『χの悲劇』あらすじとネタバレ感想!Gシリーズが大きく変化する後期作第一弾
トラムに乗り合わせた“探偵”と殺人者。Gシリーズ転換点となる決定的一作。後期三部作、開幕!!香港のトラムで起きた密室殺人と、果てしなく広がるバーチャル空間での光速の追跡劇。天才を追い、天才に追い詰められる。「そう。ここが私の世界だ」香港で仕事をする島田文子のもとに男が現れた。島田が真賀田研究所にいた頃に起きた飛行機事故について質問があるという。その日、走るトラムの中で殺人が起き、死者の手に「χ」の文字が遺される。乗客として警察の捜査に応じた島田だったが、そこである交換条件を持ちかけられ……。Gシリーズ後期三部作開幕!
Amazon商品ページより
Gシリーズ第十弾となる本書。
前の話はこちら。
タイトルは『エックス』ではなくギリシャ文字の『カイ』です。
本書からは舞台、時間軸などがそれまでの作品から大きく異なるのではじめは戸惑いますが、終盤に訪れる事実はまさに驚愕なので、必見です。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
香港
かつて真賀田四季の研究所で働いていた島田文子は紆余曲折の末、香港にいました。
今は企業のソフト開発のチーフをしていますが、彼女は自分に才能がないことを十分理解していました。
彼女の持つ技術が相対的に古くなってしまい、今では日本にいた時からの人脈を活かした業務が中心です。
研究職でありながら、今求められているものは別のところにある。
そんな日々を彼女は過ごしていました。
謎のカード
エキシビションに参加してホテルに戻ると、島田は部屋のデスクの上で名刺サイズのカードを見付けます。
裏返すと黒地に、白字で『χ』と書かれていました。
この時点で『エックス』か『カイ』ということは明示されておらず、また島田の頭にも例のギリシャ文字にまつわる事件や団体のことはありませんでした。
事件
エキシビションの開会式で、島田は遠田という男性から声を掛けられます。
彼は以前公安にいて、真賀田研究所にいた時のことや旅客機の爆発事故について聞いてきます。
その旅客機に乗っていたはずの二名が実は生きていたことが分かり、それが小山田真一、カガミアキラであることを教えてくれます。
この時点では大した会話にはなりませんでしたが、これがきっかけになったかのように島田は事件に巻き込まれます。
その後に乗ったトラムで殺人が起きたのです。
死者は遠田で、彼の手には『χ』の文字が遺されていました。
感想
がらりと変わった世界観
Gシリーズと聞いていなければ分からないほど、本書はそれまでの世界観とは大きく異なっています。
主人公は島田で、彼女は森作品にはそれなりに登場するものの、Gシリーズには前作に少し出た程度です。
恵美たちや萌絵、犀川なども登場しないため、シリーズにとって本書がどういう位置付けなのか分からないまま物語が進みます。
そうなると本書とシリーズを結びつけるものは例のギリシャ文字と真賀田四季なわけで、話のスケールがどんどん拡大していくのを改めて感じられました。
シリーズの目指すところ
僕が本書を読んで強く感じたのは、どのシリーズであっても森博嗣が描く限り、全ては最終的に交わるのではないかということです。
本書はGシリーズよりも未来感があり、Wシリーズなど今では実現が不可能そうな世界観に近づいていることを感じました。
そうなると生きるとは何か、人間とは何か、のような哲学的なところにフォーカスが当たるわけで、難解さが増します。
一方で、分からなくても十分面白いのが森作品なわけで、やりとりのユーモアさだけでも十分楽しめてしまいます。
僕はGシリーズ序盤がそこまではまっていなかったため、この路線変更はありがたく、もう読むことが楽しくて仕方ありません。
おわりに
Gシリーズが舵を切り、読者を振り落とす勢いで加速したのを感じました。
ここまでくると疑問を抱くというよりも、ただ描かれた世界を受け取るしかありません。
でも、それが最高に面白いので、ここまで読んできた人はじっくりお楽しみください。
次の話はこちら。
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