【感想】『とどのつまりの有頂天』ただの百合コメディで終わらない純愛作品【ネタバレ注意】
山奥から都会の学園に転校してきた美古都は、学校になじむことができず、学園内にひっそり佇む神社に入り浸っているが、生徒会書記の猫崎蓮の取り計らいで巫女部を作ってもらうことに…!?巫女×田舎JK×部活(8割ぐーたら)なドタバタ百合コメディ!
Amazon商品ページより
ドタバタ百合コメディと称しながら、全二巻の中で重たい話も純愛もあらゆる感情を見せつけてくれた本書。
表紙通りの可愛い絵柄で、どの子もコロコロ表情を変えるので、読んでいて本当に飽きません。
本書は二巻で完結していますが、現在は電撃大王に移籍し、『雨でも晴れでも(略してあめはれ)』というタイトルでリニューアル連載しています。
ついに帰ってきました!!12/26発売の月刊コミック電撃大王で新連載はじまります!なにとぞよろしくお願い致します!!
— あらた伊里@『雨でも晴れでも』連載中 (@aratairi) November 27, 2019
#雨でも晴れでも pic.twitter.com/HHtMnmHnlt
単行本も発売になりましたので、ぜひとどつまとも比較してみてください。
この記事では、本書の魅力や評価の分かれるポイントについて書いています。
多少のネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。
登場人物
本書の内容に入る前に、登場人物である巫女部の六人をご紹介します。
『とどのつまりの有頂天』1巻より
↑メインカップルの二人。左が山田美古都、右が猫崎蓮。
山田美古都
京都の山奥から上京した高校一年生。
京都訛りがコンプレックスで、恥ずかしがって話さないせいで入学三ヶ月が経っても友達が出来ず、放課後、有頂天高校近くにある有頂天神社を掃除している。
その際は巫女装束に着替え、メガネは外している。
神社に遊びに来てくれる猫崎には感謝していて、友達という感情がやがて恋愛に変わっていく。
猫崎蓮(ねこざきれん)
生徒会書記で、美子都のことが大好き。
彼女のために職権乱用で部活の要件を満たさない巫女部を無理やり作るなど、美古都のためなら何でもする。
一方で普段は厳しい一面を見せ、近寄りがたいせいで友達は少ない。
美古都には単なる友達以上の感情を抱いているように見えるが、そこには彼女の抱える複雑な家庭環境の問題が隠れていて、二巻になると一気に表面化する。
辺銀律(ぺんぎんりつ)
昭和歌謡レコード部所属。
部員が獅子丸と二人しかいないため廃部の危機にあったが、存続のために巫女部に目をつけて入部する。
獅子丸とはケンカばかりしているが、実際はどっちもツンデレなだけのカップル。
ロックな見た目をしているが、中学生の時は清楚系の美少女だった。
獅子丸愛莉
昭和歌謡レコード部所属、後に巫女部に入部。
実家がお金持ちだが、中学生の時に自殺を図ろうとしたことがある。
その時、偶然辺銀と出会い、彼女の流したレコードに救われ、生きる気力を取り戻す。
辺銀が有頂天高校への進学希望であることを知ると、彼女の後を追って入学。
辺銀は獅子丸のことを覚えておらず、獅子丸は彼女に自分の痕を残したいといつもケンカを売ってしまうが、それはケンカを売っても辺銀なら大丈夫だと信頼している証拠。
熊倉タクヤ
TOKYOファッション部所属で、後に巫女部に入部。
兎田とは幼馴染でカップル。
虚弱体質で、興奮するとすぐに血を吐く。
ちなみにこれは鼻血で、鼻穴が小さいせいで口から吐いている。
回想シーンで、入院していた時期があることが判明。
兎田は熊倉の幸せ、不幸せに左右されてしまうため、熊倉は彼女と一緒に幸せになることを決意している。
実はかなり重たいカップル。
兎田夜空(うさぎだよぞら)
ひきこも部所属で、後に巫女部に入部。
常に寝袋に入った蓑虫のような状態で、寝袋から出ている姿は意外とレア。
熊倉から一方的に熱烈に愛されているように見えるが、もちろん兎田も彼女のことが好きで、巫女部カップルの中で一番カップルらしい。
魅力
百合カップルだらけ
物語の中心となる巫女部はなんやかんやで六人になりますが、女子六人でカップルを三組作るというまさに百合カップルだらけな作品です。
ちなみに後半になると教師×生徒のカップルも出てきたりして、お好みのカップルが一つは見つかること間違いありません。
はじめは美古都×猫崎ばかりに目がいき、他はモブに見えがちですが、それぞれの関係が掘り下げられるうちに愛着がわき、どれもが主役級の魅力を見せつけてくれます。
コメディでは終わらない純愛
一巻だけを読めば百合コメディです。
しかし、二巻から雰囲気が一気に変わり、笑い抜きの積極的な百合や純愛要素が大半を占めるようになり、一つの作品で喜怒哀楽全ての感情を網羅できるようになります。
この振れ幅こそが本書の魅力で、一巻でコメディものだと決めつけるのは軽率です。
とどつまは二巻まで読んでこそ本当の評価を下すことが出来ます。
全二巻と非常にコンパクトな物語ですので、ぜひ二冊とも読んでみてください。
評価の分かれるポイント
終わり方が中途半端
二巻のあとがきで、作者のあらた伊里さんが言及している通り、とどつまは中途半端なところで物語が終わります。
というのも、月刊コミック電撃大王に移籍し、『雨でも晴れでも』というタイトルでリニューアル連載をすることになったからです。
物語はいまだ終わっていないということです。
2020.4.13現在、『雨でも晴れでも』の単行本はまだ発売されていません。
個人的にはとどつまを読んでからリニューアル作品を待つというのが二度おいしいかなと思いますが、リニューアル作品の方が洗練されてそうだと思う人からすると、とどつまに手を出すのは悩むかもしれません。
猫崎が重たい
しっかり者で、他人を寄せ付けないクールなところがあって、美古都のことになると急に可愛らしくなる猫崎。
しかし、二巻になると一気にイメージが変わります。
実は複雑な家庭事情を抱え、そこから来る考え方が美古都を苦しめ、相思相愛なはずなのにお互いに苦しいという辛い展開を生み出します。
はっきりいって原因は猫崎の自己肯定感が低いことです。
この障害があるからこそ恋が盛り上がるのですが、暗い展開に嫌気が差す人もいると思います。
他にも一巻からは予想もつかない重たい話が二巻では急に多くなるので、ここも含めて楽しめるかがポイントになります。
迷ったら無料で試し読み
ここまで読んで購入を迷うあなた。
pixivコミックで一部無料で読めますので、まずは試し読みしてみてください。
またリニューアル作品である『雨でも晴れでも』も一度無料で読めますので、こちらも合わせて読むと違いが分かって面白いと思います。
おわりに
一巻のコメディ要素満載の百合展開はもちろん面白いですが、二巻の純愛要素、よりまっすぐな百合展開が見応えがありますので、あめはれが単行本化される前にぜひ読んでみてください。
個人的に今年読んだ百合作品の中で一番のオススメです。
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あと名作と名高い『総合タワーリシチ』が完全版となって発売されています。
気になるという方はぜひこちらの記事も読んでみてください。