『違国日記 1巻』ネタバレ感想!あらすじから結末まで!
「へんな人と暮らしはじめた。 お父さんとお母さんが 死んだので。」
35歳、少女小説家。(亡き母の姉)
15歳、女子中学生(姉の遺児)。
不器用女王と子犬のような姪がおくる年の差同居譚。手さぐり暮らしの第1巻!少女小説家の高代槙生(35)は 姉夫婦の葬式で遺児の・朝(15)が親戚間をたらい回しにされているのを見過ごせず、勢いで引き取ることにした。しかし姪を連れ帰ったものの、翌日には我に返り、持ち前の人見知りが発動。槙生は、誰かと暮らすのには不向きな自分の性格を忘れていた……。対する朝は、人見知りもなく
Amazon内容紹介より
“大人らしくない大人”・槙生との暮らしを物珍しくも素直に受け止めていく。
35歳少女小説家、高代槙生(亡き母の妹)。
15歳女子中学生、田汲朝(姉の遺児)。
この組み合わせで二人暮らしをしたら、どうなるのか?
それが本書には書かれています(当たり前のことしか言ってない)。
ここでは、本書の魅力、感想を書いていきます。
スタートは三年後
二人が一緒に暮らし始めて三年が経過した時点から、物語は始まります。
小説を書く槙生と、邪魔をしないように手際よく料理をする朝。
お互いの空気が馴染み、当たり前のように送る共同生活。
どんな日々を過ごしてここに至ったのか、考えずにはいられません。
短いページ数でしたが、掴みとしてとても良かったです。
あと、夜、執筆中の槙生の側で眠ることを、ちがう国の女王の王座のかたわらで眠る、という朝の表現が、二人の間柄を示しているように思えました。
女王とその家来、もしくは犬?
タイトルの意味
『違国』について。
朝は、槙生が仕事中、ここではない違う国にいると表現していて、そこからきています。
食事中なども、たまに遠い目をしていることがあり、ここではない、槙生にしか見えないものを見ているのでしょう。
槙生は他の大人と違う、自分だけの世界をしっかり持っていて、朝はそんな槙生の世界が好きです。
そして、『日記』。
これは槙生が朝を引き取る前に、彼女に日記を書くように勧めますが、そこからきています。
「誰がわたしに何を言って、誰がわたしに何を言わなかったのか」
「たとえ二度と開かなくても、いつか悲しくなったとき、それがあなたの灯台になる」
違国の女王との生活の中で、朝は何を言われ、何を言われなかったのか。
その答えが日記=本書なのではないでしょうか。
朝にとって、槙生は灯台のような存在になりうるのでしょうか?
もしくは、朝によって槙生が救われるのでしょうか?
始めは大人の一面を見せていた槙生ですが、早くもボロが大量に出て、朝に気を遣われる始末。
先が思いやられると思いながらも、槙生なりに朝にとっての一番を考えています。
心配だけど、でも安心して見ていられる二人です。
大人らしくない大人、槙生
親戚間をたらい回しにされる朝を見過ごせず、勢いで朝を引き取ることを決めた槙生。
でも実際は、人見知りでいつも不機嫌だし、部屋はいつも散らかっている。
ちょっとしたことで笑うし、恥ずかしがるし、怒る。
気持ちの揺れが大きくて、子供みたい。
それでいて、大人としての分別はあり、朝へのアドバイスはさすが大人と思うようなものばかり。
このかなり変わった大人から、朝は何を学んでいくのでしょうか?
姉との過去、元恋人の笠町信吾とのこと、など、明かされていない過去もあるので、これからが楽しみです。
あと、人と会うときはちゃんと化粧をするし、電話の応対もきちんと出来る点にびっくりしました。
プライベートを知らない人からしたら、クールな美人というところでしょうか。
彼女の私生活がベースの読者にとって、そういう社会人らしい一面は、とても新鮮です。
素直な朝
一気に両親を亡くした不憫な子。
しかし、朝は突然の出来事に感覚が麻痺しているのか、まだ両親がいなくなったことへの悲しみは見せていません。
人見知りはしないし、歌はうまいし、掃除も好き。
そして、人の言う事を聞ける素直さを持ち合わせています。
逆に槙生が見習うべきなのでは? と思いつつも、朝は槙生からいくつもの大切なことを学んでいます。
これから乗り越えないといけない痛みがありますが、槙生が隣にいてくれれば大丈夫な気がします。
いつか家族のように笑い合えるのでしょうか? こちらも楽しみです。
他の作品を読んでてもそうですが、ヤマシタさんの作品の未成年たちは逞しいですよね。
年齢相応の無邪気さを持っていますが、困難に立ち向かえるだけのバイタリティーに溢れているというか。
そして、年長者たちの社会不適合ぶり(笑)
どうかああはならず、真っ当に成長してほしいなと強く願います。
現実と向き合う
かっこいいことを言ったものの、女子中学生を引き取れば、それだけお金がかかります。
役所で手続きもしなくてはなりません。
元恋人の信吾にアドバイスをもらい、槙生は朝を連れて、朝の家の整理に行くことを決意します。
嫌いだった姉の住んでいた家。今は亡き両親と一緒に住んでいた家。
そこで彼女たちは何を見つけるのでしょうか?
そして信吾はというと、まだ槙生に気がある様子。
朝の父親代わりとして、再接近する可能性はあるのでしょうか?
個人的には、信吾は二人の関係を見て、遠くから見守ることを選択しそうな気がします。
ずかずか二人の間に入るには、信吾は優しすぎる。大人なんですよね。
まだ1巻が発売されたばかりですが、待ち遠しくて仕方ありません。
おわりに
ヤマシタトモコさんの作品に触れたことのある方はもちろんですが、そうでない方でも満足すること間違いなしの作品です。
気になったという方は、ぜひ読んでみてください!
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