『宝石の国 10巻』ネタバレ感想!あらすじから結末まで!
宝石たちは、フォスに誘われて月に向かった者たちと、地上に残り、金剛先生と新たな関係を築こうとする者たちにわかれていた。地上に夜襲を仕掛けたフォスたちだったが、後からやってきたカンゴームに連れ戻された。目を覚ましたフォスは、エクメアから砂になった宝石の再生が進んでいることを知らされる。
Amazon内容紹介より
前の話はこちら。
前回、月人側の宝石たちの夜襲は失敗に終わり、フォスたちは迎えにきたカンゴームによって月に連れ戻されます。
今回は、そこから始まります。
あらすじ
第七十一話『失敗』
シンシャがいた祠のような場所に潜むジェードと金剛。
ジェードが月人たちが月に戻ったことを報告すると、金剛は謝罪し、せめて月人の意に沿えない理由とフォスと戦えない理由をジェードたちに説明できないかと試みますが、禁止されているので言葉が続きません。
ジェードは無理するなと金剛を止め、他の宝石たちと合流します。
ユークレースはフォスの説得に失敗したことをジェードと金剛に報告し、みんなが予定通りに頑張ったのにと謝罪しますが、仕方ないとボロボロのボルツが言います。
他の宝石たちも満身創痍なものが多いですが、誰もユークレースを責めるような宝石はいません。
ボルツは金剛は守れたから良しとし、ユークレースもフォスの隙を確認ができたといいます。
ジルコンはイエローがまともであることを確認しますが、パパラチアは完全にいかれていると恐怖し、小さな月人のことも気にします。
しかし、今は気にしても仕方ないと判断し、ユークレースはゆっくり休みましょうと提案し、金剛もそれを肯定します。
ユークレースは乱暴な帰り方からフォスがまだ月で信用されていないことを見抜き、次に来るまで少し時間があるだろうと推測します。
金剛はパズルのように宝石たちを修復し、そのスピードに驚くペリドットとスフェン。
次はボルツの順番になり、金剛は足の削られた部分は微細すぎて回収できないとして、髪で補うが良いかとボルツに聞きます。
ボルツは毒を浴びても使えるかとたずね、部分的には使えるとの回答を得てお願いします。
シンシャが申し訳なさそうに見つめる中、金剛はボルツの髪を素手で削り落とし、ボルツはベリーショートまで髪が短くなります。
シンシャはたまらず謝罪しますが、ボルツは気にするなと気の抜けた顔をしています。
次はシンシャの番になり、まずは右手を差し出します。
金剛が右手を繋げていく中、フォスから月では毒を取り除けると聞いていたからパパラチアに毒を浴びせたものの大丈夫だろうかとシンシャは気にしています。
それに対し、パパラチアを動かせる技術があるなら、毒を除去できる可能性は高いと金剛は言い、フォスについて行かなくていいのかとシンシャにたずねます。
月なら体質を変えられる可能性があるといいますが、シンシャはしつこい!と怒った顔をします。
これには金剛も驚きます。
ユークレースは、シンシャの毒があったから金剛を守れたのだと褒め、ジェード、ボルツもこれに同意します。
シンシャは照れたように頬を赤らめ、仲間を助けるのは当然だと彼らをちゃんと仲間として認めていました。
金剛は配慮に欠けた発言に謝罪しますが、ありがとうだよとレッドベリルに言われ、言い直します。
シンシャはそれを黙って聞くのでした。
場面は変わり、月に帰還途中の月人たち。
カンゴームは他の月人たちを労わり、イエローは本当にカンゴームか確認します。
すると、カンゴームはその名前は好きじゃないとして、フォスと組んでいたのもゴーストの意思であって、自分は反対したといいます。
イエローは戻るのにわざわざフォスの頭を砕いたことを批判しますが、よく喋ってうるさいから回収を楽にするためにしたと、反省した様子もありません。
ここに頭からシンシャの毒を浴びたパパラチアが割り込みます。
長く地上に留まれば裏切る、フォスの不安定さも予定通りだなと聞くと、そうかもなとカンゴームはあっさりしています。
まだ納得のいかないイエローは、でもゴーストの時から付き合いのあるラピスの頭だぞと反論しますが、ラピスと組んでいたのも俺じゃないとカンゴームは一刀両断。
おまえらにはわからんだろうが、目の奥に誰もいないのは本当に楽だと、一人呟くのでした。
月に帰還すると、出迎えてくれたのはエクメア。
カンゴームはただいまと真っ先に対面しますが、エクメアは『勝手について行っちゃダメじゃないか!』と頭から角を生やし、激怒します。
カンゴームは子どものように言い訳し、自分も手伝いたかったことを話すと、エクメアは君が大切だと角をおさめます。
するとカンゴームは月人を誰も散じなかったと強気に出て、エクメアも怒りを収めます。
場面は変わり、二人の月人によって修復されるフォス。
しかし、そこにイエローやパパラチアの姿はなく、フォスもまた目覚める気配もありませんでした。
第七十二話『救世主』
目覚めると、治療をしてくれた月人に対して、支離滅裂なことを口にします。
月人から見た自分は宝石なのに、宝石たちからは月人に見られ、自分は何なのだと自問します。
月人はフォスフォフィライトであり、月人の希望だといいますが、フォスは金剛を見ることが出来なかったのに?と自嘲し、ショックから顔面が飛び散ってしまいます。
その後、フォスが目を覚ますと顔は綺麗に直っていて、月人が棒のようなものでフォスのおでこを叩いています。心理療法らしいです。
ふと我に返り、パパラチアとイエローのことを聞くフォス。
パパラチアはシンシャの出す特殊な水銀が体の細部に入り込み、長く触れた部分は脆くなる可能性があるため、急いで内部の洗浄方法を検討中です。
イエローは体には異常はありませんが、疲れたと言ったきり、動かず誰とも話さず、他の宝石たちが心配して交代で寄り添っていました。
そして、フォスのことは誰も気にしていないと月人はわざわざ口にし、フォスは改めてショックを受けます。
すると、おーい、と呼ぶ声が聞こえ、カンゴームが入ってきます。
月人はカンゴームを姫と呼び、カンゴームは待たせてもらうとソファに座ります。
対面に座るフォス。
閉じたか、とフォスを一応気遣うカンゴーム。
その膝にはトイプードルのような謎の生き物が乗っていて、フォスはそれは何かとたずねます。
カンゴームは、エクメアに世話しろと渡されたのだといい、それがなんなのかは教えてくれません。
フォスは改めて助けに来てくれたカンゴームにお礼を言います。
やっぱり君が一番頼りになるといい、カンゴームも笑顔になりますが、次の瞬間、勘違いだと一刀両断。
フォスたちの回収に向かったのはエクメアのためで、それまでは目の中に残っていたゴーストに操られて仕方なく助けていただけで、そのゴーストももう取り除いたといいます。
親友みたく思わせて悪かった、忘れてくれ、と清々しいくらいサバサバしています。
フォスは本気でエクメアが好きなのかとたずねますが、カンゴームはああ、と躊躇なく答えます。
趣味が悪いと口にすると、複合ブスとカンゴームは罵り、暴力ブスとフォスも対抗します。
カンゴームはエクメアの魅力について、触り心地、夏の夜のような良い匂い、シャイだけど二人きりだとよく喋るところがかわいい点などを挙げ、トイプードルらしきものに頬ずりします。
フォスはたまらず「きっも』と顔をしかめ、お互いにブスと罵り合います。
しかし、カンゴームは最後に優しい表情で、みんなと仲良くなと言いますが、フォスはムリかもと頭を抱えます。
そんなにフォスを、カンゴームは冷酷だもんなと言い、たまらずフォスは否定。
今回は失敗したが、みんなのために動いていると熱弁しますが、カンゴームはイエローとパパラチアの状態知ってて言ってんの?と冷たいです。
そして、フォスは自分の力で周りを動かしている気になっているが、実際は誰かが察して我慢して協力してるんだぞ、と痛いところを突きます。
カンゴームは月に連れてきてくれた恩があるからあえて言うと前置きし、いない仲間のために近くの仲間を雑に扱うのはやめた方がいいと言います。
さもないと、いまに誰もいなくなると。
その言葉にフォスは何も言えず、うなだれます。
その時、カンゴームの背後からパーカーらしきものを着たラフな格好のエクメアが現れ、待たせたねといいます。
これに対し、カンゴームは遅い!と怒りながらもエクメアに抱きつきますが、エクメアは霧散。
少し離れたところに再度現れ、待たせたねと片手を挙げ、遅い!とカンゴームはもう一度怒ります。
二人はフォスなどそっちのけで、デートの話をしています。
エクメアいわく、デートとは外をふらふらして二人の関係を大衆に匂わす大事な仕事なんだそうです。
思わず何しに来たと突っ込むフォス。
エクメアはフォスに良い知らせだといい、砂からの再生が予定よりもかなり早く進んでいることを教えてくれます。
そしてその件で、技術責任者から確認したいことがあるから、直接聞いてほしいといいます。
また、かわいい妻を連れて来てくれたありがとうと、カンゴームの肩を抱きます。
フォスは妻の意味が分からず、ブスって意味?とまたしてもケンカを売り、もう一度ブスと言い合う二人。
二人はもうフォスなどそっちのけでラブラブムードになり、フォスは呆れて移動します。
向かった先には責任者の顎ひげの生えたバルバタが待っていました。
お嬢さんと言われ、ブスって意味?ともはや八つ当たりのような対応をしますが、可愛らしいと言い直され、ならいいと偉そうなフォス。
バルバタは、やりがいのある仕事だと喜んでいます。
エクメアにもこの仕事は出来るようですが、彼は天才で何でも満遍なく出来過ぎてしまうため、一番面倒な政治をやらせているのだといいます。
二人が向かった先には、液体が入った大きな円形のガラスケースが無数に並べられていて、その上から宝石の砂が砂時計のように零れ落ち、わずかではありますが、人の形を作っています。
バルバタはそれを、レッドダイヤモンドだといいます。
破片が大きいことなどを理由にダイヤモンドがやはり早いといい、中に入っている粘度の高い液体は、破片中のインクルージョンを目覚めさせ、彼らが持っている体の位置情報を引き出すためのものだといいます。
上から落ちた破片はゆっくりと泳ぎ、自分の元の位置に戻る仕組みになっていて、すでに顔の形ができ始めていました。
フォスはすごい、と驚きを隠せません。
天才、と思わずバルバタとハイタッチし、正気を失ったような笑顔で、一人でも自分のやっていることは正しい!と自分を肯定します。
それに対してバルバタは冷静で、この先に進むにはフォスに判断してほしいことが二つある、と言うのでした。
第七十三話『選択』
バルバタがフォスに求める判断。
一つ目は、身体が再生しても記憶は戻らないということです。
細かく砕け、長らく外気に晒された破片内のインクルージョンは最もな重要である位置情報を保持するため、それ以外の情報を放り出して仮死状態に入ります。
それ以外の情報の復元に目処は立っておらず、判断というより了承してほしいといいます。
フォスはしばし沈黙し、俯きながら分かったと了承します。
しかし、本当に言いづらいのは二つめでした。
それは、アドミラビリスからの回収だといいます。
彼らは、砂を食べているのです。
彼らの殻は砂を体内で再結晶させたもので、姿形や構造がバラエティに富んでいます。
短い世代交代を繰り返して変化が早く、種分化を起こしやすい。
六つある月で生態も異なるため、月人たちもその全てを解明できたわけではありません。
現状、宝石たちを完全に再生するためには、アドミラビリスたちを全て殺さないといけないといいます。
バルバタはフォスたちには『殺す』という言葉が馴染みがないだろうと気が付き、解体して永久に失われるという意味だと言い換えます。
ここで回想が挟まり、フォスは浜辺に立っていて、水面には彼と交流のあったアドミラビリスの王・ウァリエガツス(七巻参照)が笑顔で手を振る姿、そして次の瞬間には五代前の王・ウェントリコススが儚げな笑顔を浮かべ、降った手をおろす姿がありました。
回想終了。
バルバタは、宝石の合成体生成に失敗しているといいます。
彼の意見としては、一粒でも多くかき集めて、オリジナルの純度を高めたいといいます。
ただし、宝石たちは感情が繊細です。
地上で保管されている分を合わせたとしても、合成品を合わせて無理やり再生させた場合、果たして何体が個体としてもつのか不安だとバルバタは漏らします。
もしフォスが了承すれば、月人たちはアドミラビリスたちからの宝石の回収作業に着手しますが、彼らは大きく抵抗することが予想されます。
まずは繁殖を抑え、ゆるやかな絶滅を待って回収することになります。
ただし、王族に認められたフォスが直接アドミラビリスに命令すれば、今すぐにでも回収できる可能性があるとバルバタは言いますが、その顔は苦々しいものです。
フォスは焦点を失った顔のまま立ち尽くし、考えさせてほしいとだけ答えます。
これには逆にバルバタが申し訳なさそうで、謝ります。
もちろん彼も別の方法を探してみますが、あまり期待しないでほしいといいます。
バルバタの経験と勘から、結局はこの問題にぶち当たる可能性が高いと。
場面は変わり、大勢のアドミラビリスたちに囲まれるフォス。
貝殻ほしいって言ったらくれる?と横にいるアドミラビリスに聞くと、彼らは意外にも素直にそれを受け入れます。
王の命令と呟く一体のアドミラビリス。
8巻で彼らは、ウェントリコススからもらった貝(アゲート)の匂いが王族のものだと言及しているので、フォスのことを王だと思っているのかもしれません。
呟いたアドミラビリスは自分の殻を無理やり持ち上げますが、ほんの少し身が裂けただけで涙を流し、フォスの顔は恐ろしいものを見るかのように凍りついていきます。
すぐになーんちゃって、とおどけて見せ、すぐにやめさせます。
身が裂けてしまったアドミラビリスは治療のため一人の月人が持って行き、フォスは横になりますが、完全な行き止まりになっても頭は考えることをやめません。
そこに、一筋の流星が流れ、フォスはそれを見つめます。
場面は変わり、他の宝石たちが集まる部屋にフォスが横になったままの状態で合金の手足を利用して這うように戻ります。
ベニトアイトはすぐに異変に気が付いて声を掛けますが、フォスは大丈夫だといいます。
そしてイエロー、パパラチアのことについて、みんなに謝罪。
これ以上誰も傷つけたくないから、次は…と言いますが、みんなはエクメアとカンゴームが仲睦まじくデートしている映像に釘付けでフォスの話を聞いていません。
フォスは聞いてよと呼びかけますが、みんなの興味は生まれ変わったカンゴームに注がれていました。
彼は遊園地のジェットコースターのような乗り物に楽しそうに乗っていて、フォス以外のみんなはこれが本当のカンゴームだったのだとむしろ喜んでいるようです。
月人もまた、いきいきとしたエクメアを見て涙を流しています。
さらに別の乗り物にはゴーシェナイトが乗っていて、非常に楽しそうです。
と、ここで目隠し状態のアレキが口を開き、次は自分を連れていってほしいと提案します。
パパラチアの担当に聞いたところ、施術を受ければ赤いままでいられるのだということです。
アレキは髪が赤色に変化すると、月人を見ても平気になります。
ただし、錯乱暴走状態に陥ってしまうため、今のアレキは失われてしまうことになります。
第七十四話『祭典』
アレキの話を聞いて、どういうこと?と事情を聞くフォス。
医者の話では、月人の放つ光が原因で赤くなるのだとアレキは説明します。
その光がアレキの瞳孔から入って中で反射して胸の深くまで届くと赤くなるのだと。
それは角度によって当たり外れがあり、ルーレットのようなものだといいます。
だから、元に戻ることを考慮しなくていいのなら、胸の中に月人と同じ発光体を入れておくだけで、赤いままでいられるという簡単な話です。
その状態ならイエローのように、先生や仲間と戦っても心が壊れないとアレキは言いますが、パパラチアほど戦えるかは分からないとその点は弱気です。
でも、とフォスは口を挟もうとしますが、アレキは、クリソベリルが戻ったら自分も戻してとお願いし、フォスは何も言えません。
そこでダメだと反対したのは横で話を聞いていたベニトでした。
ずっと赤いままでいたことなど、これまでなかったため、どうなるか分からない。
しかも、戦うにしても敵味方の区別がつかないと。
すると、アレキはそのことを承知していて、だからあんたが制御するのよ、とベニトに言います。
今までも良くしてくれたから、これからもよろしくと一方的に言いますが、ベニトは絶対にやらないと猛反対。
一連のやり取りを見ていたダイヤとエイティ・フォー。
ベニトは変わり者のネプチュナイトから逃れたくて月に来たのに、一番変わっている赤アレキのお世話をすることになるなんてかわいそうにと同情しますが、決して自分が代わるとは言いません。
しかし、フォスはここでアレキを赤いままにすることはできないと反対し、ベニトはホッとします。
フォスは、次は自分一人で行くと宣言し、みんな唖然とします。
先生に会って、どうして祈ってくれないのか。
そこまで口にしてそれを違うと否定し、フォスは言います。
月人のために祈ってくれるよう頼んでみる、と。
しかし、すかさずアレキは、ボルツとシンシャに阻まれて先生に会えなかったことを指摘、同じことにならない?と心配します。
それに対してフォスは、武器を持たずに行くことを提案します。
これにはみんな驚きます。
フォスは、先生が出てこなかったのはまだ自分たちのことが大切で、攻撃できないからだと指摘。
対話に応じてくれそうなユークレースを介して会えれば、話はできるだろうと踏んでいます。
それに賭けたい、と意志の固い表情を見せますが、それしか思いつかないよと両手で顔を覆ってしまい、腕の合金がドロドロと溶けて地面にしたたり落ちます。
その場にいる宝石たちは、悲しげな表情でフォスのことを見ます。
フォスは今の提案をエクメアに伝えてくれと月人のコンシェルジュに頼み、コンシェルジュはそれを了承するのでした。
場面は変わり、遊園地を楽しんだ後のエクメアとカンゴーム。
エクメアはハートの形をした風船を三つ持っていて、カンゴームはふわふわしたペットのような動物を抱え、頭には兎の耳のようなカチューシャをつけています。
楽しめたかい?というエクメアの問いに、自由に動けるってサイコー!!とふわふわしたものを遠くに放り投げます。
可愛くてかっこいい服をずっと着られるのも嬉しいと話し、これまではゴーストがアンタークっぽくないと嫌な顔をさせられていたことを打ち明けます。
エクメアもまた、カンゴームが前に着ていたアンダーウェアを選んだことに驚いていて、無性の宝石はセクシュアルな物を避けると思ったと理由を語ります。
それに対してカンゴームは右手を顎にあて、百二年の間、何度も流氷に飛び込もうとしたけれど、我慢して良かったと心底嬉しそうです。
そこに小さな筋斗雲のようなものが飛んできて、カンゴームはおまえのじゃね?と言います。
エクメアは失礼と前置きしてから飛んできたものに人差し指を当てます。
すると、筋斗雲は平べったい形に変わり、エクメアの目線で止まります。
エクメアははい、と話しかけると、服装がいつもの格好に変わり、眼鏡も出現。
よし、各所、一次準備に入ってよい。
日程は調整する。
そう言い終えると飛んできたものは霧散し、スムーズな進行だと独り言。
また君のおかげだとカンゴームに話しかけますが、またわけわかんねーこと言ってるとカンゴームは呆れています。
エクメアの眼鏡が再びなくなると、カンゴームはエクメアの胸に飛び込みます。
ふわふわのくせにおっかねーやつ♡、と完全にエクメアの虜になっています。
場面は変わり、再び宝石たち。
エイティ・フォーは、フォスの作戦が成功して月人が無になった場合、自分たちは月に残されるのかと質問します。
しかし、フォスは目が点状態で、何も考えてない顔とエイティに指摘されます。
だんだんバカに戻ってない?とかなり厳しい言葉を浴びせられ、そんなきついこと言うこだったっけ……と凹むフォス。
一方、サーティ・スリーと離れて一人になったせいか先生と離れたせいか最近しっかりしなきゃとエイティは思っていて、彼は誰もが目の前のことしか見ていない現状を心配していました。
そこでコンシェルジュは船の操縦を教えようかと提案しますが、そもそも船が無になる可能性をエイティは指摘。
それに対してコンシェルジュは、都市機能は月の表面温度による自動生成システムだから大丈夫だとした上で、確認すると言います。
さらに先ほどのフォスの提案について、エクメアから許可が下りたと返事がきますが、条件がありました。
それは、実行は祭典の後にしてほしいというもので、さいてん?とフォスは目が点です。
祭典とは、近日行われる予定の月で初めての催しで、簡単に言うと宝石たちと月人のかつてない協力及び親睦状態を国民に認知させることが目的だといいます。
宝石たちも全員出席しますが、宝石代表としてカンゴームが、月人代表としてエクメアが選ばれたことにフォスからツッコミが入ります。
さらに、コンシェルジュは親愛の深い二人が一対となり、社会が新たな段階に入ったことを一般大衆に広く示すのだと説明しますが、要はイチャつきイベントだとエイティとダイヤは面白がっています。
アレキもあの二人なら迫力があると肯定的ですが、迫力がありすぎだとベニトは及び腰です。
それぞれ意見を交わしますが、ここでコンシェルジュは式典名を告げます。
それは『結婚式』でした。
第七十五話『願い事』
タキシードに身を包んだエクメアは、ウェディングドレス姿のカンゴームのヴェールをめくります。
数え切れないほどの月人が参列する中、宝石たちはこの式典がイチャつきイベントと知りつつも最前列で式典に参加します。
向かい合うエクメアとカンゴーム。
エクメアはカンゴームの額を撫でると、そこにキスをしようと目を閉じます。
ところが、カンゴームは勢いよくエクメアの唇にキスをし、ゴンッと大きな音を立て、エクメアは大きく見開きます。
これには目隠しをしているアレキ以外の宝石たちは大きな口を開けて驚き、口に口をつけたー!!と動揺を隠せません。
その時、花火のように何かが弾け、会場全体に花びらが舞い散ります。
どうしたらいいのか分からず焦るフォスですが、そこに二つのお団子を作った髪型の月人がやってきて、踊らないの?といいます。
それにおどるの?と首を傾げるフォスですが、今度はそこにセミ?が現れ、バルバタと料理を食べに行こうと誘ってきます。
フォスは初めて目の当たりにする料理に戸惑っていますが、バルバタは研究よりも料理が好きで、その腕前はプロ以上。
宝石たちも食べられる料理を用意してくれていて、セミは光マカロンと呼ばれるお菓子をフォスの口に入れます。
その瞬間、フォスの目や口、耳から光が飛び出し、驚きながらもおいしいと絶賛。
ダイヤたちも食べ、同じように光を放ちます。
今度は向こうでライブが始まるということで、フォスを除いた一同はセミに続いて移動。
フォスの隣にはいつの間にかクイエタがいて、あなたのおかげよ、とフォスにお礼を言い、嬉しそうにバルバタの作ったパスタをトングで掴んで自分の皿に取ります。
当初、クイエタは宝石たちが来たことに何の期待もしていませんでしたが、エクメアは進展を確信していて、こんな晴れ晴れとした気分は久しぶりだといいます。
きっと、自分たち月人は無に近づいている、と。
宴も終わり、疲れて会場でそのまま寝てしまうセミや宝石たち。
その頃、エクメアとカンゴームは普段の服装に着替え、部屋でゆっくりと二人の時間を過ごしていました。
エクメアは抱きつくカンゴームに対して、君の願いは自由だったねと唐突に言い、カンゴームは怪訝そうな顔をします。
それに構わず、エクメアはカンゴームをこの戦争から逃がす準備が整ったと一方的に言い放ちます。
一番遠く小さな月に邸宅を造っていて、未完成の現段階でもあらゆる影響の軽減が期待できるといい、体裁作りのために妻やら結婚やら、無関係なことに付き合わせてしまったことを謝罪。
この国の決定には月人たちが感情的に理解できる低俗な理由と目新しい息抜きが同時に必要だったのだと説明し、この邸宅はカンゴームが本物の自由を手に入れる日までの仮の家になると話します。
これが、エクメアの用意できるこの世で最も安全な自由だと。
いまだに話が飲み込めないカンゴームですが、エクメアは言います。
カンゴームが月に来る前から、彼はエクメアにとって本当に特別で大切なんだと。
驚くカンゴームに対して、エクメアが見せたのはカンゴームの左腕でした。
レプリカではなく百二年前に奪った本物ですが、外側のクオーツは取り除いてあります。
エクメアはそれをカンゴームに戻そうとしますが、カンゴームはそれを奪い取ると、別の部屋に走っていき、機械の中に腕を入れます。
腕は音を立てて粉々にされ、音がしなくなるまで二人はただじっとしています。
腕が完全に粉々になると、カンゴームは言います。
願い事は変わり、自分もエクメアと無に行くと。
エクメアは止めようとしますが、カンゴームは自分でその方法を探すと引き下がりません。
カンゴームはエクメアに抱きつくと、腕をとっておくくらいならなんでもっと早く自分を連れ去れなかったのだと悲しそうな表情を浮かべます。
エクメアはそれに答えず、カンゴームにキスをします。
口が離れると、エクメアの長い舌とカンゴームの口から唾液のようなものが糸を引きます。
カンゴームは、口の中で話さなきゃいけないほどの秘密なのか?分からなかったからもう一回といい、二人はさっきよりも激しく抱き合い、キスを交わすのでした。
第七十六話『アドミラビリス』
結婚式が終わり、そのままセミのお腹の上で寝ていたフォスが目を覚まします。
エクメアが作戦の最終確認をしたいという伝言を月人が伝えに来て、フォスはエクメアの部屋に行きます。
彼はすでにフォスたちの伝えた作戦の概要を聞いていました。
その概要とは、前回の作戦で金剛が宝石たちに攻撃できないことを確信したのを踏まえて、友好的なユークレースを介して金剛に直接協力を求めるというものです。
それにはフォス単独でかつ攻撃手段を持ち込まない必要がありますが、フォスはもし作戦がうまくいった場合、月人たちが消え、月に他の宝石たちが取り残されることを懸念していました。
しかし、その懸念は不要だとエクメア。
全都市機能は宝石たちでも操作できるシステムに移行済みで、月人がいなくなっても宝石たちだけで全ての技術が使用可能で、マニュアルも用意してあります。
特に交通機関について、今までと変わりなく月と地球を行き来することができます。
しかし、それらの操作には多少の学習が必要で、適任者としてフォスはアメシストを挙げます。
パパラチアとイエローの治療は継続、アレキの希望する手術は不要となります。
それに対してフォスは、ダイヤとベニトは月に残るかもしれない、ゴーシェは分からないと正直にコメント。
しかしエクメアは、今の生活は恒久的に維持できるため、最適な生活を探せばいいと何から何まで至れり尽くせりです。
ここでフォスはようやくカンゴームについて聞きますが、エクメアはすでに彼の希望を聞いていました。
その時、部屋中に大きな振動が走り、姫が第一研究所を吹っ飛ばしたと月人が報告します。
姫とはカンゴームのことです。
エクメアはフォスに待っているよう言い残すと、煙のように消えます。
残されたフォスは、『あとは』と何か考えています。
場面は変わり、割れた試験管かビーカーらしきものを両手に持ち、煙の中で茫然と立ち尽くすカンゴーム。
背後からエクメアが現れ、やべ、とカンゴームもさすがに焦ります。
しかし、エクメアはまずカンゴームのことを心配し、彼も研究所を吹っ飛ばしたことを謝罪します。
合わせて蛇?のような形をした生物にも謝ります。
改めてエクメアは、あらゆる耐性保護膜をつけておいて良かったとカンゴームの顔をじっくり覗き込みます。
カンゴームはうまくいきそうだったのにと落ち込んでいますが、エクメアは化学の基礎を教えようと提案。
忙しいだろとカンゴームは遠慮しますが、暇な友人がいるとして、エクメアには心当たりがあるようでした。
場面は変わり、研究室でエクメアとカンゴームを茫然と見つめるバルバタ。
エクメアはバルバタが勉強を教えてくれると一方的に言いつけ、当然バルバタはやることがあると抵抗します。
しかし、申請中の実験の許可などを条件に出されて態度を一変、背筋を伸ばして改めて名乗るバルバタ。
カンゴームは嬉しそうにゴミがついていると彼の顎髭をつかみ、さすがのバルバタも迷惑そうです。
エクメアは二人きりにするのが心配なのか監視をつけるといいますが、おまえとは趣味が違うとバルバタはそれを拒否します。
バルバタはしゃがみ、何を勉強したいのかとカンゴームに聞きます。
彼が答えたのは、無に行く方法でした。
これにはバルバタも驚きますが、エクメアが寂しがるから仕方なくついていくのだとカンゴームは偉そうです。
これにはバルバタもかわいーと褒め、エクメアもそうだろうと満更でもありません。
場面は変わり、フォスが月人と話しているところにエクメアが戻ってきます。
フォスは仲間の再生が途中であることを挙げると、それも継続可能な状態で譲り渡すとエクメア。
アドミラビリスからの回収は彼らの自然死を待つことになり、新しい世代は小型化して貝殻の生成を必要としない都市の海に住んでもらう方針です。
再生完了後の処遇はフォスたちに任せるといいますが、アドミラビリスが了承したのかどうかフォスは聞きます。
しかしエクメアは、今のアドミラビリスでは理解して意思表示をすることは難しいとして、彼らの意思は確認していないことを認めます。
またこの計画がフォスの要望とも伝えていませんが、フォスは腑に落ちないといった表情です。
なぜアドミラビリスを捕らえたのかとさらに聞くと、金剛を動かす人間を造るためだとエクメアはいいます。
ここで部屋の中が海の中にいるような描写になり、遥か昔の話になります。
肉の末裔である彼らに協力を求めたところ、犯罪者を提供してくれたとして、包帯のようなものでぐるぐる巻きにされてぶら下がったアドミラビリスが現れます。
地球は六度の爆発で栄養に乏しく、宝石や月人と違い、アドミラビリスは生命維持のために大量の藻類等が必要でした。
そんな彼らにとって、仲間を流刑として月に渡すのは、食い扶持を減らす上で好都合だったのです。
しかし、それでも長い食糧難に陥り、栄養不足から知能が後退、共食いが深刻化します。
自分たちの卵を食べた例もあり、世代交代による環境適応は間に合いませんでした。
そして全ての資源が尽きた時、ウェントリコススの二代前の王の判断により、合成食料を頼って全国民の月への移住を希望し、月人はそれを受け入れたのでした。
ここで過去の描写は終わり、合意がなされたのはフォスが二百五十歳くらいの時であることが明かされます。
フォスは、ウェントリコススが月から仲間を取り戻したいと言っていたことを伝えますが、当時の王であるコンウァラリウスが子孫にどう伝えたかは分からないとエクメアは意に介しません。
フォスは何か言おうとしますが、その前にエクメアは船の準備ができていると話し、フォスは改めて覚悟を決めます。
進展が見込めない場合は迎えを出すとエクメアは言いますが、回収後は捨ておいてくれとフォスはいいます。
退路を断った上で、全力を尽くすと意思表示し、成就を祈るとエクメアもいいます。
フォスがいなくなると、エクメアは移行せよと誰かに命令します。
場面は変わり、アメシストを中心に宝石たちは月人たちに教えてもらいながらマニュアルの操作を確認していました。
そこにフォスが現れ、舟のエネルギーについて説明を受けます。
いよいよ出発の時間になり、宝石たちは心配そうです。
フォスはセミたちに宝石たちを頼み、一人地球に向かいます。
暗闇の中、目だけが光っています。
フォスは何も考えず、うまくいくと何度も繰り返します。
だって先生は、いつでも僕に優しいと。
しかし、不意に涙が溢れ、いまさらそんなことを考える自分に怒りを感じ、膝の間に顔をうずめて一人涙を流すのでした。
第七十七話『認証』
地球に向かう宇宙船内で、タブレット端末のようなものでゲームをして暇を潰すフォス。
と、辺りが急に明るくなると、いつの間にか地球に到着。
目の前にはウォーターメロントルマリンとヘミモルがいて、茫然と口を開けています。
いち早く状況を理解したフォスは、武器を持っていないから危なくないことをアピールしますが、突然後方から攻撃され、ほぼ真っ二つに。
攻撃したのはボルツで、その手には鞭のような武器を持っています。
ユークレースに報告だといい、ウォーターメロンがうんと答えます。
フォスは倒れて身動きがとれず、目線だけを動かすと、そこにはシンシャがいました。
彼は破片を届かないようにしておいた方がいいと提案し、ボルツもそれに了承します。
フォスは先生に会いたいと繰り返しますが、二人は何も言ってくれません。
場面は変わり、宝石たちの居住地に移送され、檻に閉じ込められるフォス。
それを取り囲むように宝石たちが勢ぞろいしています。
檻はスフェンが作ったもので、逃げられるか試してほしいとフォスに頼みますが、フォスはやる前からムリムリと諦めています。
フォスの背後では、今でも殺してやりたいという殺気を放つルチルが檻を掴んで睨みつけていて、フォスは目を合わさずに冷や汗を流します。
ユークレースが金剛も会いたいと話し、金剛が現れます。
フォスは先生と呼びかけ、壊れていることを知っている上で、月人のために祈ってくださいませんかと頼みます。
それは金剛にしかできないことで、月人のためだけではなく、宝石とアドミラビリス、金剛の愛した人間の三つに別れた末裔、すべての幸福のためにと。
金剛は目を閉じると、両手が球状に光を放ちます。
ここで場面は変わり、月側で金剛の起動を確認。
エクメアは、推移は適正だといいますが、ここで科学者の一人が何かに気が付きます。
金剛は、はじめて資格認証を突破したのです。
再び場面は地球に戻ります。
金剛からは光が放たれ、後光が差します
その光はフォスを閉じ込めていた檻を溶かし、花となって散っていきます。
フォスは神々しい金剛を見上げます。
ここでエクメアのシーンが挟まり、アペに、あの子をこちらへと指示します。
重要なことを伝えるようです。
やがて金剛の光がおさまり、あなたの頼みでもできないと彼はいいます。
なぜ、と疑問を口にするフォス。
金剛は何かが挟まっているといい、フォスが言う通り、自分に致命的な不具合があることを認めます。
それでもフォスは諦められず、なんとか体を起こすと、合金を細く伸ばして金剛に救いを求めます。
しかし、宝石たちはフォスの背後から容赦なく一斉に刀を投擲し、フォスはほとんど欠片になって崩れ落ちます。
フォスは金剛に近づくことも、願いを届けることも許されないのでした。
第七十八話『経過』
心配そうにフォスの欠片を集めようとするユーク。
ルチルは海に捨てようぜと言い放ちますが、待った!とユークが制止します。
交渉したいから頭だけ閉じることを提案しますが、喋るだけで皆を唆したのだから被害が拡大するとボルツは反対します。
一方、シンシャは、断片に分けてそれぞれが隠すべきだと提案します。
そうすれば月人に見つかりにくいし、万が一動いても発見まで時間を稼ぐことができます。
全員の同意がある時だけ集めて閉じればいいというと、一同はなるほどと感心し、シンシャは褒められたのが恥ずかしくて顔を赤くし、急に謙虚になります。
この案にはユークも賛成で、他の宝石たちも異論はありません。
金剛にも確認すると、君たちの決定を優先すると自分の意思を見せません。
到着時の半身は長期休養所に隠してあり、ボルツが取りに行きます。
とりあえず話がまとまり、一息つくユーク。
場面は変わり、月人側。
金剛が遮断し、エクメアは残念そうな顔をします。
そこになんだここ!?と空気を読まないカンゴームが現れ、夫がお世話になっております、と他の月人に挨拶をします。
カンゴームは水兵リーベの水兵の説明を受けていたところだといいますが、おそらく元素記号を教えてもらっていたものと推測できます。
なんだよ重要なことって!と聞くと、エクメアはしばし考えた後、今日の夕飯は自分が作るといい、カンゴームはまじ!?と驚きます。
ちなみにメニューはカレーです。
場面は変わり、エクメアがネギらしきものが突き出た買い物袋を持って部屋に戻ると、アメシスト、ダイヤ、アレキ、ベニトが出迎えます。
部屋は散らかり、お酒を飲んでいるのかいつもより気性の荒いバルバタとカンゴームもいます。
結局、バルバタがカレーを作ったようで、宝石たちが食べるのは光カレーです。
薄暗い部屋にテーブルの明かりだけが灯り、一同は食事を始めます。
アレキが一口食べると、目隠しの下からでも目から光がレーザーのように飛び、光カレーの味について『真夏の夕立の後の鋭い光を一輪の青い花越しに見た時のまろやかさと清涼さ』とよく分からない食リポを披露し、バルバタは君、料理向いてるかもな、となぜか評価します。
一方、ベニトは月人たちが普通のカレーを食べ、それが排泄物として出てくることが不思議だといい、バルバタは、君は向いてないかもなとばっさりいいます。
和やかな雰囲気でしたが、突然、フォスが失敗したって本当?とアメシストが切り出します。
本当だと、エクメアは認めます。
フォスの重ねての嘆願の挙動が攻撃の動作と間違われ、仲間に砕かれたようだと説明します。
ダイヤはショックを受けますが、アメシストは今までことがあるもんねと冷静です。
絶対ルチルだよ、とこぼしたのはベニトです。
エクメアはさらに全員から一斉に攻撃を受けたようだと打ち明け、残念だといいます。
それを聞くカンゴームの表情は穏やかで、アメシストは笑った、嬉しいんでしょ~と指摘します。
フォスが失敗すれば、エクメアと一緒にいられるからと。
しかし、カンゴームは誰がどうしようと関係ないと否定。
自分にできることをするだけで、エクメアが無に行きたいなら仕方がないとサバサバしています。
そして、置いてったら追い付くだけだと決意を見せ、それを聞いたエクメアは笑い、みんなの前にも関わらず熱いキスを交わします。
バルバタはカンゴームがなかなか優秀だと評価。周期表も今日で全部覚えていました。
これにエクメアは科学者に向いているかもしれないとおだて、カンゴームも♡マークを浮かべて嬉しそうです。
一方、ダイヤは二人のキスにまだ興奮しています。
バルバタがフォスの回収についてたずねると、少し様子を見るそうだとエクメア。
エクメアは他の宝石たちにもバルバタに勉強を教わらないかと提案すると、予想していなかったバルバタは驚きますが、一同はその気になってしまいます。
食事が済むと、いちゃいちゃする時間が減るからとカンゴームはみんなに帰れと命じます。
ダイヤはいちゃいちゃ見せて~と空気を読みませんが、ばかやろうとカンゴームに断られます。
場面は変わり、みんなが帰った後、底の深いプール、もしくはお風呂に裸で沈むエクメアとカンゴーム。
ウエディングドレスのようなひらひらした布で二人は覆われています。
カンゴームは重要なことを教えてくれなかったことが不満そうで、エクメアは謝ります。
しかしカンゴームはすぐに気を取り直し、エクメアにぴったりくっついていれば一緒に無に行けるのではと考えます。
そして、だから呼び出したんだろうと勝手に判断します。
そして、割れてもいいからぎゅうっとしてとお願いするのでした。
場面は変わり、地球。
メロンがフォスの破片を隠し、ヘミモルと隠し場所について話しますが、当然、ひみつ~と明かしません。
一方、内気な新しいモルガはあっさり場所を明かしてしまい、隠し直しを命じられます。
そんなみんなの様子を、建物の中から眺めるユークとジェード。
ユークは、金剛が祈れば月人の願いが叶って全てが解決すると憶測していますが、金剛に聞いても埒が明きませんでした。
にんげんにアドミラビリス、三つに分かれた末裔、と知らないことばかりであることに気を落とすユークですが、フォスの虚言が含まれているかもしれないとジェードがフォロー。
慎重に考えるしかないとユークは思い直します。
フォスのいう幸福とは何だったのだろう、とジェードがこぼします。
訊いてみる?とユークにたずねられますが、いやっ!とジェードはすぐに拒否します。
行きましょう、と二人は風呂敷に包まれたお重のようなものを持って歩き出します。
おそらく、中にフォスの破片が入っているものと推測されます。
最後に場面が変わり、ずっと塞ぎ込んでいたイエローはベッドから起き上がるとシーツを体に巻き、窓の外を眺めるのでした。
第七十九話『二百二十年』
前回から、なんと二百二十年が経過しています。
目覚めたイエローに気が付く月人。
しかし、イエローは高所から落下し、砕けてしまいます。
その連絡は、月人からアメシストのエイティ・フォーにいきます。
彼は科学者のような出で立ちで、彼だけでなく他の宝石たちもカンゴームのことを『姫』と呼ぶようになっていました。
イエローのもとに駆け付けると、すでにカンゴームがいました。
イエローは目を覚ますとカンゴームの名前を呼びますが、彼はその呼ばれ方を最近はあまりされていていないので、反応が遅いです。
イエローは庭園まで散歩しようとして誤って落ちたようで、カンゴームも心配そうにしています。
しかし次の瞬間、イエローは『飛べないなんて、今日は体が重たい』と発言し、カンゴームとアメシストは思わず顔を合わせます。
詳しい事情をアメシストが聞こうとすると、イエローは『俺はイエローダイヤモンドだった』と暗い表情を作り、何やら様子がおかしいです。
その後、アメシストが調べたところ、イエローは自分を月人だと思い込んでいることが判明します。
その時は本来のように明るいのですが、自分が宝石であると分かると塞ぎ込んでしまいます。
その症状は日に日に悪化し、回復の見込みがありません。
主な原因はパパラチアのことですが、他の宝石たちが月人社会に順応する中、自分だけが環境変化についていけていないことも影響していました。
ダイアは、いっそイエローを月人にできないかと提案します。
月人になりたいと思ったことは、カンゴームもアメシストもあります。
そうすれば宝石の体からくる制限から解き放たれることになりますが、その方法が分かりません。
アメシストは自分のインクルージョンで実験しようとしますが、バルバタが止めます。
バルバタにとってアメシストたちは優秀な生徒であり、別の提案をします。
二百二十年前に中断した砂から宝石を再生する事業の中に記憶の追跡があり、あれから少し分かったことがありました。
バルバタは自分の代わりにやらないかと提案すると、アメシストはそれを引き受けます。
そして、それにはエクメアの許可が必要であり、説得するのはカンゴームの役目です。
場面は変わり、エクメアとカンゴームは向き合い、空中で何かを指ではじき合っています。
おそらく、将棋のようなボードゲームではないかと推測されます。
エクメアはカンゴームのお願いを退け、千日目で勝敗数が同数になるようにわざとゲームに負けますが、カンゴームがそのことに気が付いていました。
そして泣き落としにかかり、エクメアは基礎研究だけを許可します。
カンゴームは自分の冷たくて重たい体に飽きていましたが、エクメアは呆れおらず、カンゴームは『ばか』と嬉しそうに言います。
場面は変わり、地球。
金剛におはようと声を掛けるユークレース。
彼は八万三百二十二回目となるお願いをしますが、それでも金剛はすまないと言って祈ってくれません。
ユークレースは今日も月人は来ないと断言。
お願いもこれでおしまいだとして、今年は自分も冬眠することを伝えます。
金剛は冬の当番として起きているといい、ユークレースも他の宝石たちのもとに向かいます。
一人になると、金剛はフォスの欠片を集め、組み立てます。
金剛は宝石たちがフォスのことを忘れるのに二百二十年も待ったのです。
フォスはまだまだ継ぎはぎだらけのような体ですが起き上がり、自分のために祈ってほしいと懇願します。
金剛はその言葉に従って祈りを始めますが、やはり途中でやめてしまいます。
フォスはたまらず『祈れ』と金剛に飛び掛かりますが、その執念はすさまじく、あの金剛が怯えているように見えました。
おわりに
十巻では暗い話が続き、今後の宝石たちの関係修復はあるのか? など心配になった読者の方も多いと思います。
少しずつ新たな局面に向けて動き出しているので、これからの展開から目が離せません。
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