【感想】『飴色紅茶館歓談』百合を好きになるきっかけとなった優しく甘いひととき【ネタバレ注意】
紅茶で繋がる少女たちの甘やかな絆、味わってみませんか?アルバイトの女子高生、琴織さらさ。若き紅茶店の店主、犬飼芹穂。二人はゆるやかに、のんびりと紅茶のお店を営んでいます。優しい、甘やかな空気が感じられるような。そんな、お店。二人がお互いに秘めた想いが紅茶のように、透明にとけだしているような、そんなお店。あなたもよかったら遊びに来てみませんか。ほら、飴色紅茶館のお話、はじまるところですよ。
Amazon内容紹介より
十年以上前の作品ですが、僕が百合というジャンル、そして魅力を知るきっかけとなった作品です。
この本以降、いわゆる百合作品を数多く読んできましたが、この本の醸し出す甘くて優しい空気こそ百合の本当の魅力だと今でも思います。
この記事では、本書の魅力や評価の分かれる点について書いていますので、購入を迷っているという方はぜひ検討材料にしてください。
多少のネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。
登場人物
はじめに主な登場人物についてご紹介します。
登場人物の姓のほとんどが星座や恒星など天体に関係するものが由来になっています。
飴色紅茶館歓談 1巻 より
↑本作の舞台の中心となる飴色紅茶館の店員二人で、左が芹穂、右がさらさ。
この見た目で芹穂の方が八歳も年上というのが驚きです。
琴織(ことおり)さらさ
十七歳の女子高生。
芹穂が経営する飴色紅茶館にお客として訪れたが、芹穂のことが好きになってしまい、アルバイトとして働くことに。
しっかりした優等生タイプで、経営を任されるなど明らかにアルバイトの範疇を越えている。
一方で芹穂のことが好きすぎて暴走しがちなところもあり、修学旅行で京都にいた時、自由時間の四時間で京都ー東京間を往復しようとするほど完全に彼女に依存している。
自分の気持ちには素直だが、それを芹穂に伝えるのは苦手で、恋愛に関しては年上の芹穂にリードされがち。
芹穂とこの先何十年も一緒にいるために、飴色紅茶館専属のパティシエになろうと高校卒業後、製菓学校に進学することを決めた。
犬飼芹穂(いぬかいせりほ)
二十五歳で、飴色紅茶館の店主。
おっとりとした性格で、FAXもろくに使いこなせないなど経営には向いておらず、実務の多くをさらさに頼っている。
一方で紅茶の腕前は一流で、店主らしい一面も持っている。
芹穂もまたさらさのことが好きだが、それが恋愛感情だと気が付くのは後半になってから。
そこから積極的にさらさにモーションをかけるなど行動力は抜群で、いつも周囲を驚かせるが、何に驚かれているのか本人は分かっていない。
常連の二人の老婦人の言葉で、さらさと五十年後も一緒にいたいと思うようになった。
獅子尾ハル
さらさの高校の友人。
情報を集めることに快感を覚える自称・情報屋で、その情報を駆使して飴色紅茶館の売り上げに貢献したこともある。
同じくさらさの友人である日乃夏とはいつも一緒に行動を共にしているが、お互いに恋愛感情はないと思われる。
白鳥日乃夏(しらとりひのか)
さらさの高校の友人。
芹穂とは違った意味で天然要素を持つ少女で、おっとりというよりも活発で騒がしい性格。
日曜大工(今風でいうとDIY)が趣味。
ハルといつも一緒にいるが、彼女のことはタイプではないと明言している。
雨川菫
芹穂の高校時代の同級生で、かつて芹穂のことが好きだったが叶わなかった。
今は海外で料理の勉強をしていて、向こうで女性と付き合っている。
帰国した際にさらさと芹穂が両想いであることに気が付き、二人が結ばれるよう画策。
しかし、菫に言われるまで自分の気持ちに気が付かなった芹穂は暴走し、いきなりさらさに指輪を渡すという大胆な行動に出てしまう。
魅力
とにかく優しくて甘い
紅茶の専門店が物語の舞台ということもあって、時間の流れが非常に緩やかで、集まるお客さんも自然と穏やかな方が多いです。
店主の芹穂の性格もあり、飴色紅茶館はいつも優しく穏やかに読者を迎え入れてくれます。
そして、そこで育まれるさらさと芹穂の恋愛はとても甘く、じれったいものです。
『飴色紅茶館歓談』の魅力を語る上で、この点は絶対に外せません。
いかがわしい描写が一切ない
百合作品の中にはキスやそれより先の関係まで進み、それを描写することも少なからずあります。
その点において、本書はそういった描写が一切ありません。
抱きしめるが最高のいちゃつきで、キスすらもありません。
個人的に百合モノには尊い、純粋な恋愛をつい求めてしまうので、この点は非常に高ポイントです。
一緒にいたいという気持ちが尊い
ただ今を一緒に過ごしたいという気持ちではありません。
芹穂の五十年後も隣にいてほしい、という言葉にある通り、二人は生涯にわたって隣にいたいという強い気持ちを持っています。
芹穂はさらさに比べれば年上ですが、それでも二十代半ばで人生を決めるにはまだ早い気もします。
それでも一緒にいたいと口にするのは相当の覚悟がいるわけで、こういったところに想いの強さを感じ、それを尊いと感じてしまいました。
二巻で完結
本書は二巻で完結するので、非常にサックリ読めます。
しかも二巻は別の読み切りも掲載されているので、本編自体はもっと短いです。
一気買いする時に十巻を越えてくるとどうしても躊躇してしまいますが、そういった点でも本書は手を出しやすく、お財布にも優しいときています。
評価の分かれる点
過激な表現を求める人には物足りない
魅力で書いたことが、逆に物足りないと感じてしまう人もいると思います。
これは完全に好みですので、自分が過激な表現を求めていると感じた時は、本書はあまりオススメしません。
じっくり読み込むには短い
これも魅力とは逆になってしまいますが、一つの作品を何十巻にもわたってじっくりお付き合いしたいと考える人もいると思います。
その点において本書は物足りないと感じるかもしれません。
迷ったら無料で試し読み
ここまで読んでもまだ迷うというあなた。
pixivで一部無料で読むことが出来ますので、ぜひ一度読んでみてください。
初期の絵柄と後半の絵柄で違いはありますが、作品の持つ雰囲気ははじめから変わらず持っているので、参考になると思います。
おわりに
これぞ百合作品!
そういっても過言ではないと僕は断言します。
優しく甘い雰囲気の中に、五十年後も一緒にいたいという強い意志がとても尊く感じ、この感動は並大抵の恋愛作品では生み出せないと思います。
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