。

彼は検査を受け、その結果を喜んで開けますが、結果は陰性でした。

またそこで美月とキスをする騒動があり、彼女と会うようになります。

修哉は、美月が薬局で薬品を注文して断られているところを見て、それ以来、彼女に興味を持っていました。

ところが、想定外に美月は愚かでした。

彼女は『ルナシー』がもう一人の自分であると主張し、事件を起こすことを望んでいました。

二人はささいなことから言い争いになり、結果、修哉は美月の首を絞めて殺害します。

美月の死体は、研究室の大型冷蔵庫にしまってあります。

そして、爆弾は彼女が用意した薬品で作ったものでした。

遺書の三日前、修哉は母親に会いにK大学に向かい、そこで審査員をした瀬口と出会います。

しかし、そこで彼が母親と再婚したことを知り、母親に抱いていた幻想を打ち砕かれます。

瀬口は修哉が妻の子供だと気が付いたようでしたが、その後も母親からの連絡はありません。

修哉は遺書を自分のサイトに載せ、爆弾のスイッチを押します。

しかし、爆弾は起動せず、携帯電話には非通知で着信が入ります。

第六章 伝道者

電話の相手は、森口でした。

彼女は亡き桜宮の忠告を無視し、今も復讐にとりつかれていました。

血液に関して、彼女は実際に牛乳に混ぜていましたが、桜宮がそれを別のものにすり替えることで事なきを得ていたのです。

森口は桜宮の教え子である寺田と知り合いであり、退職後も彼から逐一情報を入手していました。

彼女はアドバイスと称して寺田を誘導し、直樹を追い詰めることに成功。

そして修哉に対して、自ら手を下す覚悟をしていました。

すでに美月のことは通報済みで、もうすぐ警察がやってくることを伝えます。

しかし、それでも修哉が反省しないことを見越していた森口は、爆弾を解除したあと、ある場所に設置していました。

それは、修哉の母親のいるK大学の第三研究室でした。

修哉の手で起動した爆弾はちゃんと爆発し、大学にはたくさんのパトカーや消防車が集まろうとしていました。

「ねえ、渡辺くん。これが本当の復讐であり、あなたの更生の第一歩だとは思いませんか?」

湊かなえ『告白』より

映画『告白』の解説

本書について、小説版ではなく映画版でよく疑問の声を聞くので、主な疑問の解説をします。

鼻血の意味

終盤、修哉が鼻血を出すシーンがありますが、なぜそうなったのか理由は映画の中では説明されていません。

様々な意見がある中でHIVが発症したから、と解釈する人もいました。

この点について、僕は単に興奮したからだと思います。

HIVが発症したから鼻血を出すわけではないし、そもそもあのタイミングで発症というのはいくら映画でも出来すぎています。

そこまでご都合主義に作るのであれば、HIVが発症したことを示唆する表現が何かしたら盛り込まれるはずです。

『なんてね』の意味

この点について映画の情報からは断定できないので、個人的な意見を書きます。

映画のラスト、森口は修哉に対して『ここからあなたの更生の第一歩が始まるんです』と涙を流して言った後、『なんてね』と笑顔になります。

なんてね、と冗談にしようとしていることから、その前の言葉が打ち消す意図が込められていると考えるのが自然です。

つまり森口は修哉が更生できるわけないと考えている、ということになります。

仕掛けられていた爆弾が爆発しなければ、修哉の母親は助かって修哉は致命的な心の傷を負わずに済みます。

この状態であれば更生して、新たな人生を歩みだすことは十分可能です。

森口がそんなシチュエーションを望んでおらず、己の復讐心を満足させるために行動したとしたら、爆弾は爆発して修哉の母親は亡くなったということになります。

僕は原作の結末を考慮した上で、そのように判断しました。

あえて曖昧な最後にすることで映画を見た人それぞれに結末を委ねたと考えることもできるので、爆発しなかった可能性も十分にあります。

というのも、小説では森口自身が爆発を確かめ、電話越しに修哉と話しているのでその事実を疑う余地はありません。

ところが映画では森口と修哉は直接会っているため、森口は本当に爆発したのかどうか確かめる術はありません。

確かめなくても爆発したというストーリーなのかもしれないし、爆弾を仕掛けていないからこそ爆発を見届ける必要がなく姿を現したとも解釈できます。

この辺りはネット上でも意見が分かれているので、原作のイメージを尊重したい人は爆弾が爆発した、と捉えれば良いと思います。

おわりに

設定に多少の粗がありますがそんなことは些末なことであり、最後の一文まで読者を引き込む文章はまさしく傑作でした。

ラストについては考えるところもありますが、この放り出されたような結末に僕は少なくとも納得しました。

きっとこれ以上続けたところで、憎しみの連鎖が続くのかなと考えると、ここで止めてしまって良かったと思います。

反省するも良し。これを新たな復讐の始まりにするも良し。

デビュー作から今後の活躍が待ち遠しくなるような湊かなえさんの傑作でした。

本をお得に読みたい人には『Kindle Unlimited』をオススメします。

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