『夏目友人帳 24巻』ネタバレ感想!あらすじから結末まで!
「多軌に彼氏がいる」という噂を耳にした夏目。驚くとともに、彼氏がどんな人か気になる…。だが、多軌は何かに深刻に悩んでいるようで?
Amazon内容紹介より
名取さん主演の映画を見に行く特別編も収録! あやかし契約奇談第24巻!
前の話はこちら。
今回はいつも夏目の隣にいてくれる多軌と田沼に焦点が当てられた話がそれぞれあり、とても満足のいく巻でした。
この記事では、そんな本書の魅力をあらすじや個人的な感想を交えながら書いていきたいと思います。
ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。
あらすじ
第九十五話
ある日、多軌に美形の彼氏がいるという噂を聞いた夏目。
西村もそのことを知っていて、多軌が清潔感あふれる男性とフレンチのお店に入っていったという話を聞いたといいます。
夏目は多軌から何も聞いておらず、いつも話を聞いてもらってばかりで、何かを話してもらえる存在になれているのだろうかと不安になります。
放課後、多軌を見つけますが、何か悩んでいる様子。
夏目は思い切って声を掛け、何か困っていることがあれば聞かせてくれないかと話します。
すると多軌はありがとうといい、悩みについて打ち明けます。
悩みとは、多軌の兄・勇が帰ってきたことでした。
元々、彼女の両親は仕事で年中海外にいて、六歳年上の兄は家を出て離れた大学に行っています。
妖怪が大好きだった祖父と話が合った多軌と違い、勇は現実主義者で彼女と相性があまり良くなく、そのせいかろくに家に寄りつかないといいます。
そんな勇が二日前に帰ってきましたが、多軌が手料理を提案しても毎回外食することになり、自分の手料理を食べたくないのではと多軌は思っていました。
どうやら多軌の彼氏の正体は勇のようです。
多軌は帰ってきても三十分くらいしたら家を出てしまう勇を気味悪く思い、夏目は力になりたいと思い、一緒に多軌の家に行きます。
家にはまだ誰もいませんでしたが、すぐに勇が帰宅します。
夏目に似た、線の細い可愛い系の顔立ちで、夏目を観察してから家に上げますが、夏目からしても何だか妙な人に思えました。
聞かないと埒が明かないと考えた夏目は、勇が帰ってきた理由を聞きます。
それに対して勇は答えずに家を出てしまい、夏目は後を追いかけます。
多軌が心配していることを伝えると、勇の背後に何か黒い影が見え、妖の気配がしました。
そこで最近、何か変なことはなかったか聞くと、勇が郷土研究のサークルに所属していることが判明。
彼は小さい頃からおばけや妖怪が信じられず、そういった噂や伝承があるところに出向いては調査し、事実でなかったりただの迷信であることを証明しているのだといいます。
勇は何度も祖父と多軌の会話に入ろうと思い、その度に納得できずに断念し、自分はそういう性格だと割り切るようになりました。
しかし、夏目は勇がただ冷たいだけでなく、気遣いのできる人間であることを見抜き、多軌にもう少し話せばちゃんと伝わるといいます。
すると勇は何かを決心し、明日の放課後、もう一度家に寄ってほしいとお願いをします。
翌日、多軌がどんよりしていました。
聞くと、夏目が帰った後も家に戻ったり出たりを繰り返し、朝起きると、庭にテントを張って生活していたといいます。
放課後、多軌の家に行くと、確かに庭にテントがあり、中で勇が平然と生活していました。
多軌は自分と家にいるのがそんなに嫌なのかと心配していますが、夏目は違いました。
それであれば大学に戻れば済む話であり、むしろここまでして家に残る理由があるのだと推測します。
二人はテントに入ると、昨日のお願いについて勇に聞きます。
勇は大学で荷物を整理していると古いノートを見つけ、中にテープで古い鍵が張り付けられていました。
その鍵は小さい頃の自分のものだといいますが、何の鍵か思い出せず、鍵穴を探しに戻ってきたのでした。
しかし、勇は家の中に入ると具合が悪くなり、家の中にいられないのだといいます。
その時、彼の背後には明らかに妖の影がありました。
第九十六話
夏目は妖を目にして思わず叫んでしまいますが、二人はその存在にまだ気が付いていません。
その声を聞いて妖は姿を消しますが、勇の様子をニャンコ先生が見ていました。
夏目はニャンコ先生を連れて一度テントを出ると、状況を整理します。
ニャンコ先生の話によると、勇が行った妙な場所で妖がくっついてきてしまい、さらに家には祖父の結界や術があちこちにあるため、妖の具合が悪くなり、勇にも影響しているのだといいます。
しかも妖はなかなかの大物で、家以外で特に害がないのであれば、このまま放っておいて離れるのを待つことを提案されます。
ニャンコ先生に何か策があるようですが、とりあえず多軌たちと合流し、家の中で鍵穴を探すことにします。
夏目は探す中で、勇についた妖に話しかけますが、何の鍵かも分からないし、勇から離れることも拒絶されてしまいます。
しかし、ここで妖がようやく口を開き、今は離れられないから詫びとして、『ホウオウの書棚 ひとのこ したじき』とメッセージをくれます。
夏目はすぐに勇に場所を聞いて向かうと、多軌の頭の上から本の入った段ボールが落ちてくるところでした。
咄嗟にニャンコ先生が元の姿に戻って段ボールを払い、勇が多軌に覆いかぶさるようにして彼女を守ります。
その後、多軌は鍵について、勇が祖父にもらったのではないかと推測。
その話で勇も思い出します。
西の蔵の書棚を三人で動かすと、その裏に小さな扉が隠されていて、鍵を使って開けます。
中に入っていたのは石でした。
勇は全てを思い出しました。
この石は多軌のものだといい、それにまつわるエピソードを話してくれます。
多軌が生まれてくる前、勇と祖父は河原へ散歩に行き、花のような模様のある石が縁起が良いと噂になっていたので、生まれてくる多軌のために二人で探しましたが、結局見つかりませんでした。
だから綺麗な石を拾って、そこに花の絵を描くことにし、それをいつか妹にプレゼントして驚かせてやろうと考えていました。
それまでは二人の秘密だと、勇は祖父から鍵を預かったのでした。
しかし、多軌が生まれたことによる忙しさと、祖父が体調を崩したことによる寂しさからそのことをすっかり忘れていました。
石を隠す時、勇はこんな石で喜んでくれるだろうかと涙を流していましたが、祖父はきっと喜ぶさと励ましてくれます。
そして、もし喜んでくれなかったら、また二人で探そうと。
石を受け取った多軌は嬉しそうで、勇と祖父にお礼をいいます。
その後、夏目と勇は二人きりで話します。
勇はこれからも怪しいところを巡り続けるようですが、今回のことで夏目を認め、多軌をまかせてもいいかもしれないと爆弾発言をし、夏目とニャンコ先生は飲んでいた飲み物を吹き出します。
勇が夏目たちに別れを告げると、妖を手を振っていました。
そして夏目は多軌に、勇が妖にとりつかれやすい体質であること、今回の妖は大学裏の祠にいたもので、勇につれていってもらわないと元の場所に帰れないことを説明。
多軌もそれを聞いて安心し、夏目とニャンコ先生にお礼をいいます。
その時、以前多軌がよくしてあげた女子生徒が多軌に声をかけ、お礼にと新しいお菓子を買ってきてくれました。
普段、ちょっととっつきにくい多軌ですが、少しずつ周囲と打ち解けることができているようです。
また、お礼と聞いてニャンコ先生は報酬のエクレアのことを思い出し、夏目も約束だもんな、と無視することはありませんでした。
第九十七話
ここ数日、お客が来るからと先に帰ってしまう田沼。
校門のところでそのお客らしき人物が待っていましたが、夏目からはよく見えませんでした。
北本がいうにはつかみ所がなく、にぃと笑うといい、夏目は何かが引っ掛かります。
そして休みの日の朝、どうしても気になってしまい、夏目は田沼に電話しますが、今日もお客が来るといいます。
電話の音声から何かが起こっていることを感じ取った夏目。
また田沼も夏目に話したいことがあり、お客が来る前の時間を利用して夏目は田沼の家に行きます。
そのお客とは男とも女とも一見分からない人物で、あまり話したことのないタイプでした。
その後、二人は散歩に行きますが、驚くのはここから。
家に戻ると父親のいっていた友人がいて、田沼が応対したお客に父親は覚えがないといいます。
明らかに怪しいですが、害がないため無下にできず困っていると、噂のお客が現れます。
田沼の言う通り、男とも女とも判断のつかない容姿で、夏目のことを見透かすような視線を投げかけてきます。
ニャンコ先生は厳しい表情をしていて、何かを考えている様子。
お客は思い出の地だとして、梅ヶ原の大杉まで田沼に案内を頼みます。
その道中、夏目はお客に人か妖かを聞くと、相手は妖であることをあっさり白状します。
しかし、悪さをするつもりはなく、ただ田沼と話がしたいだけだといいます。
それでも夏目は近づかないよういい、田沼も夏目に心配をかけるくらいならと断ろうとします。
しかし、夏目は名取のことを思い出します。
彼は夏目に近づく妖を追い払ったりせず、夏目の意思を尊重して見守ってくれています。
だから夏目も田沼の意思を尊重し、結局大杉まで案内します。
それが終わると田沼は家に帰り、夏目と妖が同じ帰り道を歩きます。
妖は夏目の顔を覗き込むと、左耳から鈴がのぞきます。
それで夏目は妖の正体が三篠(みすず)であることに気が付きますが、ニャンコ先生はすでに気が付いていました。
三篠は事情があるが夏目には関係ないとして飛び立ってしまいます。
それ以来、夏目は用心棒として田沼の周囲を警戒しますが、三篠は変わらず田沼の家を訪れ、しばらく一日一度散歩することが日課になりました。
そんなある日、夏目は田沼の家の屋根に突き刺さる錫杖に気が付きますが、田沼には見えていないことから妖関係であることを知ります。
その時、田沼を謎の頭痛が襲いますが、三篠は今日の散歩をやめるつもりはありません。
第九十八話
田沼の頭痛というよりも…と言いかけますが、三篠が彼の手を引いて勝手に先に行ってしまい、夏目も慌てて後を追いかけます。
その後、夏目は再び三篠を問い詰めますが、彼は答えません。
私に話させることなどカンタンなことなのに、と言い残して消えてしまいます。
その晩、田沼は夢を見ます。
自分の家の庭で見知らぬ人影が木を眺めるような姿勢をとり、そこで目が覚めます。
夢を頼りにその場所にいくと、田沼はそこで何かを見つけます。
場面は変わり、夏目は三篠のことを考えていました。
彼の名前は友人帳にあるため、名を呼んで命じれば済む話です。
しかし、夏目はそれをせずに、直接三篠に会いに行きます。
夏目にとって三篠は、友人帳が何なのか分からない時の心の拠り所であり、従わせてしまうと今ある何かが消えてしまう気がしました。
だから頼みごとのために会いに来たのだと話すと、三篠は帰り道、送ってくれます。
そこで彼は、昔話をします。
三篠は今でこそ沼の主などと言われていますが、かつては沼に棲みつく名もなき者でした。
ところが、田畑が荒れたある年、人が供物だと牛を沼に投げ入れ、三篠はそれを取り込んで力をつけました。
そして、田沼の古寺を挟んで反対側にも沼があり、かつては三篠の棲む沼と双子のようなものだったといいます。
後日、田沼は夢のことを夏目に報告。夢に出てきた人影は三篠でした。
気になってその場所を探すと、そこには二体の木偶人形が隠されていました。
そして田沼は、三篠は自分に用があるようだけれど、自分ではない誰かに話し掛けているではと考えていました。
そこに三篠が現れ、夏目は田沼に何かが憑りついていて、三篠はそれに会いに来ていたことを悟ります。
その瞬間、田沼の様子がおかしくなります。
三篠も、ついに事情を説明します。
田沼に憑りついているのは、三篠の棲む沼と古寺を挟んで反対の沼の主・ササメで、彼らは時々、古寺に集まってどちらが優れているのか勝負していました。
ササメの力が溜まったら、木偶人形を依り代としておりてきて、三篠を待つ目印として錫杖を屋根に立てるのです。
ところが今回、ササメが依り代にしたのは田沼でした。
彼の妖力を気に入り、なかなか木偶人形に移らないササメを移動させるために、三篠は彼とかつて勝負した場所に行き、早く勝負したくなるよう仕向けていたのでした。
しかし、田沼に気が付かれた以上、多少手荒になっても引きずり出すつもりの三篠ですが、その前にササメが姿を消します。
場面は変わり、田沼は自分の心の中で沼に浮かぶ白い物体を見つけます。
それがササメらしく、三篠に追いつくためならと自分の体を差し出します。
友人に追いつけない辛さには、田沼にも覚えがあったからです。
しかし、ササメはニャンコ先生と少し話し、思い直します。
三篠が自分に求めるのは強さだけではないと。
田沼から抜け出すと、ササメは木偶人形に移り、それを見届けた三篠も移り、二体の木偶人形はぶつかり合いながら空高く舞い上がります。
その後、田沼は数日間、熱を出すこととなりました。
後日、田沼をお見舞いする夏目とニャンコ先生。
田沼は、見えもしないのに妖ではないかと、夏目に相談することをためらっていましたが、それは違います。
夏目にとって、妖であろうとなかろうと、気になってることがあれば言ってほしいわけで、田沼も今回の件でそれを学んだのでした。
また、熱の影響か、田沼は三篠との記憶が曖昧になっていました。
寂しさを感じていましたが、その一方で夏目と同じものが見えて嬉しかったと話し、田沼は去っていきます。
それを見送る夏目ですが、実は三篠もその場にいました。
彼は田沼を気に入ったようですが、夏目はいい顔をしません。
そのことには触れずにササメとの勝負の結果について聞きますが、人には話せないと教えてくれない三篠でした。
特別編20 幕間探偵
名取主演の映画を見に来ていた夏目たち四人ですが、停電の関係で映画は一時中断。
一同は復旧までの間に、映画で得た情報から事件について考えることにします。
名取の演じる明星探偵のもとに訪れた、依頼人の紅川蘭子。
彼女は紅川百貨店の令嬢として恵まれ、黄田貿易の御曹司・稔と婚約を発表して幸せのはずですが、そんな彼女に恐ろしいことが起こります。
彼女はしばしばお茶に誘われて稔の館に行きますが、客間で一人で待つ時、天井から企み事をするような声がすることに気が付きました。
そこで天井をのぞくと、そこには痩せこけた鸚鵡(おうむ)がいました。
鸚鵡は実は脱走した稔のペット『槐(えんじゅ)』でしたが、槐は蘭子と二人きりの時、『ツギモコロセバイイ』と不吉なことをいい、蘭子は怯えていました。
そこで明星が稔について調べると、彼は蘭子以前にも、資産家令嬢に対して婚約を結んだことが三度もあることが判明。
そして、三人とも不慮の事故で亡くなっていました。
西村は稔が殺人鬼であると推理しますが、北本は反論。この時、夏目は何かをいいかけてやめます。
財産目当てなら結婚後に殺害すればいいし、そもそも財産を狙われるのは稔であり、蘭子が婚約者を消したと考えることもできます。
議論が白熱する中、田沼も自分の見解をいいます。
明星は亡くなった三人の婚約者の写真を取り寄せて眺めるシーンがありますが、それぞれの写真に同じ人物が写っているものが数枚ありました。
確かに、一番目、二番目の婚約者の背後の木陰や上の階に女性が写っています。
また、鸚鵡が脱走したり、蘭子の前でしか話さないことについて、元の飼い主が蘭子に似た人物であり、その人物が『ツギモコロセバイイ』と言ったのではないか、つまり三番目の婚約者である牡丹ということになります。
牡丹も亡くなっていますが、彼女は本当の事故に巻き込まれただけで、蘭子が心配することはもうないことになります。
一同はすっきりし、映画が再開することになり、会場に向かいます。
ちなみに、話している間に西村のポップコーンが減る謎がありましたが、彼らの周囲には何体もの妖がいました。
しかし、誰も気が付いていないようです。
第九十九話
ある日、夏目は人型に折られた紙を持っていました。
それは稀少な妖だといい、話は数日前に遡ります。
噂を聞きつけた妖に名前を返したその日の夜、夏目は誰かが泣いている夢を見ます。
翌日、その場所が自宅の庭だと思った夏目は夢で見た木を見つけ、そこに人型に折られた紙を見つけます。
夏目はそれを家の中に持ち込みますが、凧の形をした妖が窓に張り付きます。それは昨日名前を返した妖でした。
その妖は動けないためこうして凧で伝言を伝えに来たのだといい、折り紙人形は彼の旅仲間でした。
折り紙人形には妖が閉じこもっていて、珍しい妖力を持つために襲われる可能性があり、夏目に自分が着くまでの間、護衛を頼みます。
その日以来、夏目とニャンコ先生は美しい風景の夢を見るようになります。
それは守ってもらうことに対する折り紙人形のお礼で、夏目はオリガミと呼ぶことにします。
ニャンコ先生にはオリガミの話す言葉が分かるため、ニャンコ先生を通じて夏目はオリガミと対話を重ねます。
そんなある日、夏目はオリガミのまわりが汚れていることに気が付きます。
そして、夏目は学校で妖らしき黒い影を見つけますが、影はすぐにいなくなってしまいます。
その夜、オリガミの迎えは明日くることが分かりました。
そしてその日の夢の中で、夏目は学校で見た黒い影と会います。
それは、オリガミの本当の姿でした。
彼は綺麗な夕日を見せてくれたお礼と、別れを夏目に告げるのでした。
翌朝、夏目が目を覚ますと、部屋中に花の絵が描かれていました。
オリガミのまわりが汚れていたのは、どうやら絵を描く練習をしていたからのようです。
窓は開いていて、オリガミが去った後でした。
夏目は花の絵を塔子にも見せたいと思いますが、妖の墨で書かれているためじきに消えてしまいます。
ならばと、夏目はその光景をしっかり目に焼き付けるのでした。
おわりに
多軌や田沼の話ももちろん面白かったのですが、特に最後のオリガミとの話が美しく、夏目友人帳らしい儚い出会いに溢れ、何度も読み返してしまいました。
次の話はこちら。